電子カルテの標準化が進められている昨今、電子カルテの乗り換えを検討しているクリニックも多いのではないでしょうか? 乗り換えの際には、過去の電子カルテに入力している情報を新しい電子カルテへと移行させる必要があります。そこで今回は、データ移行に失敗しないための適切な移行方法について解説していきます。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
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電子カルテのデータ移行の必要性
電子カルテを他メーカーのものに乗り換える際には、現状、使っている電子カルテに入力している情報を新しい電子カルテに引き継ぐか、もしくは、乗り換え時点までに蓄積されているデータを、いつでもすぐに確認できる状態にして保管しておく必要があります。
なぜかというと、第一に、電子カルテ乗り換え前のデータが手元になければ、継続して来院している患者の治療の経過や薬剤アレルギー情報などを確認することができず、診療に支障をきたすためです。
さらに、「保険医療機関および保険医療担当規則第9条」によって、診療録(カルテ)に5年間の保存が義務付けられていることも理由です。電子カルテを乗り換えた時点で、従来の電子カルテに入力済のデータを破棄すると、これに違反することになってしまいます。
ただし、実際には20年間保存している医療機関が多いです。なぜかというと、医療過誤があったとして、患者が医療機関を相手に損害賠償請求する場合の消滅時効が最長20年とされているためです。
電子カルテのデータを移行あるいは保管する方法は?
電子カルテ乗り換え時に、元の電子カルテのデータを移行あるいは保管していつでも確認できるようにするための方法は、大きく次の3つに分けられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
最長5年間、旧電子カルテも継続して利用し続ける
もっとも時間のかからない方法は、一定期間、旧電子カルテと新電子カルテを併用する方法です。基本的には新電子カルテを使いながら、過去の情報を閲覧する必要がある際は、旧電子カルテを操作します。この方法は簡単ではありますが、旧電子カルテの保守料を支払い続ける必要がある点はデメリットであるといえます。ただし、旧電子カルテの使用期間が5年に満たず、両方を使い続けなければならない期間が短い場合は、データ移行の手間を考えるとベストな選択となり得る場合があります。
旧電子カルテのデータをPDFなどに変換して新電子カルテに取り込む
旧電子カルテのデータをPDFなどの汎用ファイルにしてプリントアウトした後、そのデータを新電子カルテに取り込むという方法もあります。この方法を活用する場合、抽出したファイルには電子スタンプを付与する必要があります。これは、医療法規・電子帳簿保存法に対応するためで、タイムスタンプを付与することによって原本性を証明するというわけです。
参照:厚生労働省「診療録等をスキャナ等により電子化して保存する場合について」
データを抽出した後、新電子カルテに取り込む作業にそれなりの時間を要しますが、データをすべて抽出し終われば、旧電子カルテを継続利用する必要がなくなるため、保守料の支払いも必要ありません。
なお、抽出したデータを取り込むための市販システムを利用すれば、作業がスムーズです。また、電子カルテによっては、システム障害時なども電子カルテを参照できるよう、HTML形式のデータを出力する機能が備わっているので、この機能を利用すれば簡単に汎用ファイルを抽出することができます。
データコンバートをおこなう
「データコンバート」とは、既存のデータ形式を別の形式に変換する作業のことです。具体的には、新旧電子カルテメーカーがお互いの仕様を公開したうえで、新電子カルテのメーカーが旧電子カルテのメーカーに対して、保存が必要な情報をデータファイルとして吐き出す作業を依頼して、そのデータファイルを新電子カルテに取り込む流れになります。つまり、契約を打ち切るメーカーに対して、新電子カルテのメーカーへの対応をお願いしないといけないということになるため、「気まずい」というデメリットも存在することになります。
なお、吐き出せる情報が限定的である場合があります。また、作業完了までに時間も費用もかかります。さらには、コンバートのために開発の費用がかかることもあります。一方、不完全な状態でデータが抽出される可能性もあります。
3つの方法のメリット・デメリットをまとめると次の通りとなります。
| 方法 | メリット | デメリット |
| 一定期間、旧電子カルテを継続して利用 | ・データ移行の作業が不要 | ・併用期間、保守料がかかる ・新旧電子カルテの情報を一元管理できない ・新旧電子カルテの両方を立ち上げておく必要があり、そのぶんのスペースも電気代もかかる |
| 旧電子カルテのデータをPDFなどに変換して新電子カルテに取り込む | ・データを抽出してしまえば、旧電子カルテの保守料はかからない ・旧電子カルテにHTML形式のデータ出力機能が備わっていれば、データ抽出が楽 |
・データ抽出に時間がかかる |
| データコンバートをおこなう | ・データコンバート後情報が一元管理されるため業務の利便性が上がる | ・お金も時間もかかる ・不完全な状態でデータが抽出される可能性がある ・データコンバートのために開発費用が掛かる場合がある ・利用中の電子カルテのメーカーに乗り換えの相談をしなくてはならないため気まずい |
特に注意が必要なのは、「シェーマ(身体図や患部のイラスト)」や「文書作成機能で作った紹介状などの履歴」です。これらは異なるメーカー間では互換性がないことが多く、コンバート時に画像化されて編集不可になったり、最悪の場合は移行できずに消滅したりするケースが一般的です。 そのため、「テキスト情報(SOAP、処方、病名)」はコンバートし、シェーマ等の画像類は「旧電子カルテを閲覧用として残す」というハイブリッドな運用を選択するクリニックも多くあります。
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電子カルテ乗り換えの手順
上記に解説した3つの方法のうちいずれを採用する場合も、電子カルテを乗り換える流れは次の通りとなります。
データの移行or保管方法の決め方
3つの方法のうちいずれを採用するかについて希望がある場合、その方法に対応可能かどうかについて、①の電子カルテ選定時に、乗り換え候補の電子カルテのメーカーに確認することが大切です。
自院で希望がない場合は、まずはメーカーのおすすめの方法やサポート体制について確認しましょう。場合によっては、乗り換えをサポートしてもらうと別途費用が発生することもあるので、その金額も、どの電子カルテメーカーを選ぶべきかの大切な判断材料となります。
データコンバートの手順
先に解説した3つの方法のうち、データコンバートを実践する場合は、次の流れで手続きを進めます。
それぞれ詳しく解説していきます。
旧電子カルテのデータのバックアップをとる
データ移行を開始する前の事前準備として、(その時点での)現行電子カルテのデータのバックアップをとり、移行対象の範囲を明確にします。
データクレンジングをおこなう
データのバックアップをとると同時に、データの重複や誤りを修正する「データクレンジング」をおこないます。
新電子カルテに取り込みたいデータを旧電子カルテから抽出する
現行電子カルテから、新電子カルテに取り込みたいデータを抽出します。
必要に応じてファイル形式を変換する
抽出したデータを、新電子カルテのシステム形式に合わせて変換します。この際、必要に応じてデータをカスタマイズすることもあります。
新電子カルテにデータを取り込む
変換・カスタマイズしたデータを新電子カルテに取り込みます。
きちんと取り込めているかどうか検証する
取り込んだデータが新電子カルテ上で正しく表示されるかどうかを確認します。検索機能などを使うことで、正常に作動しているかどうかを確認することができます。
データコンバートの費用相場は?
電子カルテのデータコンバートにかかる費用は、次のような要因で変動します。
そのため、費用相場を算出するのは難しいといえますが、小規模クリニックであれば、数十万円に収まる場合が多いでしょう。ただし、上記要因のうち、「患者数が多い」「自由記述式である」などが当てはまる場合は、数百万円かかることもあるかもしれません。
解約する「旧メーカー」への作業依頼費用を忘れない
データ移行費用というと「新しい電子カルテメーカー」への支払いに目が行きがちですが、実は「今使っている電子カルテのメーカー」に支払う「データ抽出作業費」が高額になるケースがあります。
セキュリティ保護の観点から、ユーザー自身ではデータベースにアクセスできず、メーカー技術者にデータ抽出を依頼しなければならない契約になっていることが多いためです。この費用が数十万円〜百万円単位で発生することがあるため、見積もり段階で必ず「解約時のデータ抽出に費用がかかるか」を現在契約中のメーカーに確認してください。
データ移行を成功させる「業者・新カルテ選定」の5つのチェックポイント
電子カルテの乗り換えやデータ移行業者を選定する際は、単に「移行できます」という言葉を鵜呑みにせず、以下の5点を確認してください。
旧カルテの機種からの「移行実績」があるか
電子カルテはメーカーごとにデータ構造が全く異なります。「他社からの移行実績は豊富」でも、「自院が使っている旧カルテ(A社製)」からの移行実績がない場合、予期せぬトラブルや追加費用が発生するリスクが高まります。
「シェーマ(絵)」や「スキャン画像」の移行可否
テキストデータは移行できても、手書きのシェーマ(患部の絵)や、紙カルテをスキャンしたPDF等は移行できない(あるいは画像として閲覧のみ可能)ケースが多々あります。これらが移行できない場合、過去の診療経過を追うのに致命的な支障が出ます。
移行コストの内訳が明確か
「一式」見積もりではなく、「基本情報」「処方データ」「病名」「検査値」「画像」など、どのデータを移行するのにいくらかかるのか、項目ごとの単価が明確な業者を選びましょう。
「セット登録」や「定型文」は手動再登録が必要な場合が多い
「過去の診療記録」は移行できても、診療効率化のために登録していた「処方セット」「検査セット」「所見のテンプレート(定型文)」などの設定情報は、メーカーが変わるとデータ構造が違うため移行できない(引き継げない)ことが一般的です。
これらは新しい電子カルテ導入前に、スタッフ総出で手動登録(マスタ設定)をし直す必要があります。この作業時間をスケジュールに組み込んでおかないと、稼働初日に「いつものセット入力ができず、診察に時間がかかって待合室が溢れかえる」という事態に陥ります。
患者ID(診察券番号)がそのまま使えるか確認する
新しい電子カルテで「これまでの患者ID(診察券番号)」がそのまま使えるかは最重要チェック項目です。
もしシステム仕様上の理由で新しいID番号を割り振ることになった場合、「全患者の診察券を作り直すコストと手間」が発生します。また、レントゲンや検査機器とIDで連携している場合、番号が変わると過去の検査画像とリンクしなくなる恐れもあります。「既存のID番号を維持できるか(あるいは旧IDで検索できるか)」は必ず確認しましょう。
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データコンバートにかかる日数の目安は?
電子カルテのデータコンバートにかかる日数も、費用同様、移行するデータ量やデータのフォーマットなどによって大きく異なってきます。
目安としては次の通りとなります。
小規模クリニック
早い場合:1~3日
一般的な場合:3〜10日
中規模病院(数万~数十万件のデータ):10日~1ヶ月
大規模病院(数十万~数百万件クラス):1~3ヶ月以上
ただし、「事前確認」「テスト移行」「データコンバート後の医療機関によるチェック」「修正&本移行」の細かなステップをひっくるめての日数となると、上記日数より長くなります。
たとえば、一般的な小規模クリニックにおいて、ほぼ全部のデータを移行した場合の日数目安は次の通りです。
→ 合計:5〜12日程度
データコンバートは自院でできる?
先に解説した、電子カルテのデータを移行あるいは保管する3つの方法のうち、「新旧電子カルテを併用する」「旧電子カルテのデータをPDFなどにして保管する」に関しては、自院でもできなくはありません。
しかし、データコンバートに関しては、自院のみで完結させるのは難しいと考えられます。
なぜかというと、電子カルテのデータは、患者基本情報、診療記録、検査データ、画像リンク、オーダリング情報など多層構造になっているうえ、ベンダーごとに独自形式や暗号化が使われていることも多いためです。
仮に、院長もしくは医院内のスタッフに、こうしたシステムに詳しい人間がいたとしても、複雑なデータ形式を理解したうえで対応するにはかなりの時間を要すため、本業が疎かになってしまうはずです。
また、旧電子カルテの項目と新電子カルテの項目を正確にマッピングしなければ、データの欠落や誤登録のリスクが生まれるため、作業を慎重に進める必要がありますし、移行後には検証が不可欠であるため、さらに時間がかかります。
リスクに関していうと、患者情報は個人情報保護法の対象であり、漏洩や改ざんリスクを最小化することが不可欠ですが、そうした専門知識を持ち合わせていないまま作業することは、セキュリティ面からみてよろしくありません。
また、診療に影響が及ばないよう、移行作業は休日や夜間におこなうのが基本であることからも、院内の人間が対応するのは難しいといえます。
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電子カルテ乗り換え時の注意点
電子カルテの乗り換え時は次の点に注意する必要があります。
それぞれ詳しく解説していきます。
現行電子カルテの契約期間を確認する
電子カルテの契約期間中に乗り換えをおこなうと、違約金が発生する可能性があります。そのため、契約期間終了まで待つのが理想ですが、事情があってすぐにでも乗り換えたいという場合は、違約金を用意する必要があります。
データの移行や保管にかかる時間を考慮して、ベストな時期に乗り換える
データの移行や保管にはある程度の時間がかかります。もっとも作業工程が少ない方法である「一定期間、旧電子カルテも継続して利用」という方法を選んだ場合に関しては、“2種類の電子カルテを併用することに慣れること”にある程度時間がかかります。
そのため、電子カルテの乗り換えは、診療業務が忙しくなる時期は避けておこなうのが無難です。たとえば内科であればインフルエンザシーズン、耳鼻咽喉科であれば花粉症シーズンなどは避けたほうがいいでしょう。
レセコン一体型もしくはレセコンも入れ替える場合、月末にセッティングを完了させる
レセコン一体型の電子カルテの場合、もしくは電子カルテと同じタイミングでレセコンも入れ替える場合、月末に新電子カルテおよびレセコンのセッティングを完了できるよう、タイミングを調整するといいでしょう。
スタッフの研修期間を考慮してスケジュールを立てる
新電子カルテのセッティングが完了しても、電子カルテの乗り換えが完了したとはいえません。なぜなら、旧電子カルテと同じように新電子カルテを使いこなせるようになるまでは、ある意味、“乗り換えている途中”だからです。そのため、新電子カルテの導入前に、スタッフが問題なく使いこなせるようになるまでにどのくらい時間がかかるのかを考えて、スタッフの研修期間についてもスケジュールを組んでおくことが大切です。
厚生労働省が進める「電子カルテ情報の標準化」とデータ移行の未来
現在、国は「HL7 FHIR(エイチエルセブン ファイア)」という規格を用いた電子カルテ情報の標準化を進めています。 これから新しい電子カルテを選ぶ際は、この「標準規格に対応している(あるいは対応予定の)電子カルテ」を選ぶことを強く推奨します。
標準規格に対応した電子カルテを選んでおけば、将来また乗り換えが発生した際に、データ移行が非常にスムーズかつ安価に行えるようになるだけでなく、他院とのデータ連携や、国からの補助金活用においても有利になる可能性が高いためです。今の乗り換えが「最後の面倒なデータ移行」になるよう、標準化への対応状況は必ずメーカーに確認しましょう。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
