抗菌薬適正使用体制加算は、外来感染対策向上加算を算定している診療所が、抗菌薬の使用状況をサーベイランスに提出し、その結果が基準を満たしたときに上乗せできる加算です。点数は5点、患者1人につき月1回です。
要件そのものは短いのですが、「データを出して結果の証明書をもらう」という手順が他の加算にない分、どこから手をつけるか分かりにくい加算です。
この記事では、外来感染対策向上加算を届け出ている(または届出を考えている)無床診療所の院長・医事担当の方に向けて、自院が施設基準を満たすかの判定と、データ提出から届出・算定開始までの段取りを整理します。内容は令和8年6月1日施行の告示・通知と疑義解釈で確かめたものです。
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抗菌薬適正使用体制加算の点数と令和8年度改定で変わったこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 5点 |
| 回数 | 患者1人につき月1回 |
| 前提 | 外来感染対策向上加算(6点)を算定する場合に、さらに加算する |
| 届出 | 地方厚生(支)局長へ。様式1の5に、サーベイランスの結果の証明書を添付 |
令和8年度改定で、点数と施設基準の文言は変わっていません。変わったのは、施設基準を確かめる方法です。令和8年3月23日の疑義解釈(その1)で、令和6年度の疑義解釈の該当する問が廃止され、新しい確認方法とデータ提出のスケジュールが示されました。
特に、令和8年10月頃に受け付ける第3回目のデータ提出から、集計方法が変わります。
- マクロライド系、フルオロキノロン系、テトラサイクリン系、ST合剤は、14日以上の処方を14日分とみなして集計する
- リファキシミンは集計から除外する
ウイルス性の上気道炎や急性下痢症に対する抗菌薬の使い方を重点的に見るための変更とされています。長期処方の多い診療所では、これまでと比率が変わる可能性があります。
抗菌薬適正使用体制加算の施設基準の判定表
施設基準は「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」の第1の7に定められています。上から順に確かめ、1つでも「いいえ」なら、その行の対応から始めます。
| 確認すること | はい | いいえのとき |
|---|---|---|
| 1. 外来感染対策向上加算を届け出ているか | 2へ | 先に外来感染対策向上加算を届け出る(様式1の4)。実績は不要 |
| 2. 抗菌薬の使用状況をモニタリングできるサーベイランス(診療所版J-SIPHE)に参加しているか | 3へ | 診療所版J-SIPHEに参加登録し、データを提出する |
| 3. 提出データの対象期間に、抗菌薬の処方が30件以上あるか | 4へ | Access抗菌薬の割合と順位が集計されない。この加算は届け出られない |
| 4. 返却された結果で、Access抗菌薬の使用比率が60%以上か | 届出できる | 5へ |
| 5. 参加している診療所全体の上位30%以内か | 届出できる | 現時点では届出できない。次回以降の結果を待つ |
3の「30件以上」は、施設基準の本文ではなく疑義解釈に書かれている条件です。抗菌薬をほとんど処方しない診療科では、ここで止まります。
4と5はどちらか一方を満たせば足ります。施設基準は「直近6か月における使用する抗菌薬のうち、Access抗菌薬に分類されるものの使用比率が60%以上又は(略)サーベイランスに参加する診療所全体の上位30%以内であること」としています。
Access抗菌薬かどうかは、WHOのAWaRe分類での位置づけで決まります。どの薬剤がAccessに当たるか、比率の計算方法は、疑義解釈が診療所版J-SIPHEのサイト(https://oascis.ncgm.go.jp/manual/glossary)で確認するよう案内しています。
診療所版J-SIPHEのデータ提出と結果の返却スケジュール
診療所版J-SIPHEは四半期ごとにデータの提出を受け付け、6か月分の対象期間について、Access抗菌薬の割合と、参加医療機関の中でのパーセンタイル順位を返します。届出にはこの結果の証明書を使います。
疑義解釈(その1)で示された令和8年度の予定は次のとおりです。
| 回 | データ受付(予定) | 対象期間 | 結果の返却 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 2026年4月30日まで | 2025年10月〜2026年3月 | 2026年5月中旬 |
| 2回目 | 2026年7月31日まで(診療所版) | 2026年1月〜6月 | 2026年8月中旬 |
| 3回目 | 2026年10月31日まで | 2026年4月〜9月 | 2026年11月中旬 |
| 4回目 | 2027年1月31日まで | 2026年7月〜12月 | 2027年2月中旬 |
いまから動く診療所にとって直近の機会は3回目です。10月31日までに4月〜9月分を提出すると、11月中旬に結果が返ります。3回目は、上で書いた新しい集計方法が最初に適用される回でもあります。
正確な受付時期と提出方法は、診療所版J-SIPHE(https://oascis.ncgm.go.jp)で確かめてください。
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抗菌薬適正使用体制加算の届出の手順
結果が基準を満たしていたら、地方厚生(支)局に届け出ます。
- 診療所版J-SIPHEの結果の証明書を入手する(Access抗菌薬の使用比率と、参加医療機関の中でのパーセンタイル順位が分かるもの)
- 届出書(様式1)と添付書類の様式1の5を作る
- 様式1の5の「1」でエ(抗菌薬適正使用体制加算)に○を付け、「4 サーベイランスの参加状況」に事業名、「5 抗菌薬の使用状況」に確認した期間(直近6か月)と、満たした基準(60%以上か、上位30%以内か)にチェックを入れる
- サーベイランス事業の参加状況が分かる文書と、1の証明書を添付して提出する
様式1の5は、微生物学的検査体制加算・連携強化加算・サーベイランス強化加算と共通の様式です。連携強化加算やサーベイランス強化加算を同時に届け出るなら、1枚で済みます。それぞれ記入する欄が違うので、記載上の注意で該当する欄を確かめます。
算定を始められるのは、届出が受理された月の翌月1日からです。月の最初の開庁日に受理された場合は、その月の1日から算定できます。3回目の結果を受けて11月中に受理されれば、12月1日からが目安です。
届け出た後に比率が下がったとき
結果は四半期ごとに返ってきます。届出の後に基準を満たさなくなったら、施設基準の通知(第3)により、遅滞なく変更の届出をします。結果が返るたびに、比率と順位を確かめる担当を決めておくと漏れません。
抗菌薬適正使用体制加算を算定できる場面
この加算は、外来感染対策向上加算を算定する場面でだけ算定できます。外来感染対策向上加算が算定できるのは、初診料・再診料のほか、医学管理等や在宅医療の一部の項目です。
| 算定する点数 | 根拠(告示) | 対象 |
|---|---|---|
| 初診料 | A000 注14 | 初診 |
| 再診料 | A001 注18 | 再診 |
| 医学管理等 | 第1部 通則6 | 小児科外来診療料、外来リハビリテーション診療料、外来放射線照射診療料、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、外来腫瘍化学療法診療料、救急救命管理料、退院後訪問指導料 |
| 在宅医療 | 第2部 通則8 | 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)(Ⅱ)、在宅患者訪問看護・指導料、同一建物居住者訪問看護・指導料、在宅患者訪問点滴注射管理指導料など |
| 精神科訪問看護・指導料 | I012 注17 | 精神科訪問看護・指導 |
どの場面で算定しても、外来感染対策向上加算と同じく患者1人につき月1回です。同じ月に初診と再診があっても、算定は1回です。
小児科外来診療料や地域包括診療料のように初診料・再診料が包括される点数を算定している患者でも、医学管理等の通則で外来感染対策向上加算を算定する月であれば、この加算も算定できます。
外来感染対策向上加算・連携強化加算・サーベイランス強化加算との関係
外来感染対策向上加算の上に乗る加算は4つあります。それぞれ施設基準が別なので、1つずつ届け出ます。
| 加算 | 点数(月1回) | 何を満たせば算定できるか | 届出様式 |
|---|---|---|---|
| 外来感染対策向上加算 | 6点 | 院内感染管理者の配置、手順書、研修、カンファレンス参加、発熱患者の受入れ体制、第二種協定指定医療機関であることなど | 様式1の4 |
| 発熱患者等対応加算 | 20点 | 外来感染対策向上加算を算定し、発熱などの患者を空間的・時間的分離などの感染対策の下で診療したとき | 外来感染対策向上加算の届出で足りる |
| 連携強化加算 | 3点 | 連携する感染対策向上加算1の医療機関に、過去1年間に4回以上、感染症の発生状況や抗菌薬の使用状況などを報告している | 様式1の5 |
| サーベイランス強化加算 | 1点 | JANIS、J-SIPHEなど、地域や全国のサーベイランスに参加している | 様式1の5 |
| 抗菌薬適正使用体制加算 | 5点 | 抗菌薬の使用状況をモニタリングできるサーベイランスに参加し、Access抗菌薬の比率が基準を満たす | 様式1の5 |
4つの上乗せ加算は、どれも外来感染対策向上加算を算定する場合にだけ算定できます。外来感染対策向上加算の施設基準を満たさなくなると、上乗せ分もまとめて算定できなくなります。
連携強化加算は「報告」、サーベイランス強化加算は「参加」、抗菌薬適正使用体制加算は「参加したうえでの結果」を評価する、と覚えると区別しやすくなります。連携強化加算の要件は別記事「連携強化加算の算定要件は?」で扱っています。
名前が似ている加算との違い
感染対策向上加算(A234-2)にも、同じ名前の抗菌薬適正使用体制加算(5点)があります。こちらは感染対策向上加算を届け出た病院・有床診療所の入院患者が対象で、比率は入院中の患者以外の患者に使った抗菌薬で見て、J-SIPHEの結果を使います。外来感染対策向上加算を届け出ている無床診療所が使うのは、初診料・再診料側の加算です。
小児抗菌薬適正使用支援加算は、小児科外来診療料・小児かかりつけ診療料に付く別の加算で、かぜなどの小児に抗菌薬が不要と判断して処方せず、その理由を説明した場合に算定します。要件は別記事「小児抗菌薬適正使用支援加算の算定要件」にまとめています。
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よくある質問
サーベイランスに参加しただけで算定できますか
できません。参加は条件の1つで、そのうえで返却された結果が「Access抗菌薬の比率60%以上」か「参加診療所全体の上位30%以内」を満たしている必要があります。届出には結果の証明書を添付します。
抗菌薬をあまり処方しない診療所でも届け出られますか
疑義解釈では、提出データの対象期間に抗菌薬の処方件数が30件以上ある場合に集計の対象になるとされています。6か月で30件に届かない診療所はAccess抗菌薬の割合と順位が集計されないため、届け出られません。
届出のたびに新しい結果が必要ですか
届出の時点では、直近6か月の使用比率を確認した結果を添付します。届け出た後も結果は四半期ごとに返ってくるので、基準を下回ったら変更の届出をします。
まとめ
抗菌薬適正使用体制加算は、外来感染対策向上加算の届出、診療所版J-SIPHEへの参加、6か月で30件以上の抗菌薬処方、Access抗菌薬の比率(60%以上か上位30%以内)の4つがそろえば届け出られます。直近の機会は10月31日までの第3回データ提出で、この回から集計方法が変わります。まずは自院の4月〜9月の抗菌薬処方件数を確かめ、提出するかを決めてください。
参考
- 令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)
- 診療報酬の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表
- 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日保医発0305第6号)医科点数表
- 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第7号)
- 疑義解釈資料の送付について(その1)(令和8年3月23日保険局医療課事務連絡)
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
