女性の医療従事者が思う「働きやすい職場」とは?

※この記事はライターが執筆した原稿をもとに編集部で加筆・編集しています。

女性の医療従事者にとって働きやすい職場とはどんな環境でしょうか?

「働きやすい」と感じる要素はひとそれぞれですが、育休・産休制度が整っていたり、子育て・介護がしやすい環境であったりすることはそのひとつ。女性ならではのライフイベントに合わせて引っ越しや長期休業をされる方も多いため、とても大切な条件です。

働きやすい職場環境が整っていることは、仕事への意欲や満足度を高めるだけでなく、質の高い医療を提供することにも繋がります。

医療従事者がその職場で継続して勤務することにも結びつくため、職場環境の改善と向上の取り組みが重要視されています。そこで、実際に働く女性はどんな環境を求め、具体的にはどんな制度があるのか、ご紹介したいと思います。

目次
  1. 勤務時間や有給休暇の取得は可能か?
  2. 良い人間関係が築けている
  3. 長期休業後のサポート体制
  4. 子どもがいる家庭への理解と対応
  5. 能力や仕事量にあった適切な評価
  6. まとめ

勤務時間や有給休暇の取得は可能か?

家庭と仕事を両立させるためにも、女性医療従事者がまずチェックするのは、勤務時間や夜勤の有無です。

家族の転勤に伴い職場が遠くなったり、妊娠・出産のため今まで通りフルタイムで働くことが難しくなったりする場合もあり得るため、勤務時間が希望とマッチしないと、「このクリニックで働き続けることは難しい」と判断されるでしょう。

では、「スタッフに選ばれるクリニック」であるためには何が必要かというと、たとえばスタッフ全員が有給休暇を消化できるよう勤務時間帯を調整する取り組みや、介護休暇・育児時短勤務などが取得しやすいような体制を整えることです。

クリニック側にそうした努力があれば、働き手は家庭とのバランスが取りやすくなるため安心できますし、心に余裕を持って仕事ができるようになります。加えて、勤務時間や有給休暇に関して融通が効きやすいことは、離職率の低下にも繋がります。

また、育児休暇後の復帰で子どもがまだ小さいスタッフなどは、夜勤を含む変則勤務への対応が難しい場合が多いでしょう。

そのことを考慮して勤務時間帯を調整するだけでなく、子どもが熱を出して半休を取りたいとの申し出などにも対応できるような体制を整えていけば、「あそこのクリニックは働きやすい」との口コミが広がり、就職希望者が増えることも考えられます。

ただし、妊娠中・子育て中の女性のサポートを重視するあまり、そのサポートにまわるスタッフへのケアが疎かになってしまうのもいけません。

サポートにまわってくれるスタッフへの配慮ができていなければ、「不公平だ」との声が上がることもあり得ます。全員平等に気に掛けるのは簡単なことではありませんが、誰もが働きやすい環境であることは一番の理想なので、みんなで協力し合って働ける職場を目指したいものです。

良い人間関係が築けている

出産や介護などを経て久しぶりに復帰する際などは特に、周りのスタッフとうまくやっていけるかどうかが心配になるもの。休んでいる間に顔ぶれが変わっていることもあれば、ブランクがあることで、「スピーディに仕事できなくて怒られないだろうか?」との不安もあるためです。

しかし、スタッフみんながお互いに対して思いやりを持って働くことができている職場であれば、そうした不安はすぐに払しょくされます。

そのため、復帰後の仕事に慣れていない状態であってもストレスが溜まりにくく、「またここで長く働いていきたい」と思ってもらいやすいでしょう。

では、良好な人間関係はどうすれば構築できるのでしょうか。

やはり、まずは経営者自身が「人間関係の大切さ」をしっかりと意識して、そのためにできることを考え、実践することだと思います。

ファーストステップは、働き手一人ひとりと話をする機会を持つこと。週に一度、30分でもいいので一対一で話をする時間を取り、日々の仕事や人間関係に対して不安に思っていることがないかを聞き出します。

ただ人によっては、ふたりきりで面と向かって話すのが苦手な人もいますし、本心をさらけ出すことに慣れていない人もいます。そのため、できれば一人ひとりの性格などを考慮して、オンラインのコミュニケーションツールのほうがスムーズに話してもらえそうであれば、ChatworkやLINEなどを活用してコミュニケーションをとるのがいいでしょう。

また、院長や理事長が男性の場合、女性スタッフは本音を話しにくいということもあるかもしれません。

その場合は、最年長の女性スタッフが信頼できるようであれば、その人に相談役を任せるのも一手ですし、もしくは外部の専門家にスタッフのメンタルケアなどを依頼するという手もあります。

一人ひとりの不満に耳を傾けた結果、トラブルを起こしがちなスタッフがいることが判明した場合は、該当スタッフに注意を喚起するのも大事な仕事。再三注意しても改善されない場合、最悪、解雇を考えなければならないこともあるでしょう。

また、業務量に差があることが原因で人間関係に亀裂が入っているなら、一人ひとりの担当業務を見直すことが必須です。

スキルが極端に低い人がいることで誰かにしわ寄せされているようなら、該当スタッフのスキルを向上させるために教育に力を入れなければならない場合もあります。

ただし、そのために仕事ができるスタッフを教育係に任命した結果、教育係を任されたスタッフが要らぬストレスを抱えてしまうこともあるので、そこに関しても1on1ミーティングなどを通してしっかりケアしていくことが必要です。

長期休業後のサポート体制

長期休業後は、「まわりのスタッフとうまくやっていけるだろうか?」の不安だけでなく、「仕事の仕方を思い出せるだろうか?」「以前とはやりかたが変わっていて知らないことが多いのでは?」の不安もつきものです。

そのため、働き始める前に確認できるよう、最新のマニュアルが用意されていたり、改めて実技を練習できる機会が設けられていたりしたら、働き手は安心できるでしょう。

また、以前に一度働いたことがあるスタッフに対しても、給与や待遇などに関しても改めて説明するのがベスト。細かな条件などはお互い忘れていることも多いので、双方で確認を取りながら改めて取り決めていきましょう。

さらに、働き始めてからもしばらくは不安に感じることが多い場合があるため、フォロー体制もしっかり整えておくことが大切。わからないことがあったら誰に訊けばいいか、診察時間内に質問できなかったらどうすればよいかなどまで事前に伝えておけば、さらに安心して働くことができるでしょう。

また、「なにかわからないことがあったらいつでも相談してね」と伝えておいても言い出しづらいこともあるので、クリニック側からも定期的に声かけしてあげると親切でしょう。

子どもがいる家庭への理解と対応

まだ小さな子どもがいる家庭では、両親は子どもの急な体調不良に対応しなければなりません。それを理解したうえで、子どもを持つスタッフに対しては、勤務時間帯や有休取得に関して融通を利かせることが大切です。

また、特に子どもが小さいうちは急な発熱などを繰り返しがちですが、有休取得を申し出るたびに周りのスタッフから「またですか?」の文句があがっている状況だと、本人は肩身が狭く、場合によっては転職を考えることもあるでしょう。

独身者や子どもがいない夫婦などからは文句が出やすい傾向にあるかもしれませんが、そうしたスタッフが業務を補てんしなければならなくなっているのなら当然のこと。

すべてのスタッフが気持ちよく働けるよう、「家族のケアで休みを取得するのは問題ないが、休んだぶん他の日に働いてもらう」「他のスタッフの補てんに回ったスタッフに対しては、そのぶん給与を出す」など工夫することが望ましいでしょう。

また、子どもがいるスタッフにとって悩みの種となりがちなのが、保育園や託児所が見付からないという問題です。

夏休みなどの長期休暇は特にそうですが、特に都市部だと定員オーバーでなかなか受け入れてもらえないことも多いでしょう。そのため最近では、院内に託児所を設けているクリニックも増えています。

また、2人目は半額、3人目は無料などとサービスを充実させているところもたくさん。

託児所や学童保育などのサービスを用意するのは大変だと思うかもしれませんが、そうしたサービスを充実させることによってスタッフが安心して働けることを考えると、お互いにとってWin-Winとなることは間違いありません。

能力や仕事量にあった適切な評価

女性の医療従事者に限ったことではありませんが、自身のキャリアやスキルをきちんと評価してもらえるかどうかも、「ここで働けてよかった」「これからもここで働き続けたい」と思うポイントです。

では、キャリアやスキルが評価されているかどうかを何を持って知るかというと、まずは昇給や役職アップなどの待遇面。「がんばればがんばっただけ評価してもらえる」となると、日々、努力を重ねていこうと思えます。

また、すぐに待遇が変わることはないとしても、「最近がんばっているね」と声をかけてもらえたり、やりがいのある仕事を任せてもらえたりすることも、やる気につながる大きな要素です。

また、「今の自分には誇れるキャリアもスキルもないから、知識や技術を磨いていきたい」と切望しているスタッフに対しては、スキルアップの機会を提供することも大切です。

具体的には、医療従事者のためのセミナー参加費をクリニックで負担したり、資格取得のためにスクールに通いたいとの申し出があったら、受講日には仕事を早く切り上げられるよう調整したりといったことが考えられます。

セミナーやスクールに通いたいスタッフをサポートすることは、金銭的な負担になるから避けたいと考えるクリニックもあるかもしれませんが、スタッフ一人ひとりがそこで得た知識や技術をクリニックに還元してくれることを考えると、クリニックにとってメリットの大きい投資とも言えます。

まとめ

ライフイベントによる変化が大きい女性が、キャリアアップの機会を得ながら適切な評価を受け、家庭とのバランスも取り、のびのびと働ける職場はまだまだ少ないです。

女性が多く活躍している医療機関で、より多くのクリニックが働きやすい環境作りに力を入れるような社会になるといいですね。

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奥中ゆう

執筆 Webライター | 奥中ゆう

医療事務として6年間勤務の後、関心の高かった韓国へ移住。前職の経験を生かし医療事務としての在り方や、体験談を中心に執筆しています。


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