患者数を増やしたいと考えたとき、多くの場合まず検討されるのは広告である。しかし広告を出して効くのは、詰まりが「新規が来ない」ところにある場合だけで、それ以外の詰まりに広告を当てても数字は動かない。
この記事では、打ち手を決める前に自院のどこが詰まっているかを見分ける手順を整理する。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
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患者数は3つに分解できる
1か月の延べ患者数は、次のように分けられる。
延べ患者数 = 新規患者数 + 再診患者数
再診患者数 ≒ 過去の新規患者 × 継続率 × 受診頻度
ここから、詰まりは3種類しかないことが分かる。
| 詰まり | 症状 | 効く打ち手 |
|---|---|---|
| ① 新規が来ない | 新規患者数が少ない・減っている | 認知・導線の改善 |
| ② 来ても続かない | 新規は取れているが再診に繋がらない | 診療体験・再診案内 |
| ③ 枠が足りない | 予約が埋まっている・待ち時間が長い | 時間帯・人員・オペレーション |
この3つは打ち手が正反対になる。 ③なのに広告を増やすと待ち時間が伸びて評判が落ちる。②なのに広告を増やすと、集めた患者がまた抜けるだけで費用が積み上がる。
どこが詰まっているかを見分ける
必要な数字は、レセコンや電子カルテから取れるものだけで足りる。
見る数字
- 月別の新規患者数(初診料算定件数)
- 月別の延べ患者数
- 新規患者の3か月以内の再診率
- 曜日・時間帯別の患者数
- 予約の充足率(予約枠に対する実績)
読み方
- 新規が減り、延べも減っている → ①。認知か導線の問題
- 新規は横ばいなのに延べが減っている → ②。継続率が落ちている
- 新規も延べも横ばいで、予約が常に埋まっている → ③。枠の問題
- 特定の曜日・時間帯だけ埋まっていない → ③の逆で、枠はあるが需要と合っていない
①と②を取り違えるのが最も多い。 「患者が減った」と感じたとき、実際には新規は取れていて再診が落ちていることがある。この場合、広告費をいくら積んでも改善しない。
① 新規が来ないとき
新規の入口は、実際には限られている。
- 地図アプリ・検索での指名以外の流入(「◯◯市 内科」など)
- 医療機関からの紹介
- 患者からの口コミ・紹介
- 看板・チラシなど地域の接点
まず確認したいのは、すでに存在している導線が機能しているかである。新しい施策を足す前に、次が整っているかを見る。
- 診療時間・休診日が、実際の運用と一致して掲載されているか
- 地図アプリ上の情報(電話番号、駐車場の有無、診療科)が古くないか
- Webサイトが、スマートフォンで開いたときに診療時間と電話番号にすぐ辿り着けるか
- 予約手段(電話・Web)が明示されているか
「掲載情報が古い」だけで新規を取り逃していることは珍しくない。 移転や診療時間の変更のあと、更新されていない情報が残っているケースがある。
医療広告ガイドラインの線引き
集患の施策を検討する際、医療広告には制限があることに注意が必要である。医療法および「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」により、次のような広告は禁止されている。
- 虚偽広告(事実と異なる内容)
- 比較優良広告(「日本一」「No.1」「最高」など他院との比較で優良であると示すもの)
- 誇大広告(誤認させるおそれのあるもの)
- 公序良俗に反する内容
- 患者等の主観にもとづく体験談
- 治療等の内容・効果について、誤認させるおそれのあるビフォーアフター写真等
一方、Webサイトは「限定解除要件」を満たせば、広告可能事項以外も掲載できる。要件は、問い合わせ先の明記、自由診療の場合は費用・リスク・副作用等の記載などである。
「体験談を載せる」「◯◯No.1と書く」は、集患施策として提案されることがあるが、いずれも禁止対象である。 施策を外部に委託する場合も、最終的な責任は医療機関側にあるため、掲載内容は自院で確認する必要がある。
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② 来ても続かないとき
新規は取れているのに再診に繋がらない場合、見るべきは診療そのものより受診の前後であることが多い。
- 待ち時間が長い(予約制でも実際の待ち時間が読めない)
- 次回の受診時期が伝わっていない
- 会計・処方の待ちが長い
- 再診の予約が取りにくい
「次はいつ来ればいいか」が伝わっていないだけで再診率が落ちることがある。慢性疾患であれば次回時期を明示し、予約まで済ませて帰ってもらう運用にすると継続率が変わる。
数字で確認するなら、新規患者の3か月以内再診率を疾患区分ごとに見る。特定の区分だけ低い場合、その診療フローに原因があることが多い。
③ 枠が足りないとき
予約が埋まっているのに患者数が伸びない場合、増やすべきは広告ではなく枠である。
- 曜日・時間帯別の充足率を見て、埋まっていない時間帯があるか確認する
- 埋まっていない時間帯がある → 需要と枠のミスマッチ。診療時間の組み替えで対応できる
- 全時間帯が埋まっている → 診療時間の延長、人員、オペレーションの見直しが必要
オペレーション側で効くのは、診療以外に取られている時間を減らすことである。カルテ入力、書類作成、予約の電話対応がここに含まれる。1人あたりの診療時間を短縮するのではなく、診療以外の時間を圧縮する方向で考える。
よくある質問
広告費はどのくらいかけるべきですか。
金額の目安より先に、詰まりが①(新規が来ない)にあるかを確認してください。②や③に詰まりがある状態で広告費を増やしても、患者数は増えません。
患者さんの声(体験談)をWebサイトに載せてよいですか。
医療広告ガイドラインにおいて、患者等の主観にもとづく体験談の広告は禁止されています。治療内容や効果に関する体験談は掲載できません。
「地域No.1」と書けますか。
他院との比較において優良であることを示す比較優良広告に該当し、禁止されています。客観的な事実であっても、優良性を示す表現は認められません。
数字を取るのが大変です。どこから始めればいいですか。
まず月別の初診料算定件数と延べ患者数の2つだけを、直近12か月分並べてください。この2本の線が同じ方向に動いているか、片方だけ動いているかで、①か②かの見分けはつきます。
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まとめ
集患の打ち手は、詰まりの場所によって正反対になる。
- 新規が来ない → 認知・導線。ただし新しい施策より先に、掲載情報が最新かを確認する
- 来ても続かない → 受診の前後。次回受診時期の明示と予約の取りやすさ
- 枠が足りない → 時間帯の組み替えと、診療以外の時間の圧縮
見分けるのに必要なのは、月別の初診料算定件数と延べ患者数の2本だけである。これを12か月分並べるところから始めれば、広告を検討すべきかどうかが判断できる。
なお、医療広告には医療法および医療広告ガイドラインによる制限があり、比較優良広告・誇大広告・患者の体験談は禁止されている。施策を外部に委託する場合も、掲載内容の確認は医療機関側の責任になる。
出典
- 医療法
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院、診療所若しくは助産所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」
- 診療報酬点数表(初診料・再診料)
※ 本記事は2026年9月時点の情報にもとづきます。広告表現の可否については、最新のガイドラインおよび所管の保健所にご確認ください。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
