在宅で1人を看取ったあと、チームには言葉にならないものが残ります。
「あの時、入院を勧めるべきだったのか」「家族にもっと説明できたのではないか」。
その問いを個人の中に置いたままにせず、チームで扱う場がデスカンファレンスです。
在宅医療や緩和ケアを行う診療所で広がっていますが、
「やったほうがいいのは分かるが、続かない」という声もよく聞きます。
この記事では、何を目的とする場なのか、どう進めるか、そして続かなくなる理由を整理します。
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デスカンファレンスは「反省会」ではない
デスカンファレンス(death conference)は、患者が亡くなった後に、
関わった医療・介護スタッフが集まってその事例を振り返る場です。
日本語では死亡症例検討会、看取りカンファレンスなどと呼ばれます。
重要なのは、医学的な症例検討会(M&Mカンファレンス)とは目的が違うという点です。
| 症例検討会(M&M) | デスカンファレンス | |
|---|---|---|
| 主な問い | 医学的判断は妥当だったか | 本人・家族の希望に沿えたか |
| 扱う対象 | 診断・治療・合併症 | 意思決定、家族対応、チーム連携、スタッフの感情 |
| 目的 | 医療の質の改善 | ケアの質の改善と、チームのケア |
両方を混ぜると場が壊れます。
「あの判断は誤りだった」という話を始めると、参加者は自己防衛的になり、
本音が出なくなるためです。医学的な検証が必要な事例は、別の場で扱ってください。
何のためにやるのか——3つの目的
1. ケアの質を上げる
本人が最期に望んだことは何だったか。それは叶えられたか。
叶えられなかったとしたら、どこに手が届かなかったか。
次の患者に対して、チームが同じ場所でつまずかないための材料になります。
2. スタッフの感情を扱う
看取りに関わったスタッフ、とくに訪問看護師やヘルパーは、
患者・家族との距離が近いぶん、喪失感を抱えます。
それを「業務だから」と個人で処理させ続けると、燃え尽きにつながります。
デスカンファレンスは、その感情を口に出してよい場として機能します。
これはグリーフケア(悲嘆へのケア)の一種で、
遺族だけでなく、支援した側にも必要なものです。
3. 多職種の見え方をそろえる
医師が見ていたもの、看護師が見ていたもの、ケアマネジャーが見ていたものは違います。
「家族はあのとき、実はこう言っていた」という情報が、
カンファレンスで初めて共有されることは珍しくありません。
進め方の型
決まった形式はありませんが、次の骨格で回している施設が多くみられます。
開催時期:死亡から2週間〜1か月後
直後は感情が生に近すぎて話しにくく、3か月も経つと記憶が薄れます。
時間:30〜60分
長くすると開催自体が負担になり、続きません。
参加者:医師、看護師、ケアマネジャー、訪問看護ステーション、ヘルパー、必要に応じてMSWや薬剤師
関わった職種を広く呼びますが、全員参加を必須にすると日程が決まりません。
進行の順序
- 経過の共有(5分程度、担当者が簡潔に)
- 各職種が見ていた場面を出す
- 本人・家族が望んでいたことは何だったかを確認する
- うまくいったことを先に出す
- 難しかったこと、迷ったことを出す
- 次に活かせることを1つか2つ決める
4を5より先に置くのがコツです。
反省から入ると場が重くなり、次回から人が来なくなります。
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続かなくなる3つの理由と、その対策
理由1:全例やろうとする
在宅患者が多い診療所で全例を扱うのは無理です。
印象に残った事例、迷いが残った事例に絞るほうが続きます。
月1回、1〜2事例で十分です。
理由2:時間が取れない
訪問の合間に集まるのは現実的ではありません。
定例のカンファレンスの後半15分を充てる、
オンラインで参加できるようにするなど、既存の枠に埋め込むほうが定着します。
理由3:発言が特定の人に偏る
医師とベテラン看護師だけが話し、若手やヘルパーが黙る形になりがちです。
司会が職種ごとに指名して回す、
「その場面をどう見ていましたか」と事実から聞く、といった進行の工夫が効きます。
記録をどう残すか
記録は残すべきですが、内容によって置き場所を分ける必要があります。
- 診療上の事実(経過、判断、家族への説明内容)は診療録に
- チームの学び(次に活かすこと)は施設内の記録に
- スタッフの個人的な感情の吐露は記録に残さない
3つ目が重要です。
「記録される」と分かっている場で、人は本音を言いません。
記録しないことを最初に明言しておくと、場の質が変わります。
電子カルテを使っている場合、看取りに至るまでの訪問記録や
家族への説明内容がすでに時系列で残っているはずです。
それを事前に印刷または画面共有して経過の共有に使うと、準備の負担が減ります。
よくある質問
Q. 遺族を招くこともありますか。
デスカンファレンス自体は医療・介護者側の場です。
遺族へのグリーフケアは、遺族訪問や手紙など別の形で行うのが一般的です。
Q. 診療報酬の算定はできますか。
デスカンファレンスそのものを直接評価する報酬項目はありません。
ただし在宅看取りに関連する加算の要件として、
多職種での情報共有や連携体制が求められる場面があります。
算定要件は改定のたびに変わるため、最新の点数表で確認してください。
Q. 参加できなかったスタッフへの共有はどうしますか。
学びとして共有すべき点だけを短くまとめ、
感情面のやり取りは含めない形で回すのが安全です。
Q. 病院と在宅で違いはありますか。
在宅では、生活の場での看取りである以上、
家族の負担や住環境、介護サービスの調整が論点に入ります。
医学的な経過よりも、生活と意思決定の話が中心になりやすいのが特徴です。
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まとめ
デスカンファレンスは、看取りの後にチームで事例を振り返る場です。
医学的な検証ではなく、本人・家族の希望に沿えたかを確認し、
同時にスタッフの感情を扱うことに目的があります。
続けるコツは3つ。全例やらない。既存の会議枠に埋め込む。感情の部分は記録しない。
月1回、30分、1事例から。
それだけでも、チームが次の看取りに向かう準備は変わります。
参考
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
- 厚生労働省「在宅医療の推進について」
- 日本ホスピス緩和ケア協会
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
