クリニックを開業するにあたっては、自院の診療科特有のポイントを踏まえて準備を進めることが大切です。なぜかというと、診療科が違うと、必要な設備や必要な費用に大きな違いが出てくるためです。
特に、外科および消化器外科を開業する場合、消化器内科としての内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)を併設するのか、あるいは日帰り手術に特化するのかによって、準備の方向性が全く異なります。本記事では、外科・消化器外科の医師が開業を検討する際、どのようなポイントをおさえて準備を進めていけばいいのか、具体的な資金目安や失敗しないための必須要件を解説していきます。
外科・消化器外科がクリニックを開業する場合の診療形態
外科・消化器外科がクリニックを開業する場合の診療形態は、次の2つの軸で整理するとわかりやすいです。
- ①どこまで処置・手術をおこなうか
- ②保険診療と自由診療をどう組み合わせるか
それぞれの軸におけるパターンを解説していきます。
外来処置のみ or 手術対応
外来処置のみ型
比較的少ない設備投資で開業できます。
【主な診療内容】
- 一般外科外来
- 消化器疾患の診療
- 胃カメラ・大腸カメラ
- 切り傷の縫合
- やけど処置
- 巻き爪処置
- 小さな粉瘤の切開排膿
- がん術後フォロー
【メリット】
- 開業資金を抑えやすい
- スタッフ数を抑えられる
- 医療事故リスクを比較的抑えられる
- 一人開業しやすい
【デメリット】
- 手術収益が得られない(患者単価が高くない)
- 専門性を打ち出しにくい場合がある
小規模日帰り手術型
処置室や簡易手術室を設置します。
【主な手術】
- 粉瘤摘出
- 脂肪腫摘出
- 巻き爪手術
- 陥入爪手術
- 小皮膚腫瘍摘出
【メリット】
- 外科医としての強みを活かせる
- 診療単価が上がりやすい
【デメリット】
- 設備投資が増える
- 感染対策や安全管理が重要
本格的日帰り手術型
手術を主力サービスにする形態です。
【主な手術】
- 鼠径ヘルニア
- 下肢静脈瘤
- 痔核
- 痔瘻
- 肛門手術
- 内視鏡的ポリープ切除
【メリット】
- 高い専門性を打ち出せる
- 広域から患者を集めやすい
【デメリット】
- 設備投資が高額になる
- 麻酔体制や緊急搬送体制が必要
- 人員確保が重要
入院可能な有床型
昨今、外科・消化器外科クリニックは無床診療所あるいは日帰り手術型が主流ですが、痔の手術や鼠径ヘルニア手術、下肢静脈瘤手術、内視鏡治療後などで日帰りは不安という患者などのために、短期間入院可能なクリニックも存在します。
特に、肛門外科やヘルニア専門クリニックでは、有床診療所として短期入院に対応している施設も一定数存在します。
保険診療中心 vs 自由診療の組み合わせ
パターン1:保険診療100%
もっとも一般的です。
【内容】
- 外科外来
- 消化器内科外来
- 内視鏡検査
- 日帰り手術
【特徴】
- 患者層が広い
- 安定経営しやすい
- 地域医療との親和性が高い
パターン2:保険診療+健診・検診
近年、多いパターンです。
【内容】
- 保険診療
- 人間ドック
- 企業健診
- がん検診
- 胃がん・大腸がん検診
【特徴】
- 自費収入を増やしやすい
- 消化器系クリニックとの相性が良い
パターン3:保険診療+美容外科・美容皮膚科
美容系のメニューを取り入れるケースがあります。
【内容】
- 一般外科
- ほくろ除去
- しみ治療
- レーザー治療
- 医療脱毛
【特徴】
- 自由診療比率を高められる
- 地域によって需要差が大きい
パターン4:保険診療+エイジングケア
美容目的の点滴やサプリメント処方は、外科・消化器外科に限らず、一般内科を標榜しているクリニックなどでもおこなっていることがあります。
【内容】
- 一般外科
- 消化器診療
- 自費点滴
- サプリメント販売
- 栄養療法
【特徴】
- 比較的小規模から始めやすい
- 自由診療の収益源になる
パターン5:保険診療+予防医療特化
「未病予防」で利用する患者を取り込むことが可能です。
【内容】
- 消化器外来
- 内視鏡検査
- 人間ドック
- 遺伝子検査
- 各種自費検査
【特徴】
- 消化器外科医との親和性が高い
- 「病気を治す」から「病気を防ぐ」へ領域を広げられる
昨今の開業で多い組み合わせ
昨今は、外科・消化器外科医の開業においては、次の3パターンが特に多く見られます。
- ①地域密着型:外来処置中心/保険診療中心
- ②内視鏡特化型:内視鏡+ポリープ切除/保険+健診
- ③専門手術型:日帰り手術中心/保険診療中心
特に、「一般外来+胃カメラ・大腸カメラ+健診・人間ドック」を組み合わせたモデルが増えており、外科・消化器外科医の開業形態として主流の一つになっています。
外科・消化器外科クリニック開業に必要な設備と費用
外科・消化器内科クリニックの開業資金は、診療形態などによって大きく異なりますが、全体としての相場は6,000万円~1億2,000万円程度とされています。
先に解説した、4つの開業形態ごとの開業資金目安は次の表の通りです。
| 開業形態 | 開業資金の目安 |
|---|---|
| 外来・処置中心 | 5,000万~8,000万円 |
| 内視鏡併設型 | 6,000万~1億円 |
| 日帰り手術型 | 8,000万~1億5,000万円 |
| 有床(1~19床) | 1億~2億円超 |
必要な設備一覧
【基本設備】
- 受付・待合室
- 診察室
- 電子カルテ
- レントゲン
- エコー
- 処置室
- 滅菌設備
- 医療ガス設備
消化器外科で追加される設備
【内視鏡設備】
- 胃カメラ
- 大腸カメラ
- 内視鏡洗浄機
- 画像管理システム
- リカバリーベッド
導入費用は機種構成によって大きく異なりますが、内視鏡関連だけで2,000万~3,500万円程度が一つの目安です。
【外科処置設備】
- 電気メス
- 手術灯
- 生体モニター
- 吸引装置
- 無影灯
- 滅菌器
【日帰り手術設備】
- 手術室
- 回復室
- 麻酔設備
- 緊急対応設備
手術室・処置室の設置基準と坪単価目安
クリニックの一般外科手術室については、病院の手術室のような全国一律の最低面積基準はありません。
ただし、実務上は次の規模が採用されているケースが多いです。
- 処置室:5~10坪
- 小手術室:8~15坪
- 日帰り手術室:10~20坪
- リカバリー室:5~15坪
また、消化器内科・外科の内装工事費の目安は次の通りです。
坪50万~90万円程度
内視鏡室、洗浄室、リカバリー室、感染対策設備などが必要なため、一般内科より高くなる傾向があります。
たとえば60坪のテナントなら、次のような内装工事費になる計算です。
最安値の場合(坪50万円の場合) → 約3,000万円
最高値の場合(坪90万円の場合) → 約5,400万円
内視鏡・腹腔鏡機器のリース vs 購入の判断軸
内視鏡・腹腔鏡機器などの高額な機器は、リースにするか購入するかで悩みがちです。どちらがいいかはケースバイケースですが、一般的には、次のような判断軸で考えると、後悔のない判断をしやすいです。
リースが向くケース
得たいメリットや開業状況が次に当てはまる場合、リースが向いています。
【メリット】
- 初期投資を抑えられる
- 資金繰りが安定
- 開業初期の借入を減らせる
【向いている開業】
- 新規開業
- 内視鏡が必要な処置・手術件数がまだ読めない
- テナント開業
購入が向くケース
一方、購入のメリット、購入が向いているケースは次の通りです。
【メリット】
- 長期的な総支払額が安い
- 資産として残る
- 更新時期を自由に決められる
【向いている開業】
- 自己資金が豊富
- 年間検査件数が多い
- 長期運営を前提
「開業時はリース、経営安定後に買い替え」も賢明
リースか購入か決めきれない場合などは、「開業時はリース、経営安定後に買い替え」という流れにするのもおすすめです。
なお、開業時に内視鏡を導入するケースは多いですが、腹腔鏡機器に関しては、そもそも導入するクリニックが少ないです。前述した4つの開業形態のなかだと、有床型や、あるいは鼠径ヘルニアの手術をおこなっている本格日帰り手術型が主に導入しています。
他科との開業費用比較
外科・消化器外科の開業資金は、前述した通り、開業形態などによって大きく異なりますが、4つの開業形態のうち有床の形態に関しては、他科と比べても開業費用が高額になりがちです。
導入する機器によっては同程度まで高くなる可能性がある診療科としては、整形外科、泌尿器科が挙げられます。
もっともクリニック数が多い一般内科と、外科・消化器外科、整形外科、泌尿器科の開業資金を比べると、費用感がわかりやすいでしょう。
| 診療科 | 開業費用目安 | 費用が高い理由 |
|---|---|---|
| 一般内科 | 4,000万~8,000万円 | 診療・処置に必要な機器が比較的少ない |
| 消化器外科 | 6,000万~1億2,000万円 | 内視鏡・処置室・手術設備が高くつく |
| 整形外科 | 5,000万~9,000万円以上 | レントゲン・リハビリ機器が高額 |
| 泌尿器科 | 8,000万~1億円前後 | 膀胱鏡・超音波・検査機器が高額 |
| 有床外科 | 1億~2億円超 | 病床・厨房・宿直体制が必要 |
整形外科開業にあたっては、高額なリハビリ設備をそろえる必要がありますが、MRIを導入した場合、さらに6,000万円~1億円以上高くつく場合があります。
泌尿器科開業にあたっては、膀胱鏡や超音波機器などが必要であるため、開業資金が1億円規模になることも珍しくありません。
外科・消化器外科特有の「専門スタッフ採用・育成」のポイント
外科や消化器外科の開業において、資金や立地と同じくらい大きな壁となるのが「スタッフの採用」です。一般内科とは異なり、内視鏡介助やオペ介助ができる看護師(内視鏡技師や手術室経験者)は市場に少なく、採用難易度が非常に高いためです。
採用を成功させるためには、次のようなポイントをおさえておく必要があります。
経験者の採用には好待遇と早めの動き出しを
即戦力となる内視鏡技師やオペ室経験のある看護師を採用したい場合、一般的なクリニックの給与相場よりも高い手当(内視鏡手当、オペ介助手当など)を設定することが不可欠です。また、開業の半年前など、可能な限り早い段階から求人を出す必要があります。
未経験者を育成する前提のシステムづくり
経験者のみでスタッフを固めることは現実的ではありません。そのため、「未経験の看護師でも介助ができるマニュアル」の作成や、導入する機器メーカーの研修サポートを積極的に活用し、院内で育成する仕組みを整えることが、長期的なクリニック経営の安定につながります。
麻酔科医のスポット採用
全身麻酔や静脈麻酔を伴う本格的な日帰り手術をおこなう場合、執刀医1人での対応はリスクが高くなります。安全性を担保するため、特定の曜日のみフリーランスの麻酔科医にスポットで来てもらう体制を構築するクリニックも増えています。
外科・消化器外科の物件・立地選びのポイント
外科・消化器外科クリニックは、内科や皮膚科と比べて「どこでも成功しやすい」というわけではありません。
患者の多くが、病院からの紹介、健診後の精密検査、手術後フォロー、内視鏡検査で来院するため、地域医療機関との関係性や医療圏分析が非常に重要になります。
近隣病院・クリニックとの連携・避けるべき立地
大規模な病院の近くでの開業は、一見すると競争が激しそうですが、外科・消化器外科での開業であれば、必ずしも不利になるということはありません。
むしろ、総合病院、急性期病院、地域中核病院などの近隣エリアは有力候補です。理由は、先に触れた通り、病院側が、術後フォローが必要な患者や、慢性疾患患者を受け入れてくれる先を求めていることが多いためです。
また、地域連携が強いと、在宅患者を診療してほしいとして患者とつながれることも多くなります。
たとえば、次のようなケースがあります。
急性期病院
急性期病院は、自院では手術に集中して、術後フォローは地域クリニックに戻したいと考える傾向にあります。そのため、大腸がん、胃がん、胆石、ヘルニアなどの術後の患者の紹介を受けやすくなります。
健診センター
消化器系の開業においては、健診センターが近くにあると大変有利です。便潜血陽性、胃透視異常、肝機能異常、膵嚢胞疑いなどの健診結果は、内視鏡件数増加につながります。
在宅医療クリニック
在宅医療において、外科医は、PEG(胃ろう)、ストーマ、創傷管理のニーズがあります。そのため、地域連携が強いと患者の紹介を受けやすくなります。
≪避けた方がよい立地≫
反対に、自院と同レベルの内視鏡専門クリニックが密集しているエリアは避けたほうがいいです。
差別化のコツ
近隣病院や在宅でのニーズから患者を紹介してもらうなどして、より多くの患者を獲得していくためにも、差別化について考えることは大切です。
たとえば、次のような方法で差別化を実現することが考えられます。
パターン①:一般内科+消化器+外科
地域密着型を狙うならこのパターンがおすすめです。一般内科も標榜することで、地域のかかりつけ医になりやすいです。
パターン②:内視鏡特化
健診センターが近くにある場合などは、胃カメラや大腸カメラでの検査、鎮静検査、AI画像診断などができると強いでしょう。
パターン③:日帰り手術特化
粉瘤、脂肪腫、肛門疾患、ヘルニアなどの日帰り手術に特化すれば、患者単価が高くなるというメリットもあります。
パターン④:女性向け
女性医師常駐、あるいは女性専用内視鏡日を設けるなどすると、女性からは支持されやすくなります。
外科・消化器外科クリニックに向いている物件の条件
続いて、外科・消化器外科クリニックに向いている物件の条件をみていきましょう。
面積は広めが有利
外科・消化器外科は、一般内科より必要面積が大きくなります。
目安は次の通りです。
- 外来中心:40~60坪
- 内視鏡併設:60~80坪
- 日帰り手術あり:80~120坪
- 有床診療所:150坪以上
駐車場が重要
消化器系患者は高齢者が多いです。理想は、15~30台程度分のスペースを有した敷地内駐車場です。郊外型では特に重要です。
エレベーター
内視鏡患者や術後患者を考えると、2階以上の物件の場合、エレベーターはほぼ必須です。
給排水容量
内視鏡を使う場合、洗浄機、シンク、汚物流しが必要です。給排水工事費は、高額になるケースがあります。
天井高
手術灯や無影灯を設置するなら重要です。
一般的には、2.6m以上あるとレイアウトしやすくなります。
搬送動線
日帰り手術をおこなう場合、ストレッチャー、車椅子で移動できる通路幅が必要です。
≪開業コンサルが特に重視する条件≫
外科・消化器外科では、次の条件がそろう物件が高評価です。
- 急性期病院から車で10分以内
- 健診センターが近い
- 駐車場の広さが十分ある
- 60~100坪確保できる
- 給排水容量に余裕がある
- 内視鏡室・洗浄室・リカバリー室を分離できる
≪成功している外科・消化器外科クリニックに多い立地≫
実際には、「駅前一等地」よりも「地域中核病院の近隣ロードサイド」のほうが成功例は多く見られます。
理由としては、次のようなことが考えられます。
- 術後患者の受け皿になれる
- 病院から紹介を受けやすい
- 駐車場を確保しやすい
- 広い面積を確保しやすい
特に、「内視鏡+外科処置+日帰り手術」での開業を目指す場合は、商業ビルの狭小テナントよりも、郊外型または医療モール型の広い区画のほうが運営しやすい傾向にあります。
外科・消化器外科クリニック開業時に必要な手続きとは?
クリニック開業に必要な手続きは、基本的には全診療科共通です。
※ただし、導入する機器などによっては別途必要な手続きもあります。
ステップごとにどんな手続きが必要であるのかをみていきましょう。
開設前に必要な手続きー保健所や医師会への事前相談―
診療所の図面ができた段階で保健所へ相談します。
[確認される内容]
- 診察室の構造
- 待合室
- 処置室
- バリアフリー
- 感染対策
- X線設備(設置する場合)
など
なぜ、事前に保健所に相談することが重要であるかというと、工事着工前に「これで問題ない」と太鼓判を押してもらうことによって、手戻りや余計な費用を防ぐことができるためです。医療法上の施設基準を満たしているか、保険医療機関指定に影響する問題があるのかなどを事前に確認してもらえば、後々、問題を指摘されて追加工事しなくてはならなくなるといったことがありません。
また、医師会への相談は必須ではありませんが、開業前に相談しておくことで、地域医療の情報を得られやすくなる、地域の医療機関との連携を築きやすくなるなどのメリットがあります。なお、医師会に加入することも必須ではありませんが、加入すれば、学校医や産業医を担当しやすくなる、地域検診や予防接種に参加しやすくなるなどのメリットを得られます。
開設後に必要な手続きー各種申請・行政手続き
クリニックを開設したら、開設後10日以内に管轄の保健所に「診療所開設届」を提出する必要があります。このことは、医療法によって定められています。診療所開設届が保健所に受理されないと、診療行為はできません。診療所開設届が受理されたら、
続いて、厚生局に「保険医療機関指定申請」をおこなう必要があります。なお、自由診療のみしかおこなわない場合は、保険医療機関指定申請は必要ありませんが、外科・消化器外科で自由診療のみしかおこなわないケースは少ないでしょう。ただし、なかには、美容目的の毛細血管治療などをおこなう下肢静脈瘤専門クリニックや、肝細胞治療、エクソソーム療法などを提供しているアンチエイジング・再生医療系外科などもあります。
診療所開設届、保険医療機関指定申請を含めた、提出が必要な届出は次の表の通りです。
| 提出書類 | 提出先 | 注意点・ポイント |
| 診療所開設届 | 保健所 | ・開設日から10日以内に提出 ・構造設備基準に適合が必要 ・事前相談(平面図や必要書類の準備)が推奨 ・届出手数料は無料 |
| 診療所使用許可申請書 | 保健所 | ・入院設備を設置する場合に必要 ・事前相談と施設基準適合が必須 ・許可後に使用可能 |
| 診療用X線装置備付届 | 保健所 | ・装置備付日から10日以内に届出 ・放射線防護図を添付 ・設置後、実査を受ける必要がある |
| 麻酔管理者免許申請書 | 保健所 | ・麻酔診療施設に麻酔施用者が複数いる場合に必要 ・手数料: 4,600円 |
| 感染症指定医療機関(結核)申請様式・手続等 | 保健所 | ・原則オンライン申請 ・公費負担医療は指定日以降に実施可能 ・変更内容に応じた手続が必要(例:名称変更、所在地変更) ・辞退後の再申請は遡及願を添付 |
| 保険医療機関指定申請書 | 厚生局 | ・公的医療保険の適用を受けるために必要 ・社会保険および労働保険への加入状況確認あり ・申請は窓口提出が推奨(郵送も可能) ・手数料: 無料 |
| 医師会入会申込書 | 地区医師会(大学医師会を含む) | ・日本医師会会員になるには、都道府県医師会会員である必要がある ・入会手続きは地区医師会でおこなう ・入会審査前に日本医師会と情報を共有 |
| 労災保険指定医療機関指定申請書 | 労働基準監督署 | ・労災保険の療養給付をおこなうための申請 ・必要書類例: 1. 労災保険指定医療機関指定申請書 2. 病院(診療所)施設等概要書 3. 開設許可証の写し など ・指定期間: 3年間(自動更新あり) |
| 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | ・従業員を1人でも雇用する場合に必須 ・新規事業開設や支店設置時に提出 ・必要な記載内容: 1. 事業所の所在地・名称 2. 労働保険の成立年月日 3. 雇用保険被保険者数 ・提出は原則事業所単位でおこなう |
| 個人事業の開業届出書 | 税務署 | ・事業開始日から1か月以内に提出 ・e-Taxまたは書面で提出可能 ・本人確認書類の提示が必要(e-Taxの場合は不要) |
| 青色事業専従者給与に関する届出書 | 税務署 | ・青色申告者が専従者給与を経費に計上するために必要 ・提出期限: 該当年の3月15日まで ・添付書類: 給与規程の写し(必要時) |
| 給与支払事務所等の開設届出 | 税務署 | ・事務所等の開設、移転、廃止の際に提出 ・開設後1か月以内に提出 ・個人事業主の場合、「個人事業の開業届出書」を代用 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請 | 税務署 | ・給与支給人数が常時10人未満の事業主が対象 ・年2回の納付にまとめる特例制度 ・提出期限: 特になし |
| 個人事業開始申告書 | 各都道府県の主税局または県税事務所 | ・必要書類は「個人事業開始申告書」のみ ・提出方法: 持参、郵送、またはオンライン ・開業届の控えやマイナンバーを添付すると便利 |
| 消防計画書 | 消防署 | ・クリニックの規模や用途に応じて必要 ・添付書類として、建物の平面図や設備仕様書が求められる場合がある ・提出後の審査期間を考慮して早めの準備が必要 ・不備があった場合は再提出が必要になることがある |
手術をおこなう場合の特別な届出と基準
外科・消化器外科で手術をおこない場合は、「手術そのものをおこなうための施設基準」と「特定の診療報酬を算定するための施設基準」の2つについて考える必要があります。
保険診療で手術をおこなうだけの場合
- 診療所開設届
- 医療法上の構造設備基準
上記2つを満たしている必要があります。たとえば、外傷縫合や小規模な皮膚腫瘍切除などは、特別な診療報酬上の施設基準の届出がなくても算定可能です。
では、「特定の診療報酬を算定するための施設基準」とはなにかというと、外科・消化器外科に関連が深いものとしては次のようなものが挙げられます。
短期滞在手術等基本料1(日帰り手術の場合)
下肢静脈瘤手術抜去切除術などをおこなう場合などに検討すべき算定です。
算定のためには届出が必要で、次のような施設基準を満たしている必要があります。
- 術後の患者の回復のための回復室が確保されていること
- 看護師が常時患者4人に1人の割合で回復室に勤務していること
- 短期滞在手術等基本料に係る手術(全身麻酔を伴う者に限る)がおこなわれる日において、麻酔科医が勤務していること
短期滞在手術等基本料3(4泊5日までの場合)
短期滞在手術等基本料1とは異なり、届出が不要です。主な施設基準は、DPC対象病院または診療所ではないことです。
ヘルニア手術、内視鏡的台帳ポリープ・粘膜切除術、下肢静脈瘤血管内焼灼術などに適用されます。
(手術ごとの加算の例)内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の診療報酬において算定できる主な加算
そのほかにも、外科・消化器外科では、手術によって算定できる加算がいくつかあります。
たとえば、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術の診療報酬においては、短期滞在手術等基本料のほかに、病変検出支援プログラム加算(60点)、家族性大腸腺腫症に対する消化管ポリポーシス加算(5,000点)、バルーン内視鏡加算(450点)を算定可能です。
また、麻酔管理関連の加算もあるので、自院がどの手術に対応するかを決めたうえで、満たすべき施設基準を確認することが大切です。
なお、手術をおこなう場合、リカバリー室の面積、看護師配置、酸素設備、緊急搬送先病院との連携などについて基準を満たすことが必要となりますが、設備に関しては後から変更しにくいため、図面作成の段階で、診療メニューについても確定しておくことが重要です。
日帰り手術・内視鏡特有の「医療安全と夜間バックアップ体制」
日帰り手術やポリープ切除をおこなうクリニックを開業する際、多くの医師が最も不安に感じるのが「術後出血や急変時の対応」です。勤務医時代とは異なり、夜間や休日に対応してくれる当直医はいないため、万全のバックアップ体制を構築しておくことが医師自身の身を守るうえでも必須となります。
緊急搬送先(後方支援病院)の確保
万が一の事態に備え、車で10〜15分圏内にある地域の急性期病院や救命救急センターと、あらかじめ強固な連携を結んでおくことが最優先です。開業前の挨拶回りの段階で、術後合併症が起きた際の受け入れについて直接協議しておきましょう。
患者への術後連絡体制の構築
術後の患者が不安を感じた際に、いつでも連絡が取れる体制(専用の緊急連絡用携帯電話の貸与や、LINEを活用した相談窓口など)を用意しておくことで、手遅れになる事態を防ぐとともに、患者の大きな安心感につながります。
外科・消化器外科クリニックの集患戦略
外科・消化器外科クリニックの集患では、医療機関からの紹介患者獲得とWeb集患(SEO・MEO)の両輪が重要です。
特に「日帰り手術」「ヘルニア」「痔」は、患者が自ら検索して受診先を探す割合が高いため、Web戦略が成功の鍵になります。
近隣医療機関からの紹介患者を獲得する方法
紹介患者を増やしたいなら、開業後ではなく開業前から動くことが大切です。
病診連携の構築は「開業前から」が大事
病診連携を構築すべき対象としては、先に解説した通り、大規模な病院や健診センターも重要ですが、そのほか、内科クリニック、整形外科、皮膚科、泌尿器科、地域中核病院なども重要です。
なぜかというと、特に、粉瘤、脂肪腫、ヘルニア、痔、胆石などの手術対象患者は、まず近隣クリニックを受診することが多いためです。
「紹介しやすいクリニック」になることを意識する
紹介元の医師が重視することは次の通りです。
- 紹介状への迅速な返書
- 手術後の逆紹介
- 予約の取りやすさ
- 緊急時対応
日帰り手術専門クリニックでも、紹介元との連携を重要な方針として打ち出している施設があります。
実績を可視化する
紹介元が安心する情報を可視化しておくことも大切です。具体的には、次のような情報を公開するといいでしょう。
- 年間手術件数
- 執刀経験
- 専門資格
- 学会活動
実際に、日帰り手術専門クリニックは、次の2点を積極的に公開して差別化を図っているところが多いです。
- 年間手術件数
- 累計症例数
を積極的に公開して差別化しています。
地域向け勉強会を開催する
たとえば、次のようなテーマの勉強会が考えられます。
- ヘルニア診療セミナー
- 痔疾患診療勉強会
- 創傷管理勉強会
地域の開業医や訪問看護師との接点が増え、紹介につながります。
Webで「日帰り手術」「ヘルニア」「痔」の患者を集めるSEO戦略・MEO戦略
[基本戦略]
外科系クリニックは、「クリニック名」ではなく、「症状名+地域名」で検索されることが多いです。これを念頭に置いたうえで、狙うべきキーワード例は次の通りです。
【ヘルニアの場合】
- 鼠径ヘルニア 東京
- 脱腸 日帰り手術
- ヘルニア 手術 入院しない
- 鼠径ヘルニア 名医
【痔の場合】
- 痔 手術 日帰り
- いぼ痔 手術
- 切れ痔 治療
「SEOで勝ちやすいコンテンツ」を意識する
Googleは医療分野で信頼性を重視します。
単なる宣伝ページより、病気解説、手術解説、術後経過、よくある質問があるホームページのほうが評価されやすい傾向があります。
[記事例]
【鼠径ヘルニア】
- 「鼠径ヘルニアを放置するとどうなる?」
- 「脱腸と鼠径ヘルニアの違い」
- 「日帰り手術と入院手術の比較」
【痔】
- 「痔は自然治癒する?」
- 「痔の手術は痛い?」
- 「女性でも肛門科を受診すべき?」
【胆石】
- 「胆石症の症状は?」
- 「胆石手術の入院期間は?」
- 「胆石の日帰り手術は可能?」
「日帰り手術」を前面に出す
日帰り手術を希望する患者は非常に多いです。
実際に成功している専門クリニックでは、次のような文言を大きく訴求しています。
- 日帰り手術専門
- 土日手術可能
- 術後24時間対応
なお、患者は主に次の3点を知りたがっています。
- 入院が必要か
- 仕事を何日休む必要があるか
- 費用はいくらか
MEO(Googleマップ対策)
昨今は、「ヘルニアクリニック 新宿」「肛門科 新橋」などでGoogleマップ検索する患者が増えています。
そのため、次の対策をとることが重要です。
- Googleビジネスプロフィールの整備
→院内写真掲載
→手術設備写真掲載
→口コミ収集
→診療内容の詳細記載
開業初年度の優先順位
開業初年度に優先すべき順序は次の通りです。
- ①地域病院・内科との連携構築
- ②Googleビジネスプロフィール開設
- ③「ヘルニア」「痔」「粉瘤」専用ページ作成
- ④手術実績の掲載
- ⑤症状解説ブログを継続更新
- ⑥Google広告運用
外科・消化器外科開業の収益モデルと損益分岐点
外科・消化器外科クリニックは、内科クリニックと異なり、「外来収益+検査収益+手術収益」の3本柱で収益を作ります。ただし、一般外科中心なのか、手術に特化しているのかなどによって収益モデルに違いが出てきます。
たとえば、次のような収益モデルが考えられます。
【モデル① 一般外科中心】
- 外来患者:30~50人/日
- 外傷処置
- 粉瘤摘出
- 巻き爪治療
- 創傷管理
[特徴]
- 安定性は高い
- 手術単価は低め
- 患者数依存型
【モデル② 消化器外科+内視鏡】
- 外来
- 胃カメラ
- 大腸カメラ
- ポリープ切除
[特徴]
- 検査収益が大きい
- 手術依存度が低い
- 比較的安定
【モデル③ 日帰り手術特化型】
- 鼠径ヘルニア
- 痔
- 下肢静脈瘤
- 小手術
[特徴]
- 高収益
- 手術件数で利益が大きく変動
- Web集患が重要
上記3つのモデルケースでは、どれが自分の理想に近いかを考えて、対策を講じていくといいでしょう。
損益分岐点の考え方
クリニック経営において、損益分岐点(黒字と赤字の差がゼロになる売上)は次の計算式で考えます。
損益分岐点 = 固定費 ÷(1-変動費率)
(1-変動比率=限界利益率)
- 固定費:人件費、医師・スタッフの給与、地代家賃、医療機器のリース料、減価償却費など
- 変動費率:医薬品費、医療材料費などの変動費を売上高で割った割合(クリニックでは一般的に15~25%程度)
なお、損益分岐点が低ければ低いほど、経営は安定しているということになります。では、どうすれば損益分岐点を下げることができるかというと、次の3つのアプローチが考えられます。
- ①固定費の削減
- ②変動比率の引き下げ
- ③販売単価(粗利率)の向上
このうち、①の固定費に関しては、外科系クリニックは一般的に高くなる傾向にあります。
例として、日帰り手術をおこなうクリニックが次の体制を整えていた場合の、毎月の固定費をみてみましょう。
[日帰り手術をおこなう外科の体制]
- 医師1名
- 看護師3名
- 事務2名
- テナント30~50坪
- 手術室1室
[毎月の固定費]
- 人件費:250~350万円
- 家賃:50~100万円
- 医療機器リース:30~80万円
- 広告費:20~100万円
- その他経費:50~100万円
(合計:400~700万円)
これらの項目をみたらわかる通り、いずれもクリニックの運営に必要不可欠なものなので、固定費を削減することは簡単ではありません。
また、②の変動比率の引き下げを実現するためには、材料費の見直しや医療材料の共同購入などが有効ではありますが、こちらもハードルが高いといえます。
つまり、③の販売単価の向上がもっともシンプルな方法ですが、保険診療に関しては、診療報酬で決まっているため自由に値上げすることができません。そのため、実務上は次のような方法によって、「(患者数で全体の売上を割った場合の)患者1人あたりの売上」を上げるということになります。
- 手術件数を増やす
- 内視鏡件数を増やす
- より高単価な手術を増やす
- 自費診療を導入する
また、先に解説した通り、施設基準を満たしていることによって加算できる点数もあるので、その点についても考えていくことが非常に大切です。
失敗しないための外科・消化器外科開業チェックリスト
外科・消化器外科の開業は、内科に比べて設備投資が大きく、人員配置が多く、病院との連携が重要であるという特徴があります。
そのため、「患者数が増えれば何とかなる」ではなく、開業前の準備が非常に重要です。
開業前には、次のチェックリストを活用して、準備が万端であるかを確認することをおすすめします。
診療コンセプトは明確か
□ 一般外科中心・消化器外科中心・内視鏡中心・日帰り手術中心などの基本コンセプトは?
□ 在宅医療もおこなうかどうか
□ 自由診療を導入するかどうか
[よくある失敗例]
- 何でも診るクリニックになってしまう
- 強みが患者に伝わらない
- 紹介元医療機関も紹介しにくい
たとえば次のようにコンセプトを固めて、地域に強みが伝わりやすいようにすることが大切です。
「粉瘤・ヘルニア・痔の日帰り手術」
「外科専門医による消化器診療」
商圏分析は十分か
□ 半径1~3kmの人口を調査した
□ 年齢構成を確認した
□ 競合クリニックを調査した
□ 病院の診療内容を調査した
□ 再開発計画を確認した
[確認したい競合]
- 外科
- 消化器内科
- 肛門外科
- 内視鏡クリニック
- 日帰り手術クリニック
病診連携先は確保できているか
□ 地域中核病院
□ 救急病院
□ 内科クリニック
□ 整形外科
□ 訪問看護ステーション
外科では特に重要です。
紹介患者を受けるだけでなく、次の点についても対応できるようにしておくことが大切です。
- 緊急入院
- 高度医療への紹介
- 術後フォロー
資金計画は現実的か
□ 自己資金額を把握している
□ 借入返済額を試算した
□ 開業後6か月分の運転資金がある
□ 最悪シナリオを作成した
外科・消化器外科の開業では、次の項目への費用が大きいと、高額になりやすい傾向にあります。
- 内装
- 手術設備
- 内視鏡設備
損益分岐点を把握しているか
□ 月固定費を計算した
□ 損益分岐点売上を算出した
□ 患者数換算をした
月商見込みを算出したうえで、次の点について考えておくことが必要です。
- 外来何人必要か
- 内視鏡何件必要か
- 手術何件必要か
工事を始める前の段階で、図面を保健所に見てもらって相談したか
□ 診察室
□ 処置室
□ 手術室
□ 内視鏡室
□ リカバリー室
□ 医療廃棄物保管場所
工事後の修正は高額になります。
図面完成時点で保健所へ相談するのが安全です。
スタッフ採用計画はあるか
□ 看護師人数が適切
□ 医療事務人数が適切
□ リーダー候補がいる
□ 採用スケジュールを作成した
なお、外科系では、オペ介助、内視鏡介助、リカバリー管理ができる看護師の確保が重要です。
集患戦略はあるか
□ ホームページ制作
□ Googleビジネスプロフィール作成
□ SEO対策
□ 紹介患者対策
□ Google広告
外科は紹介患者が重要ですが、
近年は、「ヘルニア」「痔」「粉瘤」「胆石」などのキーワードで検索して受診する患者も多く、Web対策が欠かせません。
SEO対策ページを準備したか
特に次のキーワードを盛り込むことが大切です。
□ 鼠径ヘルニア
□ 痔
□ 粉瘤
□ 胆石
□ 巻き爪
□ 日帰り手術
患者は、「クリニック名」よりも「症状名+地域名」で検索する傾向があります。
医療安全体制は整っているか
□ 緊急対応マニュアル
□ 医療事故対応
□ 感染対策
□ BLS・ACLS体制
□ 緊急搬送ルート
日帰り手術をおこなう場合は特に重要です。
開業後1年間の目標を数値化したか
□ 月間外来患者数
□ 月間手術件数
□ 月間内視鏡件数
□ 月間売上
□ 紹介件数
(例)
- 外来 600人/月
- 胃カメラ 50件/月
- 大腸カメラ 30件/月
- 手術 15件/月
など具体的に設定します。
≪最重要チェック項目≫
外科・消化器外科の開業で失敗を防ぐために、特に重要なのは次の5つです。
□ 商圏分析をおこなったか
□ 病院との連携先を確保したか
□ 損益分岐点を把握したか
□ 保健所へ図面相談したか
□ Web集患と紹介集患の両方を準備したか
この5項目が整っていると、開業後の大きなトラブルや集患不足のリスクをかなり減らせます。
外科・消化器外科の開業成功のためには「事前準備」が極めて大切
開業成功のために事前準備が大切なのは、全診療科に共通していえることではあります。しかし、近隣の医療機関や検診センターなどとの連携が重要であることや、「症状+エリア」でクリニックを探す患者が多いことなどから、外科・消化器外科の場合は特に重要であるといって過言ではないでしょう。そのため、まずは開業を希望しているエリアを実地調査したり、人気クリニックのホームページを分析したりしながら、下地を固めていくことからはじめるといいでしょう。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
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