PHRとは、「Personal Health Record」の略語で、“個人の健康や身体に関するデータ”を意味します。具体的には、医療機関の通院歴、検診の受診歴、薬局での調剤情報、患者自らが測定したバイタル、介護記録などの包括的なデータのことで、すべてのデータは「PHRサービス」によって保存・管理・活用されています。具体的な活用シーンや活用方法などを詳しく解説していきます。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
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PHRとは

PHR(Personal Health Record)は、個人の健康や身体に関して集約されたデータのことで、データは、「個人が日常的に収集するデータ」と「医療機関から得られるデータ」の2種類にわけられます。
それぞれのデータの例は次の通りです。
【個人が日常的に収集するデータの例】
- 体重、体脂肪、血圧、心拍数、血糖値などの日々の健康状態
- 歩数、運動量、消費カロリーなどの運動記録
- 食事内容、摂取カロリー、栄養素などの食事記録
- 睡眠の質や時間の記録
- サプリメントや市販薬の利用状況
- アレルギーや既往症などの健康履歴
など
【医療機関から得られるデータの例】
- 診断情報(診断結果、病名など)
- 治療記録(処方された薬、手術歴、治療内容など)
- 検査結果(血液検査、レントゲン、MRIなど)
- 健康や診断特定健診の結果
- 予防接種歴やワクチン接種記録
など
なお、PHRの読み方は「ピー・エイチ・アール」または「パーソナルヘルスレコード」です。
参照:経済産業省「PHR(Personal Health Record)とは」
PHRの国内での歴史
「PHR」という概念は海外で誕生したものです。日本でPHRの活用について検討され始めたのは、2020年前後になってからです。
大まかな流れとしては、2020年頃から、PHRサービスの利活用促進に向けたガイドライン整備が始まり、その後、ガイドラインの水準向上、第三者認証の立ち上げを経て、2023度には、第三者認証などの運用開始に向けて動き出しています。
なお、マイナポータルの利活用についても、同じく2020年前後から整備が進められています。
2つのサービスの利活用の進捗については、厚生労働省のホームページでも公表されています。

【2017~2021年度】
- 特定健診・予防接種履歴などがマイナポータルで閲覧可能に
- 民間PHR事業者とマイナポータルとのAPI連携もスタート
【2022年度】
- 自治体や教育期間で実施された健診情報がマイナポータルで閲覧可能に
- 健診結果データの標準フォーマット策定。これによって、自治体間、あるいはPHR事業者との連携がスムーズに
【2023年度】
- 電子カルテに記載された情報や検査結果の一部もPHRとして提供可能に
- 民間PHR事業者に対する「第三者認証制度」開始
【2024年度~】
- 全国の多くの教育機関とマイナポータルの連携が完了
- PHR対応電子カルテやレセコンの運用を開始するクリニックも登場
つまり、「PHRについて正しく理解して、PHRに連携した製品を導入すること」がクリニックにとって重要になりつつあるということです。
参照:厚生労働省「PHRの全体像」より「データヘルス改革に関する工程表」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
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PHR・EHR・EMRの違い
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PHRと電子カルテ(EMR)・EHRの違い
前述の通り、今後はクリニックにも、PHRの活用について考えることが求められるようになってくる見通しです。しかし、PHRという言葉はまだ一般に浸透していないため、医療機関で活用する他のデータやシステムとの使い分けがわかりにくいかもしれません。
そこで一度、「PHR」と「電子カルテ(EMR)」、そして「EHR」の言葉の意味と違いについて整理してみましょう。
| 用語 | 正式名称 | 管理主体 | 主な目的 | データの持ち運び |
| PHR | Personal Health Record (個人健康記録) |
個人 | 本人の健康増進・疾病予防・生活管理 | 自由(スマホやタブレットなどからどこでも見られる) |
| EMR | Electronic Medical Record (電子カルテ) |
医療機関 | 院内での診療記録・会計記録 | 原則不可(ただしマイナポータルなどを通じた開示や他院との連携が進みつつある |
| EHR | Electronic Health Record (電子健康記録) |
地域連携組織 (医療機関同士) |
転院や救急時の医療情報共有 | 提携医療機関間のみ |
PHR・EHR・EMRは「誰が」「何のために」管理するのかという点に大きな違いがあります。
PHRの管理主体は「個人」であって、医療機関にとっては患者となり得る一人ひとりが、自分自身の健康増進や疾病予防に役立てるために活用します。
これに対して、EMRは原則として、医療機関が診療の記録・管理に活用するものですが、近年は、マイナポータルなどを通じた患者本人への開示や、他の医療機関や薬局との連携が進みつつあります。また、EHRは、地域の医療機関同士で情報を共有するためのシステムで、管理主体は医療連携組織などです。
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PHRサービスとマイナポータルの違い
冒頭の図解の通り、PHRサービスとマイナポータルは連携が進められています。そのため、「PHRサービスを活用しなくても、マイナポータルを使えば自分の健康管理ができるのでは?」もしくは逆に、「マイナポータルを活用しなくてもPHRサービスがあれば十分なのでは?」と思う人がいるかもしれません。
これについて結論からいうと、マイナポータルで閲覧可能な情報は、必ずしもPHRサービスで閲覧できるわけではありません。
なぜかというと、マイナポータルは政府基盤である一方、PHRサービスは「利用者本人の同意に基づいて連携する民間サービス」だからです。また、マイナポータルは、API連携によって外部サービスがデータを取得できるように設計されていますが、PHRサービスの事業者側がAPIに対応していないケースもあります。
提供していますが、
PHRサービスがAPI接続できているかにもよります。マイナポータルに情報が存在していても、PHR事業者がAPI未対応だと、マイナポータルの情報を閲覧することができません。
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代表的なPHRサービス提供事業者
PHRとEMR、EHRの違い、PHRサービスとマイナポータルの違いを確認しても、PHRについて具体的にイメージできない場合があるかもしれません。
しかし、具体的にどのようなサービスがPHRサービスに該当するのかを確認すれば、多くの人は理解が深まるはずです。
そこで、多くのPHRサービス事業者のなかから、特に医療機関と関係の深いPHRサービス事業者をピックアップして、どのようなサービスを提供しているのか簡単に説明していきます。
患者向け・疾患管理系
welby(ウェルビー)マイカルテ
糖尿病や高血圧症などの生活習慣病燗やその予防をおこなう人などの、血圧・血糖値・運動・食事など、健康に関わる自己管理をサポートするアプリです。医師や看護師をはじめとする医療従事者などに対して、ユーザーがデータを開示することで、医療従事者がデータをモニタリングして療養指導やアドバイスを提供するために活用されます。
つまり、生活習慣病患者あるいはその予備軍の患者が多いクリニックの場合、クリニック側でも活用方法などを把握しておくことが望ましいということになります。
MedBridge(メドブリッジ)
外科手術を受ける患者向け周術期ケアアプリ、PHR共有ツールです。オンライン診療やデジタルヘルスの領域で知られる「株式会社MICIN」が提供しています。
このアプリは、心臓血管外科手術の低侵襲化が進んでいることから、「術後早期に退院となり、不安を抱えながら日常生活を過ごす患者のために、在宅自の健康状態などを主治医が共有できるようにしよう」という目的で開発されています。
アプリ開発に先立ち、2020年6月から、『東京ベイ・浦安市川医療センター』『オムロン ヘルスケア株式会社』とともに実証研究がスタートされており、オムロンの機器と連携すると健康データを取り込めるという仕様になっています。記録したデータはPDFで印刷して、外来受診時に活用することができます。
低侵襲手術で早期退院を目指しているクリニックにとっては、PHRサービスの使い方のよい例となっているのではないでしょうか。
参照:MICIN「外科手術を受ける患者の周術期をケアするアプリ「MedBridge(メドブリッジ)」を開発 ~心臓外科領域で「MedBridge heart care」を7月より限定提供開始~」
保険・健康経営系
Pep Up(ペップアップ)
260以上の保険者が導入して、739万以上のユーザーに活用されているPHRサービスです。医療分野のビッグデータを扱うJMDCが保険者向けに提供しているPHRサービスで、オムロンヘルスケアが提供しているスマートフォン健康アプリとデータ連携することができます。
Pep Upは、保険加入者に自分の健康を「自分ごと化」してもらうことを目的としたサービスで、医療職に対してのPHR共有体制強化などにも力を入れています。
参照:JMDC STORIES「保険者にもっとも選ばれているPHRサービス 健康ポータルサイトPep Up(ペップアップ)
≪PHRサービス業界全体の特徴≫
上記に紹介した3つ以外にも、PHRサービスには多種多様な業種が参入しています。特に多いのは、医療系、保険系、健康アプリ系、自治体系、電機メーカー系、IT企業系ですが、PHRが世の中に浸透するにつれ、さらに多くの業種が参入してくることが予想されます。
また、2023年には、国民の健康長寿や延命、豊かな生活への貢献を目的に、PHRサービス事業に係るルール策定や政策提言などを担う「PHRサービス事業協会」が設立されて、PHRサービスの標準化やルール整備も進められています。
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PHRサービスの普及・利活用による医療機関へのメリット
PHRサービスが普及すること、幅広く利活用されるようになることは、利用者本人だけでなく、医療機関にもさまざまなメリットや影響を及ぼします。
具体的にどんな影響が及ぶのかを確認していきましょう。
診療情報の把握がしやすくなる
PHRサービスを活用すれば、健診結果、服薬情報、血圧・血糖などの日常データ、予防接種歴、既往歴などを患者本人の同意のもと確認しやすくなります。
これによって、初診時の情報収集、他院受診歴の把握、慢性疾患管理などがスムーズになる可能性があります。
重複検査・重複投薬の減少
PHRサービスやマイナポータル連携によって、以前の検査結果、処方履歴を確認しやすくなるため、不要な再検査、重複投薬、相互作用リスクの低減が期待されています。
これは厚労省資料でも“PHR利活用の効果”として示されています。
継続的な患者管理がしやすくなる
PHRサービスでは、診察時以外の日常データも管理できます。
日常データとはたとえば、家庭で測定した血圧、体重、睡眠時間、消費エネルギーや歩数などの活動量、血糖値などです。
これによって医療機関は、「診察室のなかだけ」でなく、「日常生活を含めた健康状態」を把握しやすくなります。
特に、糖尿病、高血圧、心不全、CDPDなどの慢性疾患管理との相性はよいとされています。
オンライン診療との親和性が高い
PHRサービスはオンライン診療とも相性がよいです。
患者側のデータを共有できることから、遠隔モニタリング、在宅患者管理、生活習慣指導がしやすくなります。
そのため、在宅医療・地域包括ケアとの連携が期待されています。
患者参加型医療が進む
PHRサービスにおいては、患者自身がデータを閲覧・管理するため、治療理解、セルフマネジメント、服薬継続、行動変容につながる可能性があります。
医療機関側も、「患者と一緒に健康管理する」スタイルへ変化していくと考えられています。
医療DX対応が進む
PHRサービスの普及は、電子カルテ共有、マイナポータル連携、医療情報標準化などの医療DX全体とも関係しています。
そのため医療機関では、データ標準化対応、システム連携、API対応などが求められる場面が増えています。
医療DX関連の加算や診療報酬への好影響
クリニック経営の観点では、PHRの導入や医療DXの推進が診療報酬の算定に直結しつつある点も大きなメリットです。昨今の診療報酬改定では「医療DX推進体制整備加算」が設けられるなど、国を挙げてデジタル化を評価する枠組みが強化されています。また、生活習慣病管理料の算定などにおいて、患者のPHRデータを活用した精度の高い療養指導をおこなうことで、より質の高い疾患管理が可能となり、結果としてクリニックの収益安定化や他院との差別化につながります。
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医療機関がPHRデータを利活用するにあたっての課題・注意点
PHRデータの普及は、医療機関にもメリットをもたらす一方、医療機関が利活用するにあたっての課題や注意点も存在します。
特に、次の点については対策を考える必要があります。
本人同意の管理
PHRデータを利活用するは、利用者本人の同意を得ることが不可欠です。
そのため医療機関では、「どの情報を」「どんな目的で」「どこまで利用するか」について本人に伝えて、適切に同意を取得・管理する必要があります。
特に、外部PHRサービスとの連携、民間アプリとのデータ共有、第三者への提供に関しては注意が必要です。
データの信頼性
PHRデータのなかには、患者が自分で入力したものもあれば、ウェアラブル端末や家庭の測定機器で測定したものもあります。そのため、測定条件、入力ミス、改ざん、機器精度などについても考える必要があります。
参照程度であっても診療に活用するなら、「どこまで信頼するか」を整理しておくことが不可欠であるといえます。指標を決めることなく、そのときどきで判断していては、診療にブレが生じる可能性が高くなります。
データ量増加への対応
PHRサービスには、血圧、血糖値、歩数、睡眠時間、体重など、日常データが大量に蓄積されます。そのため、「誰が確認するか」「いつ確認するか」「異常値対応をどうするか」といった運用設計を予め決めておかなければ、現場の負担が増える可能性があります。
「見逃し責任」の整理
自院のシステムとPHRサービスを連携させると、「データが存在していたのに見逃した」というケースが問題になる可能性があります。
たとえば、高血圧悪化、不整脈通知、血糖異常などがあったケースです。
そのため、「常時監視ではないこと」「緊急時対応範囲」「モニタリング体制」などを明確にして、患者と共有しておくことが大切です。
電子カルテとの連携・標準化
PHRサービスは、電子カルテ、マイナポータル、外部アプリなどの複数のシステムと連携させることを目指しています。しかし現状では、データ形式、コード体系、API仕様が完全に統一されているわけではありません。
そのため、システム改修、インターフェース整備、標準規格対応などが必要になる場合があります。
セキュリティ・個人情報保護
PHRサービスで扱うデータには、秘匿性の高い個人情報が含まれます。そのため、不正アクセス、情報漏洩、ランサムウェア、外部サービス経由の漏洩などへの対策が重要です。
特に民間PHRサービスとの連携においては、アクセス権限、ログ管理、通信暗号化、委託先管理などを確認する必要があります。
患者との認識差
患者側は、「PHRアプリに入力したら医療機関が常時見てくれている」と誤解する場合があります。しかし実際には、「次回来院時に確認」「特定患者のみ監視」「一部データのみ参照」など運用を限定していることも多いです。
そのため、「医療機関が確認する範囲」「リアルタイム監視の有無」「緊急対応不可」などについて、患者に説明しておくことが大切です。
高齢患者へのサポートとデジタルディバイド対策
PHRサービスを実際に運用する際、現場の最も大きな壁となるのが「高齢患者への操作説明」です。慢性疾患を抱える患者層はスマートフォンやアプリの操作に不慣れなケースが多く、窓口でのアプリダウンロード支援や入力方法の説明にスタッフの時間が奪われるリスクがあります。そのため、あらかじめ視覚的にわかりやすい紙のマニュアルを用意する、家族のサポートを促す、あるいは「まずはITリテラシーの高い一部の患者からスモールスタートする」といった現実的な運用ルールを定めておくことが不可欠です。
サービス境界
PHRサービスには、健康アドバイスやAI評価などが設計されている場合があります。そのため、連携している医療機関がそのPHRサービスとどのようなかかわりがあるのかを明確にしておきたいところです。
利用者・患者側が、PHRサービス事業者が提供している健康アドバイスやAI評価を、医療機関主導のものだと誤認する可能性も低くないと考えられます。
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PHRデータの利活用が広がる未来に備えて、クリニックが今からとるべき対策は?
PHRデータの利活用が将来的にさらに広がっていくことは間違いありません。
「全国医療情報プラットフォーム」の整備に伴い、レセプト、電子カルテ、健診・検診情報などに関しても、クリニック間・地域間で連携可能な前提で制度設計が進んでいますし、既に、一部の電子カルテや予約システム関しては、PHRサービスとの連携が始まっています。
そのため、医療機関側は、“単にITを導入するだけ”ではなく、「データを扱える診療体制」「患者との情報共有体制」「医療DX対応力」についても整備していくことが重要になってきます。
特に今後は、マイナポータル、電子カルテ共有サービス、オンライン診療、在宅モニタリングとの接続に関しても進んでいくと考えられるため、「後から対応する」より、檀家的に準備して負担を減らしておくことが大切です。
今のうちにとりたい対策について、さらに詳しく解説していきます。
電子カルテの標準化・連携対応を確認する
これは、最重要の準備の1つです。
今後PHR連携においては、「API連携」「標準規格対応」「医療情報共有」が前提になっていく可能性が高いです。
そのため、電子カルテ選定・更新時には、次の点について確認しておくことが重要です。
- 外部連携API
- マイナポータル対応
- オンライン資格確認連携
- HL7 FHIR対応動向
なお、将来的には、「PHRとつながりにくい電子カルテ」が不利になる可能性もあります。今のところまだ乗り換えについては検討していない場合も、将来的な対応の方向性についてベンダーに確認しておくことをおすすめします。
患者向けデジタル導線を整える
PHRデータの利活用が当たり前の時代においては、「患者が自分のデータを見る」ことが前提になります。
そのため、今のうちから、Web予約、LINE連携、Web問診、オンライン診療、電子決済、患者ポータルなどの運用に慣れておくと、PHR連携に移行しやすいです。
つまり、「患者とのデジタル接点」を増やしておくことが重要です。
患者のPHRサービスの導入・利用継続をサポートする体制を整える
医療機関自体がPHRサービスを利活用する体制を整えると同時に、患者がPHRサービスの活用を通して自身の健康を管理できるよう、サポートする体制を整えることも大切です。
このことは、経済産業省がPHRサービスについてまとめた資料にも明確に記されています。
参照:経済産業省「令和5年度補正PHR社会実装加速化事業(PHRの更なる普及促進に向けたロードマップ作成・調査事業)報告書」
データ共有前提の診療スタイルへ慣れる
PHRサービスが浸透すると、患者が、健診結果、血圧、血糖、活動量などのデータを持参・共有するようになります。
そのため、今のうちから、「患者が家庭で測定した血圧を活用する」「アプリ記録を確認する」「ウェアラブルデータを参考にする」など、「患者データを診療に取り込む経験」を積んでおくと適応しやすいです。
ただし、前述した通り、「どこまでを信頼するのか」などの基準は決めておくことを推奨します。
同意管理・個人情報管理を強化する
PHRデータの利活用においては、本人同意が非常に重要です。
そのため、同意取得フロー、個人情報管理規程、外部サービス利用ルール、アクセス権限管理などを整理しておく必要があります。
特に小規模クリニックでは、「なんとなく運用」になりやすいため注意が必要です。
サイバーセキュリティ対策
PHRサービスの利活用が一般的になると、外部接続、クラウド連携、API連携が今以上に増えます。つまり、攻撃対象領域も広がるということです。
そのため、最低限でも、次の対策をとっておくことは必要です。
- バックアップ
- 多要素認証
- VPN
- ウイルス対策
- OS更新
- 権限分離
なお、現在、医療機関向けランサムウェア対策はかなり重視されています。
慢性疾患管理を強みにする
PHRデータの利活用と特に相性がよいのは、糖尿病、高血圧、脂質異常症、睡眠障害、肥満、心不全などです。
つまり、「継続モニタリング型診療」が強いクリニックほど、PHR時代に適応しやすい可能性があります。
オンライン診療・遠隔モニタリング経験を積む
PHRデータの利活用は、オンライン診療、在宅医療、遠隔フォローと非常に相性がよいです。
そのため、オンライン診療導入、在宅患者のデータ管理、遠隔問診などを経験しておくと、PHR活用時代への移行がスムーズになります。
スタッフ教育を始める
PHRデータの利活用が浸透すると、看護師、医療事務、クリニック管理者もデータ活用に関与します。
そのため、ITリテラシー、個人情報保護セキュリティ、データ共有ルールなどに関してスタッフに教育しておくことが重要です。
もちろん、PHRの仕組みそのものについても、スタッフ全員で勉強会を開くなどして、理解を深めておくことが大切です。
「患者に選ばれる理由」が変わる可能性を意識する
クリニックを選ぶにあたって、将来的には患者が、「データ連携できるか」「オンライン対応できるか」「健康管理しやすいか」を重視する可能性があります。
つまり、「診療技術だけ」ではなく、「データ活用体験」も競争力になる可能性があるということです。
■電子カルテとPHRサービス連携を進めるステップ
電子カルテとPHRサービスの連携を進めるステップは次の通りです。
- STEP1:電子カルテの現状確認
- STEP2:院内データを標準化する
- STEP3:患者向けデジタル導線を整える
- STEP4:PHR連携対象を決める
- STEP5:PHRサービス・アプリを選定する
- STEP6:同意取得フローを整備する
- STEP7:小規模運用から始める
- STEP8:遠隔モニタリング・オンライン診療へ拡張
それぞれのステップについて詳しく解説していきます。
電子カルテの現状確認
まず確認すべきなのは、「今の電子カルテがPHR連携に対応できるか」です。
主な確認ポイントは次の通りです。
- API連携可否
- クラウド型か
- マイナポータル関連対応
- オンライン資格確認対応
- ベンダーの医療DX方針
- HL7 FHIR対応予定
古いオンプレ型カルテでは、将来的なPHR連携が難しい場合があります。
院内データを標準化する
PHRサービスの連携においては、「データを外部と共有できる形式」にする必要があります。
そのため、次のような準備が必要になります。
- 病名コード統一
- 検査項目標準化
- 処方データ整理
- 患者属性整備
患者向けデジタル導線を整える
PHRデータの利活用においては、「患者がデータをやりとりできること」が重要です。
そのため、Web予約、Web問診、LINE連携、患者ポータル、電子決済などを導入して、患者にデジタル接点に慣れてもらうことも大切です。
PHR連携対象を決める
いきなり全データを扱うのではなく、まずは対象を限定することが多いです。
導入しやすいのは、血圧、血糖値、体重、歩数、睡眠データ、健診結果などです。
これらのデータは特に、糖尿病や高血圧、肥満などとの相性がいいです。
PHRサービス・アプリを選定する
連携方法はいくつかあります。
たとえば、マイナポータルを連携の基盤とする方法、welbyをはじめとする民間PHRアプリで連携する方法があります。また、電子カルテベンダー提供PHRも、今後さらに増えていくと考えられます。
PHRサービス・アプリ選定時には、API連携可否、セキュリティ、同意管理、運用負荷などについて確認します。
同意取得フローを整備する
PHRデータの利活用は利用者本人の同意が前提です。
同意をとるにあたっては、利用目的、共有範囲、保存期間、第三者提供などを明確化します。
必要に応じて、同意書、利用規約、院内ポリシーも整備します。
院内運用ルールを決める
この工程はかなり重要です。
たとえば、「誰がPHRを見るか」「毎日確認するか」「アラート対応するか」「緊急時対応するか」などを決めておかないと、現場負担が急増します。
特に、「患者が送ったデータを常時監視しているわけではない」ことは明確化することが大切です。
小規模運用から始める
最初から全患者を対象にして始めると失敗しやすいです。
まずは、医師1名、慢性疾患患者限定、特定アプリ限定などで試験導入するケースが多いです。
遠隔モニタリング・オンライン診療へ拡張
PHR連携が安定すると、在宅医療、オンライン診療、生活習慣病管理、遠隔フォローとの統合が進めやすくなります。
ここまでくると、PHRの利用価値が大きくなります。
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PHRサービスへの連携が進んでいる電子カルテは?
2026年5月時点において、PHRサービスと連携している電子カルテは多くはありませんが存在します。
なかでも、クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、PHR・外部連携にかなり積極的です。外部システムへの連携実績も多数あり、PHRシステムへの連携実績についてもホームページに掲載しています。
また、2026年3月には、診療所向けクラウド型電子カルテ「モバカルクリニック」が、患者の在宅時データを外来診療に活用するための「PHRオプションサービス」を新たに提供開始したことを発表しています。
参照:NTTプレシジョンメディシン モバカルクリニック「PHRオプションサービス」と患者さま向けアプリ「カラまる」を提供開始
そのほか、大手病院向け電子カルテベンダーも、電子カルテ共有サービス対応、FHIR対応、医療DXなどを積極的に進めているため、今後さらにPHRサービスと電子カルテの親和性は高くなってくると考えられます。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
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PHRサービスの基盤整備は、今後、急速に進むことが予想される
PHRサービスは、2026年5月時点における普及サービスはそこまで高くはありません。あるいは、PHRサービス・アプリを使っていて、アプリの名称は把握していても、それが“PHRサービスの一種”であると認識していないユーザーも多いと考えられます。しかし、昨今、マイナ保険証や電子処方箋、電子カルテ共有サービスなどが国策として進められており、PHRサービスはそのなかで「患者本人が医療情報を活用する基盤」として位置づけられていることを考えると、“医療DX全体の流れのなかの一部”としてスピーディに普及する可能性が高いと考えられます。また、高齢化社会が進み、在宅医療のニーズが高まっていることによって、「病院完結型」より、「日常データを活用する医療」の重要性が増していることも、PHRサービス普及の大きな要因となることは間違いないでしょう。こうした変化に対応するためにも、クリニック側でも、今の内からPHRサービス導入の準備を進めておくことはとても大切です。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
