診療の合間に、薬局から「処方の件で確認したいのですが」と電話が入る。あれが疑義照会です。
薬剤師が勝手に確認しているわけではありません。法律で義務づけられた行為であり、医療機関側にも応じる義務があります。この記事では、疑義照会の法的な位置づけ、よくある照会の中身、そして照会を減らすためにクリニック側でできることを整理します。
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疑義照会とは
疑義照会とは、薬剤師が処方箋の内容に疑わしい点を見つけたとき、処方した医師に問い合わせて確認する行為です。
根拠は薬剤師法第24条です。
薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。
「確かめた後でなければ調剤してはならない」という書き方に注意してください。疑義が解消するまで、薬剤師は薬を出せません。電話が来た時点で、患者は薬局で待っています。
医療機関側にも義務がある
見落とされがちですが、応じる側にも規定があります。
保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第23条第2項では、保険医は、交付した処方箋について保険薬剤師から疑義の照会があった場合、これに適切に対応しなければならないと定められています。
つまり疑義照会は、薬剤師の一方的な確認作業ではなく、両者に義務がある手続きです。「忙しいので後で」が続くと、患者の待ち時間がそのまま延びます。
どんなときに照会が来るのか
現場で多いのは、次の類型です。
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| 記載の不備 | 用法・用量の記載漏れ、日数の記載がない、剤形の指定が不明確 |
| 用量の疑い | 常用量を超えている、小児の体重換算と合わない、腎機能を考えると多い |
| 相互作用・重複 | 併用禁忌、他院の処方と同一成分が重なっている |
| アレルギー・禁忌 | 薬歴にある禁忌薬が処方されている |
| 保険上の問題 | 適応外、投与日数の上限超過、後発品への変更可否の確認 |
| 判読できない | 手書き処方箋の文字、規格違いの取り違え(例:5mgと0.5mg) |
このうち「記載の不備」と「判読できない」は、処方の中身ではなく書き方の問題です。つまりクリニック側の運用で減らせる部分です。
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照会が来たときの答え方
電話を受ける人を決めておく
医師本人が常に出られるとは限りません。受付が一次受けし、内容をメモして医師へ回す運びを決めておくと、診療の流れが止まりにくくなります。
このときメモに残すべきは3点です。
- どの患者の、いつの処方か(氏名・生年月日・処方日)
- 何が疑わしいのか(薬剤名と、照会の理由)
- 薬局名と担当薬剤師名、折り返し先
回答は「変更あり/なし」を明確に
曖昧な返事がいちばん困ります。「たぶん大丈夫です」では薬剤師は調剤に進めません。
- 処方どおりでよい → 「処方どおりで調剤してください」と明言する
- 変更する → 変更後の薬剤名・規格・用法・用量を口頭で正確に伝える
- 中止する → 中止する薬剤を特定して伝える
記録は薬局側にも残る
疑義照会の内容と回答は、処方内容の変更の有無にかかわらず、処方箋(備考欄など)と調剤録に記入されます。薬局側の記録として残るということです。
クリニック側でも、カルテに残しておくことを勧めます。照会の事実と回答が診療録に無いと、後から経過を追えません。電子カルテなら、該当日の記録に一行を追記しておけば足ります。
照会そのものを減らす
「対応の手順」より効くのは、照会が来ない処方を出すことです。手を入れられるところは限られています。
1. 処方箋の記載を機械側で固める
用法・用量の記載漏れや剤形の不明確さは、電子カルテの入力時にチェックがかかるかどうかで件数が変わります。用法マスタを整備し、フリーテキストで用法を打つ運用を減らすのが基本です。
手書き処方箋を併用している場合、判読の照会は一定量、必ず発生します。規格違いの取り違えは事故につながるため、この点だけでも電子化の効果があります。
2. 併用薬を診療時に拾う
他院の処方との重複・相互作用は、診察時に併用薬を把握できていれば減ります。マイナ保険証の資格確認を通じて薬剤情報を参照できる体制があれば、この確認は診察の中で完結します。
3. 常連の照会理由を洗い出す
同じ理由の照会が繰り返されているなら、それは個別のミスではなく運用の問題です。月に数件でも記録が残っていれば、傾向は見えます。「この薬の日数が毎回引っかかる」といった型が見つかれば、マスタ側で直せます。
よく照会が来る薬局と、来ない薬局
照会の頻度は薬局によって差があります。これは薬局の姿勢の違いというより、門前かどうか、患者層が重なっているかによる部分が大きいものです。
門前薬局は同じ処方を繰り返し見ているため、院の処方の癖を把握しており、確認が少なくなる傾向があります。逆に、面で受けている薬局からは初見の処方が多く、確認が増えます。
「照会が多い=処方が悪い」ではありません。内容を見て、記載の問題なのか、判断の問題なのかを分けてください。
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簡素化プロトコルという選択肢
一部の医療機関では、あらかじめ合意した範囲について、事前の照会を省略する取り決めを薬局と結んでいます。「疑義照会簡素化プロトコル」と呼ばれるものです。
対象になりやすいのは、残薬調整に伴う日数変更、規格違いの変更、剤形の変更、湿布の枚数調整など、治療方針に影響しない範囲です。事後に報告を受ける形にします。
導入には薬局側との合意と、院内での運用整備が要ります。照会の件数が多く、その大半が形式的な確認で占められている場合には、検討する価値があります。
よくある質問
Q. 疑義照会に応じないとどうなりますか。
A. 療担規則で適切な対応が求められているため、応じない状態が続けば指導の対象になり得ます。それ以前に、患者が薬を受け取れません。
Q. 医師が不在のとき、看護師が答えてよいですか。
A. 処方の変更に関わる判断は医師が行うものです。看護師が一次受けして内容を整理し、医師の判断を仰いで折り返すのが現実的な運用です。
Q. 「変更なし」の回答でも記録は要りますか。
A. 薬局側は変更の有無にかかわらず記録します。クリニック側も、照会があった事実は残しておくほうが安全です。
Q. FAXやメッセージでの照会は可能ですか。
A. 薬局との合意があれば、緊急性の低いものを文書でやり取りしている例はあります。ただし急を要するものは電話になります。
まとめ
- 疑義照会は薬剤師法第24条に基づく薬剤師の義務で、医療機関側にも療担規則第23条第2項で対応義務がある
- 疑義が解消するまで調剤は進まない。患者は薬局で待っている
- 照会の一定量は記載の不備と判読の問題で、処方箋の作り方で減らせる
- 回答は「処方どおり」か「変更後の内容」かを明確に伝える
- 件数が多く形式的な確認が大半なら、簡素化プロトコルの検討余地がある
疑義照会は、処方の最後の安全網です。件数を目の敵にするのではなく、減らせる型と残すべき型を分けるところから始めてください。
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参考
- 薬剤師法(昭和35年法律第146号)第24条
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第23条第2項
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
