クリニックの医療事務員として受付で勤務していると 、毎日様々な患者さんと顔を合わせます。お喋りを楽しみに来院される患者さんもいれば、とにかく病院が憂鬱だと言われる患者さんもいて、本当に様々です。受付はいずれのタイプの患者さんとも接するため、楽しくもありますが、しんどいときもあります。
今回は、そんな受付で遭遇した患者さんたちのとんでもない行動・発言の数々をご紹介します。
ルールを無視! やっかいな患者さんたち
スタッフと距離を縮めたいおじいちゃん
自分のタイミングでしか来院してくれない気ままなおじいちゃん。気難しい性格のため、スタッフからも少し距離を置かれていました。
ある日いつものように気ままに来院してくると、ひとりの新人看護師に目をつけました。どうやら外見が好みだったようです。さっそく隙を見計らって近づき「どこに住んでいるの?」「名前は?」「年はいくつ?」などと質問攻め。新人看護師も、まだ患者さんのあしらいに慣れておらず丁寧に住んでいる地域などを伝えて対応したため、その日はいつになくご機嫌で帰られました。
すると翌日、女性の名前と電話番号を書いたメモ用紙を持って来院。受付のスタッフに「これ、あの子のおばあちゃんの番号」と言い残しすぐに帰られました。その場にいたスタッフは「何のことだとう?」と思い、念のため新人看護師に確認すると、確かに祖母のもので間違いないとのこと。一体どこからそんな個人情報を手に入れてきたのかは不明ですが、ストーカーの一歩手前、スタッフとの距離の詰め方を間違えている患者さんでした。
そしてその日から、スタッフの安全を考えて、患者さんには必要以上に個人情報をお教えしないことがクリニック内の規則に追加されました。自分の身は自分で守らないといけないですね。
自己流で治療しようとする患者さん
自分の体調のことで気になることがあるとインターネットで事前に下調べしてきて、先生の言っていることとその情報がマッチしなかったら、なぜマッチしないのか納得できるまで質問してきた患者さんがいました。
しかも厄介なことに、病院で診断された内容よりもインターネットで自分が調べた情報の方が正しいと思っているようです。「こうあってほしい」という情報ばかりを信じていつも自己流で判断して、その結果、傷が悪化して助けを求めて来院されたこともありました。そういったときだけ先生に頼り、傷がよくなってくるとまたこなくなり再び自己判断です。
あるときは、インターネット上でヒットした情報を印刷して持参して、「ほら、ここにはこう書いてあるでしょう? わたしはこれにあてはまるのでは?」と先生に同意を求めたこともありました。「年齢や既往歴なども含め、個人差があるのでインターネットの情報が全て正しいとは限らない」とお伝えしても納得いかない様子です。
インターネットが普及して、誰でも簡単にほしい情報を入手できるようになったため、この患者さんに限らず、クリニックへ行く前に自分で調べて自己判断される人が増えました。もしかすると他の病気が隠れている場合もあるので、できる限り自己判断はせずきちんとクリニックでの診断を仰いでほしいです。
何とか無償で治療を受けようとする患者さん
一番印象的だったのが、何とか理由をつけて無償で治療を受けようとする患者さんです。最初のころはどちらかというと印象が強くなく、どこにでもいそうな普通の人という印象でした。
ある日の午前、経過観察中の診察が終わり一度帰宅されたあとに「診てもらったところに痛みがある」との内容でご連絡。電話口での判断は難しいためもう一度来院していただくよう案内したところ、当日の午後に再度来院されました。
二度目の診察後も、経過観察中で特に治療する必要がなく、投薬もありませんと再度お伝えしたのですが、「さっきの診察からなんだか気になる。さっきの診察から……」と、午前の診察に問題があったかのような言いぐさです。
そもそも最初から特に心配のない症状でしたが、少し神経質な患者さんだったため経過観察を続けていました。しかしその日から突然、「治らないのは病院のせい」と言いはじめたのです。「無駄な通院を続けている」や「きちんと診断されていないせい」などと理由をつけ、医療費の返金や今後は無償で診察を受けたいなど、希望には到底お応えできないような要望ばかりを口にされるようになりました。
しかし、いつも怒っている様子や不服そうな様子は見られず、淡々と無償での診察を希望され、結局はいつもきちんとお支払いはして帰るなんだか不思議な患者さんでした。
フリーダムな患者さんたち
手土産のセンスが独特な奥さま
昔からずっと通院してくれていた近所の奥さま。陽気でいつもニコニコして院内のスタッフからも人気のある患者さんでした。月に一度の検査の日には、「これ、先生に。いつもありがとうね」と受付に手土産を預けてきます。
患者さんからなにか菓子折りをいただいた場合、生ものや冷凍品だと保管に気を付けなければいけないこともあり、いつもその場で中身をちらっと確認して、旅行の土産品のような物であればそこから話を広げてコミュニケーションを取るようにしていました。
ところが、この患者さんの手土産はいつもスタッフを「うーん……」と唸らせるものばかりでした。どう見てもスーパーで購入したであろう見慣れたパッケージのトマトソース缶や、同じ棚に陳列されているであろう海苔の佃煮、あるときは市場で買ってきたという生のエビのときもありました。
生のエビのときは、「どこの市場に行ってきたのか」となんとか話を広げましたが、トマトソース缶をいただいたときは、さすがに反応に困ってしまいました。手土産を持参するときは受け取る側への配慮が必要だなとつくづく実感させる手土産でした。
フル装備で来院された宅配屋さん
いつも通り診察をしていた平日の午後に、いつも配達や集荷をしていただいている会社とは違う配達会社の制服を来た男性が入ってこられました。荷物を持っていなかったので、「誰か集荷を頼んだのかな?」と思っていると、「空き時間が出たので診てほしいのですが」とまさかの診察ご希望でした。
腰のバングルについている伝票を出す機械や、帽子、手袋など、何も外さずフル装備での来院に驚きましたが、恥ずかしがる素振りはなく堂々と待合室で待機。そのまま診察質に入り、診察室からも、フル装備で来院されたことに驚いた先生と看護師の笑い声が聞こえてきました。
診察後は「ありがとうございましたー!」と帽子を取って一礼し、会社のトラックに乗って帰られました。本当に空き時間に来られ、仕事モードのまま診察を受けて帰られたようでした。風のように去っていきましたが、クリニックの空気を和ませてくれた患者さんでした。
お喋り上手な劇団マダム
いつも陽気で明るく、来院されると空気がパッと明るくなるような素敵なマダムがいました。旅行が大好きで、旦那さまと国内外問わずたくさん出かけられていたようです。旅行へ行かれたときはいつもお土産品と感想をたくさん聞かせてくれました。
中でも、ドイツ旅行がとても楽しかったようで、来院されるやいなや、お土産を渡しながらドイツ旅行の感想トークが始まりました。院内にドイツへ行ったことのあるスタッフが一人もいなかったため、一からすべて説明してくれました。
その日は、予約時間より少しはやめに来院されたのもあり、そのとき偶然横にいた患者さん同士で盛り上がりはじめました。次第にその横にいた患者さんも輪に入り、後から来院された患者さんも輪に入り……と繰り返している内に大人数に。
マダムも話に熱が入り、待合室にいる患者さんに向かって、まるで一人で演劇しているかのような身振り手振りも加えて話し始めました。言葉に強弱をつけ、大きく体も動かすと、それに合わせて観客の患者さんも大きくリアクションを取ります。診察室にいた先生と看護師が「何事?」と気になり出てくるまでに大盛り上がり。
楽しかったドイツ旅行のお土産話で盛り上がっているところを中断してもらい、マダムは診察室へ。見ていて楽しかったですが、病院ということを忘れず待合室ではほどほどに。
まとめ
地域や診療科目によって、クリニックを訪れる患者さんの年齢層や性別は異なってきます。中でも特に年配の方が多いクリニックは、来院される方々を見ていても微笑ましく、時には突っ込みを入れたくなるような行動を取る患者さんも多かったように思います。クリニックの受付で働いていると、たくさんの方と接してお話をするので、毎日いろんな意味で刺激的でした。
特徴
対応業務
その他の業務
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。