
看護師の退職金の有無や金額は職場によってさまざま。「自分はいくらもらえるのだろう?」とともに、「相場と比べて安いの? 低いの?」が気になっている人も多いのでは? そこで今回は、看護師の退職金の相場や、計算方法および退職金に関する注意点などを解説していきます。
退職金とは?
退職金の相場をみていく前に、まずは退職金そのものについての理解を深めていきましょう。
退職金とは、職場を退職する従業員に対して、その功労に報いる形で支給される報酬のことです。ただし、詳しくは後述しますが、退職金の前払い制度などによって、退職することがまだ決まっていないうちに退職金が支払われる場合もあります。
退職金の支払いは、法律で義務化されているわけではなく、各企業が自社の福利厚生として設定しているものであり、なかには、退職金を用意していない企業もあります。つまりその場合、退職に際して支払われるお金はないということになります。
では、退職金制度を用意していない企業はどの程度存在するかというと、厚生労働省が公表している「令和5年就労条件総合調査の概況」における、「退職金給付(一時金・年金)制度の有無、退職給付金制度の形態別企業割合」が参考になります。調査の結果によると、各業界において退職金給付制度が設定されている企業の割合は次の通りです。
産業 | 退職金給付(一時金・年金)制度がある企業 |
医療・福祉 | 75.5% |
鉱業・採石業・砂利採取業 | 97.6% |
建設業 | 82.9% |
製造業 | 85.6% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 96.4% |
情報通信業 | 74.6% |
運輸業・郵便業 | 69.9% |
卸売業・小売業 | 77.4% |
金融業・保険業 | 92.8% |
不動産業・物品賃貸業 | 74.7% |
学術研究・専門・技術サービス業 | 87.2% |
宿泊業・飲食サービス業 | 42.2% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 68.5% |
教育・学習支援業 | 87.3% |
複合サービス事業 | 97.9% |
サービス業(他に分類されないもの) | 54.4% |
上表からわかる通り、退職金給付制度の用意がない企業が半分以上にのぼる業界もあるので、それと比べると医療・福祉業界の退職金支給率は高いとはいえ、75.5%ということは、約4人に1人は退職金を受け取れない医療機関または福祉施設で働いているということになります。しかし逆にいうと、現在、退職金制度が用意されていない医療機関で働いていたとしても、退職金制度のある医療機関に転職しようと思えば、比較的容易に転職先が見つかりやすいということになります。
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看護師の退職金の相場は?
続いて、看護師の退職金の相場を確認していきますが、「退職金の相場」と一言にいっても、看護師に限ったことではありませんが、昨今は終身雇用が崩壊しているといわれている通り、“定年を迎えるまで勤め上げて退職金をもらう”という時代ではないため、「相場」として一括りにすることは困難です。
では、より現実に近い相場を確認するためにはどうすればいいかというと、勤続年数別の相場が参考になります。そこで、ここでは、勤続3年目、勤続5年目、勤続10年目、勤続20年目、定年まで勤めた場合の看護師の退職金を確認していきます。
勤続3年目の看護師の退職金の相場は?
勤続3年目の看護師の退職金の相場は、多くて30万円程度と考えられます。勤続3年目の看護師にとって30万円といえば、1か月分の給与程度の金額となります。
働き始めて3年目は、新卒採用であればようやく一人前になる時期、中途採用であればようやく職場に慣れてくるころであるため、職場への貢献度が低いと判断されるため、退職金も20万円強~30万円弱しか出ない場合がほとんどなのです。
勤続5年目の看護師の退職金の相場は?
勤続5年目の看護師の退職金の相場は、50万円前後と考えられます。勤続5年目ともなると、一通りの業務を問題なく遂行できるようになっているだけでなく、後輩の指導など責任ある仕事を任されることも多いため、勤続3年目と比べると支給額が大きくなります。
なお、勤続5年を超えると、退職金の相場は50~100万円程度にまで上がります。家族構成や賃貸/持ち家のいずれであるかなどにもよりますが、100万円あれば3か月前後の生活費には困らない場合が多いため、次の転職先やキャリアプランを、時間をかけて考えることができます。
勤続10年目の看護師の退職金の相場は?
勤続10年目の看護師の退職金の相場は、250~300万円程度とされています。新卒でン入社している場合、勤続10年目は30代前半である場合が多く、出産や育児などを理由に退職するケースも増えます。そのため、退職金を出産・育児資金に充てる人もいれば、ステップアップのための転職を希望していて、そのための勉強などの自己研鑽に退職金を使う人もいるでしょう。
勤続20年目の看護師の退職金の相場は?
勤続20年目の看護師の退職金の相場は、450~600万円程度とされています。新卒で入社している場合、勤続20年目は40代で、「ベテラン看護師」といわれる領域に達しています。中途入社であれば、勤続20年目にして定年間近ということも。そのため、退職金を老後の生活費の足しにしたいと考える人もいれば、子どもの大学進学の費用に充てる人もいるでしょう。
それなりのお金がないと心もとなくなってくる年代ですが、勤め先によっては、勤続20年でも300万円前後しか支給されない場合があるので、将来に不安がある人は、早い段階で、十分な額の退職金を支給してくれる医療機関への転職を叶えておくのが得策かもしれません。
定年まで勤めた場合の看護師の退職金の相場は?
定年まで勤めた場合の看護師の退職金の相場は、1,000万円弱~2,000万円程度とされています。ただし、勤続3年目以降に自己都合退職した場合同様、あくまでも相場であって、医療機関によってはこの金額より大幅に低い金額である場合があるため、自院の退職金制度や支給される金額の目安については、少しでも早い段階で確認しておくことが大切です。
職場のタイプの違いによって看護師の退職金は異なる?
続いては、職場のタイプごとに看護師の退職金をみていきましょう。
国立病院
国立病院に勤務する看護師が定年退職した場合、1,800万円程度の退職金が支給されます。役職についていた場合、これよりさらに高くなることもありますが、その理由は、国立病院に勤める看護師が、2015年3月まで準公務員だったことに由来しています。2015年4月には、国立病院機構の独立行政法人化が施行され、準公務員ではなくなりましたが、退職金の金額はかつてと同じ水準が保たれています。
公立病院
公立病院に勤務する看護師が定年退職した場合、都道府県立は1,400万円、政令指定都市は1,900万円、市町村立は1,800万円程度の退職金が支給されます。県立病院および私立病院に勤務する看護師は地方公務員となるため、退職金は地方公務員法にもとづいて支給されます。そのため、退職金の金額が比較的高く設定されています。
私立病院
私立病院に勤務する看護師が定年退職した場合、1,000~2,000万円程度の退職金が支給されます。私立病院とひとことで言っても、施設規模や運営状況、運営方針などに差があるため、2,000万円前後支給されることもあれば、たとえば赤字経営である場合などは1,000万円を下回ることもあります。こうした理由から、私立病院への転職を考えている場合、事前に経営状況についても調べておきたいところです。
国家公務員
国立ハンセン病療養所、医療刑務所、自衛隊病院、宮内庁病院、厚生労働省(看護系技官)に勤めている看護師は国家公務員ということになります。
国家公務員の退職金は「国家公務員法」によって定められており、次の計算方法で算出されます。
(退職日の俸給月給×退職理由別・勤続年数別支給率)+調整額=退職手当額
退職理由別・勤続年数別支給率は内閣官房の「国家公務員退職手当支給率早見表」で確認できます。
なお、内閣人事局によって公表されている「退職手当の支給状況」によると、令和5年度中に退職した常勤職員の平均支給額は、定年退職の場合、約2,122万円とされています。
介護関連施設
介護関連施設では、かつては退職金制度が整っていない場合が多かったですが、昨今は大手企業の参入が増えていることから、退職金制度が導入されている施設も増加しています。金額は事業所の規模や勤続年数などによって異なりますが、定年まで勤めると1,000万円を超える退職金が支給される場合もあります。ただし、親会社が大手企業ではない、従来の介護関連施設に関しては、以前と変わらず退職金制度が整っていないケースも多いため、介護関連施設全体の相場としては高くないといえるでしょう。私立病院以上に“ピンキリ”なので、転職を考えている場合は、退職金についても事前にしっかりチェックしたいところです。
地方公務員
都道府県立または市町村立の病院・クリニック、公立の看護学校、公立の保育園や保育所・幼稚園、各自治体の保健所や保険センター、地域包括センター、障害者福祉センターに勤めている看護師は地方公務員であるため、退職金は「地方公務員法」によって、国家公務員の制度などに準じた金額が支払われることになります。
計算方法は次の通りです。
基本額+調整額=退職手当額
基本額=退職日給料月額×退職理由別・勤続年数別支給率
調整額=調整月額のうちその額が多いものから60月分の額を合計した数
地方公務員の退職理由別・勤続年数別支給率は総務省の「地方公務員の退職手当制度について」で確認できます。
なお、総務省が公表している「令和4年地方公務員給与実態調査」によると、一般職における退職金の平均額は約1,210万円、定年退職の場合の退職金は約2,150万円とされています。
個人病院、クリニック、訪問看護ステーション
個人経営のクリニックや小規模な診療所では、大手病院と比較して退職金制度が整備されていないケースが多く見られます。しかし、近年では看護師の採用競争の激化から、独自に退職金制度を設けたり、中小企業退職金共済制度(中退共)に加入したりするクリニックも増えています。クリニック勤務の看護師は、就業規則や雇用契約書で退職金に関する規定をしっかり確認することが重要です。運営者側も、人材確保の観点から制度導入を検討する価値があるでしょう。
看護師の退職金の計算方法は?
続いては、看護師の退職金の計算方法を確認していきましょう。看護師の退職金の計算方法は病院によって異なり、主に次の4パターンの計算方法が採用されています。
それぞれ詳しく解説していきます。
基本給連動型
基本給連動型は、名前の通り、基本給に連動して金額を決める方法です。計算方法は次の通りです。
退職時の基本給×勤続年数=退職金
たとえば、退職時の基本給が22万円で勤続年数が9年だった場合、22万円×9年=198万円になります。ただし、職場によっては、単純に基本給を勤続年数にかけるのではなく、支給月数(支給率)に変換して計算することもあります。たとえば、勤続3年で2.5か月分、勤続5年で5か月分、勤続10年で15か月分というふうに設定されています。
比較的、歴史のある大規模な病院で採用されていることが多い計算方法です。
基本給連動型+実績連動型
基本給連動型をベースにしながらも、職場への貢献度を加味した「基本給連動型+実績連動型」の場合、同じ勤続年数であっても、職場に貢献したスタッフほど退職金が高くなる傾向にあります。計算方法は次の通りです。
退職時の基本給×勤続年数×功績倍数=退職金
「功績倍数」は、基本的には役職がついていないスタッフは1.0です。役職がつくと数字が大きくなるため、退職金が高くなるということになります。
勤続年数定額型
勤続年数定額型に関しては、職場が独自に設定した金額で支給することになるため、計算が不要です。
たとえば、勤続3年=30万円、勤続5年=50万円、勤続10年=200万円といった具合に、勤続年数ごとに金額が設定されているケースがこれに該当します。
固定額×勤続年数型
「固定額×勤続年数型」の「固定額」とは、職場が決めた金額で、10万円の場合もあれば25万円の場合もあります。たとえば、固定額が25万円の病院に10年勤めたスタッフの退職金は、25×10=250万円ということになります。
また、固定額×勤続年数型に実績連動型を掛け合わせることもあります。
看護師の退職金の4つの支給方法とは?
続いては、看護師の退職金制度について説明していきます。「退職金=退職時に支給されるお金」という認識の人は多いと思いますが、実際は退職金の支給方法は3パターンあります。どんなパターンがあるのかみていきましょう。
退職一時金制度
もっとも一般的な支給方法が「退職一時金制度」です。具体的には、退職時に一括で退職金が支給される制度のことです。支払われる退職金の金額は、主に前述した4パターンの計算方法のいずれかによって算出されます。
企業年金制度(企業型DC 、企業型DBなど)
企業年金制度にはいくつか種類があります が、退職金制度のひとつとして採用されることが多いのは「企業型DC」です。企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が従業員の退職後のために資金を積み立て、従業員自信が運用していく年金制度です。掛け金を拠出するのは企業ですが、運用責任は従業員自身に委ねられ、運用成績によって受取額が変動するという特徴があります。
受け取り方としては、一般的な年金と同じように分割で受け取る方法や、一時金として受け取る方法などがあります。
医療機関によっては、退職一時金制度と企業年金制度のいずれを希望するかを各スタッフに確認して、スタッフごとに希望の退職金制度を適用させているところもあります。あるいは、退職一時金制度と企業年金制度の併用という形で、退職金の一部を退職一時金として支給して、残りは年金として支給していく医療機関もあります。
また、企業が将来の年金給付額を約束して、運用リスクを負う「企業型DB(確定給付企業年金)」の場合、従業員には安定した年金が保証されます。
前払い制度
前払い制度とは、退職金を一括で前払いする制度ではなく、あらかじめ決めた金額を月給や賞与に上乗せして支払い続ける退職金制度のことです。そのため、基本給が競合より高くなる傾向にあります。
前払い制度が適用されている場合、在職中の収入は高くなりますが、それによって税金や社会保険料が高くなるため、節税に力を入れることが必至となります。また、退職金が先に支給されているぶん給与が高くなっていることをきちんと意識しておかなければ、退職時期が近づいてきてから、「貯金していなかったから老後のお金が足りない……」ということになりかねません。
中小企業退職金共済
中小企業退職金共済とは、従業員数が100人以下で資本金が5,000万円以下の医療法人などが加入できる退職金制度です。掛金が、法人の場合は損金、個人病院の場合は必要経費とすることが認められています。
企業年金は転職先に引き継ぐか、もしくはiDeCo(個人型確定拠出年金)に引き継ぐことができる
職場が企業年金制度を導入していた場合、積み立てた資産を転職先に引き継げる可能性があります。また、転職先が同等の制度を導入していない場合も、個人で加入できるiDeCo(個人型確定拠出年金)に引き継ぐことができます。
参照:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
看護師の退職金はいつもらえる?
看護師の退職金の支給方法のうち、企業年金制度の場合は分割または一時金として支給、前払い制度は在職中の支給となりますが、退職一時金の場合、受給者はいつ退職金を受け取ることができるかというと、退職から1~2か月後に、指定の銀行口座に振り込まれるケースが多いようです。退職日には受け取ることができる算段で高額な買い物などすると、困窮する可能性があるので注意しましょう。
なお、目安としては1~2か月後ですが、職場によってはそれより遅い場合も早い場合もあるので、正確な時期を知りたい場合は、就業規則や退職金規定を確認することが必要です。
看護師が退職金を受給するにあたって必要な手続きは?
退職金を受給するために必要な手続きは職場によっては異なりますが、一般的には、「退職金請求書」を提出することが多いです。退職金請求書は、総務や経理に用意してもらい、必要事項を記入して、退職金受取金融機関の口座確認印を受けます。記入が終わったら、必要添付書類とともに郵送して退職金が支払われるのを待つことになります。
なお、万が一退職金の手続きを先延ばしにしたまま忘れている場合などは、できるだけ早く手続きすることをおすすめします。なぜかというと、退職金の時効は基本的に退職後5年とされているためです。
看護師が退職金を増やす方法は?
続いては、看護師が退職金を増やす方法を確認していきましょう。看護師が退職金を増やす方法としては、主に次の方法が考えられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
役職に就く
退職金の計算方法が基本給連動型、基本給連動型+実績連動型の場合、看護主任や看護師長、看護部長などの役職に就くと退職金の金額が上がる可能性が高いといえます。
資格を取得する
功績倍数が加味される基本給連動型+実績連動型の場合、認定看護師や専門看護師、認知症ケア専門認定士などの資格を活かして働くことで、退職金の金額がアップする可能性があります。
そのほか、次のような資格も退職金UPにつながる可能性があります。
もしくは、助産師資格や保健師資格を取得して、助産師または保健師として働くと、基本給そのものが上がる可能性が高いため、必然的に退職金もアップします。
退職金が高い医療機関に転職する
退職金の水準が高い医療機関に転職すると、退職金が上がる可能性が高いです。ただしもちろん、転職して1、2年勤めただけで高い退職金をもらえるということはないので、少しでも早い段階で転職しておくことが有利に働きます。
看護師の退職金が少なくなる、ゼロになるケースとは?
続いては逆に、看護師の退職金が少なくなる、あるいはゼロになるケースを確認します。次のような場合、退職金が少なくなる、またはゼロになるので注意が必要です。
それぞれ詳しくみていきましょう。
自己都合の退職
退職には、「自己都合」「会社都合」「定年退職」の3種類があります。自己都合は、妊娠・出産、転職、介護などの自分の都合で退職することです。会社都合は、経営不振や倒産などの理由によって人員整理のために労働契約を解除することです。定年退職は、定年を迎えて退職することです。
この3種類のうちもっとも退職金が少なくなるのは自己都合です。どのくらい少なくなるかは勤続年数や勤め先にもよるので一概には言えませんが、勤続年数が同じでも、自己都合退職と会社都合退職とでは退職金の金額が2倍近く異なる場合があります。
なお、会社都合と定年退職の場合の退職金の金額を比較すると、会社都合の場合のほうが、金額が大きいケースが多いようです 。
退職のタイミングが悪い
退職金をできるだけ多くもらうためには、退職のタイミングに注意することが重要です。たとえば、年次の区切りを迎えているだけで支給額がアップする場合があります。
また、勤続3年以上であれば退職金の支給対象となりますし、勤続10年目は金額が大きく跳ね上がる年となります。
懲戒解雇
職場に損害を与えたり多大な迷惑をかけたりした場合、懲戒解雇となります。公務員の場合は懲戒免職となりますが、懲戒解雇または懲戒免職となった従業員には、退職金を支給しないと定めている職場が多いです。
たとえば、次のような問題を起こした場合、懲戒解雇または懲戒免職となります。
など
個人病院、クリニック、訪問看護ステーション勤務の場合
前述の通り、国立病院、公立病院、私立病院などは退職金が高額である場合がほとんである一方、個人病院、クリニック、訪問看護ステーションは退職金なしの場合が多い傾向にあります。
退職金の有無と金額を知る方法は?
自分の退職金の有無と金額がわからない場合は、就業規則を読み返すことによって確認できます。就業規則には、退職金の有無および計算方法が書かれているので、何歳までその職場で働きたいを決めると、おおよその金額を算出することができます 。
また、もしも就業規則を確認しても退職金に関する記述が見当たらない場合、規模の大きな病院であれば人事部や総務部に問い合わせてみましょう 。個人病院であれば、院長に直接確認するといいでしょう。
退職金にかかる税金の種類とは?
続いては、退職金にかかる税金について説明していきます。退職金には、所得税、住民税、復興特別所得税の3つの税金がかかります。それぞれ詳しくみていきましょう。
所得税
所得税とは、毎年、1月1日~12月31日の1年間に得た所得に対して課税される税金です。所得税には、所得を合算した総所得金額に課税する「総合課税」と、他の所得金額と合計せず、分離して税額を計算する「分離課税」があります 。
退職金を一時金で受け取る場合、分離課税となるため、その年に得た所得とはわけて計算することになります。
また、所得を計算するときには控除が利用できる場合がありますが、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」が利用できます。なお、一時金と年金の併用という受け取り方もありますが、このうちのどの受け取り方で受け取るかによって、納める税額が変わってきます。
退職所得控除の計算式
退職所得控除は、勤続年数によって以下の2タイプの計算方法のいずれかで計算することになります。
【勤続年数20年以下の場合】
40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
≪計算例≫勤続15年のAさんの場合: 40万円×15年=600万円 が退職所得控除額となります。
【勤続年数20年超えの場合】
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
≪計算例≫勤続35年のBさんの場合: 800万円+70万円×(35年−20年)=800万円+70万円×15年=800万円+1,050万円=1,850万円 が退職所得控除額となります。
退職所得控除を求めたら、次の計算式で退職所得を算出できます。
[収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額]×1/2
公的年金等控除額の計算式
一方、公的年金等控除額は次の表をもとに算出可能です。
【公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合】
年金を受け取る人の年齢 | 公的年金等の収入金額の合計 | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
65歳未満 | 60万円以下 | 0円 |
60万円超130万円未満 | 収入金額の合計額-60万円 | |
130万円以上410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75-27万5,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85-68万5,000円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 収入金額の合計額×0.95-145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 収入金額の合計額-195万5,000円 | |
65歳以上 | 110万円以下 | 0円 |
110万円超330万円未満 | 収入金額の合計額-110万円 | |
330万円以上410万円未満 | 収入金額の合計額×0.75-27万5,000円 | |
410万円以上770万円未満 | 収入金額の合計額×0.85-68万5,000円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 収入金額の合計額×0.95-145万5,000円 | |
1,000万円以上 | 収入金額の合計額-195万5,000円 |
なお、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円を超える場合に関しては、国税庁「公的年金等の課税関係」をご参照ください。
住民税
住民税とは、毎年、その年の1月1日時点で済んでいる都道府県と市区町村に収める税金です。住民税の種類は、東京都の「都民税」、東京都23区の「特別区民税」、道府県の「道府県民税」、市町村の「市町村民税」にわけられます。
住民税の税額は、一定の所得を上回るすべての人が均等に納める「均等割」に、前年の所得に応じて税率を掛けた「所得割」の合計です。
均等割は、特別区民税と市町村民税は3,500円、都民税と道府県民税は1,500円であるため、全国どこに住んでいても合計5,000円です。また、所得割の税率は一律10%です。
復興特別所得税
復興特別所得税とは、東日本大震災の復興への財源確保のために創設された税金で、所得税額の2.1%が課されます。復興特別所得税は、2013年に創設されましたが、2037年まで課税されることが決まっています。
退職金を受給したら確定申告をする必要がある?
退職金を一時金として受け取る場合、退職金を受給するタイミングまでに、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払者に提出していれば、源泉徴収のみで所得税等の課税関係が終了するため、原則として確定申告はする必要がありません。つまり、退職金に退職所得控除が適用されて、所得税、住民税、復興特別所得税が源泉徴収されることで、税金の処理が完結するということです。
一方、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していなければ、退職所得控除が適用されないため、所得税と復興特別所得控除が一律20.42%と源泉徴収されることから、確定申告によって退職所得の精算をする必要が生じます。
退職金を受給して確定申告したほうがいい場合とは?
退職金を一時金として受け取る場合、原則としては確定申告をする必要がありませんが、医療費控除や寄付金控除を受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。この場合も、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職金に関しては税金の処理をおこなう必要がありませんが、提出していない場合は、退職金の収入金額から一律20,42%の所得税等が源泉徴収されるため、確定申告によって精算する必要があります。
転職に迷ったときは、退職金についても考えてみよう
今の職場で働き続けるべきか転職するかで迷ったときには、やりがいや給与など、さまざまな要素を比較するのが一般的ですが、意外と見落としがちな比較ポイントが退職金です。今の年齢が20代~30代であれば、退職金について考える機会は少ないかもしれませんが、「60歳になったとき、どちらを選択したほうがしっかり貯蓄できている?」と考えてみると、二者択一に悩むことがなくなるかもしれませんよ。
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この記事は、2025年6月時点の情報を元に作成しています。