看護師が育休・産休中に受け取れる手当とは?受給方法を解説

出産を控えている看護師、将来的に子どもがほしいと考えている看護師にとって気になるのが、育休・産休の実態です。

「人手不足な職場だと十分に休ませてもらえないのでは?」「育休中には休業給付金は受け取れるの?」など気になることは多いはず。そこで今回は、看護師の産休・育休周りについて詳しく掘り下げていきます。

目次
  1. 産休・育休とは?
    1. 産休は対象者全員が取得できる
    2. 育休は条件を満たせば取得できる
    3. 産後パパ育休とは?
    4. パパ・ママ育休プラスとは?
  2. 産休中・育休中に受け取れる手当とは?
    1. 出産育児一時金
    2. 出産手当金
    3. 育児休業給付金
    4. 出生後休業支援給付金(令和7年4月1日に新設)
    5. 育児時短就業給付金(令和7年4月1日に新設)
    6. 児童手当
  3. 看護師の産休・育休に関する注意点
    1. 社会保険料・厚生年金保険料の免除手続きを忘れずおこなう
    2. 産休に入るタイミングで退職すると給付金が受け取れなくなる
    3. 産休・育休期間は奨学金のお礼奉公にカウントされない
  4. 派遣看護師、パート看護師は産休・育休を取得できる? 手当はもらえる?
    1. 派遣看護師は産休・育休を取得できる?
    2. パート看護師は産休・育休を取得できる?
  5. 派遣看護師、パート看護師は産休・育休中に手当を受け取れる?
  6. 派遣看護師、パート看護師の育休取得に関する注意点
    1. 常勤看護師と比べて育休を取得しにくい
    2. 復職したくても、子どもの保育園への入園を優先してもらえない場合がある
  7. 看護師が産休に入る前の注意点は?
    1. 体調管理に関すること
    2. 職場に妊娠を報告するベストなタイミングや、報告する相手を考える
    3. 力仕事は他の人に任せる
    4. 夜勤はできるだけ避ける
    5. 感染リスクのある患者の対応に気を付ける
    6. 認知症や精神疾患などによる暴力のリスクがある患者とは距離をとる
    7. 抗がん剤や放射線など医療被曝のリスクがある業務は避ける
    8. 体調がすぐれないときは無理をしない
  8. マナー編
      1. 妊娠中でも問題なくできる業務は率先してこなす
      2. スムーズに業務を引き継げるよう、産休・育休の準備は早めに進める
      3. サポートしてくれる周囲のスタッフへの感謝の気持ちを大切にする
      4. 「母性健康管理指導事項連絡カード」を上手に活用する
  9. 産休前・産休中・育休中に提出が必要な書類まとめ
  10. 看護師が育休を終えて仕事に復帰するにあたっての注意点は?
    1. 短時間勤務制度の利用
    2. 育児時間の請求
    3. 夜勤免除の打診
    4. (場合によっては)退職の選択肢
  11. 看護師の産休・育休の実態は?
  12. まとめ

産休・育休とは?

まずは、産休・育休とはどんな制度なのかを解説していきます。

産休(産前・産後休業)育休(育児休業)
取得可能期間・出産予定日までの6週間(多胎妊娠の場合は14週間)※いずれも女性が請求した場合に限る・産後8週間※うち6週間は強制的な休業産休終了の翌日~子どもが1歳になる前日まで※最長2年まで延長可能
対象者女性労働者ならだれでも男女の労働者で諸条件を満たす者

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産休は対象者全員が取得できる

産休の正式名称は「産前・産後休業」といいます。出産する本人の申請によって休業を取得できる制度で、産前に関しては出産予定日までの6週間(ただし双子などの多胎妊娠の場合は14週間)、休業を申請できます。

一方、産後に関しては、出産翌日から8週間取得が可能で、母体保護の観点からこの期間は仕事をしてはならないとされていますが、本人の希望があり医師が認めた場合に限っては、出産翌日から6週間を過ぎれば働けるとされています。

参照: 厚生労働省「労働基準法における母性保護規定」

育休は条件を満たせば取得できる

育休の正式名称は「育児休業」です。原則、1歳未満の子どもを養育するための休業で、「育児・介護休業法」によって取得条件などが定められています。

ただし、保育園に入れないなどの事情がある場合は、最長で子どもが2歳になるまで延長して取得できます。

対象者は、次の2つの条件に当てはまる男女の労働者とされています。

  1. 子どもの1歳の誕生日以降も同じ職場に勤務する予定がある
  2. 契約社員の場合、子どもが1歳6か月になった後も契約期間が残っている

ただし、上記条件に当てはまったとしても、次の条件に当てはまる場合は育休を取得できません。

  1. 勤務日数が週1日以下である
  2. 日雇い雇用されている

参照: 厚生労働省「育児休業制度 特設サイト」

なお、育休は従来、原則1回しか取得できないとされていましたが、2022(令和4)年10月の法改正によって、男女ともそれぞれ2回まで取得可能となっています。

参照: 厚生労働省「育児休業制度 特設サイト「令和3(2021)年法改正のポイント」

産後パパ育休とは?

育休は、産休とは異なり、出産した本人に加えてそのパートナーも取得できる制度ですが、同じように男性パートナーが取得できる休業としては、2022(令和4)年10月1日から施行されている「産後パパ育休」も存在します。

産後パパ育休の正式名称は「出生時育児休業」で、産後8週間以内に4週間(28日)を限度として、2回にわけて取得することができます。なお、この休業は育児休業とは別に取得することができるため、以前に比べて男女で協力しながら子育てしやすい環境が整ってきているといえるでしょう。

参照: 厚生労働省「育児休業制度 特設サイト「令和3(2021)年法改正のポイント」

パパ・ママ育休プラスとは?

育休にはさらに、2022年6月30日から施行されている「パパ・ママ育休プラス」も存在します。この育休は、夫婦がともに取得した際に適用されるもので、子どもが1歳2か月になるまで延長して休業を取得することが可能です。また、一定の条件を満たせば分割取得も可能であるため、家庭の事情にあわせて夫婦で異なる期間に取得することもできます。

参照: 厚生労働省「両親で育児休業を取得しましょう!」

産休中・育休中に受け取れる手当とは?

続いては、産休中・育休中に受け取ることができる(可能性がある)手当について解説していきます。

産休中または育休中に受け取ることができる(可能性がある)主な手当は次の6つです。

  • 出産育児一時金
  • 出産手当金
  • 育児休業給付金
  • 出生後休業支援給付金(令和7年4月1日に新設)
  • 育児時短就業給付金(令和7年4月1日に新設)
  • 児童手当

なお、「育児休業給付金」「出生後休業支援給付金」「育児時短就業給付金」の3つをまとめて「育児休業“等”給付金」とも称します。

続いて、上記の手当についてそれぞれ詳しく解説していきます。

出産育児一時金

直接支払受取代理事後申請
利用方法【多くの医療機関が対応】
出産した病院に対して、保険組合が直接支払う
【直接支払制度が対応不可の小規模病院で対応可】
出産一時金の申請を受けた医療機関が手続きをして受け取る
【すべての医療機関で対応可】
出産した本人が一度全額自己負担で支払った後に出産費用を申請する
申請方法医療機関に申請※出産費用が50万円を下回る場合は、保険組合に申請することで差額を受け取れる保険組合に申請書と必要書類を送付
申請期限出産予定日の2か月前まで出産翌日~2年以内
支給時期出産費用が50万円以上の場合自身の口座への振り込みはなしで直接医療機関に支払われる出産費用が50万円未満の場合申請から約2か月後、自身の口座に差額が振り込まれる申請から2か月程度
メリット利用者が一時的に負担(立替)する必要がない一時的に費用はかかるが、クレジットカード払いにすればポイントが付く場合がある

 

出産育児一時金とは、被保険者およびその被扶養者が出産されたときに支給される法定給付額のことです。2023(令和5)年3月までの支給額は42万円でしたが、2023(令和5)年4月より支給額が50万円に引き上げられました。

ただし、妊娠週数が22週に達していない場合、もしくは産科医療補償制度に未加入の医療機関などで出産した場合、支給額は48.8万円です。

参照: 厚生労働省「出産育児一時金の支給額・支払方法について」

出産手当金

出産手当金とは、出産のために休業して給料の支払いを受けていない場合に、健康保険組合から支給される手当のことです。

支給要件、支給対象期間、支給される額などは次の通りです。

【支給要件】

  1. 健康保険の被保険者である
  2. 出産のために休業している
  3. 妊娠4か月(85日)以降の出産である

【支給対象期】

  1. 産前休業:出産予定日前の6週間(42日間) ※ただし、多胎妊娠の場合は14週間(98日間)
  2. 産後休業:出産の翌日以後8週間(56日間)

※出産当日は産前休業に含まれます。出産が予定よりも早くなった場合は、産前休業の期間が短くなるので支給金額も少なくなり、反対に予定日を過ぎた場合はそのぶん対象期間が増えて支給金額も増えます

【支給される額】

出産手当金は、「標準報酬月額」をもとに計算されます。標準報酬月額とは、1か月の総支給額(残業・夜勤・通勤手当なども含まれる)を健康保険・厚生年金が定めた等級に当てはめて決定するものです。

出産手当金の1日あたりの支給額の計算式と支給例は次の通りです。

【計算式】

支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額の平均÷30日×2/3

【標準報酬月額が30万円で予定日ちょうどに出産した場合】

(例)1日あたりで支給される金額:30万÷30×2/3=6,670円

支給対象期間:産前42日+産後56日=98日間

(標準月収30万円の場合)支給される金額:6,670円×98日=653,660円

【申請方法】

出産手当金支給申請書を保険組合に提出(職場が代理で提出してくれるケースが多い)

【申請期限】

休業していた日ごとに、休業翌日から2年以内

※産休開始から2年が経つと1日ずつ権利が消滅していくので注意が必要です

【支給される時期】

産休終了後2週間~2か月を目安に支給

※支給を受けるためには、休業中の給与の支払いがないことを照明しなければならないことから、(後述する)分割申請しない場合、産休期間が終了しないと申請できません

※産前分と産後分を分割して申請もできます。出産後すぐに産前分を申請すれば2週間程度で支給されるので、経済的な不安があるのならこの方法がおすすめです。全期間分をまとめて申請する場合、産休開始から数えて3~4か月無給の状態が続く場合もあるということになります

参照: 全国健康保険協会「出産手当金について」

育児休業給付金

育児休業給付金は、育休を取得する場合に、申請すれば受け取ることができる給付金です。

支給要件、支給対象期間、支給される額などは次の通りです。

【支給要件】

・育休終了後に復帰して働き続ける意思があること

・育休開始日前日から2年間の被保険者期間が12か月以上である(就労している日が11日以上ある場合を1月とカウント)

【支給対象期間】

産休(産後8週間)終了の翌日~子どもが1歳になる前日まで。育休を延長する場合は、最長で子どもが2歳になるまで

【支給される額】

育児休業給付金の金額は「休業開始時賃金日額」をもとに計算されます。

休業開始時賃金日額とは、 育休を取る直近6か月間の給料を180日で割った金額を指します。ただし、賞与は含まれません。1か月あたりの育児休業給付金の計算式と支給例は次の通りです。

育休開始~6か月間

・計算式・・・休業開始時賃金日額×30×67%

・休業開始時賃金が日額1万円の場合の支給例・・・1万円×30×67%=20万1,000円

育休開始6か月以降

計算式・・・休業開始時賃金日額×30×50%

休業開始時賃金が日額1万円の場合・・・1万円×30×50%=15万円

【申請方法】

育児休業給付金申請書を事業所のある公共職業安定所(ハローワーク)に2か月ごとに提出

(職場が代行してくれるケースも多い)

【申請期限】

育休開始日から4か月後の月末まで

【支給される時期】

育休開始日から約2か月後を目安に初回分が支給。その後は2か月ごと

※育休給付金は通常2か月分をまとめて振込になりますが、1か月単位での申請・受給も可能です。希望する場合は職場に相談します

出生後休業支援給付金(令和7年4月1日に新設)

「出生後休業支援給付金」は、令和7年4月1日に新設された給付金です。支給要件などは次の通りです。

【支給要件】

  1. 被保険者が対象期間に同一の子どもについて、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児給付金が支給される育児休業を通算して14日以上取得していること
  2. 被保険者の配偶者が「子どもの出生日または出産予定日のうち早い日」から「子どもの出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休暇を取得したこと。あるいは、子どもの出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合」に該当していること

【支給額】

休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×13%

【配偶者の育児休業を要件としない場合】

子どもの出生日翌日において次の①~⑦のいずれかに該当する場合、配偶者の育児休業を必要としません。被保険者が父親の場合は、子どもが養子でない限り、必ず①~⑦のいずれかの自由に該当することになるため、配偶者(母親)の育児休業取得の有無は要件となりません。

①配偶者がいない

※配偶者が行方不明の場合も含みます。ただし、配偶者が勤務先において3か月以上無断欠勤を続けている場合または災害により行方不明となっている場合に限ります

②配偶者が被保険者の子どもと法律上の親子関係にない

③被保険者が配偶者からの暴力を受けて別居中である

④配偶者が働いていない

⑤配偶者が自営業者やフリーランスなど、雇用される労働者でない

⑥配偶者が産後休業中である

⑦①~⑥以外の理由で配偶者が育児休業できない

【支給申請手続】

原則として、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請と併せて、同一の支給申請書を用いて申請します

※出生時育児休業給付金または育児休業給付金の申請後に支給申請することも可能ですが、その場合は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給された後に申請することになります

参照: 厚生労働省 2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します

育児時短就業給付金(令和7年4月1日に新設)

育児時短就業給付金とは、仕事と育児の両立支援の観点から、育児中の柔軟な働き方として時短勤務制度を選択しやすくすることを目的に、2歳に満たない子どもを養育するために時短勤務した場合に、育児時短就業前と比較して賃金が低くなるなどの要件を満たすときに受け取ることができる給付金です。

支給要件などは次の通りです。

【支給要件・受給資格】

給付対象者は次の1,2の両方を満たしている人で、3~6の要件をすべて満たしている月にのみ給付を受け取ることができます。

1. 2歳未満の子どもを養育するために、育児時短就業する雇用保険の被保険者であること

2. 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続いて育児時短就業を開始した、または育児時短就業開始日前2年間に、被保険者期間が12か月あること

3. 初日から末日まで続けて、雇用保険の被保険者である月

4. 1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月

5. 初日から末日まで続けて、育児休業給付または介護休業給付を受給していない月

6. 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月

【支給額・支給率】

原則として、育児時短就業中に支払われた賃金額の10%相当額が支給されます。ただし、育児時短就業開始時の賃金水準を超えないよう調整されます。また、各月に支払われた賃金額と支給額の合計が支給限度額を超える場合は、超えた部分が減額されます。なお、次の①~③の場合、支給されません。

①支給対象月に支払われた賃金額が育児時短就業前の賃金水準と比べて低下していないとき

②支給対象月に支払われた賃金額が支給限度額以上であるとき

③支給額が最低限度額以下であるとき

【支給対象期間】

原則として、育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月について給付されます

【経過措置】※2025年4月以前から時短就業している場合

2025年4月1日以前から2歳未満の子どもを養育するために育児時短就業に相当する時短就業をおこなっている場合、2025年4月1日から育児時短就業を開始したものとみなして、支給要件などを確認して、要件を満たす場合は、2025年4月1日以降の各月が給付対象月とされて給付されます

参照: 厚生労働省 2025年4月から「育児時短就業給付金」を創設します

児童手当

児童手当は、子育て支援の適切な実施を図るため、児童(0歳から18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にある子どもを指します)を養育しているすべての家庭に給付される手当です。子どもが3歳未満の家庭への給付額は月額15,000円、3歳以上の家庭への給付額は月額10,000円とされています。

ただし、第3子以降は年齢問わず一人あたり月額30,000円の支給となります。

児童手当の申請先は現住所がある市区町村で、役所で申請の手続きを済ませた翌日から支給対象となります。

参照: こども家庭庁「児童手当」

看護師の産休・育休に関する注意点

続いては、看護師が産休・育休を取得するにあたっての注意点を解説していきます、看護師が産休・育休を取得するにあたっての主な注意点は以下の3点です。

  • 社会保険料・厚生年金保険料の免除手続きを忘れずおこなう
  • 産休に入るタイミングで退職すると給付金が受け取れなくなる
  • 産休・育休期間は奨学金のお礼奉公にカウントされない

それぞれ詳しくみていきましょう。

社会保険料・厚生年金保険料の免除手続きを忘れずおこなう

産休・育休中のお金にまつわる話でもうひとつ覚えておきたいのが、休業に入った月から休業終了の前月までの期間は、社会保険料・厚生年金保険料の支払いが免除になるということです。

しかも、産休・育休によって免除される期間が発生した場合、将来の年金の受給額が減額されることはありません。

また、給与が支給されていないため所得税もかかりませんが、住民税に関しては前年度の所得にかかるものであるため、産休・育休中にも支払い義務が生じています。

なお、休業中の住民税の支払い方法は、「個人で納付する」「職場に立て替えてもらって、復帰後に給与から天引きしてもらう」のいずれかとなります。勤め先でどちらの方法が採用されているかわからない場合は、直接確認してみましょう。

産休に入るタイミングで退職すると給付金が受け取れなくなる

産休前に退職すると、育児休業給付金を受け取ることができなくなるので注意が必要です。なぜかというと、育児休業給付金の支給条件が「雇用保険に加入していること」であるためです。

もちろん、受け取れなくても金銭的に問題がない場合は退職しても構いませんが、少なくとも産休・育休が終わるまでは仕事を辞めないほうが金銭的には有利であることは覚えておきましょう。

産休・育休期間は奨学金のお礼奉公にカウントされない

産休・育休取得中の働いていない期間は、奨学金のお礼奉公にカウントされません。そのため、復職後に残りの期間分働く必要があります。

産休・育休後に復職することなく退職した場合、残りの奨学金の一括返済を求められることもあります。

派遣看護師、パート看護師は産休・育休を取得できる? 手当はもらえる?

続いては、派遣看護師やパート看護師は、常勤看護師と同じように、産休・育休を取得して手当を受け取ることができるのかを解説していきます。

派遣看護師は産休・育休を取得できる?

まずは派遣看護師の場合について解説していきます。

まず、産休に関しては母体保護を目的とした休業であり、原則として誰でも取得できることになっているため、契約条件に関係なく取得することができます。

法律上、認められた権利であるため、仮に就業規則に産休に関する規定がない場合でも取得することが可能です。

なお、前述の通り、産前に関しては必ず取得しなくてはならないというわけではないので、出産直前まで働くことも可能ですが、産後の6週間は働くことが禁止されています。

育休に関しては、原則として次の2つの条件を満たしている場合、取得することが可能です。

  1. 過去1年以上、同一の事業者に雇用されている
  2. 育休終了後も引き続き、派遣更新の意思がある

ただし、派遣看護師の育休取得に関しての考え方は医療機関によって異なるため、2つの条件を満たしていても育休取得が認められない場合もあります。

また、人手不足であることなどが原因で、認められたとしても快く受け入れてもらえるとは限らないので、「それでも育休を取得して、今後も今の職場で働き続けたいかどうか」はしっかり考えることが大切です。

パート看護師は産休・育休を取得できる?

続いてはパート看護師の場合について解説していきます。

産休に関しては、派遣看護師と同じ理由で取得が可能です。

育休に関しては、原則として次の3つの条件を満たしている場合、取得することが可能です。

  1. 過去1年以上、同一の事業者に雇用されている
  2. 子どもが1歳を迎えた後も、引き続き雇用されることが見込まれている
  3. 所定労働日数が週2日以下でない

なお、パート看護師の育休取得に関する考え方も、派遣看護師の育休取得に関する考え方同様、医療機関によって異なります。

自院が快く受け入れてくれる可能性が高いかどうかは、過去の事例などからある程度推測できる場合もあるので、これまでに育休を取得した先輩などがいる場合は、それとなく質問してみてもいいかもしれません。

派遣看護師、パート看護師は産休・育休中に手当を受け取れる?

続いては手当についてです。

まず、先に解説した手当のうち出産育児一時金については、被保険者およびその被扶養者が出産されたときに支給される法定給付額であるため、原則として出産したすべての女性が受け取れます。児童手当についても、必要な手続きを済ませたら受け取れます。

残る出産手当金、育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金に関しても、育児休業開始前に必要な就業時間数などいくつかの要件を満たしていれば受け取れますが、基本的に育児休業前の給料をベースに給付額が算出されるため、常勤看護師と比べて少ない金額しか受け取ることができない可能性が高いです。

派遣看護師、パート看護師の育休取得に関する注意点

続いては、派遣看護師、パート看護師の育休取得に関する注意点をみていきます。

派遣看護師、パート看護師の育休取得に関する主な注意点は次の通りです。

  • 常勤看護師と比べて育休を取得しにくい
  • 復職したくても、子どもの保育園への入園を優先してもらえない場合がある

それぞれ詳しくみていきます。

常勤看護師と比べて育休を取得しにくい

まず考えられるのが、常勤看護師と比べて育休を取得しにくいということです。なぜかというと、前述の通り、派遣看護師やパート看護師の育休取得に関する考えが医療機関によって異なるためですが、その理由として、医療現場は基本的に人手不足であることが挙げられます。

人手が足りていない状態であれば、安定して継続的に働ける人が優遇されて然るべきですし、常勤看護師と比べて復職の意思が薄いと思われることもあるでしょう。

また、長期休みを頻繁に取得している場合、契約更新を見送られることもあるので、「育休を取得したい」「育休取得後は復職してしっかり稼ぎたい」という思いがあるなら、実際に育休を取得するまでの間の勤務態度で、勤務先への貢献度を示すことが大切だと考えられます。

復職したくても、子どもの保育園への入園を優先してもらえない場合がある

待機児童が発生している自治体においては、認可保育園への入園は、親がパートである場合よりも常勤のほうが優先されることがほとんどです。

そのため、思い通りのスケジュールで復職できない可能性があることは否めません。

看護師が産休に入る前の注意点は?

続いては、看護師が産休に入る前の注意点を解説していきます。看護師が産休に入る前に注意すべきことは次の通りです。

体調管理に関すること

  • 職場に妊娠を報告するベストなタイミングを考える
  • 力仕事は他の人に任せる
  • 夜勤はできるだけ避ける
  • 感染リスクのある患者の対応に気を付ける
  • 認知症や精神疾患などによる暴力のリスクがある患者とは距離をとる
  • 抗がん剤や放射線など医療被曝のリスクがある業務は避ける
  • 体調がすぐれないときは無理をしない

職場に妊娠を報告するベストなタイミングや、報告する相手を考える

まず大切なのが、職場に妊娠を報告するタイミングを計ること、報告する相手を考えることです。

「報告が遅くなると早めに産休を取らせてもらえないかもしれない」「妊娠していることを報告していないと力仕事や夜勤を断れない」と考えると、できるだけ早い段階で報告することが得策だと思えます。

一方、流産の可能性がゼロではないことを考えると、「喜ばしい報告をした後に悲しい報告をしたくない……」と躊躇してしまう女性は多いでしょう。

また、妊娠していることを周りに知られることそのものがストレスとなり、おなかの子によくない影響を与えてしまうことも考えられます。

しかし前述の通り、妊娠していることを知っている人が周りに誰もいない状況だと、力仕事や夜勤を断ることが難しいのも事実です。そのため、誰に伝えておけばうまくフォローしてもらえるのかを、自分なりに考えておくことはとても大切です。

ただし、その際に直属の上司以外を頼ってしまうと、上司からよくない印象を持たれる可能性が考えられるため、先に直属の上司以外に相談したとしても、表向きは、一番に上司に報告したように振る舞うのが賢明でしょう。

報告のタイミングが遅れた(または敢えて遅く報告した)場合には、「妊娠が継続できるか不安だったため、心身が安定するタイミングを待ちました」と正直に伝えると悪い印象は持たれにくいでしょう。

力仕事は他の人に任せる

患者の身体を支えたり、重いものを運んだりといった業務は、なるべく他の人に任せましょう。普段は腰痛とは無縁の女性でも、妊娠中はホルモンの関係で腰痛を発症しやすくなるため、腰を痛めてしまう可能性が否めません。

また、妊娠中期以降は余計な腹圧がかかるとおなかが張りやすくなることも、力仕事を避けたほうがいい理由のひとつです。

夜勤はできるだけ避ける

アメリカ政府が運営するウェブサイト「National Library of Medicine」では、妊娠中、夜勤をこなした妊婦が、夜勤をこなさなかった妊婦より流産の確率が高くなったというデータが公表されています。

夜勤は日勤と比べてスタッフ数が少なく、自分一人で対応しなければならないことも多いため、心身ともに疲れが溜まりやすいことが大きな原因と考えられます。

参照: National Library of Medicine “Night work and miscarriage : a Danish nationwide register-based cohort study

感染リスクのある患者の対応に気を付ける

妊娠中は免疫力が下がるため、菌やウイルスに感染しやすいうえ、服用できない薬剤が多くなることから、妊娠していないときと同じように治療を受けられない場合があります。

そしてなによりも心配なのが、母体の感染によって、胎児に大きな影響が及んでしまうことです。

こうしたリスクを避けるためにも、感染対策を強化するのはもちろん、場合によっては、上司に配置転換を依頼することを検討してもいいかもしれません。

認知症や精神疾患などによる暴力のリスクがある患者とは距離をとる

妊娠中は、肉体的暴力はもちろん、言葉の暴力を浴びせてくる可能性がある患者ともできるだけ距離をとるのが賢明です。

また、ペイシェントハラスメントなどに関しても、程度がひどければ、それが原因で大きなショックやストレスが生じることもあり得るので、不安を感じたときには、まずは上司や先輩に相談しましょう。

抗がん剤や放射線など医療被曝のリスクがある業務は避ける

医療被曝は、妊娠中の身体に大きな影響を及ぼす可能性があることがわかっています。流産や胎児の障害という結果を招いてしまっては、後悔してもしきれません。

そうした事態を防ぐためにも、医療被曝防止のためのガイドラインやマニュアルを遵守して業務を遂行しましょう。

体調がすぐれないときは無理をしない

日本医労連が公表している「2017年 看護職員の労働実態調査結果報告」によると、2017年における看護職員の妊娠異常のうち、「切迫流産・早産」の割合はなんと35.0%にものぼることがわかっています。これは、2015年における他職種も含めた女性労働者の「切迫流産・早産」率の27.5%を大幅に上回る数値です。

このことからもわかるように、妊娠中の看護師は、母体と胎児の健康や安全をしっかりと考えて行動・判断することが大切です。

「忙しくて人手が足りていないのだからしょうがない」「休ませてもらえないからどうしようもできない」と言いたくなるケースもあるかもしれませんが、どんな状況であれ、母体と胎児を守れるのは最終的には自分だけです。

そのため、万が一、「このまま働き続けていては母体も胎児も守れない」などと考えられる場合は、産休前に休職することを視野に入れるのも一手です。

なお、切迫早産や重たいつわりなどで自宅での安静や入院を余儀なくされた場合も、産休前に休職することになります。そうなると収入面での不安が大きくなるかもしれませんが、休職中は収入の2/3を目安に傷病手当が支給されるので、まずはしっかりと身体を休めることを優先しましょう。

参照: 日本医労連「2017年 看護職員の労働実態調査結果報告」

マナー編

続いてはマナー編です。産休・育休をとることで周りのスタッフにそのぶん負担がかかる可能性を考えて、周囲から煙たがられないよう気を配ることもとても大切です。具体的には、以下の4点を心がけるといいでしょう。

  • 妊娠中でも問題なくできる業務は率先してこなす
  • スムーズに業務を引き継げるよう、産休・育休の準備は早めに進める
  • サポートしてくれる周囲のスタッフへの感謝の気持ちを大切にする
  • 「母性健康管理指導事項連絡カード」を上手に活用する

それぞれ詳しく説明していきます。

妊娠中でも問題なくできる業務は率先してこなす

力仕事や夜勤を控えさせてもらう代わりに、妊娠中でも問題なくできる業務に関しては積極的に引き受けていきましょう。妊娠中とはいえ、甘えてばかりでできることもやらないとなると、周囲のスタッフも快くサポートしようという気にはなれません。

もちろん、無理は禁物ですが、座ってできる作業など、問題なくこなせる業務を見つけて、積極的にこなしていくよう心がけましょう。

スムーズに業務を引き継げるよう、産休・育休の準備は早めに進める

産休に入る前に自分の担当業務をスムーズに後任へと引き継げるよう、早めに準備を進めておくことはとても大切です。

ぎりぎりのタイミングでの引き継ぎだと、引き継いだ後任がわからないことがあっても質問できないなど、困ったことになってしまう可能性があります。

また、ロッカーや机の引き出しの荷物整理も早めに進めておくに越したことはありません。

妊娠中はどんなトラブルが起きるかわかりませんし、出産直前まで勤務するつもりが、出産予定日よりはるかに早く産気づく可能性もゼロではありません。

サポートしてくれる周囲のスタッフへの感謝の気持ちを大切にする

サポートしてくれる周囲のスタッフへの感謝の気持ちを忘れず、些細なことでも「ありがとうございます」とお礼を伝えるのはもちろん、産休直前には、菓子折りなどのお礼の品を用意することも大切です。

勤務先がシフト制で、産休前最終日に出勤しないスタッフもいる場合は、日持ちする個包装のお菓子を選ぶのがおすすめです。

「母性健康管理指導事項連絡カード」を上手に活用する

「母性健康管理指導事項連絡カード」とは、妊娠中や出産後の女性労働者が、主治医から指導を受けた内容を事業主に的確に伝えるためのカードです。

このカードを提出された事業主は、カードに記載されている事項に従って、時差通勤や休憩時間の延長などの措置を講じなければならないため、自分では言い出しにくいことを代弁してくれるお守りのような存在ともいえるでしょう。場合によっては、主治医に相談して、自分から職場に伝えにくいことを記載してもらうといいでしょう。

参照: 厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について」

産休前・産休中・育休中に提出が必要な書類まとめ

続いては、産休前・産休中・育休中に提出が必要な書類とその提出先を解説します。一部、前半に既出の情報もありますが、こちらはまとめとしてご活用ください。

まず、産休前に提出が必要な書類とその提出先は次の通りです。

書類記入者提出先
産休届本人職場
出産一時金の直接支払制度利用に関する書類本人出産予定の病院
健康保険・厚生年金産前産後休業取得者申請書本人または職場健康保険組合・日本年金機構
住民税の徴収方法に関する書類本人職場

 

続いては、産休中に提出が必要な書類とその提出先です。

書類記入者提出先
出産育児一時金申請書本人・職場健康保険組合
出産手当金の申請本人・職場・参院の医師(助産師)健康保険組合
健康保険・厚生年金保険産前産後休業取得者申請書/変更(終了)届本人または職場健康保険組合・日本年金機構
育児休業申請書本人職場
被扶養者異動届本人健康保険組合

 

続いては、育休中に提出が必要な書類とその提出先です。

書類記入者提出先
健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申請書/変更(終了)届本人または職場健康保険組合・日本年金機構
育児休業給付資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書本人・職場事業所の所在地を管轄する公共職業安定書

 

書類提出時は、通帳や母子手帳のコピーも併せて求められる場合があるので、提出の際には忘れずに持参するようにしましょう。

看護師が育休を終えて仕事に復帰するにあたっての注意点は?

育休を終えた看護師がスムーズに復帰するためには、以下の4点について考えるといいでしょう。

  • 短時間勤務制度の利用
  • 育児時間の請求
  • 夜勤免除の打診
  • (場合によっては)退職の選択肢

それぞれ詳しくみていきましょう。

短時間勤務制度の利用

短時間勤務制度(時短制度)は、3歳未満の子供を養育している場合に適用となる制度です。この制度を利用すると1日の最長労働時間が6時間になるので、始業時間を遅くしたり就業時間を早くしたりして、家庭の時間を確保します。

育児時間の請求

育児時間とは、育児のための時間として、休憩時間とは別に事業主に請求できるものです。1日30分以上を2回請求することが可能です。なお、2回にわけることなく、1時間まとめて取得することも可能です。

また、短時間勤務制度との併用も可能です。

夜勤免除の打診

夜勤の免除または回数の削減は、必ずしも認められるとは限りません。しかし、子どもが小さいうちは夜間の急な発熱などもあり得ますし、なるべく夜勤したくないと考えて当然です。そのため、夜勤の免除が可能かどうか、どうしてもしなければならないなら、月に何回までに抑えることができるのかなど、院長または上司とよく話し合うことが大切です。

(場合によっては)退職の選択肢

「保育園に入れない」「自身の産後の体調が安定しない」「復帰後の勤務条件を受け入れられない」などの理由から、退職という選択肢を考えなければならない場合もあるでしょう。

退職すべきかどうかを考える際には、「仮に退職した場合、次の就職先はすぐに見つかりそうか?」「ここから1年間働かなかったとして、家計的に問題はないか?」など、長期的な視野を持つことが不可欠です。

看護師の産休・育休の実態は?

続いては、看護師の産休・育休の実態をみていきましょう。

看護師の産休・育休の取得条件などはここまで解説してきた通りですが、先に述べた通り、育休に対する考え方などは勤務先によって異なるため、実態としては、「理想とする日数を休むことができない」というケースも多いようです。

ある調査では、半数程度の看護師が育休を取得できていないとの結果が報告されていますが、その最たる理由が人手不足です。

「できるだけ早く復帰してほしい」と頼まれるケースもあれば、勤め先のみんなのことを思って自分から早めの復帰を申し出るケースもあるかもしれませんが、いずれにしても、子どもが小さいうちに一緒に過ごせないことに対しては申し訳ない気持ちになってしまうかもしれません。

とはいえ、早めに復帰すればそのぶん稼ぎは多くなるので、「子どもの養育費をしっかり稼ぐことができる!」とポジティブに考えるのがいいですね。

一方、男性看護師の育休取得率は、年々上がっているというデータも存在します。先に紹介した通り、「産後パパ育休」や「パパ・ママ育休プラス」などの制度が創設されたことも大きく関係していると考えられ、男性看護師にとっては、育休を取得しやすい環境が整ってきているといえるでしょう。

まとめ

看護師の産休・育休の取得日数や育休明けの働き方は、勤務先および個人の考え方によって大きく異なるので、周囲のやり方にそっくりそのまま合わせる必要はなく、また、周囲と同じようには休めない場合もあります。

そのため、受け取ることができる給付金についてはしっかり条件を確認して受け取りながらも、体調や家庭の事情に合わせて柔軟に動くことを意識して、母体と子どもの健康を守ってくださいね。