クリニック譲渡の価格相場を徹底解説! 算出方法・評価項目から高く売るコツまで

自院の譲渡(売却)を考えているドクターにとって、譲渡価格(売却価格)の相場や算出方法は気になるところです。そこで今回は、クリニックの譲渡価格の相場について徹底解説していきます。算出方法や評価項目から、高く売るコツまで解説するので、将来的に自院を譲渡したいと考えているドクターは参考にしてみてください。

目次
  1. クリニック譲渡の相場価格と基本的な算出方法
  2. クリニックの売却方法は?
    1. 個人クリニックの売却方法
      1. 事業譲渡
      2. 居抜き
    2. 医療法人の売却方法
      1. 持分譲渡(持分あり社団医療法人の場合)
      2. 役員・社員・評議員の交代による経営権譲渡
      3. 吸収合併
      4. 吸収分割
      5. 事業譲渡
  3. クリニックの売却価格の基本的な決定方法は ?
    1. 営業権の評価方法は ?
  4. 個人クリニックを事業譲渡する場合に、売却価格を相場より上げる方法は ?
    1. 譲渡後も、院長などの中心的立場の医師が在籍するケース
    2. クリニックの知名度が高く、その名称も譲渡対象となっているケース
    3. スタッフを引き継ぐケース
    4. 好立地である
    5. 施設そのものが魅力的である
      1. 自院の売却価格を上げる方法は?
  5. 個人クリニックを事業譲渡によって売却した場合に課される税金の種類は?
    1. クリニック売却時におこなうべき税金対策は ?
      1. 必ず税務専門家(税理士)に相談する
      2. 退職金の活用を検討する
      3. 親族間での紹介の場合は、贈与税・相続税の対策も必須
  6. クリニックを売却する際の注意点は ?
    1. 許認可の引継ぎを忘れない
    2. 医師や看護師の人材流出を防ぐ
    3. M&Aの専門家に相談する
  7. クリニックの引継ぎ期間中に発生し得るトラブルとは?
    1. テナント関連
    2. 医療機器関連
    3. スタッフ関連
  8. クリニックの譲渡を検討した時点で、専門家に話を聞くのが一番!

クリニック譲渡の相場価格と基本的な算出方法

個人クリニックと医療法人の売却相場はどのくらいになるかというと、クリニックや法人の規模や立地エリアなどにもよりますが、個人クリニックは3,000万円~4,000万円程度、医療法人は1億円~1億5,000万円程度といわれています。

個人クリニックの場合: 時価純資産は数百万円〜数千万円程度となることが多く、そこに営業利益の1年分程度の営業権(数百万〜数千万円)が加算されるイメージです。

医療法人の場合: 医療法人は設備投資や内部留保が多いため時価純資産が高くなる傾向にあり、営業権も複数年分で評価されるため、全体として売却価格が高額になる傾向があります。

なお、この価格は、追って説明する年倍法で買収価値を評価した場合の価格です。

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クリニックの売却方法は?

続いて、クリニックの売却方法を説明していきます。

クリニックの売却方法は、個人クリニックであるのか医療法人であるのかによって異なります。さらに、個人クリニックの場合には大きくわけて2パターンの方法があり、医療法人の場合には大きくわけて5パターンの方法があります。

個人クリニックの売却方法 ① 事業譲渡
② 居抜き
医療法人の売却方法 ③ 持分譲渡(持分あり社団医療法人の場合)
④ 役員・社員・評議員の交代による経営権譲渡
⑤ 吸収合併
⑥ 吸収分割
⑦ 事業譲渡

7つそれぞれのパターンについて詳しく説明していきます。

個人クリニックの売却方法

個人クリニックの場合、事業譲渡もしくは居抜きで譲渡という選択肢があります。

事業譲渡

事業譲渡とは、有形・無形の資産、負債、契約といった、事業を構成する権利義務のすべてまたは一部を譲渡することを意味します。売り手が有している権利義務のうち、どの権利義務を譲渡・承継するかを決定したら、事業譲渡契約書に明記することが必要です。

たとえば、以下のような権利義務が譲渡対象となります。

【譲渡対象となる権利義務例】

  • クリニックの土地・建物の所有権・賃借権など
  • クリニックの名称・商標や知的財産権
  • 医療機器・薬品、空調・給排水設備などの所有物
  • リース物件(買い手がリース契約を承継するか、もしくは売り手がリース残債を支払って物件の所有権を取得してから譲渡する)
  • 医薬品・医療材料の卸売業者との取引契約
  • スタッフの雇用契約(雇用契約を買い手が承継するか、売り手のもとでスタッフがいったん退職してから買い手と再契約する)
  • スタッフの退職金に関する債務(売却時に退職金の精算をおこなわず、退職金受給権・勤続年数も含めて雇用を引き継ぐ場合)
  • 患者カルテなど、営業上の情報
  • 自由診療の継続治療契約
  • なお、貸主や取引先、スタッフ、患者などとの契約を承継するためには、契約相手の同意が必要です。患者に対しても、自院が新たなドクターに引き継がれる予定であることを事前に知らせる必要があります。

    不動産や知的財産権などを引き継ぐにあたっては、登記が必要となります。

    また、クリニックの土地や建物が前院長の自己所有である場合、譲渡(売却)ではなく賃貸契約とすることも可能です。

    居抜き

    居抜きとは、クリニックとして使用していた物件を、設備や内装などを残したまま買い手に引き渡すことを意味します。物件が賃貸物件の場合、設備および内装一式を譲渡することになり、物件が前院長の自己所有物件の場合、設備および内装を含めた土地や建物を売却または賃貸しすることになります。

    居抜きの場合、譲渡されることになるのは一部の有形資産のみとなるため、事業譲渡に比べて譲渡対象の幅が狭くなります。

    一般的に、クリニックが居抜きによって売却されるのは、前クリニックの移転時もしくは廃業時です。廃業の場合、事業としてみると買い手がつかない状態といえますが、クリニックの施設や設備には値段がつくケースがあるうえ、施設と設備をまとめて譲渡したほうが多くの資金を回収できる可能性があります。

    医療法人の売却方法

    医療法人の場合、持分譲渡(持分あり社団医療法人の場合)、役員・社員・評議員の交代による経営権譲渡、吸収合併、吸収分割、事業譲渡という選択肢があります。

    持分譲渡(持分あり社団医療法人の場合)

    持分あり社団医療法人とは、持分を出資した社員(=議決権を持つ人)によって構成される法人です。「持分」とは、株式会社でいうところの「株式」に相当するもので、出資額によらず議決権は1人1票で、剰余金の配分はおこなわれることがありません。

    持分を譲渡すれば、社員としての議決権も譲渡されることになる仕組みであるため、買い手側は、持分譲渡によって過半数の議決権を取得すれば、理事の解任・選任などをおこなうことで、医療法人の経営を支配できるということになります。

    役員・社員・評議員の交代による経営権譲渡

    売り手側の役員・社員・評議員が辞職して、買い手側から役員・社員・評議員が専任されれば、法人の経営権が買い手側に移転することになります。

    吸収合併

    買い手側の法人が売り手側の法人を吸収して、法人として一体化させるという手法です。吸収合併するためには、全社員の合意(財団医療法人では理事の3分の2以上の合意)、都道府県知事による認可、債権者保護手続き(合併に異議のある債権者への対応)、登記の手続きなどが不可欠です。

    吸収分割

    買い手側の法人が売り手側の法人の一部の事業を吸収して、法人として一体化させるという手法です。吸収分割するためには、吸収合併に必要な手続きに加えて、分割で影響を受ける職員の権利を保護するための手続きも必要になります。

    事業譲渡

    事業譲渡する場合、個人クリニックの場合と同様、権利義務を買い手側に移転する手続きが必要になりますが、事業規模が大きい場合、手続きが非常に煩雑になるため、おすすめできる手法とはいえません。

    ただし、持分のない小規模な医療法人である場合や、事業の一部のみを売却する場合、個人開業医に対して一部の事業を売却する場合などは、事業譲渡も検討対象としていいでしょう。

    クリニックの売却価格の基本的な決定方法は ?

    クリニックを売却する場合、売却対象の事業や法人の価値を評価して価格を算出して、それをもとに実際の売却価格を交渉していくことになります。

    では、具体的にどのような計算方法で算出するかというと、基本的には、「時価純資産+営業権(のれん代)」となります。時価純資産とは、貸借対照表の資産と負債を時価にして、時価資産から時価負債を差し引いた金額です。この金額は、出資およびこれまでのクリニック経営を通して蓄積された価値の実態を表すものとなります。

    一方、営業権(のれん代)とは、クリニックが今後も経営を続けていた場合、どの程度の収益を生み出すことができるかの収益力を、“買い手が手に入れることのできる潜在的な収益力”ととらえ、その価値の大きさを表したものです。

    説明からわかる通り、時価純資産は具体的な数字をもとに算出するため概ね客観的な数値となりますが、営業権にはどうしても主観が入るため、算定根拠を明示できる方法で評価することが重要です。

    たとえば、次のような要因を評価要因として明示します。

    【クリニックにおける営業権(のれん代)の主な評価要因】

    患者数とリピート率: 安定した患者基盤は収益の継続性を意味します。

    地域でのブランド力・知名度: 口コミや長年の信頼で築かれた評判も価値になります。

    医師やスタッフの専門性・経験: 特定の専門分野における高い技術力や熟練したスタッフは、クリニックの競争優位性となります。

    設備の新しさ・特殊性: 最新の医療機器や、特定の治療に必要な特殊設備も評価対象です。

    立地条件: 駅からのアクセス、駐車場の有無、周辺の競合状況なども収益性に直結します。

    自由診療の比率と収益性: 自由診療は保険診療に比べて収益性が高いことが多く、その比率も重要な評価項目です。

    また、売り手が医療過誤や労務問題、自由診療契約のトラブルなどで債務を抱えている場合、債務に関する評価額が営業権から差し引かれることになりますが、債務リスクに関しても、算定根拠を明らかにすることが重要です。

    営業権の評価方法は ?

    算定根拠を明示するために使われている主な手法は、「DCF法」と「年倍法」です。

    DCF法とは、事業計画やリスク評価に基づいて、将来的に生み出されたであろう価値の大きさを予測したうえで、将来の価値を現在の価値に置き換えることによって買収価値を算出する方法です。大規模法人のM&Aにおいては、DCF法が基本とされていますが、専門的な知識が必要な算出方法であるため、評価は専門機関に依頼する必要があります。

    年倍法とは、中小規模の法人や個人間でおこなわれるM&Aにおいて利用される手法で、個人開業医のクリニック売却時にもよく用いられています。具体的には、「直近年度の営業利益×3~5年程度」を営業権とする方法です。この手法であれば、専門機関に算出を依頼する必要がなく、また、当事者同士の納得感が得られやすいというメリットもあります。

    また、そのほかに、過去の類似事例から売却価格を判断する「取引事例法」 なども存在します。

    個人クリニックを事業譲渡する場合に、売却価格を相場より上げる方法は ?

    個人クリニックを事業譲渡によって売却する場合、譲渡対象の資産・負債は当事者間の協議によって決定することになり、時価純資産は、どこまでを譲渡対象としたかによって変わってきます。なお、通常、負債の大半は譲渡対象となりません。

    一方、営業権に関しては、個人クリニックの場合は前院長に属人化しているため、院長が変わることによってこれまで通りの事業の形が成り立たなくなることから、あまり高い評価は期待できないのが一般的です。具体的には、直近年度の営業利益の1年分またはそれ以下が、営業権の相場と考えられます。

    しかし、次のような場合には、営業権が高く評価される可能性が高いことから、売却価格が相場より高くなる可能性があります。

    ①譲渡後も、院長などの中心的立場の医師が在籍するケース
    ②クリニックの知名度が高く、その名称も譲渡対象となっているケース
    ③スタッフを引き継ぐケース
    ④好立地である
    ⑤施設そのものが魅力的である

    それぞれ詳しくみていきましょう。

    譲渡後も、院長などの中心的立場の医師が在籍するケース

    院長が一定期間診療を継続して事業引き継ぎに協力するケース、または院長以外の中心的な医師がいて売却後も継続して在籍するケースなどは、前医院時代からの患者が離れないことから、営業権が高く評価される可能性が高いといえます、複数のクリニックを展開する医療法人グループの傘下に入り、現院長のまま法人化する場合なども同様です。

    クリニックの知名度が高く、その名称も譲渡対象となっているケース

    クリニックの知名度が高く、クリニック名で検索して来院する患者が多い場合、その名称も譲渡対象となっているなら、「集患に有利」と判断されて営業権が高くなる可能性が高いです。ただし、クリニック名が前院長の名前をベースにしたものである場合などは除きます。

    スタッフを引き継ぐケース

    前医院に優秀なスタッフが在籍していて、譲渡後も継続雇用が望める場合、優秀なスタッフを雇用できることに価値が見出されます。

    好立地である

    駅近、もしくは車でアクセスしやすく駐車スペースが十分である場合なども、習慣に有利であることから営業権が高くなる可能性が高いといえます。

    施設そのものが魅力的である

    キッズスペースが設けられているなど、施設そのものが魅力的で、買い手となるクリニックの潜在患者のニーズに合っている場合も、営業権が高くなる可能性があります。

    自院の売却価格を上げる方法は?

    上記5つのポイントのうち、②④⑤に関しては、クリニックの運営開始後に改善することは難しいですが、たとえば個人開業医が院長を務める小規模クリニックであったとしても、①③については検討の余地があるといえます。①に関しては、譲渡後しばらくは事業引き継ぎに協力することを見越してスケジュールを立てればいいわけですし、③に関しては、スタッフにとっても、承継を機に仕事を失うリスクが減るという意味においてメリットが大きいので、スタッフ教育に力を入れると同時に、将来の構想について早い段階からシェアしておくことが役立つといえるでしょう。

    個人クリニックを事業譲渡によって売却した場合に課される税金の種類は?

    個人クリニックを事業譲渡によって売却すると、譲渡によって生じた所得に応じて、所得税および住民税、復興特別所得税が課されます。

    なお、土地・建物・有価証券の「譲渡所得」については、他の所得金額とわけて課税されることになります。これを「分離課税」といいます。

    また、医薬品や診療材料などの棚卸資産の譲渡については「事業所得」、土地・建物・有価証券・棚卸資産“以外”の譲渡については「譲渡所得」が発生して、他の所得との合計額に対して所得税が課されることとなります。これを「総合課税」といいます。

    所得税率は、所得額に応じて5~45%課されます。住民税の所得割の税率は10%で、均等割は通常5,000円となります。

    復興特別所得税は、2037年12月31日までの期間限定で徴収ざれる税金で、基準所得税額×2.1%が課されます。

    参照:国税庁「個人の方に係る復興特別所得税のあらまし」

    クリニック売却時におこなうべき税金対策は ?

    相場よりも高い金額でクリニックが売却されるのは喜ばしいことですが、売却額が大きければ大きいほど、課される税金の額も大きくなります。そのため、クリニック売却時には節税対策をおこなうことが不可欠であるといえます。

    必ず税務専門家(税理士)に相談する

    税金対策としてまずおこなうべきは、税務の専門家への相談です。節税の方法はインターネットでも簡単に調べることはできますが、節税方法が適切でなければ、税務調査の対象となる可能性もありますし、納税額が適正であるかどうかはさまざまな要素をもとに検討する必要があるため、専門家に頼んだほうが安心です。

    特に、クリニックのM&Aに詳しい税理士であれば、次のような具体的なアドバイスも期待できます。

    譲渡スキームの選択: 事業譲渡か、医療法人(持分あり・なし)の譲渡かによって税金の種類や税率が大きく変わるため、最も税負担が少なくなる選択肢を提案してくれます。

    資産の評価方法: どの資産をどのように評価するかによって課税所得が変わるため、適切な評価方法について助言してくれます。

    売却時期の調整: 複数年にわたる売却など、税金面で有利になる時期の調整についてアドバイスを得られる場合があります。

    退職金の活用を検討する

    もうひとつ検討したい節税対策は、売却金から退職金を支払うことです。退職金は他の所得と比べて税制優遇が大きく(分離課税かつ控除額が大きい)、課税額が大幅に少なくなるため、売却金を退職金の支払いに充てれば、大きな節税効果が期待できる可能性が高いといえます。

    【退職金活用のポイント】

    勤続年数による控除額の変動: 勤続年数が長いほど控除額が大きくなります。

    他の所得との合算を避ける: 分離課税のメリットを最大限に活かすことが重要です。

    親族間での紹介の場合は、贈与税・相続税の対策も必須

    前述の通り、事業譲渡の場合は所得税および住民税、復興特別所得税が課されますが、親族間での承継の場合、贈与税や相続税が発生する可能性があります。そのため、贈与税および相続税の税負担を最小限に抑えるためにはどうすればいいかについて、税理士とよく相談することが望ましいといえます。

    クリニックを売却する際の注意点は ?

    続いては、クリニックを売却する際の注意点を解説します。クリニックを売却する際には次のことに注意することが大切です。

  • 許認可の引継ぎを忘れない
  • 医師や看護師の人材流出を防ぐ
  • M&Aの専門家に相談する
  • それぞれ詳しくみていきましょう。

    許認可の引継ぎを忘れない

    クリニックの経営権を後継者に移すには、許認可を取得しなおす必要があります。許認可とは、特定の事業をおこなう際に、行政機関から受ける許可や認可を意味します。許認可再取得の手続き方法は自治体によって異なるので、事前に確認しておくことが重要です。なお、許認可の再取得が終わるまでは後継者は事業をおこなうことができません。万が一、再取得を待たずに事業を開始した場合、行政処分や刑事罰を受ける可能性があります。

    医師や看護師の人材流出を防ぐ

    クリニックを譲渡する計画であることを事前にスタッフが把握した結果、「職を失う前に転職しよう」と動き出して、早々に退職する可能性があります。その結果、売却前に価値が下がる可能性があるので、当事者間で機密保持契約書を取り交わすことが大切です。ただし、スタッフも引き継ぎたいと考えている場合は、働いてもらう医師や看護師に事前に交渉して承諾してもらうことが必要であるため、タイミングは図りながらも、事前にきちんと伝えることが不可欠です。

    M&Aの専門家に相談する

    前述の通り、クリニック売却時には税金が発生します。そのため、税金対策に関する知識を有した専門家や、法務に関して相談できる専門家にしっかり相談することが大切です。具体的には、クリニックや医院のM&Aに関して知識および経験豊富なM&A仲介会社などを頼るといいでしょう。M&A仲介会社は、単なる情報提供だけでなく、以下のような多岐にわたるサポートを提供してくれます。

    【M&A仲介会社の主な役割とメリット】

  • 最適な買い手候補の探索とマッチング: 豊富なネットワークから、自院の特性に合った買い手を見つけてくれます。
  • 企業価値評価(売却価格の算定): 客観的な視点から、適正な売却価格を算出します。
  • 交渉代行: 買い手との条件交渉を専門家として代行して、売り手の利益を最大化するよう努めます。
  • 各種契約書の作成支援: 複雑な法律文書(秘密保持契約書、基本合意書、最終契約書など)の作成をサポートします。
  • デューデリジェンス(詳細調査)のサポート: 買い手によるクリニックの財務・法務・事業などの詳細な調査に対応する支援をおこないます。
  • 税理士・弁護士などの専門家連携: 必要に応じて、信頼できる税理士や弁護士の紹介、連携を図ります。
  • 売却後のトラブル回避に向けた助言: 事例に基づいたアドバイスで、スムーズな承継を支援します。
  • クリニックの引継ぎ期間中に発生し得るトラブルとは?

    続いて、クリニックの引継ぎ期間中に発生する可能性のあるトラブルをみていきましょう。引継ぎ中に発生する可能性があるトラブルは、大まかに、テナント関連、医療機器関連、スタッフ関連の3つにわけられますが、それぞれ、次のようなトラブルが起きる可能性がありますし、実際に起こったケースもあります。

    テナント関連

  • 引継ぎ期間中に賃料が変わった(テナントオーナーから増額された)
  • 引継ぎ期間中に、テナント物件に瑕疵があることが判明した
  • テナントオーナーとの交渉がスムーズにいかない
  • 医療機器関連

  • 譲渡契約締結時には使用できていた医療機器が、契約締結後に経年劣化で動かなくなった
  • 電子カルテに承継時の対応方法が装備されておらず、システム引き継ぎに追加費用が発生した
  • 譲渡した医療機器に使用マニュアルがないことから、買い手から説明を求められる
  • 売り手側が医療機器メーカー担当者の連絡先を把握していない
  • スタッフ関連

  • スタッフを引き継いだものの、買い手側とスタッフとのソリが合わない
  • スタッフ引継ぎ後、雇用形態や労働時間の変更希望が出た
  • 買い手側が提示した労働条件と、実際の労働条件が異なっていた
  • こうしたトラブルは必ずしも起こるものではありませんし、どちらかというと稀なトラブルも含まれていますが、万が一のことが起こり得ることを考えると、契約書に細かな点までしっかり記しておくことが望ましいといえます。

    では、クリニックの承継に使用する契約書とはどのようなものであるかというと次の6つです。

    ①ノンネームシート:売り手が特定されない範囲で、クリニックに関する情報をまとめた資料
    ②秘密保持契約書(NDA):情報漏洩防止のための書類
    ③アドバイザリー契約書:仲介会社と業務内容や契約金額を定めた書類
    ④意向表明書(LOI):買い手が買収意向を示す書類
    ⑤基本合意書(MOU):条件を確認しあう書類
    ⑥最終契約書(DA):最終段階で取引条件などを明記する契約書

    このうち、テナント、医療機器、スタッフなどの譲渡条件に関して細かく記したものは基本合意書(MOU)と最終契約書(DA)となりますが、後々トラブルに発展するのを避けるために、最終契約書(DA)にはは、次のような項目を盛り込むことが非常に重要です。具体的にどのように盛り込めばいいのかについては、専門家によく相談することが大切です。

    【最終契約書(DA)に盛り込むべき主な項目例】

  • 対象資産・負債の範囲と明細: 何を譲渡して、何を譲渡しないかを詳細に記述(医療機器の型番、リース契約の有無、医薬品在庫、未収金など)
  • 譲渡価格とその内訳: 時価純資産と営業権の評価額を明確にして、支払条件(一括払い、分割払い、手付金など)を記載
  • スタッフの雇用条件: 引き継ぐスタッフの氏名、役職、雇用形態、給与、退職金規程の継承の有無など
  • 引き継ぎ期間と協力体制: 前院長がどの程度の期間、どのような形で引き継ぎに協力するか、その協力費用なども含めて具体的に記載
  • 債務・偶発債務の取り扱い: 医療過誤、労務問題、税務上の問題など、潜在的なリスクに対する責任範囲と対応策
  • 表明保証: 売却するクリニックの状態(財務状況、法的遵守状況など)について、売り手が買い手に対して保証する内容
  • 損害賠償・契約解除に関する条項: 契約違反や問題が発生した場合の対処方法
  • 競業避止義務: 売却後、売り手が一定期間、一定範囲内で類似の医療行為をおこなわないことの取り決め
  • 患者情報の引き継ぎ方法と個人情報保護に関する合意: カルテの取り扱い、患者への告知方法など
  • 不動産の賃貸借契約の承継条件(居抜きの場合): 賃料、敷金、保証金、契約期間、更新条件など
  • 医療機関の許認可等の承継に関する手続きと責任分担
  • なお、売り手・買い手の双方が想定できなかったトラブルが起きる可能性もゼロではないので、そうした場合にどう対処するかについても考えておくといいでしょう。

    クリニックの譲渡を検討した時点で、専門家に話を聞くのが一番!

    ここまで解説してきた通り、トラブルを防ぐためには専門家に相談することがとても大切ですが、実際に事業譲渡すると決める前の段階で専門家に相談すれば、「事業譲渡したほうがいいのか、それとも居抜きなどほかの選択肢をとるのが得策なのか」「事業譲渡する場合の売却額はどのくらいが適切なのか」などについてアドバイスをもらうことができるので、「自院にとって、患者にとって、自分自身にとって最良の選択は何だろう?」と悶々と悩む時間が少なくて済みます。そのぶんの時間を、人生をより豊かにするために使うことができるので、まずは無料相談からでも検討してみるといいかもしれませんね。

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    対象規模

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    サービス クラウド SaaS 分離型

    診療科目

    内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、