働き方が多様化し、長く同じ会社に務めることが当たり前ではなくなりました。
それは医療業界にも言えることで、同じ病院だけではなく、今の自分に合った職場を求めて転職をする人が増えています。ただ、あまりスタッフの入れ替えが頻繁にあるとクリニック側に何か問題があるのでは……?と患者さんから悪く思われる可能性もあります。
クリニックを経営するうえで「優秀な人材を求める」のも大事なことですが、「長く務めてくれる人」を採用することも【集患・増患】につながる重要なポイントとなるでしょう。
そこで、主任看護師として採用面接を担当していた筆者の経験をもとに、「すぐにやめる人」と「長続きする人」の違いをお伝えします。あくまで経験則として、1つの参考になれば幸いです。
すぐやめる人の共通点
まずは、「すぐに辞めてしまう人」に共通する特徴をご紹介します。
笑顔がない(仕方なく面接にきたという雰囲気)
「緊張しているのかな」「控えめなタイプかな」と思っていたら、深い悩みや不安を抱えていることがあります。個の対応の人は、欠勤がちであったり、出勤しても何だかうわの空だったりすることが多かったです。
だんだんと注意を受けることも多くなってきて、しまいには居づらくなって退職してしまう……というパターンですね。
面接は誰でもある程度は緊張するものだと思いますし、ヘラヘラ笑っている人はまずいません。しかし、あいさつやアイスブレイクとしての声かけにも全く笑顔を見せず、表情が暗い人は注意が必要です。
診療の際にも、患者様にもあまりいい影響を与えないでしょう。
話を聞いているように見えても…?
面接の際に、自分の聞きたいことを熱心に質問してくれる。
面接する側からすると、前向きな姿勢に好感を持つことでしょう。しかし場合によっては、質問するばかりでこちらの話はきちんと聞いていないことがあります。
このタイプの人は、何か面倒なことがあったりすると「そんなの聞いてない」と辞めてしまうパターンが多かったですね。
面接時に院内を歩いて案内するなど机上を離れるとわかることが多いのですが、人の説明を聞かずに、キョロキョロとほかの所を見ている人などは要注意です。
面接時や募集をかける時には、クリニックの理念や方針、求めている人材を「これでもか」というほどにきちんと説明しておいた方がいいかもしれません。
自分のキャリアに(過剰に)自信を持っている人
自分のキャリアに自信があることはとてもいいことです。クリニックのような人の少ない職場環境では、多くのスキルを持っている人は重宝されるでしょう。
でも、そのキャリアに過剰なまでの自信を持っていると、逆効果として現れることも珍しくありません。
大学病院など大きな病院に勤めていた人に多いパターンですが、「こんなの大学ではありえない」「ここではスキルアップできないわ」と辞めてしまうケースがありました。
大学病院と比べればクリニックは人員も、物品も揃えがいいとは言えないこともあるでしょう。時には看護師が受付をしたり、トイレ掃除をすることだってあります。
こうしたケースを防ぐためにも、面接時には、自分の今までのキャリアをクリニックではどういった形で発揮していってくれるのか確認しておきましょう。
大学病院とクリニックでは病院としての役割が違うことや、クリニックの理念のほかに看護師として、一スタッフとして求めていることを明確にして伝えておくことも大切です。
転職回数の多い人
転職回数の多い人は、あきらめること・やめることに慣れている傾向があり、少しでも嫌なことがあると簡単にやめてしまいがちです。
ですが中には「転職はこれで最後にしたい」「新しい自分になりたい」と思っている人もいるものです。新しい職場にたまたま気の合う仲間ができて、人間関係で仕事が長続きしたというパターンもあります。
また新しい分野に挑戦することが好きで、転職を繰り返している人もいます。その好奇心にうまく乗り、クリニックで新しいことに挑戦することがあれば、頼ってやってみるのもいいかもしれません。
そういった面を考えると一概に「転職回数が多いからダメです」とは言えませんが、転職の理由は、面接時に明らかにしておくことが無難です。
体力が続かない人
クリニックは病床をかかえている病院に比べて、夜勤がないのでハードワークではないと思われがちです。ですが実際は少ないスタッフで回すわけですから、1人がかかえる業務はたくさんあります。
「これ以上は夜勤さんにお願いしよう。」なんてこともできません。誰か1人欠勤すれば、その日は大激務で休憩もままならない、なんてこともあります。
しかし、クリニックへの転職希望で「業務による体への負担を減らしたい」という人は少なくありません。病院勤務で忙しく体調を崩し、療養後間もない人やまだ治療中だという人も中にはいます。
面接時は原則、既往歴や持病の有無の申告義務はありません。ですが「業務内容で配慮する面はありますか」など体調面で不安はないか確認はするようにしましょう。
「精一杯、頑張ります」と言っていても体が資本ですから、どのくらい仕事を任せられるか、ほかのスタッフとのバランスなど、よく検討する必要があります。
長続きする人の共通点
続いて、長続きする人の特徴についてご紹介していきます。
笑顔がある
緊張する面接の場面ですが、笑顔は必要です。緊張しているのは面接官も同じですので、仏頂面で固く話されるより、時には笑顔で話してくれるほうが場はなごみます。
立場は違えど、相手の気持ちやその場の空気をしっかりと酌んで話ができる人は、チームワークが上手にとれる人でしょう。
みんなからも好かれますし、患者さんにとっても好印象で長く働くことができる人です。
転職回数が少ない
結婚や出産、転居などライフイベントの影響のほかに、転職が少ない人は長く続くと思います。
同じ職場に長くいるということは、置かれた立場で自分の役割を見つけられたり、与えられた仕事をきちんと全うできる人でしょう。
また人間関係のトラブルも少なかったり、仕事ができて大事な人材ならやめてほしくないと職場が引き留めていた可能性もありますね。またライフイベントに合わせての転職は、目標をもって人生設計が立てられ、行動ができる人と評価できると思います。
将来像をきちんと考え転職した人は長続きしますし、仕事に対する責任感や心構えもきちんとしています。
病院の理念に共感してくれる人
面接時にクリニックの方針・理念を伝えると思いますが、この時の反応をよく見ましょう。「いいですね」「私も目指したいです」などいい反応があった人は長く続きます。
ビジョンがしっかりしていればスタッフの行動が同じ方向に向かいますので、病院運営も安定するでしょう。
筆者は20年近く同じクリニックに勤務していた経験があります。長く務められた理由としてはやはり、院長の掲げる理念に共感できたから、が一番にあると思います。
業務が山積みで残業が多く、早番がつらいなどやめたいと思うこともありました。でも「こんなクリニックを目指したい」という軸がはっきりしていて、院長がリーダーとして引っ張ってくれたので、続ける事ができたと考えています。
会話のキャッチボールができる
「趣味はありますか」など少しなごみのある質問にきちんと答えてくれる人は、いい人間関係を築きやすく、長く務める傾向にあります。
逆に警戒心を強く持っていたり、自分のことを語りたがらない人は、人間関係がうまく作れずに、辞めていってしまうこともあります。
面接で緊張する場面ではありますが、切り替えがうまくできる人は、患者さんともうまくコミュニケーションがはかれると思います。
やる気がある
面接時にメモをとっていたり、仕事内容についてもっと詳しく聞きたいなど前向きな質問をしっかりしてくる人はやはりやる気が感じられますね。
働こうという意志が伝わってくる人は長続きするでしょう。働く意味は人それぞれですが、職場では働く意思、やる気は絶対条件です。
忘れ物をしたり、面接の時間に余裕を持ってこなかったりなど、やる気が感じられなければ、長続きは見込めません。
まとめ
「すぐやめる人」が多くいるとスタッフが定着せず、人事採用に時間をとられます。
職場に常に新人がいることは、業務をしながら新人教育をしなくてはいけませんので多忙となり、「長く務めてくれる人」に負担になってしまいます。
患者様も必要以上に待たせたり、ミスをしてしまうなど迷惑をかけてしまいます。面接時に「長続きする人」を採用することは、とても大切なことです。
ですが面接時は誰もがいい印象を持ってもらおうとふるまうもので、採用後に「こんなはずじゃなかった」と思うことも少なくありません。
採用面接は見るべきポイントをしっかりもって臨むようにしましょう。「1人では見極められない」という場合には、人事労務の専門家に相談をしてみることも視野に入れるといいかもしれません。
特徴
対応業務
診療科目
特徴
対応業務
診療科目
特徴
対応業務
診療科目
この記事は、2022年10月時点の情報を元に作成しています。
執筆 医療ライター 山野 成子
2児の母。看護師として20年以上、総合病院、透析クリニック、保育園、通所介護施設などを経験する。
主任看護師として人事採用・新人教育を担当した経験を活かし、現在は医療者向けの記事を執筆するライターとして活動中。
他の関連記事はこちら