クリニック閉院手続きを徹底解説! 医師が知るべき全手順と注意点

クリニックを閉院する際は、開院する際と同様、各種届出や手続きを適切におこなう必要があります。そこで今回は、計画立案から各種届出、後処理まで、医師が知るべきポイントを網羅的に解説していきます。

目次
  1. クリニックが医療法人の場合と個人経営の場合の閉院手続きの違いは ?
  2. 医療法人のクリニックの閉院手続きの流れは ?
  3. 個人経営のクリニックの閉院手続きの流れは?
  4. スタッフ・患者への適切な告知と対応とは?
    1. スタッフへの告知と退職手続き
      1. 告知内容
      2. 退職金
      3. 社会保険の手続き
    2. 患者への告知と転院支援
      1. 告知方法
      2. 転院支援:
  5. クリニック閉院時に提出が必要な届出一覧
    1. 医療法・健康保険にまつわる届出
    2. 税務関係の届出
    3. 社会保険・労働保険関係の届出
  6. クリニック閉院後も保管が必要なものとは ?
  7. クリニック閉院と事業承継はどちらが得策 ?
  8. クリニック閉院に関するよくある質問とその答え
    1. Q. 閉院計画の立案は閉院何か月前が望ましい ?
    2. Q. クリニック閉院にはどのくらいの費用がかかる ?
    3. Q. 資金難により、スタッフへの給与を支払いできない場合はどうすればいい?
    4. Q. 院長が急逝した場合の閉院手続きはどうすればいい ?
    5. Q. 閉院後、カルテの開示請求があった場合はどう対応すればいい ?
  9. 自分自身の未来、クリニックの未来をイメージしながら、早い段階から未来のために準備を進めていこう

クリニックが医療法人の場合と個人経営の場合の閉院手続きの違いは ?

クリニックの閉院手続きは、クリニックが医療法人の場合と個人経営の場合とで大きく異なります。

一番の違いは、医療法人の場合、まずは医療法人を解散する必要があるということです。医療法人を解散するためには、株主総会の決議、登記手続き、税務申告などさまざまな手順を踏まなければなりません。さらに、債権者への弁済や清算手続きなど、煩雑な手続きも多いため、弁護士や税理士などの専門家のサポートなしには、スムーズに閉院することが難しいといえるでしょう。

一方、クリニックが個人経営の場合、保健所や税務署、社会保険事務所などに必要な届出をおこなうことになりますが、提出しなければならないものが多いため、一つひとつ確認しながら、間違いのないように手続きを進めていくと、やはりそれなりに時間がかかることになります。

なお、クリニックの閉院手続きの立案は、法人の場合も個人経営の場合も、約6か月前が適切であるとされています。医療機器やその他資産の処分計画を策定して実施するためには、予想外に時間がかかる可能性が高いです。

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医療法人のクリニックの閉院手続きの流れは ?

医療法人のクリニックを閉院する際は、前述の通り、まずは解散する必要がありますが、解散するためには、解散事由が、医療法第55条に定められた事由に当てはまっていなくてはなりません。

なお、医療法第55条に定められている自由は次の通りです。

1.定款をもって定めた解散事由の発生
2.目的たる業務の成功の不能
3.社員総会の決議
4.他の医療法人との合併(合併によって当該医療法人が消滅する場合に限る)
5.社員の欠亡
6.破産手続開始の決定
7.設立認可の取り消し

なお、5つめの理由における「欠亡」とは、法人や団体において社員がゼロになることを意味します。社員全員が辞任することによるケースもあれば、死亡によるケースも考えられます 。

参照:医療法

また、必要に応じて「解散認可申請」や「解散届」を提出します。その後の流れは次の通りです。

1.解散と清算人就任を登記する
2.清算手続きをおこなう
3.官報公告
4.精算終了後の精算決了の登記

なお、3つめの「官報公告」とは、法令に基づいて、会社の変更や解散などを公表することを意味します 。

個人経営のクリニックの閉院手続きの流れは?

クリニックの閉院は多くの手続きを伴うため、十分な準備期間を確保することが不可欠です。前述の通り、一般的に、閉院予定日の約6か月前から準備を開始することが望ましいとされています。この期間で、以下の主要なタスクを計画的に進めていくことになります。

  • 閉院の意思決定と準備期間の確定
  • 資金計画の策定(閉院費用の見積もり、運転資金の確保など)
  • 事業承継の検討(閉院との比較検討、専門家への相談)
  • 各種専門家への相談(税理士、弁護士、社労士など)
  • スタッフ・患者への告知計画の立案
  • 医療機器・資産の処分計画の立案
  • 各種届出・手続きのスケジュール作成
  • 続いて、個人経営の場合の閉院手続きの流れは次の通りです。

    スタッフ・患者への適切な告知と対応とは?

    クリニックの閉院にあたり、スタッフと患者への適切な告知と丁寧な対応は、円滑な閉院を実現するために非常に重要な要素です。

    スタッフへの告知と退職手続き

    スタッフへの告知は、閉院の2〜3か月前を目安におこなうのが望ましいです。特に、スタッフを解雇する場合、労働基準法第20条により、少なくとも30日前までの解雇予告が必要です。30日前に満たない場合は、不足日数分の平均賃金(解雇予告手当)の支払い義務が発生します。

    告知内容

    閉院の理由、閉院日、今後の手続き(退職日、退職金、社会保険の手続きなど)を具体的に説明しましょう。

    退職金

    退職金規程がある場合はそれに従い、ない場合も就業規則や雇用契約に基づき、話し合いを通じて決定します。

    社会保険の手続き

  • 健康保険・厚生年金保険: 閉院から5日以内に「健康保険・厚生年金保険適用事務所全喪届」および「被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出します。
  • 雇用保険: 閉院から10日以内に「雇用保険適用事業所廃止届」および「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークに提出します。
  • 転職支援: スタッフが次の職をスムーズに見つけられるよう、求人情報の提供や推薦状の作成など、可能な範囲で支援を検討しましょう。
  • 患者への告知と転院支援

    患者への告知も、閉院の2〜3か月前を目安におこない、混乱を最小限に抑える配慮が必要です。

    告知方法

    院内掲示、ウェブサイト、ダイレクトメールなどで、閉院日と今後の診療に関する案内を明確に提示しましょう。

    転院支援:

    患者が安心して新しい医療機関に移行できるよう、転院や紹介の手続きをおこないます。

    クリニック閉院時に提出が必要な届出一覧

    続いては、クリニック閉院時に提出が必要な届出一覧をみていきましょう。

    医療法・健康保険にまつわる届出

    届出の名称 提出先 期限
    診療所廃止届 保健所 閉院から10日以内に提出
    診療所開設者死亡届 開設者(院長)が死亡した場合、死亡日から10日以内に提出。ただし、提出が不要な自治体もある
    診療用エックス線装置廃止届 診療用エックス線装置がある場合、診療所廃止届と同時に提出
    麻薬使用者業務廃止届 麻薬の使用がある場合、閉院から15日以内に提出
    保険医療機関廃止届 地方厚生局 閉院後速やかに提出
    生活保護法指定医療機関廃止届 地方厚生局 生活保護法の指定を受けている場合、閉院から10日以内に提出
    労災保険適用廃止 労働基準監督署 労災保険法の指定を受けている場合、閉院から50日以内に提出

    税務関係の届出

    届出の名称 提出先 期限 備考(補足情報・注意点)
    個人事業の開業届出・廃業届出等手続 税務署、都道府県税事務所、市区町村 閉院から1か月以内に提出 個人事業主の場合に必要です。所得税の確定申告とは別に提出します
    事業廃止届出書 税務署、都道府県税事務所、市区町村 消費税の課税事業者の場合、閉院したら速やかに提出 消費税の還付を受ける可能性がある場合は、特に速やかな提出が推奨されます
    給与支払事務所等の廃止届出書 税務署 閉院から1か月以内に提出
    所得税の青色申告の取りやめ届出書 取りやめようとする年の翌年の3月15日までに提出

    社会保険・労働保険関係の届出

    届出の名称 提出先 期限および添付書類
    健康保険・労働厚生保険適用事務所全喪届 年金事務所 閉院から5日以内。法人の場合は法人登記謄本、個人事業主の場合は雇用保険適用事業所廃止届など、事業を廃止したことを確認できる書類を添付することが必要
    被保険者資格喪失届 閉院から5日以内。協会けんぽの場合、健康保険被保険者証の提出が必要。紛失等により回収できなければ健康保険被保険者証回収不能届が必要
    雇用保険適用事業者廃止届 ハローワーク 閉院から10日以内。法人の場合、登記簿謄(抄)本などが必要。法人でない場合、その事実を証明する書類が必要
    雇用保険被保険者資格喪失届 閉院から10日以内。離職証明書など離職理由が確認できる書類等の提出が必要

    クリニック閉院後も保管が必要なものとは ?

    続いては、クリニック閉院後も保管が必要なものについて説明していきます。

    クリニックが閉院して以降は診察や治療をおこなうことはないのだから、医師としての仕事に使っていたものはすべて棄てていいだろうと思うかもしれませんが、法律によって、一定年数の保管が義務付けられているものがあります。具体的には次の通りです。

  • カルテ(診療録)
  • レントゲンフィルムまたはデータ
  • エックス線装置等放射線障害発生の恐れがある場所の測定結果記録
  • 向精神薬処分の記録
  • それぞれの保管期間などは次の表の通りです。

    保管が必要なもの 法的根拠 保管期間 備考(注意点)
    カルテ(診療録) 医師法第24条 5年間 紙カルテは保管スペースの確保、電子カルテはデータ保存方法(クラウド契約解除後のPDF化など)に注意が必要です
    レントゲンフィルムまたはデータ 保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条 撮影した疾患に関する診療行為終了後3年間 疾患ごとの診療行為終了日を基準とするため、複雑になる場合があります
    エックス線装置等放射線障害発生の恐れがある場所の測定結果記録 医療法施行規則 5年間 半年ごとに放射線量を線量計で測定して、その結果を記録することが義務付けられています
    向精神薬処分の記録 麻薬および向精神薬取締法 2年間 廃棄時には「品名」「数量」「廃棄または譲り渡しする年月日」「譲り渡しする場合は譲り渡しする先の名称および所在地」を記録して、適切な方法で廃棄する必要があります

    クリニック閉院と事業承継はどちらが得策 ?

    クリニックの経営を続けていくことが難しい場合、閉院のほかに、事業承継という選択肢をとることもできます。閉院と事業承継にはそれぞれ次のようなメリット、デメリットがあるので、自院にとってはどちらがよりよい選択であるのか、比較検討しながら考えることがおすすめです。

    閉院 事業承継
    メリット ・後継者を探す手間がかからない
    ・閉院のタイミングを事前に決められる
    ・売却益課税がない(不動産・医療機器の売却を除く)
    ・負債の整理が明確になる
    ・譲渡益を得られる
    ・既存の患者が引き続き通院できる
    ・スタッフの雇用を引き継ぐことも可能
    ・廃業に伴う損失が発生する可能性がある
    デメリット ・物件の原状回復などに膨大な費用がかかる
    ・患者を退院に引き継いだり紹介したりする手間がかかる
    ・スタッフが職を失う(転職活動する必要が生じる)
    ・譲渡益(M&A売却益)を得られる
    ・医療の継続性に貢献できる
    ・廃業コスト(原状回復費用など)を削減できる可能性がある
    ・後継者がなかなか見つからない場合がある
    ・希望通りの条件で承継できるとは限らない
    ・仲介業者に手数料を支払う必要がある
    ・譲渡益に対する税金が発生する
    ・交渉に時間と労力がかかる

    なお、事業承継のデメリットに含まれている「後継者がなかなか見つからない場合がある」に関して、何年経っても見つからず、結局閉院になってしまうというケースもあります。そのため、最初からその可能性を見越したうえで、「1年経っても希望者が現れなければ、閉院の手続きを進めて1年半後に閉院しよう」などと期限を決めて次のステップへと進んでいくこともひとつの選択肢であるといえるでしょう。

    クリニック閉院に関するよくある質問とその答え

    続いては、クリニック閉院に関してよくある質問とその答えについて解説していきます。

    Q. 閉院計画の立案は閉院何か月前が望ましい ?

    閉院計画の立案は、約6か月前が適切であるとされています。医療機器やその他資産の処分計画を策定して実施するためには、予想外に時間がかかる可能性が高いです。

    Q. クリニック閉院にはどのくらいの費用がかかる ?

    クリニック閉院にかかる費用は、クリニックの規模やスタッフ人数などにもよるため一概にはいえませんが、スタッフの退職金、リース代金の精算、ローンの返済または必要に応じて売却などを含めるとかなりの金額になると考えられます。相場としては、数百万円~1,000万円程度であるといえます 。

    また、クリニックが賃貸物件の場合、契約内容によっては原状回復を求められることがあります。もしくは、スケルトン返却が必要な場合もありますが、その場合、解体費用も必要となるため、概算でどれくらいになるのかを事前に確認してから計画的に準備を進めていくことが望ましいといえるでしょう。

    また、原状回復費用は基本的に高額となるため、複数の業者から相見積もりをとってもらって 、依頼する先を決めることが大切です。

    Q. 資金難により、スタッフへの給与を支払いできない場合はどうすればいい?

    経営者は労働者に対して、働いてくれたぶんの賃金を支払わなければならないことは、労働基準法によって定められています。しかし、クリニックが破産したなどの理由で、現実的に給与の支払いができない可能性があります。その場合は、国が未払い賃金の8割を立て替えてくれる制度を利用するという手があります 。ただし、この制度は従業員向けであるため、従業員が自ら申請する必要があるので、クリニックとしてできることは、「従業員に申請方法を案内する」ということになります。

    参照:厚生労働省「未払賃金立替払制度の概要と実績」

    Q. 院長が急逝した場合の閉院手続きはどうすればいい ?

    院長が急逝した場合、後継者がいるのであれば、閉院の手続きをとる必要はないため、「診療所廃止届」を管轄の保健所に提出すると同時に、「新規開設届」を院長が急逝した翌日付にして保険書に提出します。また、地方厚生局に「保健医療機関廃止届」を提出すると同時に、新たに「指定申請」を提出します。

    後継者がいない場合、前述した、届出が必要な書類を相続人が提出することになります。ただし、遺族だけでは手続きや対応が追い付かない可能性も考えられるため、閉院する予定がなく、健康面でも何も問題がないとしても、万が一のことを考えて、緊急時のマニュアルを作成しておくことや、重要書類の保管場所を周囲に伝えておくことも検討するといいでしょう。

    Q. 閉院後、カルテの開示請求があった場合はどう対応すればいい ?

    閉院後にカルテの開示請求があった場合、次の手順で開示します。
    1.運転免許証や保険証などのコピーを提出してもらって本人確認をおこなう
    2.書面での開示請求を求める
    3.コピー代や郵送代などの費用を請求する(任意)
    4.2週間程度を目安に開示する

    ただし、前述した通り、カルテの保存期間は5年間であるため、それ以上の年月が経過していて対応できない場合は、先方にその旨を説明します。

    自分自身の未来、クリニックの未来をイメージしながら、早い段階から未来のために準備を進めていこう

    クリニック経営者に限ったことではありませんが、ある程度の年齢になると、定年後の計画についてもしっかりと立てていくことがとても大切です。もちろん、「生涯現役でいたい」という人も大勢いますが、その場合は、自分が続けてきた仕事を最終的にどう後世に引き継いでいくのかを考えることが重要です。そのことを考え始めるタイミングは人それぞれですし、自分の仕事にやりがいを感じている人ほど、考えるタイミングが遅くなるケースが多いと考えられますが、すべての仕事は誰かの役にたっているので、その“誰か”に迷惑をかけないためにも、先々のことまで見越して行動していくことはとても大切です。クリニックの場合、基本的には閉院または(身内が継ぐ場合を含めて)事業承継の二択なので、クリニックの未来、自分自身の未来の両方をイメージしながら、進むべき方向を見定め、よりよい未来のために準備を進めていけるといいですね。

    Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

    特徴

    1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

    対象規模

    無床クリニック向け 在宅向け

    オプション機能

    オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

    提供形態

    サービス クラウド SaaS 分離型

    診療科目

    内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、