悪性腫瘍特異物質治療管理料は、医科点数表のB001「特定疾患治療管理料」の「3」です。悪性腫瘍と確定診断された患者に腫瘍マーカー検査を行い、その結果に基づいて計画的な治療管理をしたときに、月1回算定します。
請求でいちばん間違えやすいのは、D009腫瘍マーカーとの境目です。確定診断の前は検査料(D009)で請求し、確定して治療管理を始めた後はこの管理料で請求します。同じ検査でも、診断の時期によって請求項目が入れ替わります。
令和8年度改定(2026年6月1日施行)では、この管理料が生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲から外れ、別に算定できるようになりました。
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悪性腫瘍特異物質治療管理料の点数は3区分
| 区分 | 内容 | 点数 |
|---|---|---|
| イ | 尿中BTAに係るもの | 220点 |
| ロ(1) | その他のもの(1項目の場合) | 360点 |
| ロ(2) | その他のもの(2項目以上の場合) | 400点 |
| 注3 | 初回月加算(ロのみ) | +150点 |
告示では、次のように定められています。
- イとロは、いずれも月1回に限り、第1回の検査及び治療管理を行ったときに算定する
- イとロの検査・治療管理を同一月に行った場合は、ロの所定点数のみで算定する
- 腫瘍マーカーの検査に要する費用は所定点数に含まれる
確定診断の前後で、腫瘍マーカー検査との請求が入れ替わる
| 時期 | 請求する項目 | 根拠 |
|---|---|---|
| 確定診断の前(通知の「悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者」) | D009 腫瘍マーカー(診断の確定または転帰の決定までに1回を限度) | D009の留意事項(1) |
| 確定診断後、計画的な治療管理を開始 | B001の3 悪性腫瘍特異物質治療管理料 | B001の3の留意事項(1) |
確定診断後の治療管理中に行った腫瘍マーカー検査の費用は、この管理料に含まれます。原則として、同じ月にD009腫瘍マーカーと併せて算定することはできません。
月に2回検査しても算定は1回
留意事項通知では、この管理料には腫瘍マーカー検査、その採血、検査結果に基づく治療管理の費用が含まれるとされています。1か月に2回以上腫瘍マーカー検査をしても、検査の費用は別に算定できません。
併算定が制限された項目は1項目とみなす
D009で併算定が制限されている項目を同じ月に実施した場合は、1項目とみなしてこの管理料を算定します。たとえばCEAとDUPAN-2、CA125とCA602は、D009の留意事項で主たるもののみ算定するとされている組み合わせです。CA125とCA602については、1つを管理料の項目とし、もう1つをD009の項目として算定することもできません。
初回月加算150点が算定できない場合
注3の初回月加算は、治療管理の開始にあたって多項目の腫瘍マーカー検査を行うことが予想される初回月に限って、ロの所定点数に150点を加算するものです。
ただし、初回月の前月にD009腫瘍マーカーを算定している場合は算定できません。 確定診断のために前月に腫瘍マーカーを検査した患者では、翌月に管理料を始めても初回月加算は付きません。
イ(尿中BTA)には初回月加算はありません。
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管理料とは別に検査料を算定できる4つの例外
D009の留意事項通知では、悪性腫瘍の診断が確定した後でも、次の場合はこの管理料とは別に腫瘍マーカーの検査料を算定できるとされています。
| 例外 | 検査 | 条件 |
|---|---|---|
| ア | エラスターゼ1 | 急性及び慢性膵炎の診断及び経過観察のため |
| イ | α-フェトプロテイン(AFP)、PIVKA-Ⅱ半定量又は定量 | 肝硬変、HBs抗原陽性の慢性肝炎、HCV抗体陽性の慢性肝炎の患者(月1回に限る) |
| ウ | CA125又はCA602 | 子宮内膜症の診断又は治療効果判定(診断又は治療前及び治療後の各1回に限る) |
| エ | 癌胎児性抗原(CEA) | 家族性大腸腺腫症の患者 |
管理料の対象になる検査、ならない検査
腫瘍マーカーの種類によって、管理料の扱いが通知で個別に決まっています。
| 検査 | 管理料の扱い |
|---|---|
| 尿中BTA | 膀胱癌と確定診断された患者の再発診断で、計画的な治療管理を行った場合に限りイを算定 |
| HER2蛋白 | 確定診断され過剰発現が認められている患者等で、計画的な治療管理を行った場合に限りロを算定 |
| サイトケラチン19フラグメント(シフラ) | 確定診断後は小細胞癌を除く肺癌の場合に限り算定できる |
| NMP22(尿)、サイトケラチン8・18(尿) | 尿路上皮癌の確定診断後に行っても、この管理料は算定できない |
腫瘍マーカー以外の検査をした月は判断料を算定できる
留意事項通知の(6)では、当該月に悪性腫瘍特異物質以外の検査を行った場合は、この管理料とは別に検査に係る判断料を算定できるとされています。通知に挙がっている例は次のとおりです。
- 肝癌の診断が確定している患者で、α-フェトプロテインを算定し、別にD008内分泌学的検査を行った場合
- 算定は「悪性腫瘍特異物質治療管理料ロ(1)+D008内分泌学的検査の実施料+D026の5 生化学的検査(Ⅱ)判断料」
通知では、この「悪性腫瘍特異物質以外の検査」に、D009の留意事項で定める例外(後述の4つ)を含むとしています。例外に当たる腫瘍マーカーは、検査料も判断料も管理料とは別に算定できます。例外に当たらない腫瘍マーカーは、検査も判断も管理料に含まれます。
令和8年度改定で生活習慣病管理料(Ⅱ)と別に算定できるようになった
令和8年度改定では、生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲から、生活習慣病と直接的な関係の乏しい疾患に関する医学管理が除かれました。悪性腫瘍特異物質治療管理料はその1つです。
| 同じ月に算定する管理料 | 悪性腫瘍特異物質治療管理料の扱い |
|---|---|
| 生活習慣病管理料(Ⅱ)(B001-3-3) | 令和8年度改定で包括範囲から除かれ、別に算定できる |
| 生活習慣病管理料(Ⅰ)(B001-3) | 注2で医学管理等は一部を除き包括とされ、この管理料は除外に含まれないため包括される |
高血圧症や糖尿病で生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定している患者が、がんの治療管理も受けている場合、令和8年6月以降は両方を請求できます。レセコンの包括設定が改定前のままになっていないかを確認します。
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カルテとレセプトに書くこと
- 診療録には、腫瘍マーカー検査の結果と治療計画の要点を添付または記載する(留意事項通知(3))
- 摘要欄には、行った腫瘍マーカーの検査名を記載する(記載要領の別表Ⅰ)
摘要欄の検査名は、イ・ロのどちらに当たるか、ロが1項目か2項目以上かを審査側が判断する材料になります。
悪性腫瘍特異物質治療管理料で返戻・査定になりやすいパターン
| パターン | 根拠 |
|---|---|
| 確定診断前(疑いの段階)の患者に管理料を算定している | 既に確定診断された患者が対象 |
| 管理料と同じ月にD009腫瘍マーカーを併せて算定している(例外に当たらない) | D009の留意事項(1) |
| 前月にD009を算定しているのに初回月加算を算定している | 留意事項通知(4) |
| 併算定制限のある2項目で「2項目以上」の400点を算定している | 1項目とみなす(留意事項通知(5)) |
| 尿路上皮癌の確定後にNMP22で管理料を算定している | D009の留意事項 |
| 摘要欄に検査名がない | 記載要領の別表Ⅰ |
| 生活習慣病管理料(Ⅰ)と同じ月に別に算定している | (Ⅰ)の注2で包括 |
よくある質問
月の途中で2回目の腫瘍マーカー検査をしたら、もう1回算定できますか
算定できません。管理料は月1回で、月に2回以上検査をしても、検査の費用は別に算定できないとされています。
前月に確定診断のための腫瘍マーカーを検査しました。今月から管理料を算定できますか
管理料は算定できますが、初回月加算(150点)は付きません。初回月の前月にD009腫瘍マーカーを算定している場合は、初回月加算は算定できないと通知に書かれています。
尿中BTAとCEAを同じ月に検査した場合はどう算定しますか
ロの所定点数のみで算定します。告示の注4で、イとロの検査・治療管理を同一月に行った場合はロの所定点数のみとされています。
生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定している患者にも算定できますか
令和8年6月以降は算定できます。令和8年度改定で、この管理料が生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲から除かれました。生活習慣病管理料(Ⅰ)の場合は包括のままです。
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まとめ
悪性腫瘍特異物質治療管理料は、確定診断後の患者に腫瘍マーカー検査と計画的な治療管理を行ったとき、月1回、尿中BTAは220点、その他は1項目360点・2項目以上400点で算定します。確定前はD009腫瘍マーカーで請求し、確定後はこの管理料に切り替えます。
事務側で確認するのは、確定診断の時期と前月のD009算定の有無(初回月加算に影響)、同月にD009を重ねていないか、摘要欄の検査名の3点です。令和8年度改定で、生活習慣病管理料(Ⅱ)と同じ月にも別に算定できるようになっています。
参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757385.pdf
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】」(令和8年9月4日版) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001745823.pdf
- 厚生労働省「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」(令和8年3月27日保医発0327第2号)別表Ⅰ https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732129.xlsx
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診療科目
この記事は、2026年10月時点の情報を元に作成しています。
