「専攻医」という呼び方は、2018年の新専門医制度のスタートとともに定着しました。それ以前から医師として働いていた世代にとっては「後期研修医」のほうが馴染み深く、いまも両方の呼称が現場で混在しています。
一方で、この10年弱のあいだに制度は静かに、しかし確実に変わってきました。特に地域偏在の是正を目的としたシーリング(採用数の上限)は運用が毎年見直されており、2026年度は仕組みそのものに変更が入っています。
本記事では、専攻医の定義と後期研修医との違いを整理したうえで、研修の全体像・診療科ごとの動向・シーリング制度の現在地までをまとめます。クリニックを運営する立場から見た「専攻医を非常勤で受け入れるときの留意点」にも触れます。
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専攻医とは何か
専門医を目指して専門研修を受けている医師
専攻医とは、日本専門医機構が認定する専門研修プログラムに登録し、専門医の取得に向けた研修を実践している医師を指します。
医師のキャリアは、おおまかに次の順序をたどります。
- 医学部(6年)を卒業し、医師国家試験に合格
- 初期臨床研修(2年)——ここでの身分が「研修医」
- 専門研修(3年〜)——ここでの身分が「専攻医」
- 専門医試験に合格し、専門医として認定される
つまり専攻医とは、医師免許を持ち、初期研修も修了した「一人前の医師としてのスタート地点に立った段階」の医師です。当直も外来も担当しますが、専門医の資格取得に向けて指導医のもとで症例を積んでいる最中、という位置づけになります。
「後期研修医」との違いは呼び名だけ
結論から言えば、後期研修医と専攻医が指す医師の段階は同じです。
2018年に新専門医制度が始まった際、日本専門医機構は「研修医」という言葉を初期臨床研修中の医師のみに限定しました。これに伴い「後期研修医」という呼称は制度上使われなくなり、代わりに「専攻医」が正式名称として置かれた、という経緯です。
ただし現場の会話や求人票では、いまも「後期研修医」が使われる場面があります。同じ段階を指す言葉であると理解しておけば、混乱することはありません。
呼称が変わった背景と旧制度との関係は、後期研修医とは?でも解説しています。
専攻医が受ける専門研修の中身
19の基本領域から1つを選ぶ
新専門医制度では、まず19の基本領域のいずれかを選び、その領域の専門研修プログラムに登録します。
内科、外科、小児科、産婦人科、精神科、整形外科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、病理、臨床検査、救急科、形成外科、リハビリテーション科、そして総合診療科の19領域です。
このうち総合診療科は新専門医制度で新設された領域で、特定の臓器に限定せず地域医療を広く担う医師を養成することを目的としています。開業を視野に入れる医師からの関心が高い領域でもあります。
基本領域の専門医を取得したあと、さらに細分化されたサブスペシャルティ領域(消化器内科、循環器内科、消化器外科、心臓血管外科など)に進む流れが一般的です。
研修期間は3年が基本、領域により異なる
専門研修の期間は最短3年が基本です。ただし領域によって設計が異なり、内科は3年、外科は4年(プログラムによる)といった違いがあります。研修修了後に専門医試験を受け、合格して初めて専門医の認定を受けられます。
研修は単一の病院で完結せず、基幹施設と連携施設を複数年かけてローテーションするのが標準的な形です。症例の偏りを避け、多様な医療機関で経験を積むためです。
シーリング制度——専攻医の採用数に上限がある理由
都市部集中を抑えるための仕組み
専攻医制度を語るうえで避けて通れないのがシーリングです。
シーリングとは、地域や診療科における医師の偏在を是正する目的で、都道府県・診療科ごとに専攻医の採用数上限を設ける仕組みです。放っておくと専攻医が東京・大阪などの都市部に集中し、地方の医師不足がさらに深刻化するため、厚生労働省の医道審議会・医師専門研修部会が年度ごとに上限値を設定しています。
制限の対象はあくまで「専攻医の採用数」であり、医師の移動そのものを禁じるものではありません。しかし志望する都府県で希望領域の枠が埋まっていれば、研修先の選択は実質的に制約を受けます。
2026年度の変更点
2026年度の運用では、大きく2つの見直しが入りました。
1. 指導医の派遣実績を加算に反映
医師少数区域へ指導医を派遣している都道府県には、その実績に応じてシーリングの枠を上乗せする仕組みが強化されます。2025年7月24日の医師専門研修部会では、東京都の内科領域について、制度上の加算数が50名であるのに対し実際の派遣実績は649名分に相当するという試算が示され、この乖離を踏まえたさらなる加算(全体で2〜3%の上乗せ)が検討されました。
「都市部を一律に絞る」段階から、「地方への貢献度に応じて枠を戻す」段階へと、制度の設計思想が動いていることがわかります。
2. 特別地域連携プログラムがシーリングの内側へ
従来、医師少数区域での研修を含む特別地域連携プログラムはシーリングの枠外に設置できました。2026年度からはこれがシーリングの枠内に置かれます。枠の使い方が変わるため、プログラム側の設計にも影響します。
診療科ごとの志望動向は毎年動く
2026年度に専門研修を開始する専攻医の採用数は、19領域の合計で9,998人(前年度比236人増、+2.4%)となりました。
領域別に見ると動きは一様ではありません。外科は採用者数が初めて1,000人を超え、救急科は増加率が全科トップ(+17.4%)、脳神経外科(+13.5%)も大きく伸びました。一方で皮膚科(−15.9%)、病理(−16.5%)、放射線科(−11%)は10%以上の減少です。
外科・救急科の増加は、診療報酬改定で負担の大きい診療科(消化器外科、心臓血管外科、小児外科など)への評価が上乗せされたことが背景にあると分析されています。制度と報酬の設計が志望動向を動かすという点は、医師のキャリア環境を考えるうえで押さえておきたい事実です。
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クリニック側から見た専攻医
非常勤(アルバイト)で受け入れるケース
専攻医は研修プログラムに専念する立場ですが、プログラムの規定の範囲内で、外勤としてクリニックの外来や健診を担当することがあります。院長にとっては、非常勤医師の候補として現実的な選択肢のひとつです。
受け入れ側として確認しておきたい点は3つあります。
- プログラム上の可否——研修プログラムによって外勤の扱いは異なります。本人任せにせず、可否を確認しておくこと
- 診療範囲の設定——専攻医は特定領域の研修中であり、経験の幅は領域に依存します。任せる診療内容は事前にすり合わせが必要です
- 届出の要否——医師の採用・退職に伴う届出は非常勤・短期のアルバイトでも発生する場合があります(詳細は非常勤医師採用時に必要な届出とは?)
将来の開業予備軍でもある
専攻医の時期は、医師が「自分はどこで、どう働きたいか」を具体的に考え始めるタイミングでもあります。総合診療領域を選ぶ専攻医が増えていることは、地域に根ざした診療への関心の高まりを示すものでもあります。
クリニックにとっては、非常勤として関わった医師が数年後の常勤候補や承継候補になる可能性もあります。短期の労働力としてだけでなく、中長期の関係として捉える視点が、採用難の時代には効いてきます。
よくある質問
Q. 専攻医と後期研修医は違うものですか?
指している医師の段階は同じです。2018年の新専門医制度で呼称が「専攻医」に統一されました。求人票などで「後期研修医」と書かれていても、内容は専門研修中の医師を指していると考えて差し支えありません。
Q. 専攻医の期間は何年ですか?
最短3年が基本です。ただし領域やプログラムによって設計が異なり、4年以上を要するものもあります。修了後に専門医試験があります。
Q. 専攻医の年収はどのくらいですか?
初期研修医より上がりますが、常勤先の給与体系に左右されます。詳細は専攻医(旧後期研修医)の年収はどのくらい?で解説しています。
Q. シーリングがあると希望の場所で研修できませんか?
必ずしもそうではありません。上限は都道府県・診療科ごとに設定されるため、領域によっては都市部でも枠が残ります。ただし人気領域・人気地域は競争になるため、募集スケジュール(例年11月ごろ開始)に合わせた早めの情報収集が前提になります。
Q. 専門医を取らないという選択はありますか?
制度上、専門医の取得は義務ではありません。ただし多くの医療機関で採用条件や配置の判断材料になっており、キャリアの選択肢を広く保つ意味では取得が一般的です。
まとめ
専攻医とは、初期臨床研修を終え、19の基本領域のいずれかで専門医取得を目指して研修中の医師です。かつての「後期研修医」と同じ段階を指し、2018年の新専門医制度で呼称が改まりました。
制度面では、地域偏在対策としてのシーリングが年々精緻化しています。2026年度は指導医派遣の実績を加算に反映する方向が強まり、特別地域連携プログラムはシーリングの内側に置かれることになりました。都市部を一律に絞る段階から、地方への貢献を評価して枠を配分する段階へという流れが読み取れます。
クリニックを運営する立場からは、専攻医は非常勤医師の候補であると同時に、地域医療の担い手として育っていく世代でもあります。プログラム上の制約と診療範囲を丁寧に確認したうえで関係を築いておくことが、数年先の採用や連携につながります。
参考
- 厚生労働省 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会(令和7年度第3回・参考資料「令和8(2026)年度専攻医募集シーリング(案)」)
- 一般社団法人 日本専門医機構
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
