医師の年収は「20代のうちは低く、30代で跳ねる」と言われます。これは事実ですが、跳ねる場所が思われているより後ろにあります。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上・男女計)の年齢階級別データを使って、20代の5年間で何がどう動くのかを分解します。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
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20代の年収は592万円から757万円へ
| 年齢階級 | きまって支給する現金給与額(月) | 所定内給与額 | 年間賞与その他特別給与額 | 超過実労働時間(月) | 年収換算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 49万0,100円 | 36万8,400円 | 4万1,500円 | 38時間 | 約592万円 |
| 25〜29歳 | 61万5,200円 | 45万3,500円 | 18万9,200円 | 36時間 | 約757万円 |
| (参考)30〜34歳 | 86万7,500円 | 69万8,200円 | 45万2,700円 | 28時間 | 約1,086万円 |
| (参考)医師全体 | 116万3,200円 | 102万7,700円 | 116万4,100円 | 19時間 | 約1,512万円 |
20代の5年間で増えるのは約165万円。一方、25〜29歳から30〜34歳への5年間では約329万円上がります。伸びの本番は30代前半です。
165万円の内訳を分解する
年収の増加を要素に分けると、20代に何が起きているかが見えます。
| 要素 | 20〜24歳 | 25〜29歳 | 差 |
|---|---|---|---|
| 所定内給与額(月) | 36万8,400円 | 45万3,500円 | +8万5,100円 |
| 時間外等の手当(月) | 12万1,700円 | 16万1,700円 | +4万0,000円 |
| 年間賞与 | 4万1,500円 | 18万9,200円 | +14万7,700円 |
もっとも大きいのは所定内給与額の伸びです。年額にすると約102万円。研修が終わり、専攻医・常勤医として基本給が設定し直されることが効いています。
次が賞与。20〜24歳ではほぼゼロ(年4万1,500円)だったものが、25〜29歳で18万9,200円になります。ただし依然として月給の半分にも届きません。医師の賞与が本格化するのは30代以降です。
残業は減らない
見落としやすいのがここです。
超過実労働時間は38時間から36時間へ、ほとんど変わりません。医師全体の平均は月19時間なので、20代を通じて平均の2倍近く働いていることになります。
年齢が上がるにつれ超過時間は落ちていき、40代前半で20時間、60代前半で9時間になります。つまり20代の年収は「長時間労働で底上げされた金額」であり、時給で見た水準は年収の見た目ほど高くありません。
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この統計に入っていないもの
判断を誤らないために、範囲を確認しておきます。
① 開業医は含まれない
賃金構造基本統計調査は雇用されている労働者の統計です。開業医(事業主)の収入は含まれません。
② 外勤(アルバイト)収入が完全には反映されない
医師の20代、とくに大学病院に所属している層は、外勤で収入を補うのが一般的です。主たる勤務先の給与を集計する統計では、この部分が見えにくくなります。
③ 診療科の差が出ていない
年齢階級別の集計なので、診療科ごとの違いは表れません。
2024年4月以降、外勤で埋める設計に制約がかかった
②に関わる重要な変化があります。
2024年4月から医師の時間外労働に上限規制が適用され、A水準で年960時間、都道府県の指定を受けたB・連携B・C水準で年1,860時間となりました。
そして副業・兼業先の労働時間は通算されます。主たる勤務先と外勤先を合わせて上限を超えられません。あわせて、28時間までの連続勤務時間制限と9時間以上の勤務間インターバルが追加的健康確保措置として求められています。
「基本給が低いから外勤を増やす」という調整は、以前ほど自由に効きません。20代のうちに勤務先を選ぶとき、主たる勤務先の給与そのものを見る意味が以前より大きくなっています。
20代で年収を追うべきか、追わなくてよいか
ここは条件で分かれます。順位ではなく、境界線で考えるのが実務的です。
いま年収を優先してよい人
- 奨学金・学費の返済が具体的な期限つきである
- 家庭の事情で、いま現金が要る
- 進む専門領域が既に固まっており、症例数は勤務先を変えても確保できる見込みがある
年収より環境を優先したほうがよい人
- 専門医の取得要件(症例数・指導医・施設認定)を満たす途中にある……ここを外すと取得が数年遅れます。30代前半の329万円の伸びは、専門医取得と常勤ポストに連動しています
- 将来の開業を視野に入れている……開業に必要なのは診療スキルだけでなく、外来のスピード、スタッフとの連携、レセプトの理解です。20代でこれに触れられる環境かどうかは、後から取り返しにくい
どちらも急がなくてよい人
- 初期研修中……この2年間で年収を最適化しようとしても、動かせる幅は小さい。統計上も20〜24歳の賞与は年4万1,500円で、交渉の余地がそもそも薄い領域です
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クリニックが若手医師を採用するときに効くこと
採用する側から見ると、この構造は条件設計にそのまま使えます。
- 賞与の有無と額を明示する。20代は賞与をほとんど経験していないので、「年収◯◯万円」だけでは自分の現在地と比較できません
- 時間外・当直の手当が月給込みか別途かを書く。上の表のとおり、20代の月給の2〜3割は時間外分です。ここが「込み」だと実質は大きく下がります
- 副業の可否と上限を採用時に決めておく。労働時間の通算があるため、把握しないままにはできません
医師の働き方別の条件の違いは医師の求人・条件別探し方ガイドで整理しています。
よくある質問
Q. 30代で急に上がるのはなぜですか。
専門医の取得と、常勤ポストへの就任が重なるためです。統計でも、25〜29歳から30〜34歳にかけて所定内給与額が45万3,500円から69万8,200円へと24万円以上増えています。基本給そのものが設定し直される段階です。
Q. 大学病院と市中病院で20代の年収は違いますか。
一般に大学病院は低く、市中の臨床研修病院・一般病院は高い傾向があります。大学は外勤で補う前提が組み込まれていることが多く、額面だけでは比較になりません。
Q. 20代で年収1,000万円は可能ですか。
統計の中央的な姿からは離れますが、外勤を組み合わせている層では届くことがあります。ただし2024年4月以降は労働時間の通算があるため、以前より積み上げにくくなっています。
まとめ
- 20代の年収は24歳前後で約592万円、20代後半で約757万円。5年で約165万円増
- 伸びの中身は所定内給与額(+8万5,100円/月)と賞与(+14万7,700円/年)
- 超過実労働時間は38→36時間でほぼ変わらない。医師全体平均(19時間)の2倍
- 本当に跳ねるのは30代前半(+約329万円)。専門医取得と常勤ポストに連動
- 統計には開業医と外勤収入が含まれない。2024年4月からは副業先の労働時間が通算される
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参考
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
