
かつて、看護師の仕事は「3K」と表現されていたことがあります。なぜ「3K」といわれていたかというと、「きつい」「汚い」「危険」の3つの「K」が当てはまる仕事だとされてきたからです。
しかも、1992年には、これに「規則が厳しい」「給料が安い」「休暇が取れない」「婚期が遅い」「化粧がのらない」「薬に頼って生きている」の6Kを加えた「9K」という言葉で表現されて話題を集めたことも。
では、そこから30年以上経った2024年現在は、クリニックの労働環境はどう変化しているのでしょうか?早速みていきます。
労働環境とは
労働環境とは、それぞれの職場で働く人を取り巻く環境のことです。室温や照明、騒音などのオフィスの環境だけでなく、労働条件、労働時間、休憩時間・日数、職場内の人間関係など、労働に関係しているあらゆる要素を含みます。
つまり、労働環境がよいと快適に働くことができる一方、労働環境が悪いと、気持ちよく働き続けることができないうえ、場合によっては退職を考える人も出てきます。
労働環境に対する職業計の満足度は?
まずは、労働環境に対する職業系のおおまかな満足度を確認するために、厚生労働省が公表している、「令和元年就業形態の多様化調査」の結果から、職業計での正社員による、現在の職場での満足度をみていきます。
「満足」または「やや満足」 | どちらでもない | 「不満」または「やや不満」 | |
仕事の内容・やりがい | 68.7% | 20.5% | 9.9% |
賃金 | 49.7% | 21.4% | 28.0% |
労働時間・休日等の労働条件 | 56.2% | 21.5%https://chinakichi.nbblog.jp/ | 19.3% |
人事評価・処遇のありかた | 39.7% | 35.4% | 23.5% |
職場の環境 | 56.3% | 26.0% | 14.9% |
正社員との人間関係、コミュニケーション | 59.3% | 27.3% | 9.8% |
正社員以外の労働者との人間関係、コミュニケーション | 56.4% | 33.8% | 5.9% |
職場での指揮命令系統の明確性 | 44.8% | 29.1% | 22.4% |
雇用の安定性 | 68.2% | 23.3% | 6.7% |
福利厚生 | 52.7% | 31.3% | 14.7% |
教育訓練・能力開発のありかた | 38.1% | 41.6% | 19.1% |
職業生活全体 | 54.1% | 32.3% | 41.6% |
上表の通り、業種問わずですべての職業でみた場合、労働環境に対する満足度は全体的に高めであるといえますなかでも満足度が高いのが、「仕事の内容・やりがい」「雇用の安定性」「人間関係、コミュニケーション」です。
一方で、「教育訓練・能力開発のありかた」「人事評価・処遇の在り方」「職場での指揮命令系統のありかた」に不満を持っている人は多いようです。
そこで続いては、主にこれらの項目に対して、クリニックの実態はどうなのか、また、クリニックで働くスタッフはどのような考えなのかをみていきたいと思います。
クリニックのスタッフにとっての仕事のやりがいとは?
まずは、クリニックのスタッフにとっての仕事のやりがいについて考えていきましょう。
クリニックのスタッフにとっての仕事のやりがいは、職種や診療科によっても異なるため、「仕事のどんな点にやりがいを感じているか?」を統計で表すことは難しいですが、「医療」という大きな括りでみると、
- 困っている人を助けられる
- 社会貢献できる
- 患者と信頼関係を築くことができる
- 子どもやお年寄りを笑顔にできる
などにやりがいを感じる人は多いようです。
では、実際のところ、クリニックの看護師や事務スタッフは、自らの仕事にこれらのやりがいを見出せているかというと、クリニックで働いている以上、なんらかの形で地域に貢献できていることは間違いありませんが、「やりがいが感じられない」という精神状態に陥っている人は多いようです。
主な理由としては、「ルーティンワークが多く、自分で考えて仕事できない」「雑務をこなすのでいっぱいいっぱいで、やりがいを感じる仕事を任せてもらえない」といった、
“任せてもらえる業務の内容”に関することと、「がんばっても、それにふさわしい給与をもらえない」という、“待遇に関するもの”が大半を占めています。
そのため、仕事の内容およびそのやりがいについて考慮するにあたっては、まずはスタッフの希望に耳を傾け、「どんな仕事をやっていきたいと考えているのか」を確認すると同時に、がんばりに見合った給料を考えていくことが大切であるといえるでしょう。
クリニックのスタッフが悩みがちな人間関係の問題とは?
クリニックのスタッフが人間関係に悩むポイントは大きく3つにわけられます。
院長およびクリニックサイドの人間との人間関係
雇われている以上、雇用主の要望に従うのは基本ではありますが、「働く側が言いたいことを言うことができず、我慢している」という状況はよくありません。
働く条件に関しても給与に関しても、雇用する側がすべて要望を聞き入れるかはさておき、働く側が「こうしてほしいと思っている」を躊躇なく口にすることができるような関係性を構築することはとても大切です。
スタッフ同士の人間関係
「スタッフ同士」といえども、先輩・後輩という上下関係があるうえ、たとえば子育て中のスタッフと未婚のスタッフとの間には、暗黙のうちにも「家庭を優先すべきは子どもがいるわたしのほうだよね?」という意識が存在することがあるものです。
それに対してお互いが納得しているならいいですが、心のなかでは不満がありつつも我慢を強いられているスタッフがいる場合、ある日、急に不満が爆発することもあるので注意が必要!
こうした事態を防ぐためにも、日ごろからスタッフ一人ひとりと密にコミュニケーションをとって、不満に思っていることがないかを確認しておくことが大切です。
患者との関係性に関すること
地域密着型クリニックで、患者との距離が近いクリニックの場合などは特に、クレームが多い患者や、ハラスメント行為・ストーカー行為が認められる患者などがいるとスタッフのストレスは大変なもの。
問題がある患者がいる場合は、クリニック側でも、スタッフを守ることを考えて体制を整えることが大切です。
クリニックのスタッフが教育体制について求めることは?
「未経験歓迎」などの文言でスタッフを募っているクリニックなどに対しては、充実したスタッフ教育を期待して入職する人が多いものです。
そのため、入職後に指導・教育されることがほとんどないとなると、不安になってしまうことがあるでしょう。
また、そうした場合、最低限の業務はこなせるものの、知識や技術に磨きをかけられないことを不満に思うスタッフも多いはず。特に、着実にキャリアアップしていきたいと考えているスタッフは、早々に転職を決意するかもしれません。
クリニックのスタッフが評価に求めることは?
クリニックのスタッフを評価するうえでもっとも大切なことは、「公平性」です。また、公平に評価していることが全員にわかるよう、評価基準を設定して、その基準をしっかり明示しておくことが不可欠です。
さらに、それぞれの評価基準をクリアしているかどうかを院長ひとりが判断すると公平性に欠ける場合があるので、客観的なデータや事実に基づいた評価を心がけることも大切です。
たとえば、多職種や患者からのアンケート結果も反映させるなどすると、評価された側は納得することができますし、アンケートにコメント欄などを設けておくと、一人ひとりの声がモチベーションにつながりやすいでしょう。
クリニックの労働環境への不満を解消するためには?
クリニックのスタッフが労働環境に対して抱いている不満を解消するためにも、まずは、スタッフがどんな点に不満を抱いているのかを確認することが大切です。
確認する方法としては、「個別面談の機会に聞く」「不満がある際にいつでも伝えてもらえるよう、日ごろから風通しのよい職場環境を維持することを心がける」「定期的にスタッフ全員にアンケートをとる」などいくつか考えられます。
時間が許す限りいろいろ試してみるのが一番ですが、診察が忙しくなかなかそのような時間はとれないこともあるでしょう。
そうした場合には、スタッフがどうしても伝えたいことがあるときにはきちんと耳を傾けられるよう、「要望がある際にはいつでも時間を取るので相談してほしい」ということを日ごろからスタッフに周知しておくことが大切です。
もちろん、実際に相談を持ち掛けられた際には、真摯に話を聴くことを心がけましょう。
■労働環境改善は大きなメリットに
労働環境改善は、一見、スタッフのためのように思えますが、前述の通り、労働環境を改善することでスタッフのモチベーションが上がり、離職率が下がるため、結果的にクリニックにとってのメリットが大きいといえます。
これまで労働環境改善に取り組んでこなかったクリニックにとっては、「とはいえ面倒だ」と思えるかもしれませんが、まずは小さなことから改善してみることで、スタッフの仕事への熱量などにどんな変化がみられるのかを確認してみてもいいかもしれません。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
他の関連記事はこちら