
コロナ禍を経て浸透しつつあるオンライン診療は、今後ますます重要性が高まることが予想されます。まだ導入していないクリニックのなかには、「オンライン診療でどこまできちんとした診療ができるか不安」という理由で躊躇しているクリニックもあるのではないでしょうか。そこで今回は、オンライン診療の精度を上げる表情や身振りについて解説していきます。
オンライン診療の現状は?
まずはオンライン診療の現状について説明します。
コロナがきっかけで浸透が加速したオンライン診療ですが、現状、オンライン診療の導入がもっとも進んでいるのは、ピルを処方している婦人科や、増毛剤を処方している美容内科、美容皮膚科などです。そのため、「そもそも最低限のやりとりができたら問題なし」というところが多いでしょう。ただし、今後はその限りではなく、「足が悪くて来院が困難」「介護中で子どもをクリニックまで連れて行けない」など、少子高齢化にともないさまざまなニーズが出てくることが考えられるので、新たな可能性が考えられます。
改めて確認したい「診療のポイント」
続いて、オンライン診療における問診について考える前に、診療のポイントそのものを改めて考えてみましょう。
昨今は、電子カルテの普及に伴い、画面の入力に一生懸命で患者のほうをしっかりと向いて話すことが疎かになっているドクターも増えています。「まずは患者の話を書き留めてから相手のほうを向くから大丈夫」と考えているドクターもいるかもしれませんが、それでは場合によっては重要な情報を見落とすことがあります。
たとえば、「最近どうも夜になると具合が悪くなって……」と話している患者が、無意識のうちにそのときに痛むところを触っていることもあるかもしれません。また、気になる生活習慣について聞き返した際、患者が「お医者さんに怒られるかもしれない」と真実を隠したとして、相手の顔色を見ていれば一瞬の顔色の変化を見逃さないことも考えられます。
患者が話すときの症状や仕草にはさまざまなヒントが隠されています。そのことを今一度思い出して、診察の基本へと立ち返ってみましょう。
理想的な診療とは?
続いては、診療における理想的な姿勢や、患者との向き合い方についてみていきましょう。
オンライン診療のポイントは、「表情や身振りは対面診療より大きく、はっきりと」
基本的な診療の姿勢を確認したところで、続いてはオンライン診療との違いも考えていきます。
オンライン診療においてもっとも意識すべきことは、表情や身振りをいつもより大きくすることです。「日ごろから患者にちゃんと伝わるようにはっきり、ゆっくり喋っているから問題ない」と思うドクターもいるかもしれませんが、それだと十分に伝わらない場合があります。なぜなら、患者はスマホやタブレットを通して診察を受けていますが、端末によっては画面が小さいこともあれば、音声が小さく聞き取りにくいこともあるからです。いつもの診察とどのくらい伝わり方が異なるかは、スタッフなどを相手に一度実験してみるとわかりやすいかもしれません。
ターゲット層が聴き取りやすい速度を意識する
ご高齢の患者に対しては「ゆっくり、はっきり」を意識することが大切です。一方、ZOOMやGoogle meetなどを使用することが日常的な若い世代が相手であれば、基本的には通常のスピードで問題ありません。ただし、電波状況などによっては音声が途切れがちなこともあるので、患者がドクターの言葉を聴き取れなかったときに「もう一度言ってもらえますか?」と聴き返しやすいよう、話しやすい雰囲気を心がけましょう。
オンライン診療時はドクターも患者もマスクなしが望ましい
前述の通り、小さな画面越しに意思疎通することが必要なオンライン診療においては、身振り手振りを大袈裟にするくらいがベストです。口の動きに関してもそうで、どんなふうに動いているかがお互い見えたほうが、言いたいことが伝わりやすいです。そのため、マスクは外していることが望ましいといえるでしょう。
表情が出やすい目元まで意識しよう
口元同様、目元にも意識を行き渡らせることが大切。患者の不安な気持ちを払拭できるよう、真摯に話を聴いたり語り掛けたりする際、瞳の表情まで意識することを習慣づけましょう。
ジェスチャーはシンプルにわかりやすく
身振り手振りを大きくすることは大切ですが、何を意味している動きであるのか相手が理解できなければまるで意味がありません。基本的なことでいうと、「朝昼晩の3回の食後に服用してください」と言いながら指を3本画面の前に出していたら「3回」だということがしっかりと頭に刻み込まれやすいですが、「3回服用してください」と言いながら画面の前に出した3本指が画面に垂直だったら、相手側からは薬指しか見えないため意図が伝わっていない可能性があります。
患者の表情や身振りに関してチェックすべきポイントは?
続いては、ドクター側が表情や身振りに関して気を付けるべきことから離れて、患者の表情や身振りに関して注視すべきポイントをみていきましょう。
発熱の申告があれば舌を見せてもらう
患者から発熱の自己申告があったときは必ず舌を見せてもらいましょう。舌を診ることで脱水症状があるかどうかがわかるたけでなく、点滴や入院の必要性もわかります。
顔色が悪いときは瞼の裏を見せてもらう
患者の顔色がいつもより悪いように思えるときは、瞼結膜を確認させてもらうことで、貧血かどうかを見極めましょう。
息づかいが荒いときは首筋を見せてもらう
話しているときに息づかいが荒くしんどそうに見えたら、首筋を診ます。頚静脈に怒張が見られたら、心不全の可能性があります。肺炎も疑われる場合なども、迅速に対処することが必要です。
診療中にも体調が悪化していく様子が見られたら救急車などの対応も必要
具体的な診断はつかずとも、オンライン診療中にも目に見えて体調が悪くなっているようであれば、救急車を手配することなども必要です。もしくは、家族がいてすぐに自院まで連れてきてもらえるようなら、すぐに応急処置の準備を進めることがベストな場合もあります。一刻を争う場合が100%ないとは限らないですし、オンライン診療の普及が進むにつれてますます、さまざまな症状の患者をオンラインで診療する可能性が出てくるはずです。
オンライン診療でできることは今後ますます増えてくることが予想される
今年4月には、スマートフォンを介して患者の呼吸音を取得できる医療機器プログラムを開発した株式会社MICINが、同プログラムの承認申請を医薬品医療機器総合機構におこなったことが発表されています。申請が認められてオンライン診療で活用されるようになれば、オンライン診療でできることがますます増えていきます。当然、これまで以上にニーズも高まってくることが予想されるので、オンライン診療をまだ導入していないクリニックは、ぜひ導入を検討してみてくださいね。
⇒参照:株式会社MICIN
「MICINとして初となる、医療機器プログラムの申請承認を提出 ~オンライン診療での呼吸音の活用を目指す~」
オンライン診療機能を備えた電子カルテも増えつつある
今後オンライン診療を導入していきたいと考えているなら、オンライン診療の機能を有した電子カルテへの切り替えを検討することもおすすめです。「curon」(株式会社MICIN)「CLINICS」(株式会社メドレー)「CLIUS」(株式会社Donuts)など、オンライン診療機能以外も充実している電子カルテが多いので、気になる人はぜひチェックしてみてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年7月時点の情報を元に作成しています。