「調剤報酬改定」と聞くと、薬局側の点数の話だと思ってしまう。
実際、ニュースの多くは薬局の経営指標や加算の再編を扱っている。
だが令和8年度改定には、処方箋を発行する側のクリニックに直接かかる項目がいくつも含まれている。
処方箋料の一般名処方加算、電子処方箋の評価、長期処方・リフィル処方箋の院内掲示義務。
どれも医科の診療報酬点数表に載っている、院長と医療事務が対応すべき項目だ。
令和8年度改定は令和8年6月1日に施行済みで、一部加算には令和8年9月末までの経過措置がついている。
この記事を書いている時点で、その期限まで残りわずかしかない。
まだ体制を整えていない項目があれば、今が最後の確認どころだ。
この記事では、調剤報酬改定という切り口から、クリニックが実務で押さえるべき変更点を整理する。
薬局側の点数構成にはあえて深入りせず、院外処方をしているクリニックが何を変えるべきかにしぼった。
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令和8年度改定の全体像と施行スケジュール
まず前提を整理する。
令和8年度診療報酬改定は、令和8年3月5日に告示された(厚生労働省告示第69号・第70号、通知は保医発0305第6号・第7号)。
薬価改定は令和8年4月1日から、技術料や加算などの本体部分は令和8年6月1日から施行されている。
改定率は全体で+3.09%。うち調剤報酬本体の改定率は+0.08%で、薬剤師・事務職員の賃上げ対応分が主な内訳だ。
本体改定の一部項目には令和8年9月末までの経過措置が設けられており、その期間内は従前の算定方法も認められている。
つまり9月末を過ぎると、経過措置に乗っていた運用は使えなくなる。
処方箋の様式や院内掲示など、クリニック側の対応が必要な項目は早めに確認しておきたい。
クリニックの処方箋料に関わる変更
薬局側の調剤基本料の再編とは別に、医科の処方箋料そのものにも改定が入っている。
ここは院長・医療事務が直接算定する項目なので、見落とすと請求ミスにつながる。
一般名処方加算の点数引き下げ
処方箋料の一般名処方加算は、令和8年度改定で引き下げられた。
- 一般名処方加算1: 10点 → 8点
- 一般名処方加算2: 8点 → 6点
一方で、評価対象は広がっている。
これまでジェネリック(後発医薬品)のある医薬品を一般名処方した場合が対象だったが、
今回からバイオ後続品のあるバイオ医薬品を一般名処方した場合も加算の対象に加わった。
点数は下がったが、対象品目は増えた。
「点数が下がったから一般名処方をやめる」という判断は早計で、
院外処方箋を発行するクリニックにとって一般名処方は引き続き基本の運用と考えたほうがいい。
リフィル処方箋の枠組みは変わらない
リフィル処方箋制度そのものの骨格には変更がない。
最大3回まで、上限日数の考え方も従来どおりだ。
変わったのは周辺の運用整理で、2回目以降の調剤時に薬局が処方医へ情報提供する仕組み
(服薬情報等提供料2のロ、20点)の位置づけが改めて明確化された。
クリニック側から見ると、リフィル処方箋を発行した患者について、
薬局からの情報提供が「来ることがある」前提で受け取り体制を整えておく必要がある。
長期処方・リフィル処方箋の院内掲示が要件に
令和8年度改定で、特定疾患療養管理料をはじめとする医学管理料等の一部に、
長期処方・リフィル処方箋に関する院内掲示と患者対応を求める施設基準が新設された。
対象となる医学管理料等を算定しているクリニックは、
待合室などに長期処方・リフィル処方箋に関する掲示を行い、
患者から相談があった場合に対応できる体制を整えることが、算定の条件に含まれる。
掲示物の有無は施設基準の確認事項になるため、実地指導の際にも見られる可能性がある項目だ。
電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスへの評価
医療DXまわりの加算体系も、令和8年度改定で大きく組み替わった。
これまでの「医療DX推進体制整備加算」は廃止され、
電子処方箋による重複投薬等チェックの体制を評価する
「電子的調剤情報連携体制整備加算」(月1回、8点)に一本化された。
これは調剤報酬側の加算だが、算定の前提として医療機関側が電子処方箋に対応している必要がある。
医科側の加算体系でも、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの対応状況によって評価が分かれる。
両方に対応していると最も高い区分を算定でき、いずれか一方の対応だと加算2(9点)にとどまる。
つまり、電子処方箋だけ導入していても、電子カルテ情報共有サービスまで対応しないと上位区分は取れない。
逆に言えば、両方への対応を進めるほど診療報酬上のメリットが積み上がる設計になっている。
電子処方箋の導入自体は法的な義務ではない。
だが加算の設計を見る限り、対応していないクリニックが相対的に不利になる方向で改定が進んでいるのは確かだ。
導入がまだのクリニックは、次の4点を順番に確認するところから始めるとよい。
- オンライン資格確認の導入状況
- 電子処方箋に対応した電子カルテ・レセコンへの更新
- 医師の電子署名(HPKIカードまたはHPKI連携アプリ)の取得
- 発行・訂正の運用フロー整備
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薬局側の変化がクリニックの連携に及ぼす影響
医科の点数に直接乗らない項目でも、連携先の薬局の体制が変わることで、
クリニック側の運用に間接的な影響が出るものがある。
代表例が、後発医薬品調剤体制加算と地域支援体制加算を統合した
「地域支援・医薬品供給対応体制加算」(新設、27点〜67点の5区分)だ。
面分業(患者が自由に薬局を選べる仕組み)を促進する観点から、
調剤基本料の設計自体も見直され、原則として引き上げの方向で改定されている。
これらは薬局側の経営指標に関わる話であり、クリニックが直接算定するものではない。
ただ、連携する薬局がどの加算区分を届け出ているかによって、
在宅対応や医薬品供給の体制に差が出てくる可能性はある。
在宅医療や訪問診療を行っているクリニックは、連携薬局がどの体制を取っているか、
一度確認しておいて損はない。
クリニックが今すぐ確認すべきチェックリスト
令和8年9月末の経過措置期限を踏まえ、院長・医療事務が確認しておきたい項目を整理する。
- 一般名処方加算の点数区分(1: 8点/2: 6点)で処方箋を発行できているか
- バイオ後続品のあるバイオ医薬品について、一般名処方の運用を検討したか
- 長期処方・リフィル処方箋に関する院内掲示を、対象の医学管理料等について行っているか
- リフィル処方箋を発行した患者について、薬局からの情報提供を受け取る運用があるか
- 電子処方箋への対応状況(未対応/一部対応/完全対応)を把握しているか
- 電子カルテ情報共有サービスへの対応も含めて、加算の上位区分を狙えるか検討したか
いずれも、点数表を読むだけでは実務に落ちない項目ばかりだ。
特に電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスへの対応は、
レセコン・電子カルテの仕様に左右されるため、早めにベンダーへ確認しておくことをすすめる。
まとめ
調剤報酬改定という名前から、薬局だけに関係する話だと捉えられがちだが、
処方箋料の一般名処方加算・院内掲示要件・電子処方箋の評価など、
クリニック側の実務に直結する項目が令和8年度改定には含まれている。
施行はすでに令和8年6月1日に始まっており、経過措置も令和8年9月末で切れる。
自院の処方箋発行・院内掲示・電子処方箋対応が改定後の要件に沿っているか、
このタイミングで一度点検しておきたい。
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参考文献
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(令和8年厚生労働省告示第69号・第70号、保医発0305第6号・第7号)
- 厚生労働省 診療報酬改定関連ページ(施行日・改定率に関する公表資料)
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
