特別訪問看護指示書は、訪問看護を受けている患者の状態が一時的に変わり、通常の指示書のままでは訪問回数が足りなくなったときに、主治医が追加で交付する指示書です。様式は厚生労働省の別紙様式18で、交付できる事由・指示期間・月あたりの回数がいずれも通知で限定されています。
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通常の訪問看護指示書と何が違うのか
2つは別物の指示書ではなく、通常の指示書が出ている患者に対して特別訪問看護指示書を重ねて出す、という関係です。重ねている間だけ、訪問回数と保険の扱いが変わります。
| 訪問看護指示書(別紙様式16) | 特別訪問看護指示書(別紙様式18) | |
|---|---|---|
| 有効期間 | 6か月以内 | 14日以内 |
| 交付できる回数 | 月1回まで | 月1回まで(対象者は月2回) |
| 診療報酬 | 訪問看護指示料 300点 | 特別訪問看護指示加算 100点 |
| 訪問看護の回数 | 医療保険では原則 週3日まで | 週4日以上・1日2回以上も可 |
| 要介護認定がある患者 | 介護保険の訪問看護 | 指示期間中は医療保険の訪問看護 |
| 主な記載内容 | 傷病名、投与薬剤、医療機器、療養上の指示 | 病状・主訴、頻回に必要な理由、留意事項 |
回数の根拠は訪問看護療養費側の通知にあります。特別訪問看護指示書が交付された利用者には、難病等複数回訪問加算として1日2回または3回以上の訪問看護が算定できるとされており、週4日以上の訪問が計画されている週には2か所の訪問看護ステーションが同時に入ることも認められています。
保険の切り替わりも押さえておく必要があります。訪問看護療養費は要介護被保険者等については原則として算定できませんが、特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を行う場合は算定できると給付調整の通知に明記されています。つまり指示期間中はケアプランの外に出て医療保険の訪問看護になるため、交付前にケアマネジャーへ連絡しておかないと、訪問看護ステーション側の請求が組み替えになります。
交付できるのはどんなときか
医科点数表の留意事項通知は、特別訪問看護指示加算の要件を次のように定めています。
患者の主治医が、診療に基づき、急性増悪、終末期、退院直後等の事由により、週4回以上の頻回の指定訪問看護を一時的に当該患者に対して行う必要性を認めた場合
同じ通知は「一時的」の中身も定義しています。恒常的な頻回の訪問看護の必要性ではなく、状態の変化等で日常行っている訪問看護の回数では対応できない場合を指す、としています。したがって、もともと毎日の訪問が必要な状態が続いているケースは、この指示書ではなく別の枠組みで対応することになります。
交付できるのは、その患者の診療を担う保険医療機関の主治医です。訪問看護ステーションから「特別指示書を出してほしい」と依頼があっても、診療に基づかない交付はできません。診療の記録と指示期間の整合が、後述する返戻の分かれ目になります。
指示期間は何日で、月に何回まで出せるか
期間は14日が上限です。ただし起算日の書き方が通知によって2通りあります。
- 医科点数表の留意事項通知:当該特別の指示に係る診療の日から14日以内
- 訪問看護療養費の留意事項通知:特別訪問看護指示書の交付の日から起算して14日以内
実務では、診療日と交付日を同じ日に揃え、その日を1日目として14日目までを指示期間に書くのが安全です。診療日より前の日付から指示期間を始めると、医科側の要件を外れます。
回数は患者1人につき月1回が原則です。月2回まで出せる「別に厚生労働大臣が定める者」は、通知で次の2区分に限定されています。
- 気管カニューレを使用している状態にある者
- 真皮を越える褥瘡の状態にある者。具体的にはNPUAP分類のⅢ度またはⅣ度、もしくはDESIGN-R2020分類のD3・D4・D5
この2区分に当たる患者であれば、14日の指示を2回続けて最長28日まで組めます。当たらない患者に月2回交付しても、2回目の加算は算定できません。褥瘡で月2回を出すときは、深さの分類をカルテと指示書の両方に残しておきます。
月をまたぐこと自体は問題になりません。14日の範囲に収まっていれば、月末から翌月初にかかる指示期間で構いません。ただし加算は交付した月に算定します。
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別紙様式18の記載欄を1つずつ
別紙様式18は「特別訪問看護指示書」と「在宅患者訪問点滴注射指示書」の兼用様式です。冒頭に該当する指示書を丸で囲む欄があり、点滴注射の指示を出さないなら特別訪問看護指示書のみを囲みます。欄は通常の指示書より少なく、点滴の指示を出さない場合に埋めるのは8か所です。
| 欄 | 書く内容 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 特別看護指示期間 | 開始日と終了日。診療日を1日目として14日以内 | 終了日まで書く。空欄や「14日間」という書き方は不可 |
| 点滴注射指示期間 | 訪問点滴の指示を出す場合のみ記入 | 出さないなら空欄のまま。特別看護指示期間と一致させる必要はない |
| 患者氏名・生年月日 | カルテと同一表記 | 訪問看護ステーション側の請求と突合されるため通称名は避ける |
| 病状・主訴 | 今の状態。傷病名だけでは足りない | 主たる傷病名は傷病名コードを付すよう通知が求めている |
| 一時的に訪問看護が頻回に必要な理由 | この様式の中心。何がいつ変化し、通常の訪問回数でなぜ足りないか | 通知が記載を明示的に義務づけている欄。ここが薄いと差し戻される |
| 留意事項及び指示事項 | 観察項目、処置、連絡の判断基準 | 点滴注射薬の相互作用・副作用の留意点があれば記載する旨が様式に注記されている |
| 点滴注射指示内容 | 投与薬剤・投与量・投与方法 | 点滴の指示を出す場合のみ |
| 緊急時の連絡先等 | 診療を行った保険医療機関の電話番号等 | 通知で「必ず記載した上で」交付するとされている必須欄 |
| 交付日・医療機関名・電話・FAX・医師氏名 | 主治医の氏名と押印 | 日付は診療日と揃える |
| 事業所名 | 交付先の訪問看護ステーション名 | 複数へ交付する場合はそれぞれに作成する |
交付後の取り扱いも通知に書かれています。主治医は交付した指示書の写しを診療録に添付すること、患者の求めに応じて患者または家族等を介して交付できること、交付後でも病状に応じて期間を変更できること。写しの添付は個別指導で確認される項目なので、電子カルテに取り込むところまでを交付の手順に含めておきます。
算定できる診療報酬
特別訪問看護指示書に対応する報酬は、単独の項目ではなく訪問看護指示料の加算です。令和8年度診療報酬改定後の点数は次のとおりです。
| 項目 | 点数 | 算定できる頻度 |
|---|---|---|
| C007 訪問看護指示料 | 300点 | 月1回 |
| 特別訪問看護指示加算(注2) | 100点 | 月1回。厚生労働大臣が定める者は月2回 |
| 手順書加算(注3) | 150点 | 6か月に1回 |
| 衛生材料等提供加算(注4) | 80点 | 月1回 |
| C005-2 在宅患者訪問点滴注射管理指導料 | 100点 | 週1回。週3日以上の点滴注射の指示が要件 |
ここで最も間違いが多いのが、加算だけを請求してしまうケースです。特別訪問看護指示加算は訪問看護指示料の所定点数に加算するものなので、訪問看護指示料を算定していない月には加算だけを算定できません。訪問看護指示書の有効期間は6か月まで取れる一方、訪問看護指示料は交付した月に月1回しか算定できないため、「3か月前に6か月の指示書を出したきりの患者に、今月だけ特別指示書を出す」という状況が普通に起こります。この場合は訪問看護指示書を再交付し、訪問看護指示料と特別訪問看護指示加算を同じ月に算定します。
衛生材料等提供加算は、在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料、在宅がん医療総合診療料、在宅患者訪問点滴注射管理指導料、在宅療養指導管理料を算定した場合には、それらに含まれ別に算定できません。
訪問看護指示料を算定した月は、精神科訪問看護指示料を算定しません。精神疾患が主たる対象の場合は、様式18ではなく別紙様式17の2の精神科特別訪問看護指示書を使う建て付けです。
返戻になりやすい6パターン
- 訪問看護指示料を算定していない月に加算だけを請求している。 前述のとおり加算単独では算定できません。特別指示書を出す月は、訪問看護指示書の再交付とセットで組み立てます。
- 指示期間が15日以上になっている。 開始日を1日目として数え忘れると1日はみ出します。4月1日開始なら4月14日までです。
- 指示期間の開始日が診療日より前になっている。 訪問看護ステーションからの依頼を受けて遡って作成すると起こります。診療日・交付日・指示開始日の3つを同じ日に揃えます。
- 「一時的に訪問看護が頻回に必要な理由」が空欄、または「病状悪化のため」だけ。 通知が記載を求めている欄です。いつ何が変わり、通常の訪問回数でなぜ対応できないかまで書きます。
- 月2回交付したが、気管カニューレにも真皮を越える褥瘡にも当たらない。 2回目が査定されます。褥瘡の場合はNPUAP分類またはDESIGN-R2020分類の記載を残します。
- 緊急時の連絡先が空欄。 通知が「必ず記載した上で」交付するとしている欄で、様式上も独立した枠になっています。
このほか、同一月に他の保険医療機関が同じ患者に訪問看護指示料を算定していると重複になります。訪問看護ステーションが複数の医療機関と関わっている患者では、交付前に指示元がどこかを確認しておきます。
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出すべきか、通常の指示書で足りるか
特別訪問看護指示書は出せば必ず得になるものではありません。交付すると患者は指示期間中に医療保険の訪問看護へ移り、要介護認定がある場合は介護保険の給付との調整が発生します。次の境界線で判断します。
| 状況 | 取るべき手段 |
|---|---|
| 状態が変化し、いまの訪問回数(週3日以内)では足りない期間が2週間程度と見込める | 特別訪問看護指示書を交付する |
| 1日2回以上の訪問や、2か所の訪問看護ステーションの同時介入が必要 | 特別訪問看護指示書を交付する |
| 退院直後で、在宅の体制が固まるまでの2週間だけ手厚くしたい | 特別訪問看護指示書を交付する |
| 訪問回数は変えず、処置や観察項目だけを変えたい | 通常の訪問看護指示書を再交付する。期間の変更だけなら交付後の変更も通知で認められている |
| 週3日以内の訪問で収まり、1日複数回の必要もない | どちらも不要。指示内容の連絡で足りる |
| 末期の悪性腫瘍や神経難病など、特掲診療料の施設基準等の別表第七に掲げる疾病等に該当する | 特別指示書がなくても医療保険で週4日以上の訪問看護が可能。原則として不要 |
| 頻回の訪問が恒常的に必要な状態が続いている | 一時的ではないため要件を外れる。訪問診療や在宅療養指導管理の設計を見直す |
別表第七の該当患者に特別指示書を出しても、訪問回数の面で新たに得られるものはありません。交付前に、その患者が別表第七に当たるかどうかを先に確認するのが手順としては効率的です。
よくある質問
Q. 退院日を起算日にできますか。
起算日は自院の医師がその患者を診療した日です。退院後に自院の訪問診療または外来で最初に診た日が起算日になります。退院日そのものを起算日にできるのは、その日に自院の医師が診療している場合に限られます。退院直後は通知が明示する交付事由の1つですが、事由に当たることと起算日の要件は別です。
Q. 訪問看護ステーションから依頼を受けて交付しても構いませんか。
依頼を受けること自体は問題ありません。ただし交付の根拠は主治医の診療です。依頼だけを根拠に、診察していない日付で交付することはできません。
Q. 指示期間の途中で状態が落ち着いたらどうしますか。
主治医は交付後も患者の病状等に応じて期間を変更できると通知にあります。短縮する場合は訪問看護ステーションへ連絡し、変更の記録を診療録に残します。
Q. 1人の患者に2か所の訪問看護ステーションへ交付できますか。
週4日以上の訪問看護が計画されている週に限り、2か所が同時に指定訪問看護を行えます。この場合はそれぞれの指示書に、他の訪問看護ステーションへ交付している旨とその名称を記載します。
Q. 点滴注射指示期間は特別看護指示期間と同じにしなければいけませんか。
同一である必要はありません。在宅患者訪問点滴注射管理指導料は週3日以上の点滴注射の指示が要件で、週1回に限り算定します。点滴の必要期間に合わせて記載します。
参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件(医科点数表)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(医科診療報酬点数表に関する事項)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保発0305第19号)」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf
- 厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697767.pdf
- 厚生労働省「別紙様式17の2・別紙様式18(特別訪問看護指示書)」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken15/dl/2-22-4.pdf (掲載PDFは元号表記が平成のまま。現行様式は令和表記で、欄の構成は同一)
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
