看護師の働き先は、病院やクリニックだけではありません。特別養護老人ホームや保育園に務めることもあれば、企業や学校でおこなわれる健診に付き添うこともあります。最近では、訪問看護に携わる看護師も増えていますが、具体的にはどのような業務を手掛けるのでしょうか? 訪問看護でできること、できないことにはどんなことがあるのかを含めて解説していきます。
訪問看護とは
訪問看護とは、自宅で療養生活を送っている人のもとに看護師などが訪問して、看護をおこなうサービスです。訪問看護をおこなううえでは、利用者本人やその家族が望む在宅療養生活の実現を目指すことが大切です。また、利用者の健康の維持、回復、QOLの向上を目標に、予防から看取りにいたるまで患者やその家族をしっかりと支えられるよう、訪問看護ステーションは24時間体制を整えておくことが大切です。
平成6年、健康保険法等の改正によって、老人医療の対象外の在宅の難病患者、障がい児などの療養者に対しても医療保険での訪問看護の提供が可能となり、さらに平成12年には、訪問看護に介護保険が適用されることになりました。
訪問看護のサービス内容
訪問看護のサービス内容は以下の通りです。
など
医療保険の適用条件
医療保険で訪問看護を受けるにあたっての適用条件は以下の通りです。
介護保険訪問看護の対象
介護保険が適用となる対象者は以下の通りです。
【16特定疾患】
訪問看護でできること、できないことは?
続いては、訪問看護でできることとできないことをみていきます。「できること」に関しては、基本的には前述の「訪問看護のサービス内容」となりますが、医療処置などに関しては、医師からの指示がなければおこなうことができません。詳しく説明していきます。
訪問看護でできること
医師からの指示書に記載されていること
訪問看護をおこなうにあたっては、医師から「訪問看護指示書」または「精神訪問看護指示書」を発行してもらわなくてはなりません。前述の、介護保険が適用となる利用者に対して看護をおこなう場合は、医師の指示を実施することに加えて、ケアマネージャーが作成するケアプランに記載の内容を実施できます。
指示書にはないもののおこなったほうがいいと思われるケアがある場合は、医師やケアマネージャーに相談や提案をして、必要書類に追記してもらうことが必要です。
自宅での看取り
利用者の希望があれば、体制を整えて自宅で看取るこができます。そのために、毎日あるいは必要に応じて1日数回の訪問によって状態を観察して、医師からの指示があれば、点滴や褥瘡などをおこないます。また、利用者が亡くなられた後、ご家族の希望があれば、ご遺体をキレイに整える「エンゼルケア」をおこなうこともあります。ご家族から要望があった場合、エンゼルケアをおこなう場合は自費となる旨を伝えます。
訪問看護でできないこと
自宅または特定の施設以外の場所での訪問看護
訪問看護は、自宅以外の場所では提供しません。ただし、外出支援や受診支援を自費でおこなっている事業所は存在します。
ただし、以下のケース、以下の施設には訪問看護の提供が可能です。
以下の施設の利用者で末期ガン患者は医療保険で利用が可能です。
以下の施設の場合、特別訪問看護指示書が交付された場合に限り訪問可能です。
病院やクリニックへの付き添い
訪問看護師は、医療保険や介護保険を利用した利用者が病院やクリニックを受診する際に、付き添うことはできません。ただし、利用者から「医師からの説明を理解することに不安がある」などの相談があった場合、自費で付き添うケースはあります。
家事全般
訪問看護と訪問介護の違いを理解していない利用者から、買い物や料理、洗濯などを頼まれることがあっても、それらの仕事は看護師の仕事ではないため、応じる必要がありません(訪問看護と訪問介護の違いは後述します)ただし、利用者が主に過ごしている空間の掃除に関しては、基本的にはする必要はありませんが、状況によっては「環境整備」として実施する場合があります。
訪問看護と訪問介護の違いは?
訪問看護は、前述の通り、基本的には医師からの指示書に記載されていることをおこないます。利用者はやその家族からの、療養に関する相談などに乗ることはありますが、あくまでも、利用者が主体性を持って健康管理をおこない、疾病や障害による影響を最小限にとどめることや、安らかな週末を過ごしてもらうことを目的としています。
これに対して訪問介護は、家事や買い物をはじめとする「生活援助」や、オムツ交換・陰部洗浄・全身清拭(せいしき)などの清潔ケアをはじめとする「身体介護」をおこないます。また、褥瘡の処置はできませんが、研修を受けている人であれば、痰の吸引はおこなえます 。
訪問看護をおこなううえでは「多職種連携」が不可欠
これまで述べてきたとおり、訪問看護には、できることもあればできないこともあります。まずは前述の通り、医師の指示がなければ看護をおこなうことができません。また、家事をはじめとする日常生活のお世話などは基本的にはできないので、「できないこと」を補ってくれる職種と連携を取り合うことがとても大切です。そのうえで、各自が利用者について気づいたことをお互いに報告しあうことで、よりよい看護、医療、介護を提供できます。
連携を取るべき職種は以下の通りです。
医師
医師は訪問看護師の看護記録を通して、利用者の日々の状況を把握します。そのため、医師と比べて利用者と接する時間が長い訪問看護師が、利用者をしっかりと観察して、気付いたことを細かく記録することはとても大切です。
病院看護師・クリニック看護師
退院後のケアを訪問看護師が担当する場合、利用者が入院していた医療機関の看護師との連携がとても大切になってきます。退院前からカンファレンスで情報共有をおこないますが、それだけにとどまらず、気になることはなんでも聞きましょう。
ケアマネージャー
利用者と接していて気づいたことがあれば、医師だけでなくケアマネージャーにも報告します。訪問看護師からの適切な報告があれば、ケアマネージャーは利用者の状態に合わせたプランを作成することができます。
ソーシャルワーカー
医療・介護・福祉に関する相談や援助、調整をおこなうソーシャルワーカーは、利用者や家族、医師などからの相談に応じて、訪問看護師をはじめとする多職種に介入を依頼することがあります。
訪問介護士
訪問看護師と訪問介護士は、連絡を取り合って一緒に利用者宅を訪問してケアをおこなうこともあります。その際、訪問看護師には、喀痰吸引および経管栄養について指導をおこなうことが求められます。この2つの医療行為は、利用者が必要とする頻度が高いことから、法律によって、訪問看護師の指導のもと、訪問介護士もおこなってよいと認められています。
薬剤師
利用者の薬物療法に関してはかかりつけ薬局の薬剤師が担当していますが、在宅療養においては飲み忘れや過剰服用なども起こり得ます。そのため、訪問看護師が利用者の治療内容を把握して、薬剤の管理や服薬が適切におこなわれているかどうかを確認することがとても大切です。飲み忘れや過剰服薬、または副作用の出現などが認められる場合は、薬剤師および医師に報告します。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、利用者の機能を把握して、回復の予測をおこない、リハビリテーションの計画および実施を担っている専門職です。訪問看護師が適切に情報を共有することによって、より効果的なケアを提供することができます。
訪問看護師のニーズはますます高まっている
超高齢化社会を迎えた日本において、訪問看護師のニーズは今後ますます高まるとされています。これに対応するために、「公益社団法人日本看護協会」「公益財団法人日本訪問看護財団」「一般社団法人全国訪問看護事業協会」が策定した「訪問看護アクションプラン2025~2025年を目指した訪問看護~」においては、訪問看護師数を2025年までに約15万人に増やすことが目標のひとつとして掲げられています。しかし、現状の最新データである2020年末時点における訪問看護師数は5万人強 と約3分の1。つまり、かなり需要が高いということになるので、看護師として働きたいと考えている人や転職を考えている看護師は、訪問看護師という選択肢を視野に入れられるといいですね!
参照:訪問看護アクションプラン2025~2025年を目指した訪問看護~
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年5月時点の情報を元に作成しています。