院長の親戚というだけで事務長に。果たして病院経営は

病院を経営していくなら、事務員の存在は必ず必要です。事務員は、金銭がどのように流れているかを一番理解しています。そのため、知識も経営術も必要になってくるのではないかと私は思っています。

しかし、私の周りに、院長の親戚というだけで、経験もないのに事務長になった人がいます。

医療機関によって呼び方はさまざまあるとは思いますが、一般企業でいう会長は理事長、事務長は社長にあたります。未経験なのに社長にあたる役職に就き、病院経営をうまくやっていくことができるのでしょうか? 本記事では、そのとき、私が実際に見てきたこと、聞いたことを紹介します。

目次
  1. 事務長の存在
  2. 事務長が原因で医事課の仕事ぶりがよくない
  3. 電子カルテの管理も不得手
  4. 電子カルテ問題に対して医師が激怒
  5. 何かと動こうとしない医事課
  6. ただいるだけの医事課スタッフ
  7. 有給消化、残業なしの医事課スタッフ
  8. 許さない医師
  9. 自分の意見がない事務長
  10. 事務長に不信感を覚えた医師が取った行動
  11. 問題は、事務長が院長の親戚であること
  12. 医師の目論見
  13. 医事課スタッフの実力
  14. 事務長の立場
  15. 医師の真の目的
  16. 医事課のリニューアル
  17. 事務長によってスタッフは大きく変わる

事務長の存在

そもそも事務長というにはどういった存在でしょうか? "事務"長というくらいですから、医療行為に関することは知らなくても務まります。つまり、医療経験に対する知識は必要ないとも言えます。事務長は、院長やスタッフの橋渡し的な役割を果たします。それぞれの意見を吸い上げて、検討し、結果を伝えていくことに責務があります。間に入ることで、ときには双方とぶつかり合いになることもあるかもしれません。しかし、病院経営や職員のことを考えていく以上、それは仕方がないことでしょう。むしろ、ぶつかって意見を言い合えるぐらいの方が信頼されやすいのかもしれません。

事務長が原因で医事課の仕事ぶりがよくない

医事課の仕事ぶりがよくないなら、事務長も原因かもしれません。私が働いていた病院の医事課は、小規模の病院にしては人数が多すぎるぐらいでした。5人程度でまかなえるような仕事を10人以上のスタッフでおこなっています。それぞれ担当は振り分けられているようでしたが、一人ひとりがあまり仕事をしていないように思えて仕方がありませんでした。

どう考えても看護師の仕事ではないことを、看護師に振ってくることもあったくらいです。そもそも事務長が事務に関して無知であるため、例え事務の仕事であったとしてもその区別すらわからず、事務員に対しても強く言えない傾向にありました。

電子カルテの管理も不得手

電子カルテを取り扱っている医療機関であれば、必ずシステムにも詳しい管理者が存在します。しかし、その病院では電子カルテなどのシステムに詳しい人材がいなかったため、電子カルテのトラブルも多くありました。電子カルテのトラブルは仕事にも大きく影響するため、いつも早急な対処が必要とされていました。電子カルテのトラブルは、システム上の問題もあるため、電子カルテの業者へ連絡しないと解決が難しいこともわかります。しかし、業者とのやり取りや問題への返答にとにかく時間がかかり過ぎていました。

電子カルテ問題に対して医師が激怒

電子カルテのトラブルは病院全体に影響を及ぼします。医師も、使いやすさやトラブルの起きやすさといったことには敏感なので、医師から医事課へ連絡がいくことも少なくはありません。しかし、医事課からなかなか返答がありません。しびれを切らした医師が医事課に確認したところ、業者には連絡していましたが、連絡がまだ来ていないとう返答でした。それに対して医師は激怒。すでに一週間以上待っているのにも関わらず、医事課からも全く連絡もしていなかったことに対して、「下が対応できていないのは事務長がしっかり指導できていないからだ」と事務長にも怒りました。

何かと動こうとしない医事課

臨床で働いていると、会計や保険のことを聞かれることも多々あるだめ、看護師から医事課へ聞くことも多いです。その菜、看護師から医事課へ電話しますが、質問に対して必ず答えられないスタッフがいます。また、医事課に対応してほしいことを伝えても「忙しい」の一点張り。誰が電話しても、そのスタッフが出ると同様の対応であったため、何のためにいるのか、医事課内でどんな仕事をしているのか疑問に思う人もいました。

ただいるだけの医事課スタッフ

そんなスタッフの疑問から、一度、他の医事課スタッフにどんな仕事をしているのか聞いたことがありました。そうしたら、他の医事課スタッフと何もやることは変わらないという返答でした。では、なぜ頼んだり聞いたりしてもいつも対応しないのかも聞きましたが、返ってきたのは、「いつも仕事しないからね」の一言でした。

医事課のスタッフの中ではそれは周知の事実。聞けば、以前からずっとそうだったそうです。そのスタッフの経歴はながいですが、決して若いスタッフではなく、だからといって何か役職がついているわけではありません。医事課の中でも、すでに諦めかけているようでしたが、いないよりかは良いという理由からあまり問題にもされていないようです。

有給消化、残業なしの医事課スタッフ

しかし、仕事をしない医事課スタッフのことが、医師や他の職種に知られるのも時間の問題でした。看護師間でも、そのスタッフが仕事をしないことはすでに周知されていましたが、職種が違い関わる機会も少ないため、問題にするほどではありませんでした。ですが、それを見逃さないのが医事課以外の上層部です。みんなが経営を立て直すために必死になって頑張っている中、たいして仕事をしないスタッフが給料をもらっていることに納得がいかないのです。

よくよく調べると、その医事課スタッフの有給はほとんど消化されていました。そして、1年間の残業はなしです。他の医事課スタッフは有給もたくさんあり消化できておらず、残業だって毎月数時間はあるぐらいです。しかし、そのスタッフに関してはなかったのです。これは明らかに事務長の指導ミスであると問題になりました。

許さない医師

そのことが、他職種の上層部から職場長会議であげられたそうです。そのことを知った医師は、もちろん黙っていません。医師も経営をつなぐために必死であり、そんな人が1人でもいることが許せませんでした。仕事をしないことをわかっておきながら、何もせずそのまま容認していた事務長にも責任があると問われたのです。しかし、事務長はそのことに対して把握していなかったようで、さらに医師から責め立てられました。

自分の意見がない事務長

その事務長は、会議のときにも自分の意見は述べません。そして、何か質問されてもいつも困惑しており、「確認してみます」の一言を返すだけ。いつも「詰めが甘い」と指摘されていました。経営のことがよくわからない看護師ですらそのように思うぐらいです。「このままこの人が事務長をやらせていていいのだろうか」と周りもスタッフも心配になっていました。

事務長に不信感を覚えた医師が取った行動

度重なる会議での怠惰な態度などから、医師も事務長に対して不安や不満を抱くようになりました。このままだとまずいと感じた医師は、ある病院から医事課のスタッフ1名を一時的な手伝いとして雇いました。その医事課のスタッフは、他の病院では役職といったものはついていませんでしたが、医師とのコミュニケーション力に長けていて、目の付け所がよく、発想力があったと聞いています。また、医師の考えはそれだけではありませんでした。その医事課スタッフを入職させ、医事課をリニューアルしようと考えていたのです。ですが、本人に伝えるとプレッシャーになるため、あえて伝えていなかったそうです。

問題は、事務長が院長の親戚であること

しかし、それは簡単なことではありません。医事課のリニューアルを考えたときに問題となってくるのが、事務長は院長の親戚ということです。院長の許可なしにさまざまな決断をくだして体制を変えることは、医師であっても難しくなってきます。また、手伝いとして来ており職場にも慣れていないため、時間も必要でした。ですが、事務長も他の医師から怒られていることは良く知っています。ときには、院長からも注意されることがあると他の医師からも聞いていました。

医師の目論見

そこで医師は、職場長会議にも他の病院から来た医事課スタッフを参加させることにしました。経営に関わることであるため、院長も難なく許可をしました。他の職場長も驚いたことだと思います。今まで各部署の責任者しか参加していなかったのが、一スタッフが参加したのですから。そして、会議に参加させるのにも、もちろん目的があります。それは、会議で発言させることです。この病院に来て感じた問題点や改善策を提案して、各職場長に周知させることでした。

医事課スタッフの実力

その医事課スタッフの意見は具体的であり、地域性や年齢層などさまざまな方面から考え改善策を導き出していました。医師の中には納得していない人もいましたが、具体的な金額も提示されていたため、現状を打開するためにもやらざるを得えません。そのような意見を出すために、毎回会議に参加させたのです。

事務長の立場

その医事課スタッフが会議に参加したことによって、次第に事務長も肩身が狭くなってきていました。事務長では考えられないような意見や改善策を導き出し、収益が少しずつ上がってきたのも確かです。そのため、事務長の立場も危ういと考えてしまうぐらいでした。

医師の真の目的

しかし、医師の目的は医事課そのものをリニューアルすることです。リニューアルといっても、人を全員辞めさせるわけではありません。今、現状で起こっている医事課の問題を改善させることでした。その医事課スタッフが他院から手伝いとして来ながら、結果まで出したことは、そのための大きな一歩でした。

医事課のリニューアル

そして、とうとうリニューアルに向けて動きだしました。医事課事務所内に置く人数を最小限とし、受付や病棟、物品担当などに振り分けたのです。今までは、会計や受付、物品などは委託業者に頼んでいたところもあります。しかし、その委託業者の人数をカットすることでコスト削減にもつながります。また、病棟にも医事課の職員を配置することで、書類関係や会計、保険の問い合わせの対応ができることとなり、病棟スタッフの負担が減ってきました。また、人数が足らない部署にも配属させ、できる範囲でおこなっていくことで負担が減っていきます。このことによって、暇を持て余すような医事課スタッフはいなくなりました。

事務長によってスタッフは大きく変わる

医事課に限らずどの部署にも言えることだとは思いますが、トップが良くなければ、下にも伝染していきます。結局、院長の親戚というだけでは、仕事は成り立たちません。運よく事務長になれたなら、それ相応の仕事はしてほしいものです。

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執筆 男性看護師ライター | ベル

看護師歴14年目。救急、ICU、外科、内科を経験トラブルも多い看護の世界でいろいろいあってもこの仕事が好きな男性看護師。 現在、管理職として働きながらブログなどでも経験を活かしたノウハウを執筆しています。


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