
クリニックで使用しているパソコンに万全のセキュリティ対策を講じておくことはとても大切。万が一、セキュリティが破られて患者の個人情報が流出するようなことがあっては、それまでに築いてきた信頼が一気に失われてしまいます。そのうえ、2022年4月におこなわれた「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の改定によって、医療分野を含む14分野に対してサイバーセキュリティ対策が義務化されてからは、情報流出時に当局や被害者への報告を怠った企業には、最大1億円の罰則が科されることも発表されています。では、どうすればセキュリティ対策を強化することができるのでしょうか? 早速みていきましょう。
セキュリティソフトは本当に必要?
パソコンのセキュリティ対策を強化するためにはセキュリティソフトが役立ちますが、Windows10の登場、macの利用などから「セキュリティソフトは必要ないと思う」という声も増えています。では、なぜそうした声が上がるようになったのでしょうか?
その理由は、まず、Windows10および11には、「Windowsセキュリティ」というセキュリティソフトが標準で搭載されているから。ウイルスやスパイウェア、その他の悪意あるソフトウェアからパソコンをリアルタイムで保護してくれます。
ただし、有償の総合セキュリティソフトのように、パスワードマネージャー機能、独自VPN、セキュアブラウザ、Webトラッキング防止、Webカメラ保護などの機能は有していないため、万全を期すためにはやはり有償製品のインストールも必要だと考える人も多いのが実情です。また、そもそもパソコンのOSがWindows10やWindows11ではない場合は、有償製品の導入なしだとかなりリスクが高い状態にあるということになります。
macに関しては、セキュリティ面においてWindowsよりすぐれていると考える人が多く、自身で対策をとるユーザーは少ない傾向にありました。しかし実際のところ、マルウェアの攻撃手法が巧妙化してきた昨今、macのウイルス被害報告件数は増えているのが現状です。
セキュリティ対策が万全ではないパソコンに晒されるリスクとは?
では、セキュリティ対策を怠った場合、具体的にはどんなリスクに晒されるのかというと以下の通りです。
個人情報が流出する
クリニックにとってもっとも大きな問題がコレ。膨大な数の個人情報に関するデータが入っているため、流出した際に負う責任もとても大きなものとなります。
パソコンが乗っ取られる
パソコンを遠隔操作することができるマルウェアに感染すると、パソコンに入っているデータを悪用される可能性が非常に高くなります。
パソコンが動かなくなる
ウイルスやマルウェアに感染すると、パソコンが動作不良を起こすことがあります。そうなるとクリニックの業務に支障が出るのは明らかです。
パソコン内のデータが破壊される
マルウェアの一種であるランサムウェアに感染したら、パソコンのデータは高確率で全滅します。そのため、セキュリティソフトのインストールだけではなく、大事なデータのバックアップをとったり、クラウドを活用したりすることも考えるのが得策といえます。
自分がウイルスをばらまいてしまうことがある
ウイルスに感染したパソコンは、パソコン内に保持している知り合いの連絡先にもウイルスをばらまくことがあります。風邪やインフルエンザ、コロナ同様、自分がウイルスの拡散元にならないように気を付けることはとても大切なのです。
セキュリティ対策ソフトを導入するメリットは?
こうしたリスクを回避するためにも、セキュリティ対策ソフトは導入すべきなのでしょうか? まずは導入するとどんなメリットがあるのかみていきます。
セキュリティを強化できる
Windows10または11を使っているため「Windowsセキュリティ」がデフォルト搭載されていたとしても、さらに万全な対策を講じるためにはやはりセキュリティ対策ソフトを導入するのが一番です。
万が一感染した場合の損失を抑えられる
セキュリティ対策ソフトを導入していても、ウイルスの侵入を100%防ぐことは不可能です。仮に、現状100%防ぐことはできるソフトがあったとしても、ウイルスも日々進化しているからです。しかし、ソフトを入れているかいないかで、万が一進入されたときの損失の大きさは大きく異なります。感染にいち早く気づくことができるため、自分がウイルスの拡散元にならずに済むだけでなく、冒頭で述べた通り、2022年4月からサイバーセキュリティ対策が義務化されていますが、ソフトを入れていれば、これに違反していることにはならないでしょう。
セキュリティ対策ソフトを導入するデメリットは?
続いてはデメリットです。
導入や更新のコストが発生する
セキュリティ対策ソフトは、基本的には製品代だけでなく更新料も発生します。パソコンの数が多ければ、そのぶんコストも上がります。
端末の動作が遅くなる可能性がある
セキュリティ対策ソフトに限らずどんなソフトでもそうですが、インストールに伴い端末に負荷がかかるため、場合によっては動作が遅くなります。
おすすめの有償製品は?
続いては、2022年現在、評価の高いセキュリティ対策ソフトをみていきましょう。
セキュリティソフト名 | コスト | 対応OS |
ESETインターネットセキュリティ | 1年4,950円(月額330円で好きな期間で利用可能) | Windows / Mac / Android |
ウイルスバスター クラウド | 5,720円~ | Windows / Mac / Android / iOS / Chromebook |
ノートン | 3,780円~ | Windows / Mac / Android / iOS |
カスペルスキーセキュリティ | 4,054円~ | Windows / Mac / Android / iOS |
ZEROウイルスセキュリティ | 導入時1,980円、更新費不要 | Windows / Mac / Android / iOS |
マカフィーリブセーフ | 9,980円~ | Windows / Mac / Android / iOS |
Avast | 0円~(有料版は5,480円。初年度2,980円~) | Windows / Mac / Android / iOS |
AppGuard(アップガード) | 要問合せ(1ライセンス6,000円~) | Windows |
Symantec Endpoint Protection | 要問合せ | Windows |
マイセキュア | 3,300円(月額275円の完全月額課金制 | Windows / Mac / Android |
【多層防御機能搭載】ESETインターネットセキュリティ
キャノンが提供するセキュリティソフト。「多層防御機能」搭載でセキュリティが強化されています。2018年には、「ウイルス検出率100% AWARD」を最多受賞しています。
【国内市場シェア15年連続NO.1】ウイルスバスター クラウド
コンシューマ向け製品の国内市場シェア15年連続NO.1 を獲得。また、総合データAI企業による調査において、2021年、国内セキュリティアプリ年間ダウンロード数NO.1にランクイン。
【24時間365日サポート】ノートン
24時間365日いつでも問い合わせに対応してくれることもあり、第三者機関のテストで「快適さ No.1」を13年連続受賞しています。
【Android保護機能最優秀評価獲得実績あり】カスペルスキーセキュリティ
Android保護機能が最優秀評価獲得(2020年)、「Best Overall Speed 2020」獲得、「Product of the Year 2020」獲得。ハッキング対策、ウイルス対策、マルウェア対策ともにハイレベル。
【コスパ抜群】ZEROウイルスセキュリティ
ソースネクスト株式会社が開発から販売まで手掛けているセキュリティ対策ソフトです。更新費不要のコスパのよさから、ソフト単体での販売本数は10年連続で1位を獲得しています。
【インストール台数無制限】マカフィーリブセーフ
1分あたりの発見脅威数688件の実績があります。インストール台数無制限なので、タブレットなどを自宅に持ち帰って仕事することがあるならぴったりです。
【無料版も人気】Avast
2020年には、「ベスト無料マルウェア対策賞」を受賞しているソフトウェアです。ただし、より万全のウイルス対策を確立したいなら有料版がおすすめです。
【米国政府機関でも長年使用】AppGuard(アップガード)
米国政府機関でも長年使用されていることもあり、多くの企業から信頼されているアンチウイルスシステムです。
【世界的シェアを誇る法人向けセキュリティソフト】Symantec Endpoint Protection
未知のウイルスからも端末を守るべく、サイバー攻撃への対応スピードを含めた端末保護能力向上に力を入れています。業界屈指の保護能力であることから、法人向けセキュリティソフトとして世界的シェアを誇っています。
【完全月額課金制】マイセキュア
端末1台の場合、月額275円。5台なら550円とさらにお得です。端末の動作が遅くならないよう、軽い仕様であることも支持されています。
セキュリティ対策ソフトは費用対効果が高い
人気のセキュリティ対策ソフトをみてもわかるとおり、セキュリティ対策ソフトは導入費もランニングコストもさほど高いものではありません。しかも、インストールすることによって個人情報流出をはじめとするリスクを著しく下げることができるので、導入しないに越したことはありません。まずは、特徴を見比べて気になるものをピックアップするところからはじめてみてはいかがでしょうか?
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年11月時点の情報を元に作成しています。