
電子カルテに対して苦手意識がある人や、そもそもデジタル全般が得意でない人は、「電子カルテは難しいからできれば使いたくないのだけど……」と考えている場合が多いでしょう。しかし、どんな電子機器にも言えることですが、最初のうちは「難しい」と感じる場合でも、慣れてしまえば問題なく使いこなせるものです。そこで今回は、電子カルテ導入前から“電子カルテに対する認識”にアプローチすることで、電子カルテをスムーズに使いこなすためのコツを伝授していきます、
電子カルテ導入前に、電子カルテの使い方が難しそうだと悩んでいるなら
まず、現状は電子カルテを導入していなくて、「難しそうだから……」と二の足を踏んでいる状態なら、最初に以下を実践してみることをおすすめします。
それぞれ詳しくみていきましょう。
各ベンダーの営業資料や動画を見る
気になっている電子カルテのベンダーにコンタクトをとれば、ホームページなどで公開されている情報以上に詳しい資料を送付してくれます。営業が来院して説明してくれるケールも多いので、積極的に活用しましょう。
デモを申し込む
なにはともあれ、まずは自分で触ってみるのが一番。実際に操作してみなければ、「難しそうだけど本当に難しいのか?」の答えを知ることができません。
電子カルテを導入している知り合いのクリニックなどに頼んで、実際に操作させてもらう
ベンダーに資料提供やデモ利用を依頼したら、契約する流れだと思われて話を進められるかもしれない……という不安があるなら、まずは知り合いのクリニックなどに頼んで電子カルテを触らせてもらってはどうでしょうか? この方法は、結構多くのクリニックが実践しているので、すんなりとOKしてくれるクリニックが多いですよ。
SNSなどで、気になる電子カルテに関する情報を収集する
各電子カルテのメリット、デメリットについては、医療系サイトのまとめ記事で確認できるほか、個人的な感想をSNSにポストしているユーザーもたくさんいるので、ハッシュタグなどで検索してみると有益な情報を得られるかもしれません。
電子カルテに対する苦手意識を克服する方法
冒頭で述べた通り、「電子カルテは操作が難しい」と感じている人は一定数います。しかし、実際のところ本当に難しいかというと、決してそんなことはありません。先に述べた通り、「慣れれば問題なく使いこなせる」のも事実ですし、それ以前に、いわゆる“食わず嫌い”で勝手に難しいと思い込んで導入を拒んでいる人が多いのが実際のところです。
また、「電子カルテを使ったことがあるけれど、実際にそのとき難しいと感じた」という人に関しては、電子カルテの使い方のコツを掴んでいなかったことが考えられますし、実際にそのとき使った電子カルテの操作方法が簡単ではなかったとしても、そこから数年を経ているのなら、電子カルテ自体が進化している可能性も高いといえます。なぜなら、電子カルテは、日々、改良が重ねられているものですし、特にクラウド型に関しては、各医療機関でアップデート操作をおこなわなくても自動的にアップデートされるため、「以前より使いやすくなった」と感じている人が多いでしょう。
また、使いこなそうと努力を重ねているけどなかなかスムーズに操作できるようにならないのなら、「電子カルテは何のために使うものなのか?」をきちんと理解できていない可能性が考えられます。もしくは、きちんとマニュアルを読んでいないケースも考えられますし、マニュアルを読んでも理解できない箇所があるなら、サポートセンターを活用して教えてもらうというのも一手です。
このうち、電子カルテを使ううえでの基本姿勢といえる「電子カルテの機能や利点を改めて確認する」について、このあと解説していきます。
電子カルテの操作をサポートする機能やUI とは?
電子カルテには、ユーザーが簡単に使えるような工夫がいっぱいです。代表的な機能・UIは次の通りです。
それぞれ詳しく解説していきます。
視覚的にわかりやすい
電子カルテのUIの大きな特長は、視覚的にわかりやすく作られていることです。UIとは「ユーザーインターフェース」の略語で、ユーザーと製品・サービスとの接点を意味します。つまり、電子カルテを入力する際に表示される画面もUIのひとつですが、最近の電子カルテは基本的に、直感的に操作しやすいように設計されているため、マニュアルを読まなくても「この操作をするためにはこのボタンを押せばいいのだな」ということがわかりやすいといえます。
モバイル端末に対応
スマートフォンやタブレットでも使えるよう、モバイル端末専用画面が用意されている電子カルテなら、スマホ感覚で利用しやすいといえます。
テンプレート、定型文
よく使う処置や処方、療養指導などは、病名や主訴・所見、薬剤などをセットにして登録することでテンプレート化できます。たとえば、「花粉症/鼻水・くしゃみ/アレグラ」などでセットしてテンプレート化しておけば、この内容をカルテ上に入力したいとき、ボタンをワンクリックするだけでテンプレートが入力されるため、服用量の数字などだけ、必要に応じて上書きすればいいので、カルテ入力時間を短縮できます。
また、よく使う単語やよく使う文章も登録することが可能です。特に、漢字を間違いやすい単語、長い単語などは、登録しておけば最初の文字を打った時点で選択肢として表示されるため便利です。
選択機能
推測される単語が複数表示され、そのなかから該当するものを選択してクリックすればOKな機能を「選択機能」といいます。たとえば、カルテに処置や処方を入力すると、その処置や処方と関連性の深い病名が推測で複数表示されるため、そのなかから該当するものを選択してクリックすると入力がスムーズです。
検索機能
特定の患者のカルテが必要な際、検索窓に名前を入力すればスムーズに見つかります。また、診察した医師名・検査した技師名などで検索することもできます。
Do処方入力
Do処方とは、カルテに「Do」と記入して、前回と同じ処方や同じ処置を呼び出すことを意味します。定期的に受診している患者にいつもの薬を出したり、いつもと同じ処置をおこなったりするときに、カルテ入力時間を短縮することができます。時間短縮に加え、処方内容の間違い防止にも役立ちます。なお、「DO」とは
繰り返しやコピーを意味する英語「ditto」に由来する言葉で、「コピー」を意味します。
手書き入力・タッチ操作
電子カルテのなかには、手書き入力やタッチ操作に対応したものもあります。紙カルテと同じような感覚で操作できるため、タイピング操作が苦手な人にとってはありがたい機能であるといえるでしょう。
音声入力
パソコンに接続したマイクに向かって話しかけると、話したことを文字に変換して入力してくれる電子カルテもあります。ただし、音声認識の精度によっては、誤った日本語が入力されることもあるので、間違っている部分を手動で修正しなくてはならないことがあります。
連携機能
レセコンや会計システム、各種検査機器と連携可能な電子カルテを選べば、患者のデータを一括管理できるだけでなく、予約から会計までシームレスにおこなえるというメリットも享受できます。
電子カルテを使うことのメリットは?
続いては電子カルテを使うことのメリットを簡単に説明します。電子カルテを使う主なメリットは次の通りです。
それぞれ簡単に解説していきます。
業務効率が上がる
電子カルテの操作に慣れていなくて、入力自体に時間がかかるとしても、前述の通り、「検索機能で患者のカルテをすぐに呼び出せる」「連携機能を使えばレセコンとカルテそれぞれにデータを入力しなくていい」などの機能が備わっていることから、業務効率が上がります。
検査結果をスピーディに取り込める
各種検査機器と連携しておけば、検査結果をスピーディに取り込むことができます。スタッフが診察室と検査室を行き来する必要もありませんし、外部の検査機関の検査結果を取り込むことも可能なので、患者の待ち時間も大幅に削減されます。
患者に関する情報をリアルタイムで確認できる
電子カルテへの入力や編集、書いた情報の削除などはその場で反映されるため、最新の情報をリアルタイムで確認できます。クラウド型電子カルテであれば、院外にいるときでも確認可能なので、医師の自宅などでも気になることをすぐに確認することが可能です。
間違いを未然に防ぐことができる
病名と薬剤などに整合性がなければアラートが出ることなどから、間違いを未然に防ぐことができます。また、紙カルテと異なり、手書きの文字を読む必要が無いため、字のクセによる読み間違いなどが起きる心配もありません。
院内のスペースを広く使える
電子カルテに入力した情報はサーバーに取り込まれるため、紙カルテと違って院内に保管スペースを設ける必要がありません。そのため、院内のスペースを広く使うことができます。
電子カルテをより効果的に活用するためのコツ
続いては、電子カルテの便利さをより実感できる、効果的な活用法を説明していきます。電子カルテを効率的に活用するためのコツとしては、次の4つが挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
テンプレートや定型文を ①登録して ②いつも使う
前述の通り、テンプレートや定型文を使うと、「入力がスピーディ」「ミスが起きにくい」といったメリットがありますが、よく使うセットなどは、最初に登録する必要があるので、この登録作業を面倒だと感じて、オーダーセットなどを利用しないままの人は多いかもしれません。確かに、よく使うセットは一種類ではないため、すべて登録するにはそれなりに時間がかかります。しかし、一度登録してしまえば、その後の入力が劇的にスムーズになるため、登録しない手はありません。
院外からも電子カルテにアクセスできるようにしておく
これは、クラウドカルテのみで可能なことですが、自宅からでもアクセスできるよう環境を整えておけば、残業せずに、家に帰ってから患者情報の確認をおこなうなど、スキマ時間を効率よく使うことができます。クラウド型電子カルテを選べば、基本的にはネット環境さえあればどこからでも電子カルテにアクセスできますが、対応端末が限定される場合などもあるので、最初によく確認しておくことが大切です。
タブレットやスマホでも電子カルテを使えるようにしておく
こちらは院内での活用に関しての話ですが、タブレットやスマートフォンでも電子カルテを使えるような環境を整えておくと、つまり、各スタッフにタブレット端末を支給するなどしておくと、院内のどこでも電子カルテを使うことができるため、電子カルテに入力するためにデスクトップパソコンの設置場所に移動しなくても、その場で作業できるようになります。また、web問診システムを電子カルテと連携させれば診察がスムーズになるので、患者がその場で入力できるよう、患者用タブレットを用意しておくこともおすすめです。
ショートカットキーを活用する
電子カルテに限ったことではありませんが、タイピングの速度を上げるためには、ショートカットキーを駆使することが有効です。たとえば、コピー&ペーストしたいときも、「コピー:Ctrl + C、 貼り付け:Ctrl + V」を覚えておけば、瞬時にコピペが完了します。
電子カルテ導入時に、「操作が難しそう」の不安を払しょくする方法
続いては、電子カルテ導入のタイミングで、「操作が難しそう」の不安を払しょくする方法をお伝えしていきます。前半で述べた通り、「まずは使ってみて、難しいと感じても諦めずに使い続けて、わからないことがあればマニュアルやサポートセンターを利用する」は正当な方法ですが、地道に感じられて、続けるのが面倒だという人もいるかもしれません。
電子カルテ導入時に研修会を開催する
では、地道な努力を続けるのではなく、使い方を一発である程度マスターするにはどうすればいいかというと、まずは、電子カルテ導入時に研修会を開くことが有効です。研修会や勉強会は、電子カルテのベンダーがおこなってくれることもありますし、自院に電子カルテの操作に精通しているスタッフがいるなら、該当するスタッフに講師をお願いするのも一手です。最初に全員一緒に操作方法を学ぶ機会を設けるだけで、「みんなに負けないようにうまく使いこなすぞ」とモチベーションをキープしてもらいやすくなります。
定期的に勉強会を開催する
もうひとつ大切なのが、導入後も定期的に勉強会を開催することです。使い続けているうちに新たな疑問が出てきたとしても、質問しにくい場合もありますが、定期的な勉強会を設けておけば、その機会に質問することもできますし、質疑応答の場に全員が居合わせたとすれば、スタッフ全員のスキルが上がることが見込めます。
電子カルテのメリットを十分に享受するためにセキュリティ対策をとることも大切
電子カルテは、上手に使いこなせばたくさんのメリットを実感することができますが、紙カルテと異なり、外部からの侵入者にデータを盗まれるリスクがゼロではないため、セキュリティ対策を万全に整えておくことは不可欠です。自院で十分なセキュリティ対策をとれるかどうか自信がない場合、ベンダーに相談したり、専門家に協力を仰いだりすることを考えるのが得策。大切な患者の個人情報を守るためにも、十分な対策を講じるよう心がけてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2025年1月時点の情報を元に作成しています。