看護師の退職届の正しい書き方・渡し方は?退職願との違いも解説

勤め先を退職するときには、正しい手順を踏むことが大切です。提出が必要な書類、提出するタイミング、正しい書き方などを踏まえていなければ、「社会人としてのマナーがなっていない」と思われてしまいます。そうした事態を防げるよう、この記事では、看護師が退職するにあたっての基本的なルールを解説していきます。

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目次
  1. 看護師が退職する際に提出する書類は?
    1. 退職願
    2. 退職届
      1. 「退職願」は正式な退職手続きではない一方、「退職届」は正式な退職手続きである
    3. 辞表
  2. 退職願、退職届のルールや基本的な書き方
    1. 「手書き」or「パソコン」
    2. 用紙サイズ
    3. 「縦書き」or「横書き」
    4. 封筒の表裏に書くこと
    5. 本文の内容
      1. 退職願の場合
      2. 退職届の場合
    6. 縦書きの場合、横書きの場合の基本的な配置
      1. 縦書きの場合
      2. 横書きの場合
  3. 退職を決意してから退職するまでの流れは?
    1. 直属の上司に退職の意向を伝える
    2. 退職願を提出する
    3. 退職日を決定する
    4. 退職届を提出する
    5. デスク周り・ロッカー内を整理する
    6. 担当業務の引継ぎを行う
    7. 必要書類を受け取る
    8. 職場から借りているものを返却する
    9. 退職日より前にあいさつ回りを済ませておく
    10. 退職する
  4. 退職届の提出に関する注意点
    1. 退職届は宛先と提出先が異なる
    2. 提出方法は原則「手渡し」
    3. 退職届に記載した日に提出できなかった場合、退職届を書き直すことが鉄則
  5. 退職願、退職届が受理されないと退職できない?
  6. 退職届が受理されない場合の対処法は?
    1. (個人経営のクリニックなど小規模な勤務先以外の場合)人事または上司の上司に相談する
    2. 内容証明郵便で退職届を送る
    3. 弁護士に相談する
    4. 労働基準監督署に相談する
  7. 看護師の退職時トラブルにはどんなパターンがある?
    1. なかなか話を聞いてもらえない
    2. 退職日を勝手に指定された
    3. 奨学金の一括返済を求められた
    4. 違約金を支払うよう言われた
    5. 有給休暇を消化させてもらえなくなった
    6. 退職金を出さないと言われた
    7. ボーナスを支給できないと言われた
    8. 退職願を出して以降、残業代が支払われなくなった
    9. 退職日から2週間経っても離職票が届かない
    10. 職場都合の退職なのに、離職票に「自己都合」と記載された
  8. 看護師が退職した後に必要な手続きは?
    1. 健康保険の切り替え
    2. 年金の切り替え
      1. 国民年金に加入する場合
      2. 配偶者の扶養に入る場合
    3. 住民税の支払い
      1. 退職日が1/1~5/31
      2. 退職日が6/1~12/31
    4. 確定申告
    5. 失業保険を受け取る手続き
    6. 転職活動または起業の準備など
  9. 退職時のルールやマナーを守れば、次のキャリアを気持ちよくスタートできる

看護師が退職する際に提出する書類は?

まずは、看護師が退職する際、職場に提出が必要な書類の種類について解説していきます。

「退職時に提出する書類といえば退職届」と認識している人は多いと考えられますが、似た書類として「退職願」や「辞表」も存在します。この3つにはどのような違いがあるかというと次の通りです。

退職願

「退職願」とは、退職の意思を表明する書類です。提出する相手は直属の上司、または小規模クリニックなどの場合は院長で、この書類を提出することによって、退職したいと考えていることを伝えます。あるいは、先に口頭で退職の意思があることを伝えたうえで、了承を得られそうなら退職願を提出するという流れでも問題ありません。

ただし、退職願は「退職を希望していますが構わないでしょうか?」と雇用者側にうかがいを立てる役割を果たすもので、提出した従業員の意思が必ずしも尊重されるとは限りません。つまり、上司や院長から受理されない場合があるということです。

なお、受理されなかった場合の対処方法については後述します。

退職届

「退職届」とは、従業員側が雇用者側に対して、雇用契約の解消を表明する書類です。順番としては、「退職願」を提出した後に「退職届」を提出するという流れです。退出届を提出すると、雇用者側が受諾するかしないかに関わらず、退職日が確定することになります。

ただし、一方的に退職届を突き付けると円満退社が難しくなるも場合もあるので、雇用者側の受諾の姿勢を確認せずに退職届を提出することはおすすめできません。

また、退職願同様、上司から受理されない場合があるので、対処方法について後述します。

「退職願」は正式な退職手続きではない一方、「退職届」は正式な退職手続きである

退職願と退職届の提出目的の違いは前述の通りですが、2つの書類にはもう1つ大きな違いがあります。どんな違いかというと、前者は、正式な退職手続きではなく、後者は正式な退職手続きであるということです。

そのため、退職願に関しては、提出した後からでも退職の意思があることを撤回することができますが、退職届に関しては、提出した時点で退職日が確定しますし、基本的に撤回はできません。

辞表

「辞表」とは、役員以上の立場の人間が辞める際に用いる書類です。言い換えると、役職に就いていない人、もしくは民間企業や事業所に勤務している人は、辞表を提出することはないということになります。

つまり、看護師が退職する場合、基本的にはまず退職願を提出して、その後、退職届を出すという流れになります。

退職願、退職届のルールや基本的な書き方

続いては、退職願、退職届に関するルールや基本的な書き方を解説していきます。

「手書き」or「パソコン」

退職願・退職届ともに、手書きしてもパソコンで作成しても構いません。ただし、署名と日付、表書きは自筆にすることが望ましいといえます。

また、職場で退職願や退職届のフォーマットが用意されている場合は、フォーマットを利用します。その場合も同様に、署名と日付、表書きは自筆にします。

用紙サイズ

用紙サイズに決まりはありませんが、便箋を使う場合は一般的なB5サイズ程度を選び、パソコンで作成する場合はB5またはA4を選ぶと間違いないでしょう。

「縦書き」or「横書き」

書類の向きに関しては、縦書きでも横書きでも問題ありませんが、職場でフォーマットが用意されている場合はそれに従います。一般的には、縦書きのほうがきちんとしている印象を持たれやすいですが、「手書きで誠意を示したいけど縦書きが苦手」などの場合は無理をする必要はありません。

封筒の表裏に書くこと

退職願や退職届を入れる封筒は、郵便番号を書く欄がない白無地のものを選びます。封筒の表面には、大きめの文字で「退職願」もしくは「退職届」と記します。裏には、所属と氏名を記します。

封筒に入れる書類は三つ折りにします。書類を開いたとき、「退職願」あるいは「退職届」の表題が見えやすいように折りましょう。

本文の内容

退職願、退職届の本文は次の例文のように記します。

退職願の場合

「一身上の都合によって、令和X年X月X日をもって退職させていただきたく、ここにお願い申し上げます」

退職届の場合

「一身上の都合によって、令和X年X月X日をもって退職させていただきます」

退職理由は上記例文そのままに、「一身上の都合」と記すのが正解です。上司に退職の意向を伝えたところ、理由を尋ねられたときに答えることは問題ありませんが、退職願および退職届は形式的な書類であるため、理由まで記す必要はないためです。

なお、退職したい理由が「職場に対して不満がある」である場合は、上司に尋ねられた際には、「新しい環境でスキルアップを目指したい」などポジティブな理由に変換して伝えましょう。

縦書きの場合、横書きの場合の基本的な配置

前述の通り、退職願および退職届は縦書きで作成しても横書きで作成しても構いませんが、縦書きの場合と横書きの場合とで、必要な要素の配置が少々異なります。退職届を例に、縦書き・横書きそれぞれのパターンの基本的な配置を説明します。

縦書きの場合

  1. 「退職届」
  2. 「私儀」または「私事」から書き始めます
  3. 先に解説した本文を記します。
  4. 退職届を提出する日付を漢数字で記します。
  5. 所属や役職を正式名称で記し、名前を記載して押印します。
  6. 提出する相手の役職と氏名を記します。記す位置は自分の氏名より上で、敬称は「殿」にします。

横書きの場合

  1. 「退職届」
  2. 退職届を提出する日付を算用数字で記します。
  3. 提出する相手の役職と氏名を記します。敬称は「殿」にします。
  4. 所属や役職を正式名称で記し、名前を記載して押印します。
  5. 「私儀」または「私事」から書き始めます。
  6. 先に解説した本文を記します。
  7. 「以上」で結びます。

退職を決意してから退職するまでの流れは?

続いては、退職願・退職届の提出を含めて、退職を決意してから退職するまでの流れを確認していきましょう。

直属の上司に退職の意向を伝える

退職の意思が固まったら、退職したい旨を直属の上司に伝えます。なお、退職の手続きに関しては、雇用契約書や就業規則に明記されているケースも多いので、それらを確認したうえで適切な時期に伝えます。

「適切な時期」とはどういうことかというと、まず、引継ぎや後任者の準備を考えると、遅くとも退職予定の1~2か月前までには退職の意向を上司に伝えることが望ましいため、それより遅いタイミングにならないよう心掛けることが大切です。ただし、個人経営の小規模クリニックなどで、看護師が自分を含めて1~2人などの場合は、新しい看護師の採用が決まらないうちに退職されると職場側が途方に暮れてしまうため、それより早い時期に相談することが大切です。

また、退職の意向を伝えるにあたっては上司に時間を頂戴することになるため、業務が立て込んでいるタイミングなどは避けることが大事です。なお、退職の意向を伝えるにあたっては、業務中に周りに同僚がいないタイミングで「今なら他に誰もいないから」と慌ただしく伝えるのではなく、ふたりきりで落ち着いて話ができる時間・環境を用意することが大切です。

退職願を提出する

退職の意向を伝えた後は、「退職願」を提出します。ただし、上司に相談した結果、話がスムーズに進めば、退職願の提出が必要ない場合もあるので、提出したほうがいいかどうかは職場に確認するといいでしょう。

また、直属の上司になかなか時間をとってもらえず、退職の意向を伝えることができない場合は、時間をとってもらう代わりに退職願を提出するということでも構いません。

退職日を決定する

退職願が受理されたら、上司と相談して退職日を決定します。退職日の決定後は、同僚などに退職することを伝え始めても構いません。

退職届を提出する

雇用契約書や就業規則に、退職届に関するルールが記載されている場合は、それに従って退職届を準備して提出します。

デスク周り・ロッカー内を整理する

通常の業務と並行して、デスク周りやロッカー内を整理します。

担当業務の引継ぎを行う

担当業務の引継ぎには、次の項目に関してまとめた資料を用意できると親切です。

①1日の仕事の流れ

1日の仕事の流れを時系列・箇条書きでまとめます。

②週単位・月単位での業務

週単位・月単位でおこなう業務について、内容や頻度、対応方法などをまとめます。

③書類や備品の保管場所・使用方法

業務で使用する書類や備品の保管場所および使用方法をまとめます。

④患者情報

担当している患者の病状や経過、注意すべき点、過去のトラブルなどをまとめます。

⑤取引先の情報

取引先との連絡方法や、先方の担当者についての情報をまとめます。併せて、担当者の名刺も後任者に渡します。

委員会活動などの情報

⑥委員会活動などの情報

通常の業務とは別に、委員会活動などにも携わる必要がある場合、その内容や、そこでの役割についてもしっかり伝えます。

⑦連絡先

引き継いだ業務に必要なことをきちんとまとめておいたとしても、後任者ではわからないことが出てくる可能性もあります。その場合に可能な限り対応できるよう、連絡先も伝えておきます。

ただし、新しい職場のメールアドレスや電話番号を伝えて、そこに連絡されると困ってしまうので、メールアドレスや電話番号はプライベートのものを伝えます。プライベートの連絡先を教えることに抵抗があるなら、メインで使っているメールアドレスとは別に捨てアドレスを作り、そこに連絡をもらうようにするといいでしょう。

なお、引き継ぎ業務は退職日の3日前には完了できるようスケジュールを組んでおくと、トラブルが起きにくいですし、後任者もできるだけその間にわからないことを質問するよう配慮してくれるでしょう。

必要書類を受け取る

退職時には、離職票や雇用保険被保険者証、源泉徴収票など、退職後に使うことになる書類を受け取る必要があります。健康保険証が発行されている場合は、返却日および返却方法について確認することも必要です。

離職票や雇用保険被保険者証、源泉徴収票などは、後日郵送される場合もあるので、その場合、いつごろ送られてくるかの目安を確認しておくと安心です。

なお、「雇用保険非保険証」とは、雇用保険に加入していることを証明する書類です。雇用保険からは退職時に抜けることになりますが、再び働き始めるタイミングで加入することになるため、次の職場で働き始めるまで大切に保管しておきます。

職場から借りているものを返却する

健康保険証以外にも、職場に返却するものはいくつかあります。代表的なものとしては下記が挙げられます。返却し忘れることのないよう、退職日前にリストを作成しておいて、当日、改めてチェックすることをおすすめします。

  • ユニフォーム
  • 職員証
  • 職員バッチやネームホルダー
  • 通勤定期券
  • ロッカーのカギ
  • 機密情報が記された資料
  • 聴診器や血圧計などの医療機器
  • (訪問看護の場合)レインコートやバッグなど

退職日より前にあいさつ回りを済ませておく

退職日は、職場の状況などによって職員たちが慌ただしく動いている場合もあるので、あいさつ回りは早めに済ませておくのが吉です。関係各所へのメールも、退職日より早い段階で送付を済ませておきます。

退職する

やり残したことがないことを確認したら退職します。

退職届の提出に関する注意点

退職届の提出に関しては、注意すべき点が3つあります。

退職届は宛先と提出先が異なる

まず、退職届の宛先は「院長」などの最高執行責任者ですが、退職届の提出先は「看護部長」または「看護師長」などの直属の上司です。

提出方法は原則「手渡し」

提出方法は「手渡し」が原則で、直属の上司が不在または忙しい場合などは、いったん持ち帰って改めて提出する必要があります。

ただし、病気療養中などの理由で直接手渡しすることが難しい場合は、郵送での提出でも構いません。その場合は、退職届とは別に、郵送での提出となることを詫びる「添え状」が必要です。

その際、退職届自体は前述の通り白無地の封筒に入れて、封筒の表面には「退職届」と記載したうえで、「①退職届が入った封筒」「②添え状」の2つを、①と②よりも一回り大きな封筒に入れて郵送します。

なお、添え状の本文は下記のように記します。

【添え状(例文)】

郵送で退職届を提出した場合、発送後、3日から1週間程度経過したころ、勤務先に連絡を入れて、到着しているかどうか確認しておくと安心です。

退職届に記載した日に提出できなかった場合、退職届を書き直すことが鉄則

退職届を一度持ち帰ったことで、書面に記載した日付から日付が変わった場合、退職届を書き直すことが必要です。面倒に思えますが、退職届は重要な書類であるため、正しい形で渡すことが鉄則です。

退職願、退職届が受理されないと退職できない?

前述の通り、退職願や退職届を上司や院長に提出しても、受け取りを拒否されることはあります。また、「辞めないでほしい」と懇願されたり、引き止められたりするケースも多いです。

特に、退職を希望している本人の押しが弱い場合、「今辞められると困る」と職場側も受理しない姿勢を変えない可能性が高いので、強い意志を持って辞めたい意向を伝えることはとても大切です。

また、「退職するなら今月分の給料は払わない」「半年間は退職を認めない」「どうしても退職するなら自主退職ではなく懲戒解雇扱いにする」などの条件を突きつけられることもあり得ます。

こうした場合、上司が提示してきた条件に従わなければいけないかというと、基本的には従う必要はありません。なぜかというと、民法第627条1項によって、雇用期間に定めがない場合は、雇用者側に退職の意思を示してから2週間が経過したら退職できると定められているからです。

参照: 民法第627条1項

一方、雇用期間に定めがある「有期雇用契約」を結んでいる場合、病気やケガ・介護などのやむを得ない事由がない限り、雇用期間が満了するまで退職できません。ただし、当事者本人の過失によってやむを得ない事由が生じて、雇用期間が満了するまで働けなくなり、雇用者側が損害を被っている場合、雇用者側から損害賠償を請求される可能性があるため注意が必要です。

なお、労働契約の初日から1年以上勤務している場合は、労働基準法第137条によって、やむを得ない事由がなくても退職を申し出ることが認められています。

参照: 労働基準法第137条

退職届が受理されない場合の対処法は?

前半に解説した通り、退職願は正式な退職手続きではないため、受理されない場合はそのまま退職届を提出すれば、法的には退職が認められる場合がほとんどです。ただし、円満に退社できない可能性が高く、また、給与が支払われないなどの対応をされる場合があります。それを防ぐためには次の対処法が考えられます。

  • (個人経営のクリニックなど小規模な勤務先以外の場合)人事または上司の上司に相談する
  • 内容証明郵便で退職届を送る
  • 弁護士に相談する
  • 労働基準監督署に相談する

それぞれ詳しくみていきましょう。

(個人経営のクリニックなど小規模な勤務先以外の場合)人事または上司の上司に相談する

まずは、人事または上司の上司などに相談してみるのが得策です。退職届を受理してもらえない状況にあることを伝え、その状況下でどのように手続きを進めたら進めていけばいいかについて伺いを立てましょう。

その際、直属の上司の悪口を言うと、勤務先からよくない印象を持たれるので絶対に避けましょう。また、「直属の上司が退職届を受け取らないなら、こちらで代わりに受理します」との回答であれば、それに従って構いません。

内容証明郵便で退職届を送る

人事や、上司の上司などに相談しても退職届が受理されない状況を打破できない場合、配達証明付きの内容証明郵便で退職届を送るのが賢明です。

内容証明郵便なら、送付した日付や郵便物の内容を証明することができるので、「退職したいなど聞いていない」などとはぐらかされる可能性をつぶすことができます。さらに配達証明をつければ、送付した先で書類が受け取られたことを証明することができるので、退職の意思を職場に伝えたことが第三者から見ても明確になります。

弁護士に相談する

配達証明付き内容証明郵便を活用しても、穏便に退職できそうにない場合は、弁護士に間に入ってもらうことを検討してもいいかもしれません。一般的には弁護士費用は高額ですが、収入や資産が一定基準以下の場合、法テラスの無料法律相談を利用することも可能です。

労働基準監督署に相談する

金銭面的にも弁護士に介入してもらうことを避けたい場合は、無料で労働環境についての相談を受けてくれる労働基準監督署に相談することがおすすめです。職場の対応が悪質だと判断される場合、労働局に設けられた調整委員会に所属する弁護士や社会保険労務士などが問題の解決を図ってくれます。

看護師の退職時トラブルにはどんなパターンがある?

続いては、看護師の退職時トラブルとしてよくあるパターンとその解決方法を紹介します。

なかなか話を聞いてもらえない

退職の意向があるため時間を作ってほしいと掛け合っても、直属の上司がなかなか対応してくれないケースはよくあります。この場合、たとえば相手が看護師長であれば、「お忙しいようですので、私のほうから看護部長に直接話します」と伝えてみるのも一手です。そう言われたほうは、直接上に話されるのを避けたいと考え、話を進めてくれる可能性が高いと考えられます。

看護部長もしくは院長に退職の意向を伝えても掛け合ってくれない場合は、まずは「労働基準監督署に相談します」と伝えるといいでしょう。労働基準監督署からの調査が入ると面倒になることから、退職を受理してもらえる可能性が高くなります。

退職日を勝手に指定された

退職届の提出では、法律上は、退職日の2週間前までとなっています。この期日までに提出しているにも関わらず、職場側で、本人が希望する退職日より先の日付を退職日として指定してきた場合、労働基準監督署に相談することをおすすめします。

次の職場およびその入職日が決まっていない場合はまだしも、決まっている場合は、「前の職場の都合で入職日を先延ばしにしてほしい」などと申し出たことによって内定が取り消される可能性もあります。

奨学金の一括返済を求められた

お礼奉公中に退職する場合、奨学金の一括返済を求められることがあります。ただし、交渉次第では分割に応じてもらえることがあります。

また、都道府県や市町村などの奨学金の場合、転職先も同じ自治体内の指定病院であれば、引き続き返済が免除となることもあります。いずれにしても、まずは奨学金の契約内容を確認してみる必要があります。

違約金を支払うよう言われた

労働契約に違反したとの理由で、違約金の支払いを命じられることがあります。しかし、労働契約への違反を理由に労働者に違約金を支払わせることは労働基準法で禁じられているため、これに応じる必要はありません。そのように伝えても職場側の態度が変わらない場合は、労働基準監督署に相談してみるといいでしょう。

有給休暇を消化させてもらえなくなった

退職日が決まったら、それまでの間に有給休暇を消化しようと考える人は多いですが、職場によっては、退職日が決まると有給休暇を消化させないことがあるようです。しかし、年次有給休暇取得の条件を満たしている労働者からの有給休暇申請を拒否することは、労働基準法第39条第5項によって禁じられています。そのため、取得を拒否された場合は労働基準監督署に相談することをおすすめします。

ただし、年末年始や夏季休暇などの人手が不足しがちな時期に申請すると、職場に多大な迷惑をかけてしまうので、申請時期には配慮することが必要です。

参照: 厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」

退職金を出さないと言われた

退職金を出さないことが違法であるかどうかは就業規則によります。職場によっては、「3年未満の早期退職者には退職金は支給しない」などの規定があるので、それに該当しないかどうかをまずは確認しましょう。支給の対象であるのに支払いを拒否された場合は、労働基準監督署に相談するなどします。

ボーナスを支給できないと言われた

ボーナスの支給の有無に関しても、違法かどうかは就業規則によりけりです。

一般的には、ボーナスの支給日に在籍している職員に支払うという規定である「支給日在職要件」を満たしていれば支給の対象になりますが、「退職する職員については減額する」などの規定がある場合もあれば、退職とは関係なく、「業績が悪化した場合などは支払わない」との規定に引っかかって支払われていない可能性も考えられます。

退職願を出して以降、残業代が支払われなくなった

雇用主側には、残業代を支払う義務があります。しかし、辞めるまでの間に揉め事を起こしたくないとの理由から、請求することに及び腰になってしまう場合があるかもしれません。

その場合、労働基準監督署に未払いの残業代を申告することが可能です。残業した証拠となるタイムカードや勤怠管理データを用意することができれば、退職後2年以内の残業代は申告できるので、残業した証拠はしっかり保管しておきましょう。

退職日から2週間経っても離職票が届かない

離職票は、退職日から2週間以内に届くのが一般的です。そのため、2週間を過ぎても届かない場合は、送付忘れの可能性が高いと考えられます。催促してもなお届かない場合は、ハローワークに相談して、送付を促してもらいましょう。

職場都合の退職なのに、離職票に「自己都合」と記載された

職場都合の退職なのに、離職票に「自己都合」と記載された場合は、故意であるのか手違いであるのかに関わらず、職場に連絡して記載内容を変更してもらうことが必要です。なぜかというと、職場の都合で失業した場合、失業手当が手厚くなるためです。

具体的には、職場都合であれば最短7日後から失業手当が支給されるのに対して、自己都合の場合は3か月以上先からの支給となるため、受け取れる総支給額が少なくなります。

看護師が退職した後に必要な手続きは?

看護師が職場を退職した場合、退職後にもさまざまな手続きが必要です。

健康保険の切り替え

次の職場が決まっていない場合、いったん、国民健康保険に加入するか、家族の扶養に入るか、もしくは健康保険を任意継続することになります。

国民健康保険への加入家族の扶養に入る退職前の健康保険を任意継続
手続き期限退職日翌日より14日以内退職日翌日より5日以内退職日翌日より20日以内
保険料自治体による(前年の所得をもとに計算)(なし)これまでの2倍(退職時の給料をもとに計算)
向いている人・独身・前年の所得が少ないすぐに転職する予定がない・扶養家族がいる・退職時の月収が30万円以上
主な特徴・給付内容が少ない・世帯人数が多いほど保険料が増える・2年目以降は、離職利用や所得に応じて保険料が2割~7割の減免される場合がある働く場合は年収を不要の範囲内に抑える必要がある(抑えなかった場合、税金が高くなる)・給付内容がこれまでと同じ・加入できる期間は最長2年間。その間、保険料は変わらない

 

年金の切り替え

また、年金の切り替え手続きも必要です。退職するまでに保険料を支払っていた厚生年金は、組織に雇用されている人しか加入することができないため、すぐに次の職場に入職しない場合、国民年金に加入するか、もしくは配偶者の扶養に入ることになります。

国民年金に加入する場合

退職日翌日から14日以内に、居住しているエリアの自治体で手続きします。月末日に退職した場合を除き、退職した月から保険料が発生します。

配偶者の扶養に入る場合

厚生年金を収めている会社員もしくは公務員の配偶者がいる場合、その扶養に入ることができます。この場合、配偶者の勤務先で手続きする必要があります。

住民税の支払い

また、次の入職日までに離職機関が発生する場合、住民税の支払いも自分でおこなうことになるので、手続きを忘れないようにしましょう。

住民税の納付方法は、退職日によって以下の2通りにわかれます。

退職日が1/1~5/31

退職日が1/1~5/31の場合、原則として、退職時の給料・退職金から一括で天引きされます。ただし、一括で支払う住民税が退職時の給料・退職金の合計額よりも高くなる場合、「普通徴収」に切り替えて分割納付することもできます。

なお、企業に勤めている場合、企業が代わりに納付する「特別徴収」によって住民税が徴収されますが、一方の「普通徴収」は自分で納付する必要があるほか、1回あたりの税負担が大きいというデメリットがあります。

退職日が6/1~12/31

退職日が6/1~12/31の場合、原則として普通徴収に切り替えて自分で納付手続きする必要があります。普通徴収は、6月末、10月末、4月末、1月末の全4回で分割納付するか、もしくは一括納付することになりますが、一括納付の場合、希望すれば退職時の給料・退職金から天引きしてもらうこともできます。

ただし、自治体から送られてきた住民税の納付書を使って一括で支払うこともできるので、天引きしてもらったほうが支払いの手間が省けるかというとそうでもありません。

確定申告

離職後、その年の年末までに再就職しなかった場合、自分で確定申告する必要が生じます。確定申告の必要性が生じた場合は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などを利用しましょう。

参照: 国税省 確定申告書等作成コーナー

失業保険を受け取る手続き

退職後、次の働き先が決まっていなければ、雇用保険の基本手当である、失業保険を受け取ることができます。失業保険を受け取るためには、ハローワークに離職票を持参して申請する必要があります。

転職活動または起業の準備など

次の職場が決まっていない場合、転職活動をスタートするか、もしくは起業の意向がある場合などはその準備をはじめます。

あるいは、しばらくはアルバイトで生計を立てながら次のキャリアを考えていきたいという場合は、自己分析や情報収集を重ねながら、今後のキャリアについて譲れない条件などを明確にしていくといいでしょう。

退職時のルールやマナーを守れば、次のキャリアを気持ちよくスタートできる

退職前後にやらなくてはならないことは意外と多いため、「面倒だ」「最低限必要な手続きしかやりたくない」と感じる人は多いかもしれません。

しかし、退職時に求められるルールやマナーをしっかり守ることによって、前職場からは悪い印象を持たれにくくなるので、転職先で新しいキャリアを気持ちよくスタートすることができます。

前述の通り、退職願または退職届を提出してから、実際に退職する日までには少なくとも1か月以上の期間があるので、後々後悔したり焦ったりすることのないよう、1日1日を大切にして、着実に準備を進めていってくださいね。

執筆 CLIUS(クリアス )

クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。


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