
コロナ渦を経て、オンライン診療を導入している医療機関が増えていると同時に、オンライン診療に関する診療報酬点数も随時アップデートされています。そのため、診療報酬点数の取りこぼしがないよう、知識をアップデートさせていくことも非常に重要です。そこで今回は、「オンライン医学管理料」「オンライン診における医学管理等に係る診療報酬点数」について詳しく解説していきます。併せて、初診料や再診料についても確認していきましょう。
- オンライン医学管理料とは?
- オンライン診療で算定できる「医学管理等に係る診療報酬点数」は?
- オンライン医学管理等に関するありがちな算定ミスやトラブルは?
- オンライン診療の初診料、再診料は?
- オンライン診療と関連する診療報酬点数はコロナ渦とどう変わった?
- 情報通信機器を用いた通院精神療法をおこなった場合に算定できる点数もある
- オンライン診療時の処方箋発行ルールと注意点
- オンライン診療における法的リスクと注意点
- オンライン診療を導入した場合の診療報酬収入シミュレーション
- オンライン診療推進に伴う医療DXの今後の展望
- オンライン診療をおこなう際の通信環境・端末要件は?
- オンライン診療を実施する場合は点数の取りこぼしに気を付けよう!
オンライン医学管理料とは?
「オンライン医学管理料」とは、情報通信機器を活用した診療、つまりオンライン診療で、医学的な処置や投薬の提供とは別に、医師による患者指導や医学的管理をおこなった場合に算定できる診療報酬点数です。
診療報酬点数は、1月につき100点となります。
算定要件、施設基準、対象患者は次の通りです。
【算定要件】
(1)オンライン医学管理料の対象となる管理料を算定している患者に対して、リアルタ イ ムでのコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な情報通信機器を用いてオンラインによる医学管理をおこなった場合に、前回対面受診月の翌月から今回対面受診月の前月までの期間が2月以内の場合に限り、次回対面受診時に所定の管理料に合わせて算定可能
(2)対面診療で管理料等を算定する月においては、オンライン医学管理料は算定できない
(3) 対象となる管理料等を初めて算定してから6月の間は、毎月、同一の医師によって対面診療をおこなっている場合に限り算定する。ただし当該管理料等を初めて算定した月から6月以上経過している場合は、直近12月以内に6回以上、同一医師と対面診療をおこなっていればよい
(4)患者の同意を得たうえで、対面による診療(対面診療の間隔は3月以内)とオンラインによる診察を組み合わせた療養計画を作成して、当該計画に基づき診察をおこなうこと
(5)オンライン診察による計画的な療養上の医学管理は、当該保険医療機関内においておこなう。また、当該管理をおこなう際には、厚生労働省の定める情報通信機器を用いた診療に係る指針に沿って診療をおこなうこと
【施設基準】
オンライン診療料の施設基準を満たしていること。
【オンライン医学管理料の算定が可能な患者】
次に掲げる管理料等を算定している初診以外の患者で、かつ、当該管理料等を初めて算定した月から6月以上を経過した患者
■医学管理等とは?
「医学管理等」とは、特定の疾患を有する患者に対して、指導や管理などを実施した場合に算定する項目です。「医学管理料」とは異なり、疾患ごとに点数が異なります。
「医学管理等」は、医学的な処置や投薬の提供とは別に、医師によって患者指導や医学的管理をおこなった場合に算定できますが、指導や管理は、具体的にどんなことをしたら評価の対象になるのかがわかりにくいこともあり、算定ミスが非常に多い算定項目であるとされています。また、厚生労働省の改定法案でたびたび変更があることも、算定ミスの大きな原因となっていますが、医療機関にとっては重要な収入源であるため、取りこぼしのないようにしたいところです。
なお、電話等で最新がおこなわれた場合、医学管理等は算定不可とされています。
参照:厚生労働省「第2章 特掲委診療科 第1部 医学管理等」
オンライン診療で算定できる「医学管理等に係る診療報酬点数」は?
医学管理等に係る診療報酬点数は、もともと対面診療で算定可能で、一部疾患についてはオンライン診療での算定も認められていましたが、2022(令和4)年度の診療報酬改定によって、オンライン診療での算定対象となる疾患が増えています。
2022(令和4)年度の診療報酬改定によって評価が見直された医学管理等、2022(令和4)年度の診療報酬改定によって、新たにオンライン診療報酬での評価対象となったものは次の通りです。
2022(令和4)年度の診療報酬改定によって評価が見直された医学管理等
現行の対面診療における評価 | 情報通信機器を用いた場合の評価(オンライン診療を実施した場合の評価) | |
特定疾患療養管理料 | ||
1.診療所の場合 | 225点 | 196点 |
2.許可病床数が100床未満の病院の場合 | 147点 | 128点 |
3.許可病床数が100床以上200床未満の病院の場合 | 87点 | 76点 |
小児科療養指導料 | 270点 | 235点 |
てんかん指導料 | 250点 | 218点 |
難病外来指導管理料 | 270点 | 235点 |
糖尿病透析予防指導管理料 | 350点 | 305点 |
在宅自己注射指導管理料 | ||
1.複雑な場合 | 1,230点 | 1,070点 |
2.1以外の場合 | ||
イ 月27回以下の場合 | 650点 | 566点 |
ロ 月28回以上の場合 | 750点 | 653点 |
2022(令和4)年度の診療報酬改定によって、新たにオンライン診療報酬での評価対象となったもの医学管理等
現行の対面診療における評価 | 情報通信機器を用いた場合の評価(オンライン診療を実施した場合の評価) | |
ウイルス疾患指導料 | ||
ウイルス疾患指導料1 | 240点 | 209点 |
ウイルス疾患指導料2 | 330点 | 287点 |
皮膚科特定疾患指導管理料 | ||
皮膚科特定疾患指導管理料(I) | 250点 | 218点 |
皮膚科特定疾患指導管理料(II) | 100点 | 87点 |
小児悪性腫瘍患者指導管理料 | 550点 | 479点 |
がん性疼痛緩和指導管理料 | 200点 | 174点 |
がん患者指導管理料 | ||
1.医師が看護師と共同して診療方針等について話し合い、その内容を文書等により提供した場合 | 500点 | 435点 |
2.医師、看護師または公認心理師が心理的不安を軽減するための面接をおこなった場合 | 200点 | 174点 |
3.医師または薬剤師が抗悪性腫瘍剤の投薬または注射の必要性等について文書により説明をおこなった場合 | 200点 | 174点 |
4.医師が遺伝子検査の必要性等について文書により説明をおこなった場合 | 300点 | 261点 |
外来緩和ケア管理料 | 290点 | 252点 |
移植後患者指導管理料 | ||
1.臓器移植の場合 | 300点 | 261点 |
2.造血幹細胞移植後の場合 | 300点 | 261点 |
腎代替療法指導管理料 | 500点 | 435点 |
乳幼児育児栄養指導料 | 130点 | 113点 |
療養・就労両立支援指導料 | ||
1.初回 | 800点 | 696点 |
2.2回目以降 | 400点 | 348点 |
がん治療連携計画策定料2 | 300点 | 261点 |
外来がん患者在宅連携指導料 | 500点 | 435点 |
肝炎インターフェロン治療計画料 | 700点 | 609点 |
薬剤総合評価調整管理料 | 250点 | 218点 |
参照:厚生労働省「オンライン診療等の診療報酬上の評価見直しについて」
なお、電話等で最新がおこなわれた場合、医学管理等は算定不可とされています。
参照:厚生労働省「第2章 特掲委診療科 第1部 医学管理等」
オンライン医学管理等に関するありがちな算定ミスやトラブルは?
続いては、オンライン医学管理等に関してありがちな算定ミスやトラブルをみていきます。
「特定疾患療養管理料」の算定点数が病床数によって異なることを見落としていた
先に表で説明した通り、特定疾患療養管理料の算定点数は病床数によって異なり、規模が小さい診療所ほど点数が高くなっています。これはなぜかというと、特定疾患療養管理は、プライマリ機能を担う地域のかかりつけ医の役割とされているためです。
在宅自己注射指導管理料の回数の違いによる点数の違いを見落としていた
先に表で説明した通り、在宅自己注射指導管理料は、複雑な場合を除き、「月27回以下であるか、月28回以上であるか」によって点数が異なります。キリのいい数字ではないため覚えることも難しいので、面倒ですが、毎回、点数を確認することによってミスをなくすことが望ましいといえるでしょう。
「指導管理料」に対して患者からクレームが入ることがある
「腎代替療法指導管理料」「乳幼児育児利用指導料」などの指導料や指導管理料に関して、患者から、「指導など受けていないのに指導管理料が請求されている」とクレームが入るケースがあります。
なぜかというと、実際の診察においては、「疾患や検査結果の説明」と「療養上の説明(=指導管理)」をまとめておこなうため、患者は「疾患や検査結果の説明しか受けていない」と感じることがあるためです。
この場合は、患者に納得してもらえるよう丁寧に説明するほかありません。
オンライン診療の初診料、再診料は?
続いては、オンライン診療の初診料、再診料を確認していきましょう。
2022(令和4)年度の診療報酬改定において、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しを踏まえて、情報通信機器を用いた場合の初診料について新たな評価がおこなわれることとなりました。また、再診料については、情報通信機器を用いて再診をおこなった場合の評価が新設されたとともに、オンライン診療料が廃止されました。
その結果、オンライン診療の初診料、再診料は、現状、次の通りの点数となっています。
また、算定要件、施設基準は次の通りです。
【算定要件】(初診の場合)
(1)保険医療機関において初診をおこなった場合に算定する。ただし、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、情報通信機器を用いた初診をおこなった場合には、251点を算定する。
(2)情報通信機器を用いた診療については、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療をおこなった場合に算定する。なお、この場合において、診療内容、診療日および診療時間などの要点を診療録に記載すること
(3)情報通信機器を用いた診療は、原則として、保険医療機関に所属する保険医が保険医療機関内で実施すること。なお、保険医療機関外で情報通信機器を用いた診療を実施する場合であっても、当該指針に沿った適切な診療がおこなわれるものであり、情報通信機器を用いた診療を実施した場所については、事後的に確認可能な場所であること
(4)情報通信機器を用いた診療をおこなう保険医療機関について、患者の急変時等の緊急時には、原則として、当該保険医療機関が必要な対応をおこなうこと。ただし、夜間や休日など、当該保険医療機関がやむを得ず対応できない場合については、患者が速やかに受診できる医療機関において対面診療をおこなえるよう、事前に受診可能な医療機関を患者に説明した上で、以下の内容について、診療録に記載しておくこと
ア 当該患者に「かかりつけの医師」がいる場合には、当該医師が所属する医療機関名
イ 当該患者に「かかりつけの医師」がいない場合には、対面診療により診療できない理由、適切な医療機関としての紹介先の医療機関名、紹介方法および患者の同意
(5)指針において、「対面診療を適切に組み合わせておこなうことが求められる」とされていることから、保険医療機関においては、対面診療を提供できる体制を有すること。また、「オンライン診療をおこなった医師自身では対応困難な疾患・病態の患者や緊急性がある場合については、オンライン診療をおこなった医師がより適切な医療機関に自ら連絡して紹介することが求められる」とされていることから、患者の状況によって対応することが困難な場合には、ほかの医療機関と連携して対応できる体制を有すること
(6)情報通信機器を用いた診療をおこなう際には、厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療をおこない、当該指針において示されている一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえ、当該診療が指針に沿った適切な診療であったことを
診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。また、処方をおこなう際には、当該指針に沿って処方をおこない、一般社団法人日本医学会連合が作成した「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを踏まえて、当該処方が指針に沿った適切な処方であったことを診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載すること
【施設基準】
(1)情報通信機器を用いた診療をおこなうにつき十分な体制が整備されていること
(2)厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療をおこなう体制を有する保険医療機関であること
参照:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」「情報通信機器を用いた初診に係る評価の新設」
【必要な届出】
なお、施設基準を満たしていることを証明するために、管轄の厚生局に「情報通信機器を用いた診療についての施設基準の届出」を提出する必要があります。
参照:厚生労働省「オンライン診療の利用手順の手引き書」より「実施手順の確認」
提出が必要な書類は以下の2点です。
届出書のひな型の入手方法については、各厚生局に問い合わせてください。
オンライン診療と関連する診療報酬点数はコロナ渦とどう変わった?
「オンライン医学管理料」「オンライン診療で算定できる医学管理等」「オンライン診療における初診料・再診料」などのオンライン診療と関連する診療報酬点数は、コロナ渦やそれ以前とは変わっています。
なぜかというと、コロナウイルス感染症が拡大する以前はオンライン診療が当たり前ではなかったことから、オンライン診療に対する評価が高くはなかったのに、コロナ渦をきっかけにニーズが高まり、さらにアフターコロナには、院内での接触感染を防止する対策をとる必要性が薄れてきたという背景があるためです。
このうち、令和2年4月10日に厚生労働省より通達された「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診察等の時限的・特例的な取扱いについて」に基づく対応は、「0410対応」と呼ばれていますが、0410対応は令和5年7月31日をもって終了となったため、0410対応時代の点数でレセプト請求しないよう注意することが大切です。
また、「令和5年8月1日より対応不可になったこと」「令和5年8月1日以降も継続して対応可であること」をまとめる次の通りです。
令和5年8月1日より対応不可になったこと
令和5年8月1日以降も継続して対応可であること
【オンライン診療にかかる診療報酬上の評価の変遷】
コロナ前 (平成30年4月1日~) |
コロナ特例 (令和2年4月10日~令和5年7月31日) |
令和4年の診療報酬改定後(令和5年8月1日~) | |
初診料 | - | 214点 | ① 情報通信機器を用いた場合※届出あり:251点 ② 情報通信機器または電話※届出なし:算定不可 |
再診料等 | オンライン診療料として71点(ただし算定は月1回に限る) | 再診料=73点 外来診療料=74点 |
① 情報通信機器を用いた場合※届出あり ・再診料=73点 ・外来診療料=73点 ② 情報通信機器または電話を用いた場合※届出なし ・再診料=73点 |
施設基準等 | ・オンライン診療に係る研修の受講が必要 ・3か月に1回は対面診療が必要 ・対象患者は特定疾患療養管理料等を算定している患者等に限定 ・緊急時に概ね30分以内に対面診療が可能であること ・再診料などの算定回数のうち、オンライン診療料の算定回数の割合が1割 以下であること |
オンライン診療に係る研修の受講が必要(令和3年3月31日まではコロナ渦につき猶予) | オンライン診療に係る研修の受講以外の要件を撤廃 |
参照:内閣府「オンライン診療にかかる診療報酬上の評価の変遷」
また、「オンライン医学管理料」に関しては、令和5年7月31日までのコロナ特例においては、100点から147点に引き上げられていましたが、これに関しても、令和5年8月1日をもって元の100点に戻っています。
参照:厚生労働省「オンライン診療の特例措置の恒久化について」より「新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた電話等情報通信機器を用いた診療等に関する取扱い」
参照:福島県保険医協会「令和5年8月1日以降、オンライン診療を開始するまでの手順」
情報通信機器を用いた通院精神療法をおこなった場合に算定できる点数もある
さらに、2024(令和6)年度の診療報酬改定によって、情報通信機器を用いた通院精神療法をおこなった場合に算定できる診療報酬点数なども設定されています。
これは、情報通信機器を用いた通院精神療法をおこなうことが適当と認められた患者に対して、情報通信機器を用いて通院精神療法をおこなった場合、情報通信機器を用いていない場合の所定の点数(精神保健指定医が30分以上おこなった場合410点、精神保健指定が30分未満おこなった場合315点)に代えて、それぞれ357点または247点算定できるというものです。ただし、以下のア~キに留意する必要があります。
ア 情報通信機器を用いた精神療法をおこなうことが適当と認められる患者とは、情報通信機器を用いた精神療法を実施する当該保険医療機関の精神科を担当する医師が、同一の疾病に対して、過去1年以内の期間に対面診療をおこなったことがあるものであること
イ 情報通信機器を用いた精神療法をおこなう際には、オンライン指針に沿った診療および処方をおこなうこと
ウ 情報通信機器を用いた精神療法をおこなう際には、厚生労働省令和4年度障害者総合福祉推進事業「情報通信機器を用いた精神療法を安全・適切に実施するための指針の策定に関する検討」において作成された「情報通信機器を用いた精神療法に係る指針」(以下「オンライン精神療法指針」という)に沿って診療をおこない、診療内容、診療日、診療時間等の要点を診療録に記載すること。また、当該診療がオンライン精神療法指針に沿った適切な診療であることを診療録及び診療報酬明細書の摘要欄に記載すること
エ 処方をおこなう際には、オンライン精神療法指針に沿って処方をおこない、当該処方がオンライン精神療法指針に沿った適切な処方であることを診療録および診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。なお、向精神薬等の処方に当たっては、日本精神神経学会が作成した「向精神薬の副作用モニタリング・対応マニュアル」、日本神経精神薬理学会が作成した「統合失調症治療ガイドライン 2022」、日本うつ病学会が作成した「日本うつ病学会治療ガイドライン II.うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害 2016」等の関係学会が定めるガイドラインを参考にすること
オ 情報通信機器を用いた精神療法をおこなった患者に対して、1回の処方において3種類以上の抗うつ薬または3種類以上の抗精神病薬を投与した場合は、当該点数を算定できない。
カ 情報通信機器を用いた精神療法をおこなう保険医療機関について、患者の急変や自殺未遂等の緊急時又は向精神薬等の乱用や依存の傾向が認められる場合などには、原則として、当該保険医療機関が必要な対応をおこなうこと。ただし、夜間や休日など、当該保険医療機関がやむを得ず対応できない場合については、患者が速やかに受診できる医療機関において対面診療をおこなえるよう、事前に受診可能な医療機関を患者またはその家族などに説明すること。なお、安全性を確保する観点から、情報通信機器を用いた精神療法を実施する医師自らが速やかに対面診療をおこなえる体制を整えていることが望ましい。また、オンライン指針において、「急病急変時の対応方針(自らが対応できない疾患等の場合は、対応できる医療機関の明示)」を含む診療計画の作成が求められていることに留意すること
キ 精神科救急医療体制整備事業における対応や時間外の対応、緊急時の入院受け入れなどをおこなっている医療機関等と連携するなど、入院や身体合併症の対応が必要となった場合(精神病床に限るものではなく、身体疾患等で入院医療が必要となり一般病床に入院する場合も含む)に適切に対応できる体制を確保しておくことが望ましい
オンライン診療時の処方箋発行ルールと注意点
続いては、オンライン診療時の処方箋発行ルールと注意点を確認していきます。
オンライン診療における処方箋発行ルール
オンライン診療において処方箋を発行する場合、処方箋の備考欄に「オンライン対応」と記載したうえで、当該患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にファクシミリやメール等で処方箋情報を送付します。その際、医師は診療録に送付先の薬局を記載します。
また、医療機関は患者に処方箋原本を渡すことなく、処方箋情報を送付した薬局に当該処方箋原本を送付します。
なお、オンライン診療実施後、薬剤師の判断もしくは患者の希望によってオンライン服薬指導から対面での服薬指導に切り替えた場合、またはオンライン診療のために患者に対して処方箋を即時に手交できず、その後、対面の服薬指導をおこなう場合も同様の取り扱いが可能です。
参照:厚生労働省医薬・生活衛生局総務課 厚生労働省医政局医事課「オンライン服薬指導における処方箋の取り扱いについて」の改定について(令和4年9月30日)
処方できない薬剤と処方時の注意点一覧
厚生労働省が公表している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、初診の場合は次の薬は処方することができません。
なお、薬剤管理指導料「1」の対象となる薬剤には、次のようなものがあります。
加えて、日本医学会連合「オンライン診療の初診に関する提⾔」では、次の薬に関しても、初診での投与は慎重におこなうべきであるとされています。
<病原微生物に対する薬剤>
<抗悪性腫瘍薬>
すべて
<炎症・免疫・アレルギーに対する薬>
<代謝系に作⽤する薬>
ベラNは可とする)
<内分泌系薬剤>
<ビタミン製剤、輸液・栄養製剤>
<⾎液製剤、⾎液系に作⽤する薬剤>
<循環器系に作⽤する薬剤>
<呼吸器系に作⽤する薬剤>
協議も必要)
<消化器系に作⽤する薬剤>
<神経系に作⽤する薬剤>
<腎・泌尿器系薬剤>
<眼科系薬剤>
など)
<耳鼻咽喉科系薬剤>
<⽪膚科系薬剤>
ニウム臭化物)
<精神系薬剤>
神保健指定医もしくは精神科専⾨医は処⽅可)
オンライン診療における法的リスクと注意点
続いては、オンライン診療における法的リスクと注意点をみていきましょう。
個人情報保護法・プライバシーへの対応方法
個人情報保護法・プライバシー保護の観点から、医師は使用するシステムを患者に示して、セキュリティリスクとそれに対する対策および責任の所在について、患者に説明して合意を得ること、使用するシステムを適宜アップデートすること、同システムが一定条件のセキュリティを満たしていることを確認すること、医師がいる空間に診療に関わっていないものがいないことを示すこと、患者側も医師側も録音・録画を同意なしにおこなわないことを確認することとされています。
実際に問題になった法的トラブルの事例とその回避策
上記に列挙した条件のうち、録音・録画に関しては、患者側が勝手に録音・録画した場合には患者を訴えることも可能です。なかには、オンライン診療の様子を録画した映像をSNSにあげてしまう患者もいるので 、見つけた場合には然るべき対応をとることをおすすめします。
オンライン診療を導入した場合の診療報酬収入シミュレーション
続いては、オンライン診療を導入することによる金銭面のメリットは大きいのかどうかを考えていきます。
クリニックの具体的な導入事例からみる収益シミュレーション
コロナ渦以降、オンライン診療を導入するクリニックは増え続けていますが、収入面で変化があったかどうかはクリニック次第です。
しかし、「オンライン診療を上手に活用する方法を考えているクリニック」「そもそもオンライン診療に向いている診療科」などは大幅な収入アップにつながっているようです。
たとえば、「患者の主訴を聞いて体調管理に役立つ漢方を処方する漢方内科」は、対面の場合、「明確な症状がなければ受診しにくい」と患者から敬遠されがちですが、「気軽にオンラインでご受診ください」と呼びかけることで、全国に患者を持てる可能性が高いといえます。
同じくAGA治療に関しても、「クリニックに入っていく姿を知り合いに見られたくない」との理由から対面診察が避けられる傾向にあるため、オンライン診療に力を入れることで収入が倍以上に増える可能性は非常に高いです。
また、生活習慣病予防や小さな子どもの便秘解消など、「通院しなくても薬だけ発行してもらえたらいいのにな……」と考える患者が多い症状や疾患を扱う診療科も、オンライン診療と相性がいいといえるでしょう。
算定漏れ防止に必要な仕組み作りとは?
オンライン診療の算定漏れを防いで、着実に収益を上げていくためには、対面診療におけるレセプト請求同様、レセプトチェックシステムの請求、レセプト代行の利用、診療報酬改定時のチェックなどを丁寧におこなっていくほかありません。
また、本記事のように、見落としがちな診療報酬などをまとめた記事も参照しながら、定期的にレセプトチェック体制を見直すことをおすすめします。
オンライン診療推進に伴う医療DXの今後の展望
続いては、オンライン診療推進に伴う医療DXの今後の展望について考えていきます。
厚生労働省が示すオンライン診療の今後の方針
厚生労働省は、「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」(令和5年6月)のなかで、オンライン診療等(医師と患者間での遠隔医療)に期待される役割として、「通院に伴う患者負担の軽減および継続治療の実現」「訪問診療および往診などに伴う医師の負担軽減」「医療資源の柔軟な活用」「患者がリラックスした環境での診療の実施」「感染症への感染リスクの軽減」を挙げています。
また、その実現のために、地域の医療提供体制を充実させることや、地域に適した運営体制、システムの整備、セキュリティ対策の強化などを挙げています。
参照:厚生労働省「オンライン診療その他の遠隔医療の推進に向けた基本方針」
医療DXとの関連性と診療報酬改定の方向性
厚生労働省が示すオンライン診療の今後の方針を実現させるためにも、医療DXは今後さらに進んでいくことが予想されます。また、それに伴い、診療報酬点数の見直しや新設もおこなわれることが予想されるので、次回の診療報酬改定においても、オンライン診療関連の診療報酬に改定があるかどうかは引き続きチェックすることが重要です。
オンライン診療をおこなう際の通信環境・端末要件は?
続いては、オンライン診療の際の通信環境や端末要件を確認していきましょう。
オンライン診療に必要な情報通信機器とは
オンライン診療に必要な情報通信機器は、パソコンやタブレット、スマートフォンなど、インターネットに接続することで、映像と音声で患者とつながれるものを指します。
診察の途中で映像が途切れることのないよう、通信環境が安定した場所でオンライン診療をおこなうことが必要です。
なお、外出時などはスマートフォンやタブレットで対応せざるを得ないこともあるかもしれませんが、カルテに入力することを考えると、基本的には、キーボードを打つために両手をあけられるよう、パソコンで診療することが望ましいと考えられます。
オンライン診療に使うシステムは?
オンライン診療に対応はしているものの、ほとんど対面診療で、稀にしかオンライン診療をおこなうことがないなら、汎用性のあるZoomやGoogle meetなどを使ってオンライン診療することも問題はありません。しかし、これらのシステムでオンライン診療をおこなう場合、URLを患者に伝えるために手動でメールを送らなくてはならなかったり、支払いにも別途対応しなければならなかったりと手間がかかります。
そのため、オンライン診療をある程度以上の頻度で実施する予定なら、診療予約や問診機能、クレジットカード決済などに対応しているオンライン診療システムを導入することがおすすめです。
オンライン診療を実施する場合は点数の取りこぼしに気を付けよう!
ここまでの内容を総合すると、オンライン診療を実施した場合、初診料または再診料、オンライン医学管理料に加えて、特定の疾患に対して医学管理料を算定できるということになります。さらに、2024(令和6)年度の診療報酬改定によって、情報通信機器を用いた通院精神療法をおこなった場合に算定できる診療報酬点数なども設定されているので、該当の療法を導入している医療機関は、取りこぼしのないようにしっかりチェックしてくださいね。
参照:厚生労働省 令和6年度診療報酬改定の概要【医療DXの推進】「情報通信機器を用いた通院精神療法に係る評価の新設」
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年11月時点の情報を元に作成しています。