確定申告の時期が近づくと、患者の家族から「おむつ代の証明書を書いてほしい」という依頼が増える。
おむつ使用証明書は、寝たきりの患者のおむつ代を医療費控除の対象にするための書類だ。
ただ、依頼があれば必ず発行できるわけではない。
発行の要件があり、要介護認定を受けている患者なら、クリニックが証明書を書かなくても市町村の書類で足りる場合もある。
この代わりの書類の扱いは、令和6年分の申告から変わっている。
この記事では、おむつ使用証明書の発行要件、様式の記入項目、主治医意見書で代える仕組みを整理する。
受付での案内文例と、発行時のチェックリストも載せた。
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おむつ代が医療費控除の対象になる条件
国税庁の質疑応答事例では、おむつ代の医療費控除について次のように説明されている。
- 傷病によりおおむね6か月以上にわたり寝たきりで、医師の治療を受けている人のおむつ代は、医師による治療を受けるため直接必要な費用として医療費控除の対象になる
- そのことが「おむつ使用証明書」で明らかにされている必要がある
つまり、次の3つがそろって初めて対象になる。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 寝たきりの状態 | 傷病によりおおむね6か月以上にわたり寝たきりである |
| 治療を受けている | 医師の治療を受けている |
| 証明 | 治療上おむつの使用が必要であることが証明書で明らかになっている |
医療費控除を受けるには、確定申告書に医療費控除の明細書を添付し、おむつ使用証明書を添付または提示する。
なお、証明年月日、証明の名称、証明者の名称(医療機関名など)を明細書の欄外余白などに書けば、証明書の添付や提示を省略できる。
その場合、証明書は医療費の領収書と一緒に、確定申告期限から5年間保存する必要がある。
おむつ使用証明書を発行するのは誰か
国税庁の説明では、おむつ使用証明書は現に治療を行っている医療機関が作成して交付することとされている。
証明書の様式は、厚生労働省から医師会などの関係団体や自治体に通知されている。
様式の注意書きでも、証明書は、その患者に対して頭書の傷病により継続して治療を行っている医師が記載することとされている。
一度だけ受診した患者や、治療の中心が他院にある患者から依頼があった場合は、主に治療している医療機関で発行してもらうよう案内するのが基本になる。
様式の記入項目
おむつ使用証明書の様式は、次の項目で構成されている。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 患者 | 住所、氏名、生年月日、性別 |
| 傷病名 | 傷病名を記入し、「によりおおむね6か月以上にわたり寝たきり状態にある、又はあると認められる」ことを証明する形になっている |
| 治療状況 | 入院(所)中、在宅で治療中のいずれか |
| おむつ使用の必要期間 | 始期と終期。日付で書くか、1月1日から同年末までの形で書くかを選ぶ |
| 証明文 | 頭書の傷病により、必要期間中の治療に際しおむつの使用が必要であることを証明する |
| 証明日 | 年月日 |
| 証明者 | 医療機関名、所在地、医師氏名 |
必要期間の書き方
様式の注意書きによると、「必要期間」は、その年において患者が上記の状態にあると認められる期間である。
その年の1月1日より前からおむつが必要で、かつ1年以上にわたって必要性が認められる場合は、始期・終期ともに「1月1日から」「同年末まで」の形を選ぶ。
必要期間が過ぎた後に、さらに治療のためおむつが必要と認められる場合は、改めて証明書を発行する。
年の途中で状態が変わった患者は、期間の書き方を医師に確認してから清書するとよい。
領収書についての注意
様式に付いている説明では、おむつ代の領収書は、患者の氏名と成人用のおむつ代であることが明記されたものが必要とされている。
証明書だけそろっても、領収書の記載が足りないと控除を受けにくくなるので、受付で一言添えておくと親切だ。
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主治医意見書の確認書類で代える仕組み
要介護認定を受けている患者の場合、おむつ使用証明書の代わりに、主治医意見書の内容を市町村が確認した書類、または主治医意見書の写しを使える場合がある。
この取り扱いは、令和6年分の申告から範囲が広がった。
年分ごとの違い
| 申告する年分 | 主治医意見書で代えられる人 |
|---|---|
| 令和5年分まで(令和6年分を令和6年12月31日までに提出する場合を含む) | おむつ代の医療費控除を受けるのが2年目以降の人に限る |
| 令和6年分以後(令和7年1月1日以後に提出する場合) | 1年目の人も対象 |
令和6年分以後の要件は、国税庁の質疑応答事例で次のように示されている。
- 1年目の場合:おむつを使ったその年に受けていた要介護認定と、それを含む有効期間が連続した複数の認定で、その年以降の有効期間を合算して6か月以上となるものの審査で作成された主治医意見書であること(一定の記載があるものに限る)
- 2年目以降の場合:おむつを使ったその年に主治医意見書が作成されていないときは、その年に受けていた要介護認定(有効期間が13か月以上のものに限る)の審査で作成された主治医意見書であること(一定の記載があるものに限る)
「一定の記載」について、国税庁の法令解釈通達に付された厚生労働省の照会文では、主治医意見書の「障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)」がB1、B2、C1またはC2で、かつ「尿失禁の発生可能性」が「あり」の場合に代わりの書類として認められるとされている。
確認書類を出すのは市町村
ここで注意したいのは、確認書類を発行するのはクリニックではなく市町村だという点だ。
市町村が、本人の申出にもとづいて、主治医意見書の作成日、寝たきり度、尿失禁の発生可能性を記載した書類を作成する。
クリニックは、主治医意見書を作成する立場としてこの仕組みに関わる。
主治医意見書の寝たきり度などの欄を、現状に即して正確に書いておくことが、結果として患者の手続きの負担を減らすことにもつながる。
どちらの書類で案内するかの境界線
依頼を受けたときの案内は、患者の状況によって分けられる。
- 要介護認定を受けていて、主治医意見書に寝たきりと尿失禁の可能性が記載されていそうな患者:市町村の確認書類で足りる可能性がある。まず市町村の介護保険担当に問い合わせるよう案内すると、医療機関の文書料をかけずに済むことがある
- 要介護認定を受けていない、または意見書の有効期間の要件を満たさない患者:おむつ使用証明書が必要になる。医師が要件を満たすと判断すれば発行する
- 寝たきりの期間がおおむね6か月に満たない、または医師の治療を受けていない患者:どちらの書類でも医療費控除の対象にならない。証明書の発行を急ぐより、状況を確認して説明する方がよい
主治医意見書に何が書かれているか、市町村の確認書類の要件を満たすかは、最終的に市町村が判断する。
受付で「確認書類で大丈夫です」と言い切らず、「市町村で確認書類を出してもらえる場合があります」と伝えるのが無難だ。
文書料の設定
おむつ使用証明書は保険診療ではなく、文書料は各医療機関が設定する自費の料金になる。
国が定めた金額はない。
設定と運用では、次の点を決めておきたい。
- 他の診断書や証明書と比べて、記入項目の量に見合った金額にする
- 料金を院内の自費料金一覧に載せ、依頼時に金額を伝える
- 継続して毎年依頼される患者が多いことを踏まえ、発行までの日数を決めておく
市町村の確認書類で足りる患者に、文書料のかかるおむつ使用証明書をそのまま発行すると、後で「市町村の書類で足りたのに」と言われることがある。
先に境界線の説明をしておくと、こうした行き違いを防げる。
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受付での案内文例
窓口・電話での案内文例
おむつ代を医療費控除の対象にするには、おおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けていること、治療上おむつが必要であることの証明が必要です。当院で治療を継続している方には、医師が確認のうえ「おむつ使用証明書」を発行します。文書料は○○円で、お渡しまで○日ほどいただいています。
なお、要介護認定を受けている方は、主治医意見書の内容をもとに市町村が発行する確認書類で代えられる場合があります。お住まいの市町村の介護保険担当窓口にお問い合わせください。
おむつ代の領収書は、患者さんのお名前と大人用のおむつであることが書かれたものをご用意ください。
院内掲示の文例
おむつ代の医療費控除のための証明書について
当院で継続して治療を受けている方で、傷病によりおおむね6か月以上寝たきりの状態にあり、治療上おむつの使用が必要な方には、「おむつ使用証明書」を発行します(文書料○○円)。
要介護認定を受けている方は、市町村の確認書類で代えられる場合があります。
ご希望の方は受付までお申し出ください。
発行時のチェックリスト
- 当院で継続して治療を行っている患者である
- 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりの状態にあると医師が判断している
- 要介護認定の有無を確認し、市町村の確認書類で代えられる可能性を案内した
- 傷病名、治療状況(入院中か在宅か)を記入した
- 必要期間の始期と終期の書き方を医師に確認した
- 医療機関名、所在地、医師氏名、証明日を記入した
- 文書料を事前に伝え、自費として会計した
- 領収書の記載(患者氏名、成人用であること)について案内した
- 発行した証明書の控えをカルテに保存した
よくある質問
おむつ使用証明書は毎年必要か
医療費控除は年分ごとに申告するため、おむつ代の控除を受けるたびに、その年の状態を示す書類が必要になる。
要介護認定を受けていて主治医意見書の要件を満たす場合は、市町村の確認書類や主治医意見書の写しで代えられることがある。
入院中の患者のおむつ代も対象になるか
様式の治療状況欄には「入院(所)中」の選択肢があり、入院中の患者も証明の対象として想定されている。
在宅か入院中かにかかわらず、寝たきりの状態と治療上の必要性が要件になる。
証明書は確定申告書に必ず添付しなければならないか
国税庁の説明では、証明年月日、証明の名称、証明者の名称を医療費控除の明細書の欄外余白などに書けば、添付や提示を省略できる。
その場合、証明書は領収書とともに確定申告期限から5年間保存する必要がある。
患者の家族から聞かれたら、証明書をなくさないよう伝えておきたい。
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まとめ
おむつ使用証明書は、傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで医師の治療を受けている患者について、治療上おむつが必要であることを、現に治療を行っている医療機関が証明する書類だ。
様式は、傷病名、治療状況、おむつ使用の必要期間、証明者の欄で構成されている。
要介護認定を受けている患者は、主治医意見書の内容を市町村が確認した書類や意見書の写しで代えられる場合がある。
令和6年分以後の申告からは、控除を受けるのが1年目の人もこの方法を使えるようになった。
受付では、証明書を発行する前に要介護認定の有無を確認し、市町村の確認書類で足りる可能性を伝えるとよい。
文書料と発行日数を決めて掲示しておけば、確定申告前の依頼が集中する時期も落ち着いて対応できる。
参考
- 国税庁「寝たきりの者のおむつ代」(質疑応答事例) https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/54.htm
- 国税庁「おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)」(平成14年6月25日課個2-11) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/020625/01.htm
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
