ガウンを手に固まる医師、その衝撃の理由とは?|PPEの正しい着脱手順について

※この記事はライターが執筆した原稿をもとに編集部で加筆・編集しています。

COVID-19の影響で、以前よりも格段に装着の機会が増えたPPEですが、みなさんは正しく着脱することができますか?

毎日着ていても、正しい着脱手順は説明できないという人は多いのではないでしょうか。そこで今回は、PPEの着脱にまつわるエピソードを紹介します。

PPEとは?

コロナ禍を経験した今、ほとんどの医療関係者はPPEをよくご存知かと思いますが、まずはPPEの定義と目的を今一度一緒に確認しましょう。

PPEとは”Personal protection equipment”の頭文字で、日本語にすると「個人用防護具」。診療や治療を通して、患者さんの血液または湿性生体物質に触れる可能性がある場合、使用を徹底することが求められています。

主たるPPEとしては、ガウン、手袋、マスク、キャップ、エプロン、シューカバー、フェイスシールド、ゴーグルなどが挙げられます。

PPE装着は、医療従事者らが自らを感染から守るための大切な手段。しかし、正しい手順で装着できていなければ、十分に身を守ることができない場合もあります。

たとえば、ガウンひとつとっても、ただまとっただけでは、十分な感染予防にはなりません。それどころか、周囲から「この人は医療従事者として問題があるのでは?」と思われてしまう可能性もあります。

では、装着方法を心得ていないとどんな不便があるのか、次の章で紹介します。

ガウンを手に固まる医師。その理由は?

COVID-19が流行し始めて一年近く経ったある日の、発熱外来での話です。

わたしが働いている病院の発熱外来は、各診療科の医師が日替わりで担当していました。わたしはそこで医師の診察介助をしていたのですが、その日の担当は総合内科の先生。院内のなかでも責任ある立場の、やさしい年配の先生でした。

事件が起きたのは、COVID-19疑いの患者さんが外来にやってきて、対応するためにPPEを装着することになったとき。

看護師がPPEを装着し終えてもまだ着ていない先生。訝しみながら着用を促すものの、先生は手に持ったガウンを見つめたまま固まっています。「どうしました?」と聞いたところ、申し訳なさそうに返って来た回答はなんと……

「どうやって着たらいいのか分からない」。

予想だにしなかった言葉に自分の耳を疑いました。ですがよくよく考えてみると、先生は入院患者の主治医はされておらず、侵襲的治療をすることはほとんどないため、PPEを着る機会が今まであまりなかったのかもしれません。

一緒にいた看護師と共に先生に手順を説明しながら、ふたりがかりでPPEを装着させていただきました。フェイスシールドも逆側から被ろうとしていて驚いてしまいましたが、何とかその日は乗り切ることができました。ちなみに先生はその後、「ありがとう。ちゃんとマニュアル見とくね」と言って帰っていきました。

PPEの種類

続いては、主なPPEの着用目的を説明します。

キャップ

患者の血液や体液で汚染される可能性がある場合、医療従事者の頭頂部を守るために着用します。

また、医療従事者の頭髪に付着しているホコリや病原体に、患者が曝露されることも防ぐ目的があります。

マスク

キャップ同様、医療従事者の鼻腔・口腔の粘液を守ることと、医療従事者が鼻腔・口腔粘膜に有している病原体などによって患者が曝露されることを防ぐことを目的としています。

また、咳によって呼吸器由来の感染性分泌物が飛散されるのを防ぐ目的もあります。

ただし、市販の紙製や布製のマスクは液体を透過させてしまうため、感染リスクをより下げるためには、液体バリア機能を備えたサージカルマスクが望ましいです。

手袋

医療従事者の手指を守ることと、医療従事者が手指に有している病原体などによって患者が曝露されることを防ぐことを目的としています。

手袋の素材は、主に「ラテックス」「ニトリル」「プラスチック」で、伸縮性や装着感はラテックスがもっともすぐれているものの、ラテックスアレルギーのある医療従事者も多いことから、ニトリルやプラスチックも用意されています。

ゴーグル・フェイスシールド

医療従事者の眼粘膜を守ることと、医療従事者の眼部に付着しているホコリや病原体などによって患者が曝露されることを防ぐことを目的としています。

メガネをかけているスタッフには、メガネの上から着用できるタイプのゴーグルやフェイスシールドを用意することが必要です。

ガウン・エプロン

医療従事者の衣類や体幹部の皮膚を守ることと、医療従事者の衣類に付着しているホコリや病原体などによって患者が曝露されることを防ぐことを目的としています。

ガウンおよびエプロンの素材が綿や不織布であれば着心地が悪くはありませんが、汚染の防御率を高めようと思ったら、プラスチック製のガウンやエプロンを選ぶのが最適です。

ガウンの正しい脱着手順

装着手順

  1. PPEを装着前に手指衛生(手洗いや擦式アルコール消毒剤の擦り込み)をおこないます。
  2. 着用するときは袖を先に通して、首の後ろのひもを結びます。
  3. 腰の後ろのひもを結び、その後、手袋を着用します。
  4. 手首が露出しないようにします。

脱着手順

  1. 外すときには、首の後ろのひもを解き、腰のひもを解きます。
  2. ガウンの外側は汚染しているため、端を持つか、袖の内側からすくい上げるようにして手を引き抜きます。
  3. 汚染面を中に畳み、小さくまとめて廃棄します。
  4. PPEを脱いだ後は手指衛生をおこないます。

工程の中で特に大事なのが「装着手順」の4番目。

せっかく皮膚の露出を防ぐためにガウンを着ていても、手首は隠れていない方が多いそうです。着脱に慣れているみなさんも、この機会に改めて確認していただくと何か発見があるかもしれません。

引用元:https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-3-usage-gown.html

キャップの正しい着用方法

続いてはキャップの正しい着用方法です。

  1. 額が出ないよう深く被ります。
  2. 耳、襟足ができるだけ隠れるよう両手で調整します。

マスクの正しい着脱方法

  1. ノーズピースの中心を軽く折り、マスクの上下を広げます。
  2. ノーズピースを両手人差し指で鼻に沿って押し当てます。
  3. 上の紐を頭の上の位置で結びます。
  4. ノーズピースを押さえながらマスクを広げて、顎の下までカバーします。
  5. 両頬に隙間を作らないように調整して、下の紐を頸部で結びます。
  6. 隙間がないことを確認できたら、装着完了です。

手袋の正しい着用方法

  1. ガウンの袖口から手が出ないようにして、グローブカフ部を手前に向けてない包材を開きます。
  2. 左手で右手用グローブのカフ折り返し部をつかみ、内包材から取り出します。
  3. グローブは指先を下にして親指を手前に向けます。
  4. 右手はガウンのなかで親指を上に向けます。
  5. グローブの親指と、上に向けた右手親指を合わせます。
  6. ガウン内の親指をグローブの親指に添えながら、カフ折り目部内に差し入れます。
  7. カフ折り目部分をガウン内の指でつかんで、右手のひらに載せます。
  8. 左手でグローブのカフ折り目部分をつかんで右手甲側ガウンに被せます。
  9. ガウンの袖口とグローブのカフ縁を一緒につかんで、指先を徐々にグローブに入れていきます。
  10. ぴったりとフィットするように装着したら右手の装着が完了です。
  11. 左手も同様の手順で装着します。

PPEを取り扱う業者

続いては、PPEを取り扱う業者を紹介します。

株式会社ホギメディカル

https://www.hogy.co.jp/index.html

バクテリアバリア性を持つディスポーザブルガウン・キャップ・マスクなどの不織布製品をはじめとする幅広い製品を取り扱っています。

メガネをかけている医療従事者用のアイシールドの用意もあります。

サラヤ

https://med.saraya.com/top.html

サージカルマスクひとつとっても、感染予防レベル別に異なるタイプを用意。また、シューズカバーや検査検診用グローブ、アンダーグローブなど、幅広いラインナップがそろっています。

O&M Halyard Japan 合同会社

https://www.halyardhealthcare.com/

PPEのほか、滅菌ラップやサージカルドレープなども取り扱っています。

検査検診用グローブは、臨床の現場において、医療スタッフや患者様の防護を目的として、パウダーフリー、ラテックスフリーの合成ゴム(ニトリル)製グローブのみを提供。

イワツキ株式会社

https://www.iwatsuki.co.jp/

1923年の創業以来、全国の医療機関・介護施設から選ばれ続けている会社です。

エプロン、ガウンは種類豊富で、軽くてやわらかいプラスチックの袖付きエプロン、防水性の使い捨てプラスチックエプロン、高バリア性と耐薬品性を兼ね備えた防水性アイソレーションガウンなどから用途に応じて選べます。

株式会社ジェイ・エム・エス

1965年の創業以来、医療従事者らに寄り添い、現場の課題を見つけて製品開発につなげ続けている会社です。

現場訪問・ヒアリングを経て開発された医療機器は現場のニーズを満たすものばかり。PPEに関しても同様です。

スリーエムジャパン

https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/company-jp/

新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミック発生以降、医療従事者へのPPE提供に注力し続けている会社です。

株式会社トップ

https://www.top-tokyo.co.jp/

社名の通り、医療従事者にとっても患者にとっても快適で安心できる医療を提供したいと、最高品質「The TOP in Quality」を追求した 製品づくりを実践し続けている会社です。

メドライン・ジャパン株式会社

https://www.medline.co.jp/

PPE製品を取り扱っているだけでなく、正しい使用法の普及にも力を入れています。webサイトでも、着脱方法などを詳しく解説することで、医療従事者をサポートし続けています。

株式会社モレーンコーポレーション

https://www.moraine.co.jp/

「個人防護具システム」「汚染除去システム」「リネンシステム」「針刺損傷防止システム」「空気・飛沫感染対策システム」「手指衛生システム」「教育・トレーニングシステム」の7つの対策に力をいれることで、それぞれの対策をチェーンのようにつなげて、感染管理を底上げしています。

興研株式会社

産業用マスクの国内トップメーカーです。立体構造の接顔身体マスク「ハイラック350型」は、装着車の顔にしっかりとフィットするため性能を十二分に発揮できます。

また、感染対策用保護メガネにも定評があります。

大衛株式会社

創業70年の産科・医療・衛生用品ブランドです。お産製品からガーゼまで幅広く扱っていますが、お産時に欠かせないガウンやキャップ、サージカルマスクもそろえています。

日本ベクトン・ディッキンソン

https://www.bd.com/ja-jp

米国多国籍企業ベクトン・ディッキンソン アンド カンパニーの日本支社として1971年に創立。

「明日の医療を、あらゆる人々に™」の理念のもと、高度な安全性を持った製品を提供し続けています。

株式会社名優

https://www.meilleur.co.jp/

マスク表面での細菌やウイルスの増殖をコントロールする性能を備えたアクティブサージカルマスクは、一般にも広く販売されています。

あなたのPPEの着脱手順は大丈夫?

その後、先生が自分で装着できるようになったかどうかは分かりませんが、着られるようになっているのなら、お伝えした甲斐があったのでうれしいですね。

PPEを着る頻度は医師によって差があるかと思います。しかし、普段着る機会が少ない方でも、COVID-19が大流行しているご時世ですから、突然必要となる場面も出てくることでしょう。

いつでも正しい手順で着脱できるように心がけて、感染症から自分自身の身を守りましょうね。

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対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

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提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

渡邉りら

執筆 元看護師 | 渡邉りら

患者さんの思いに寄り添うことのできる看護師に憧れ、急性期病院の看護師として勤務していた。現在は臨床を離れてCROの査読業務に携わっている。


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