患者から選ばれるクリニックになるためには、医師の腕だけでなく、スタッフの接遇力・対応力にも磨きをかけていく必要があります。たとえば、医師の腕を評価して通っている患者がいたとしても、「治療はいいけどスタッフの対応には不満」などの口コミを書かれると、「このクリニックは辞めておこう」と来院を見送る潜在患者が出てくる可能性もあります。そうした事態を避けるためにも、クリニックの接遇力を上げるためにスタッフ教育を考えていくことが大切です。
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接遇とは?
医療職にとって、接遇は大事な要素ですが、なぜ接遇が大事なのかを考えるために、まずは接遇の意味を改めて確認していきましょう。
接遇とは、おもてなしの心を持って、その場に相応しい言葉遣いや態度で、相手(医療職の場合は患者)と接することを意味します。お客様にサービスを提供することを意味する「接客」とは異なり、“もてなし”を意味する「遇」の漢字が使われているのは、接遇においては、相手の立場を理解して、思いやりを持って対応することが大切とされているためです。
なぜ医療職は接遇を大事にすべきなのか?
医療機関を受診する患者は、体調不良もしくは精神的に不安定であることなどから、ナーバスになっている傾向にあります。ケガや病気の治療目的ではないものの、美容皮膚科や美容外科を訪れる患者に関しても、「このクリニックなら理想通りの自分に変われるだろうか?」と不安な気持ちを抱いている場合が多いため、医療スタッフは患者の不安やストレスの軽減にも注力したいところです。
仮に、医療スタッフが接遇を重視せず、患者とのコミュニケーションを蔑ろにすれば、患者からクレームが入ったり、悪い口コミをつけられたりする可能性が高くなるため、クリニック経営に悪い影響が及ぶと考えられます。また、クレーム対応、口コミ対応に時間を取られることから、業務効率が落ちることも考えられます。
クリニックが接遇を重視するメリット
前述の、医療職が接遇を大事にすべき理由とも被る部分がありますが、クリニックが接遇を重視することのメリットとしては、以下の要素が挙げられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
「待ち時間」への先回り対応でクレームを未然に防ぐ
クリニックの低評価の多くは「待ち時間そのもの」ではなく、「放置された(忘れられているのではないか)という不安」から生まれます。
スタッフ教育においては、以下の「待ち時間への配慮」を徹底することが、最もクレーム削減に効果的です。
「待たせてすみません」という事後のお詫びだけでなく、「気にかけていますよ」というサインを出し続けることが、医療現場における最も重要な接遇スキルです。
患者との信頼関係を構築できる
常に患者の立場に立って適切に対応していれば、患者はスタッフおよびクリニックそのものに対して信頼感を覚えるようになります。患者からの信頼を得ることは、長期的な関係を築くことにもつながるため、「かかりつけクリニック」として通い続けてくれることが期待できます。
業務効率が上がる
接遇を重視した結果、患者が院内で快適に過ごせていれば、クレームが入りにくいだけでなく、患者の緊急度合いが理由で診察の順番が前後することなども理解してもらいやすいため、よりスムーズに業務を遂行することができます。
競合との差別化につながる
診療メニューや治療内容、自宅からの距離などに大きな違いがなければ、スタッフの対応がいいクリニックを選ぶという人は多いでしょう。つまり、接遇の質を上げることは、競合との差別化にもつながるということです。
スタッフの離職率低下と「トラブル回避」
接遇レベルが高いクリニックでは、患者の怒りの沸点が下がるため、いわゆる「ペイシェントハラスメント(カスハラ)」や理不尽なクレームに発展する確率が劇的に下がります。
接遇は患者のためであると同時に、「スタッフ自身をトラブルから守るための鎧(防衛術)」でもあります。 「丁寧な対応をしていた」という事実があれば、万が一トラブルになった際もクリニックはスタッフを堂々と守ることができます。安心して働ける環境は、結果として離職率の低下につながります。
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「接遇の5原則」とは?
接遇は、「挨拶」「表情」「身だしなみ」「態度」「話し方・言葉遣い」の5つから成り立っています。それぞれの要素についてどのようなポイントを意識すればいいのかを解説していきます。
挨拶
挨拶はコミュニケーションの基本です。患者が来院した際にはまず、「おはようございます」などの声掛けをすることが大切ですし、診察・会計が終わった患者には、「お大事になさってください」の一言を掛けることが大事です。
なお、一般的には挨拶は「明るく・元気よく」が基本とされますが、医療機関を訪れる患者は、基本的に身体もしくは心に不調を抱えているため、明るく元気に「おはようございます」と声をかけられると、かえって不快に感じる場合があります。
そこで重要なのが、先に解説した「相手の立場に立って考える」ことです。相手が痛みやイライラ、不快感などを抱えていることを考慮しながらも、コミュニケーションはしっかりとることを大事にします。
なお、緊急度の高い患者の来院時など、場合によっては、挨拶を飛ばして体調をねぎらう言葉をかけたり、歩行をサポートしたりすることが必要です。
挨拶に関する接遇において、クリアすべき主なポイントは次の通りです。
挨拶に関する接遇チェックリスト
表情
患者に安心感と信頼感を与える表情を意識することもとても大切です。
“安心感と信頼感を与える表情”の基本は、自然と口角が上がっている明るい笑顔といえますが、表情に関しても、挨拶同様、患者の容態などに合わせて臨機応変に調整していくことが必要です。
また、患者の年齢層や診療科によっても、理想とされる表情が異なってきます。
たとえば小児科であれば、子どもたちの診察に対する恐怖を緩和してあげられるよう、やさしい表情・明るい表情を心掛けることが大切です。また、救急外来などで、強い痛みを抱えている患者、意識が朦朧としている患者などと接する場合は、患者の目をしっかりと見て安心感を与えることが大切です。
表情に関する接遇において、クリアすべき主なポイントは次の通りです。
表情に関する接遇チェックリスト
身だしなみ
服装や髪型に乱れがなく、清潔感を保つことも、接遇の大切なポイントです。メイクはナチュラルで、患者に触れたときに不快感を与えないよう、爪も常にキレイにカットしておきます。
ただし、メイクやネイル、アクセサリーなどに関しては、美容皮膚科や美容外科の場合、保険適用の診療科とは異なり、おしゃれを追求する姿勢も歓迎される場合があります。なぜかというと、患者から「このクリニックで施術を受けたら、働いている看護師さんたちのようにキレイになるに違いない」と思ってもらえることはクリニックにとっても患者にとってもプラスとなるためです。
身だしなみに関する接遇において、クリアすべき主なポイントは次の通りです。
身だしなみに関する接遇チェックリスト
態度
患者と接しているときの姿勢や身振り手振りのほか、院内での歩き方や座り方、物の受け渡し方など、あらゆる態度が患者に見られている可能性があります。「だらしない姿勢をしている」「患者と目を合わせない」などがあれば、患者から悪い印象を持たれます。
態度に関する接遇において、クリアすべき主なポイントは次の通りです。
態度に関する接遇チェックリスト
話し方・言葉遣い
尊敬語、謙譲語、丁寧語の使い分けができることは基本中の基本です。また、患者に声をかける際、「差し支えなければ」「恐れ入りますが」などのクッション言葉を活用することも大切です。たとえば、次回診察日を相手の希望通りに設定できない場合など、「誠に申し訳ないのですが、この日は午後の診療はお休みさせていただいております」などとクッション言葉を使って断りを入れると丁寧です。
話し方・言葉遣いに関する接遇において、クリアすべき主なポイントは次の通りです。
話し方・言葉遣いに関する接遇チェックリスト
【5つの実践ポイント】クリニックの接遇力を底上げするスタッフ教育とは?
クリニックの接遇力を上げるために、スタッフ教育に力を入れることはとても大切です。しかし、単に「接遇の5原則を意識しましょう」と伝えるだけだと、清潔感を保つことや挨拶することはできても、接遇の質が大きくアップデートされる可能性は低いといえます。
では、どのようなスタッフ教育をおこなえば、高い効果が期待できるかというと、まずは次の5つを実践することが大切です。
それぞれ詳しく解説していきます。
クリニックの経営理念を共有する
最初に実践すべきは、クリニックの経営理念の共有です。自院がどんなビジョンを掲げ、どんな医療を提供しているのかをスタッフが理解していなければ、共通の目標に向かって歩むことができません。つまり、「何のために患者と信頼関係を構築する必要があるのか?」と、接遇の根本を理解できていないままの状態ということになります。
そうした状態を防ぐためにも、そもそも採用段階で理念に共感してくれる人材を採用することが大切ですし、接遇に磨きをかけようというタイミングでは、改めて理念を共有するといいでしょう。
スタッフ一人ひとりの役割を認識してもらう
クリニックの経営理念を達成するためには、一人ひとりが自分の役割をきちんと認識して仕事することが不可欠です。たとえば、看護師という同じ職種であっても、経験年数やクリニックでのポジションによって、果たすべき役割が異なってきます。
スタッフ一人ひとりが自分の役割をしっかり認識できていれば、患者からの要望があった際、どこまでの範囲で自分が対応して、どのように他のスタッフに共有すればいいのかなども判断しやすくなるため、クリニック全体の待遇力の向上につながります。
スタッフ同士のチームワークの重要性を伝える
スタッフ一人ひとりが自分の役割を遂行するためには、お互いがお互いの役割を理解して、サポートし合いながら業務を進めていくことが必要です。つまり、チームワークが大変重要だということです。スタッフにチームワークの重要性を理解してもらい、チームとしての一体感を高めていくためには、定期的な意見交換会などが役立ちます。
接遇の「型」を作る(マニュアル・トークスクリプトの作成)
接遇における「即効性」を高めるためには、スタッフが迷わず対応できる「型」が必要です。「こういう場面ではこう言う」というトークスクリプトや、具体的な行動マニュアルを作成し共有しましょう。 「考えさせる」教育の前に、まずは「正しい型を真似させる」ことが、接遇レベルを底上げし、バラつきをなくす最短ルートです。
接遇マナーを学べるトレーニングやロールプレイングを導入する
外部から専門家を招いて接遇マナーを学ぶトレーニングを受けてもらったり、スタッフ同士でロールプレイングを試したりすれば、実践的な力が身につきます。
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接遇改善に「即効性」を求める場合にすべきこと:ツール(カンペ・台本)の設置
接遇改善に「即効性」を求める場合、スタッフの意識が変わるのを待つのではなく、物理的に「正解の対応」ができる環境を用意することが最善です。
外部講師を招くセミナーは意識改革には有効ですが、準備に時間がかかり即効性は高くありません。明日から劇的に変えるためには、以下のツールを導入します。
「考えさせる」前に「視界に入れて読ませる」ことが、新人・ベテラン問わず接遇レベルを即座に均一化させる唯一の方法です。
接遇力を定着させるためにすべきこと:定期的なフィードバックの場と評価制度の導入
接遇を「定着」させるために最も重要なのは、行動に対する直後のフィードバックです。 半年に一度の評価だけでなく、日々の朝礼や終礼で「今の対応は素晴らしかった」「あそこはこう改善しよう」とこまめに声を掛け合う文化を作ることが重要です。良い接遇をその場で褒め、修正点をその場で伝える「フィードバックの日常化」こそが、接遇を文化として定着させます。その上で、長期的な評価制度や賞与へ反映させると良いでしょう。
接遇に関するスタッフ教育をおこなうにあたっての注意点
接遇に関するスタッフ教育をおこなうにあたっては、次の点に注意することが大切です。
それぞれ詳しく解説していきます。
スタッフ一人ひとりに合わせた教育をおこなう
接遇マナーに関する理解度は、スタッフによって異なります。そのため、マニュアルを用意するなどの一律の教育だと、全員が同レベルの接遇マナーを身につけることはできません。
一人ひとりの理解度を測るためにも、ロールプレイングなどを活用して、実践の場でどの程度知識を活かすことができる状態なのかを把握することが大切です。
日ごろから、クリニックとスタッフとの間の信頼関係構築を大切にする
適切な接遇マナーを身につけてもらうために厳しいトレーニングをおこなった結果、スタッフがクリニックに対して嫌悪感を抱くことはあり得ます。場合によっては、「なぜ労働時間外にセミナーを受けさせられなければならないのか」などの不満の声が上がることもあるでしょう。
そうした事態をできる限り回避するためにも、日ごろからスタッフと信頼関係を構築しておくことが大切です。
患者と対等な関係を築くことの大切さを伝える
本来、患者と医療従事者は対等な関係であるべきです。しかし、患者は「医師や患者の言うことを守るべきである」という考えのもと、治療や処置に対して不安があっても、それを伝えづらいと感じる場合があります。また、その結果として、治療の効果が得られなかった場合、クリニックに対して不信感を覚えることもあります。こうした負のループを防ぐためにも、医療従事者がはなから「患者と自分たちは対等な関係である」という意識を強く持ち、お互いに意見を言いやすい関係を築いていくことはとても大切です。
言い換えると、医療従事者の接遇に求められる大切な要素の一つが、患者とのコミュニケーションを通して、信頼関係を強化していくことにあるといえます。
過度な接遇は逆効果になることを理解してもらう
接遇においては、相手の立場に立って物事を考え、思いやりの心を持って接することが大切ではありますが、必要以上に相手に尽くすことは、相手にとっても自分たちにとっても負担になります。患者側からすると、「もしかして自分は面倒な患者だと思われているのだろうか?」「ここまで気を遣われると逆に通いにくい」と感じることがあると考えられますし、過度な接遇を提供する医療従事者側にも、「一人ひとりの話を親身になってきいていたら、必要な業務にまで手が回らない」などの悩みが生じ得ます。
リーダー(院長・医師)自らが接遇の手本を見せる
接遇教育において最も説得力があるのは、リーダーの背中です。どれほど素晴らしい講師を呼んでも、院長自身が患者やスタッフに対して挨拶をしなかったり、横柄な態度をとっていたりすれば、スタッフに接遇は定着しません。 「スタッフは院長の鏡」です。まずは経営者やリーダー層が、率先して理想的な接遇を体現することが、教育の第一歩であることを忘れないでください。
クリニックの接遇力は永続的な資産になる
クリニックの接遇力の「即効性」と「定着」の両立を目標にさまざまな施策を講じると、患者満足度、スタッフの働きやすさ、患者リピート率などさまざまな要素にいい影響が現れ始めます。言い換えると、クリニックにとって接遇力は、経営の安定にも関わる重要な資産となり得るので、強化に力を入れるに越したことはありませんよ。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
