クリニックの医療法人設立の目安。どれぐらいの利益があれば効果的?

医療法人を設立するメリットのうち、節税効果を期待して設立を検討される方は多いのではないでしょうか。
しかし法人化を行ったとして、必ずしも節税効果が期待できるわけではありません。
むしろ法人に課税される各種税金や諸経費によって、個人開業の時よりも費用がかさんでしまう可能性もあります。
法人化したことで後悔しない為には、法人化するべき目安を知っておくことが大切です。

目次
  1. 法人化することで節税効果が期待できる理由
  2. いたずらに法人化すればいいわけではない
  3. 個人所得が年間900万円を超えたら、1つの目安
  4. 概算経費を有効活用されているのであれば、保険診療報酬額が5000万円以上を目安に
  5. 後悔しないためには、事前のシミュレーションが大切

法人化することで節税効果が期待できる理由

「法人化することで節税効果が期待できる」という話をよく耳にします。
これは個人に課される所得税の税率と法人に課される各種税金の税率が異なることに起因した話であり、
実際この部分をうまく利用することで、節税することが可能です。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm

所得税は所得金額に応じて7段階の税率が設定されており、最大税率は45%
これに対して法人税の税率は最大23%と低めに設定されています。
この税率差22%が「法人化することで節税効果が期待できる」という話の軸になります。

いたずらに法人化すればいいわけではない

前述の通り、法人化することにより節税することは可能です。
しかし全てのクリニックが法人化することにより、節税することが出来るわけではありません。
それどころか法人化することにより、個人開業時よりも費用がかさんでしまう場合も存在します。

そもそも国税庁のHPを見てわかる通り、税率差22%は両方の最大値をとった場合の数字であり、
所得金額に関わらず法人税の税率の方が優位なわけではありません。

上記の図を見て頂ければわかる通り、所得税の税率を法人税の税率が下回るのは、
所得が3,300,000~7,990,000(約5%差)と9,000,000~(10%~22%差)の場合のみであり、
この範囲に該当しない場合は、法人税だけで考えてもマイナスになります。

また法人に課される税金は法人税のほかに法人住民税や法人事業税等も存在し、これら全てを合計した実効税率は約30%です。
節税効果を期待するのであれば、最低でも所得税の税率が30%を超えるだけの所得が得られていることが条件だといえます。

個人所得が年間900万円を超えたら、1つの目安

さて以上を踏まえたうえで節税効果を期待するのであれば、どの程度の所得が必要となるのでしょうか。
法人に課される実行税率30%弱に対して、所得税の税率が30%を超えるのは、所得が9,000,000以上の場合です。
つまり節税効果を期待するのであれば、所得が9,000,000以上となった時が目安であるといえます。

概算経費を有効活用されているのであれば、保険診療報酬額が5000万円以上を目安に

ここまでが単純な節税効果にのみ注目した場合における法人化の目安です。
しかし法人化するのであれば、検討しなければならない要素は税金のみに留まりません。
金銭面のみに限定したとしても、概算経費(社会保険診療報酬に係る費用として必要経費に算入する金額を、実額ではなく概算で申請できる制度)と実際の経費差額や、小規模共済への加入の有無、社会保険加入事業者であるか否かといった、さまざまな要素が加味されます。
特に概算経費を有効に活用しているクリニックの場合、所得が900万円をこえていたとしても、法人化することで大きく損をする可能性があるので注意が必要。
もしご自身のクリニックがこれに該当するのであれば、所得金額ではなく保険診療報酬額を目安にし、概算経費を適用できなくなる保険診療報酬額5000万円以上を目途に法人化を考えるとよいでしょう。

後悔しないためには、事前のシミュレーションが大切

法人化により事業を成功させるには、様々な要素をクリニックに合わせて検討する必要があります。
法人化したことで後悔しないために、または法人化しなかったことで後悔しないためにも、事前のシミュレーションは非常に大切です。
無料でシミュレーションを行ってくれる事務所も多く存在しますので、所得が目安を超えたなら、まずは相談してみてはいかがでしょうか。

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執筆 長後行政書士事務所 代表行政書士 日下 雄一朗

医療系事務所にて経験を積んだのち、行政書士という立場から起業家をアシストすることを目的として、許認可専門事務所である長後行政書士事務所を開設。
幅広い業種における許認可申請のほか、補助金・融資申請、法人設立といった様々な業務を取り扱う。


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