紹介状を書くとき、「この患者はどこへ送るべきか」を判断する場面があります。近隣の中核病院か、大学病院か。判断の前提になるのが、病院ごとに医療法上の位置づけが違うという事実です。
なかでも特定機能病院は、高度な医療を担う病院として厚生労働大臣の承認を受けた、全国で88施設しかない特別な区分です。
本記事では特定機能病院の定義と承認要件を整理し、混同されやすい地域医療支援病院との違い、そしてクリニックの立場から見た連携の実務までをまとめます。
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特定機能病院とは
高度医療を提供・開発・研修する病院
特定機能病院とは、高度な医療の提供、高度な医療技術の開発、高度な医療に関する研修を行う能力を備えた病院として、厚生労働大臣の承認を受けた医療機関です。
1992年(平成4年)の第2次医療法改正で制度化され、1993年4月に施行されました。一般の病院から紹介された、高度先端医療を必要とする患者に対応する役割を担います。
令和7年6月1日現在で88病院が承認されています。 大学病院の本院が中心で、そこにナショナルセンターや一部の専門病院が加わる構成です。
承認の要件
医療法および関連する省令により、次の要件を満たす必要があります。
構造・設備
- 一般の病院の設備に加え、集中治療室・無菌病室・医薬品情報管理室を備えること
- 400床以上の病床を有すること
- 16以上の診療科を標榜すること
診療実績
- 他の医療機関からの紹介率が30%以上であること
人員配置
ここが一般病院との差が最も大きい部分です。
| 職種 | 特定機能病院 | 一般病院 |
|---|---|---|
| 医師 | 通常の病院の約2倍の配置が最低基準 | — |
| 薬剤師 | 入院患者数 ÷ 30 | 入院患者数 ÷ 70 |
| 看護師等 | 入院患者数 ÷ 2 | 入院患者数 ÷ 3 |
薬剤師は一般病院の2倍以上、看護師も1.5倍の人員が求められます。高度医療を安全に提供するための体制として、人の厚みが要件化されているわけです。
地域医療支援病院との違い
似た響きで混同されやすいのが地域医療支援病院です。役割はむしろ対照的といえます。
| 項目 | 特定機能病院 | 地域医療支援病院 |
|---|---|---|
| 創設 | 1992年(第2次医療法改正) | 1997年(第3次医療法改正) |
| 承認者 | 厚生労働大臣 | 都道府県知事 |
| 病床数 | 400床以上 | 200床以上 |
| 紹介率 | 30%以上 | 80%以上 |
| 役割 | 高度医療の提供・開発・研修 | 地域の病院・診療所の後方支援 |
紹介率の要件が逆転して見える点が理解の鍵です。地域医療支援病院は80%以上と高く設定されており、「地域の医療機関から紹介された患者を診る」ことが存在意義そのものになっています。
一方の特定機能病院は30%。数字だけ見ると低いようですが、こちらは高度医療の提供・開発・研修という機能の水準が問われる区分であり、紹介率は要件の一部にすぎません。
役割の違いを一言でまとめると、こうなります。
- 地域医療支援病院 — かかりつけ医を支える。退院後の在宅療養まで含めて地域を面で支える
- 特定機能病院 — 紹介を受ける立場に徹する。超急性期・高度専門治療に集中する
クリニックの立場から見た連携の実務
紹介先の選択が診療の質を決める
外来で「これは専門的な検査・治療が必要」と判断したとき、送り先の選択肢は複数あります。
- 近隣の中小病院(入院・検査の後方支援)
- 地域医療支援病院(地域の連携拠点)
- 特定機能病院(高度・専門治療)
特定機能病院は「地域で完結しない医療」の受け皿です。逆に言えば、地域で対応できる症例を最初から特定機能病院へ送ると、外来が混み、患者の待ち時間も長くなります。機能に応じた送り分けが、結果的に患者の利益になります。
選定療養費の説明は院内で共有しておく
紹介状なしで200床以上の病院を受診した場合、患者は選定療養費(初診時の特別な料金)を負担します。特定機能病院や地域医療支援病院ではこの徴収が義務づけられており、金額も高めに設定されています。
患者から「大きい病院に行きたい」と相談されたときに、紹介状の有無で費用が変わることを受付段階で説明できるかどうかで、患者の納得度は変わります。院内で説明の型を決めておくと、トラブルを避けられます。
逆紹介を受ける側としての準備
特定機能病院は急性期に集中する分、状態が安定した患者はかかりつけ医へ戻す(逆紹介)流れが標準です。
このとき戻ってくる情報は、診療情報提供書に加えて、投薬内容・検査結果・今後の方針など多岐にわたります。受け取った情報を診療録にどう取り込むかを決めておかないと、次回来院時に「病院で何をされたのか分からない」状態になりがちです。
電子カルテを使っている場合は、診療情報提供書や検査結果をスキャン・添付して、経過と紐づけて残す運用にしておくと、逆紹介後のフォローが安定します。
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よくある質問
Q. 特定機能病院は全国にいくつありますか?
令和7年6月1日現在で88病院です。大学病院の本院が中心で、ナショナルセンターや一部の専門病院が加わっています。
Q. 特定機能病院と大学病院は同じ意味ですか?
違います。特定機能病院は医療法上の承認区分で、大学病院はその多くが該当しますが、すべての大学病院が特定機能病院というわけではありません(分院などは該当しないことがあります)。
Q. 紹介状なしで特定機能病院を受診できますか?
受診自体は可能ですが、選定療養費として初診時に特別な料金が発生します。金額は施設によって異なるため、患者に案内する際は各病院のサイトで確認してください。
Q. クリニックから特定機能病院へ紹介するときの注意点は?
地域で対応できる症例かどうかを先に判断することです。高度・専門的な医療が必要な場合に限って紹介するのが、制度の趣旨に沿った使い方になります。紹介状には経過・実施済みの検査・依頼内容を明確に記載します。
Q. 承認が取り消されることはありますか?
あります。要件を満たさなくなった場合や、重大な医療安全上の問題が生じた場合、承認が取り消された事例が過去にあります。承認は一度受ければ永続するものではありません。
まとめ
特定機能病院とは、高度医療の提供・開発・研修を担う病院として厚生労働大臣の承認を受けた医療機関です。400床以上・16診療科以上・紹介率30%以上といった要件に加え、薬剤師や看護師の配置が一般病院の1.5〜2倍求められる点が特徴で、令和7年6月1日時点で全国88施設にとどまります。
地域医療支援病院とは役割が対照的です。地域医療支援病院がかかりつけ医を支える「面」の存在であるのに対し、特定機能病院は高度専門治療に集中する「点」の存在と捉えると整理しやすくなります。
クリニックの立場では、紹介先を機能で使い分けること、選定療養費の説明を院内で統一しておくこと、そして逆紹介で戻ってきた情報を診療録に確実に取り込むこと——この3点が実務の要点になります。
参考
- 医療法(特定機能病院・地域医療支援病院)
- 厚生労働省「特定機能病院の承認について」
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
