
「電話自動応答システム」は、電話での問い合わせをサポートするサービスです。電話問い合わせに対し、自動で音声を流したり、窓口を案内、転送したりするといった形で電話応対業務をスムーズに行うことができます。しかし、WEB予約やWEB問診など、オンライン環境が整った現在では、電話自動応答システムの需要はあるのでしょうか? また、電話問い合わせの数自体はどのようになっているのでしょうか? 電話自動応答システム『Iver』を展開する株式会社レイヤード・マーケティング本部の加藤秀和さんに現状を伺いました。
コロナの影響で電話問い合わせは増加
——オンラインでの予約や問い合わせが主流になっている昨今、電話で問い合わせをする人はやはり減っているのでしょうか?
もともと、医療業界は電話やファックスなどアナログな連絡体制が主流で、比較的患者からの電話も多い業界かと思います。近年では、ホームページの情報が整理されたり、WEB予約やWEB問診といった受診動線が作られたことで、減少傾向にあると思います。他の業界を見てもネット予約は当たり前なので、患者としても電話をするという人は少なくなってきているのかなと思います。しかし、この1年間で見ると電話での問い合わせは急増しています。
——それはなぜでしょうか?
コロナの影響です。院内感染を防止するため、熱がある場合にまずは電話で問い合わせるよう指示しているクリニックが多いからです。ホームページ上やLINEなどオンラインでの問い合わせができるクリニックもありますが、一般外来と発熱外来を分ける目的で、発熱外来を電話受付にしているケースが多数見られます。また、患者心理としても熱などがあれば、コロナに感染しているんじゃないかと不安になると思います。そうすると、早く受診できるか知りたい、受診後も検査結果を早く知りたいと、電話をかけてしまいます。それらの理由により、コロナの感染が拡大すればするほど、電話でクリニックに問い合わせる人が増えている状況なのです。
——実際にどれくらい増えているのでしょうか?
弊社が提供している電話自動応答システム『Iver』の件数で見ると、コロナ感染者が増加しているときと落ち着いているときとの差は3倍にもなります。例えば、発熱患者の診察を行っているあるクリニックでは、コロナ感染が落ち着いていた2022年6月の受電数は月に約500件でした。しかし、7月になって第7波のピークが来ると、受電数は月に約1,500件と一気に増えました。
電話自動応答システムは必要なのか
——発熱時の問い合わせを電話で受けるクリニックが多いのはなぜですか?
発熱患者と一般診療の患者を分けて診療する、いわゆるトリアージのためです。症状を確認後に受診時間を指示するというオペレーションが必要なため、厚労省からも発熱時は事前に電話連絡を入れるように案内を出しています。また、クリニックごとにかかりつけ患者かどうか、症状の程度などで対象者を絞っていることも多く、その確認のために電話が必要になっていることも多いです。確認事項が多いため、オンライン上での予約を取ることも難しくなっています。
——とはいっても、それだけの件数の電話がかかってくると業務がパンクしてしまいますね。
これだけの件数の問い合わせがあると、スタッフでは対応し切れません。スタッフが1日中電話対応に追われて他の仕事ができないというクリニックもあります。また、対応人数にも限りがあるので、全ての電話問い合わせに対応できるわけではありません。「何度も電話しているのにつながらない」ということで、クレームに発展することも少なくありません。ひっきりなしにかかってくる電話やクレーム対応にスタッフさんは疲弊してしまい、コロナ禍で退職されるという話もよく耳にしました。
さらに、電話がつながらない、スムーズな対応ができないとなると、患者さんはそのクリニックに行くのをやめてしまう可能性もあります。クリニック業務が切迫するだけでなく、患者さんの取りこぼしも発生してしまうのです。
——そこで自動受電システムが役立つと……。
そうです。発熱外来のトリアージについては、自動応答で発熱の有無を確認し、自院かかりつけなどの条件によって次の案内を出し分けることができます。対象の患者さんのみ、クリニックに電話を繋ぎ、対象外の方には自動でお断りや他の診療案内をするなどです。
電話自動応答システムでは同時に複数の患者さんからの電話を処理できますので、電話が繋がらないということも少なくなります。発熱以外で受診したい患者さんにはSMSで予約用のURLを自動で案内するなどして、取りこぼしを防ぐことにもつながります。このように、スタッフが対応する電話を減らしながら、電話が繋がらないというクレームも減らすことができます。
電話自動応答システムの導入は……少ない?
——実際にどのくらいの数のクリニックが電話自動応答システムを導入しているのでしょうか?
弊社の電話自動応答システム『Iver(アイバー)』は、幸いにも約400施設(2022年12月末現在)と多くのクリニックに導入いただいていますが、業界全体で見れば導入クリニックはまだまだ少ない状況です。クリニック全体の数%ほどしか導入されていないのではないでしょうか。
——なぜ導入が進まないのでしょうか?
まだまだ認知されていないサービスであることが大きな理由かと思っています。一般的なコールセンターなどでも使われていますが、クリニックでどのように活用できるかというところが、まだ十分に知られていないことが課題のように感じます。
他にも、機械による自動音声が高齢の患者さんには聞き取りにくいといったネガティブなイメージがあったり、費用を気にされるケースもあります。
とはいえ、自動音声の技術は高まり、かなり流暢に話してくれますし、費用についても運用方法をしっかりと検討すればそれほど高額にはなりません。弊社でも一度ご面談させていただくと不安を払拭していただけることが多いです。
レイヤードの電話自動応答システム『Iver』とは?
——約400施設のクリニックに導入されている『Iver』にはどんな特徴があるのでしょうか?
自動音声での案内やSMSの送信、また内容によってクリニックに転送するといったIVR(自動音声応答システム)の基本的な機能はもちろん、クリニックによくある問い合わせ事項を標準で用意するなど、医療に特化しているのが特徴です。シンプルに「クリニックで使いやすい」サービスになっています。
特に、最近追加された「転送スケジュール機能」「音声録音機能」については、在宅医療やかかりつけ医に活用していただける特徴的な機能かと思います。
「転送スケジュール機能」については曜日や時間帯によって転送先を振り分け、休日や夜間の対応を”その時間帯に最もスムーズに対応できる人”に転送することができます。また、「音声録音機能」は、患者さんに要件を吹き込んでもらい、それを留守番電話のように録音すると同時に、内容をテキストに書き起こすことができます。録音内容はメールやSMSで医療者向けに通知が入るので、内容を確認し折り返し対応などが可能です。
——『Iver』が評価されているポイントを教えてください。
先ほど紹介した2つの機能がリリースされたのは最近のことなので、それまでの機能は他社さまの製品とそこまで大きな違いはありませんでした。しかし、弊社の場合はクリニックでどのような使い方をすればいいのか、クリニックごとの最適な使い方の提案ができるのが強みです。特に、クリニックごとに利用している他システムと組み合わせた活用方法の提案は重要視しています。
初めにも申し上げましたが、近年はWEB予約やWEB問診といった効率化を推進するシステム導入が増えています。ただ、コロナは関係なく一定数電話で予約などされる患者さんもおり、せっかく効率化できるシステムが活用されないことも少なくありません。このようなケースでも『Iver』で電話を受けてWEB予約やWEB問診のURLをSMSで案内すれば、デジタルな受診動線の利用率が上がり、効率化された医療提供が可能になります。
クリニックの状況を踏まえ、どのように使えばスタッフの負担を軽減できるのか、患者さんにとっても負担なく使ってもらえるのかを考えつつ、導入していただけるのが大きいですね。
『Iver』導入の流れ・費用
——『Iver』を導入したい場合はどのような流れになりますか?
まずは無料相談にお申込みいただく形です。無料相談でクリニックの状況を踏まえ、最適な運用方法の提案をいたします。そこで内容に納得いただけたなら、利用申し込みをするという流れです。申し込み後、だいたい1週間ほどで電話番号・アカウントが発行されます。その後、利用方法のレクチャーを行います。
——導入費用はどのようになっていますか?
初期費用が5万5,000円[税込み]、月額料金は基本料2,200円[税込み]と利用された分の料金が発生する従量課金となっています。
『Iver』従量課金内容(税込み)
着信1分 7.7円/分
SMS送信 13.2円/70文字
転送電話料金 13.2円/分
SMS通知 26.4円/件
◇従量課金の例
1日の受電が30コール
SMS送信率20%
対応1件あたり2分
診療日20日間
月額料金……1万3,024円
——導入されているクリニックでは、だいたいどのくらいの月額料金になっているのでしょうか?
平時で1万円から2万円。コロナ感染のピーク時には、この2倍、3倍と考えていただけると分かりやすいかもしれません。
——それでもスタッフの負担軽減や患者さんの取りこぼしを考えると、導入すべきかもしれませんね。最後に、自動音声応答システムの導入を考えている先生にメッセージをお願いします。
電話は患者さんとの最初の接点です。そのため、できれば機械音声にせず人が対応する形にしたいと考える先生もいます。しかし、コロナの影響でここまで電話の件数が増えてしまった現在、スタッフの負担は膨大なものになっています。業務負担の軽減、労働環境の改善という意味でも、ぜひ自動音声応答システムの導入を前向きに検討していただけるとうれしいです。
オンライン環境が整備され、問い合わせや診療予約もオンラインで行うのが当たり前になりましたが、コロナの影響で「電話での問い合わせ」の対応も必須になっています。今回取材した加藤さんの話にもあるように、スタッフが電話対応業務に追われるクリニックも少なくありません。コロナ禍の中でも、クリニックの業務をより効果的、効率的に進めるためにも、自動音声応答システムの導入を考えてみてはいかがでしょうか。
特徴
対応端末
提供形態
種別
診療科目
この記事は、2023年2月時点の情報を元に作成しています。