生活保護を受けている患者の医療費は、医療扶助として給付される。健康保険とは別の制度で動いているため、窓口の手順もレセプトの請求先も通常の保険診療とは違う。
初めて対応するときに詰まるのは、たいてい次の3点である。
- 患者が医療券を持たずに来た
- 自院が指定医療機関になっていない
- レセプトの請求先が分からない
順に整理する。
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前提 — 医療扶助は現物給付で、窓口負担は原則ゼロ
生活保護法による医療扶助は現物給付である。患者は指定医療機関で診療を受け、費用は医療機関が福祉事務所を通じて請求する。
🔴 患者の窓口負担は原則として発生しない。ただし、福祉事務所長が決定した額がある場合は、その額が患者の負担になる。
⚠️ 健康保険に加入している人が生活保護を受けている場合がある(就労中で被用者保険がある等)。この場合は保険給付が優先し、自己負担分が医療扶助でまかなわれる。医療券の記載で判別できる。
受診の流れ — 医療券が起点になる
患者 → 福祉事務所へ受診の申請
↓
福祉事務所 → 医療券(医療要否意見書)を発行
↓
患者 → 指定医療機関を受診(医療券を提示)
↓
医療機関 → レセプトで請求
医療券は原則として月ごとに発行される。月をまたぐと新しい医療券が要る。
医療券を持たずに来院した場合
よくある。診療を断る必要はないが、その場で福祉事務所へ確認するのが基本になる。
- 患者に担当のケースワーカーと福祉事務所を聞く
- 福祉事務所へ連絡し、受給中であること・医療券の発行状況を確認する
- 後日、医療券が届いてから請求する
⚠️ 急病でその場の確認が取れない場合の扱いは自治体で運用が分かれる。管轄の福祉事務所の手引きを一度読んでおくと、当日に迷わない。
指定医療機関でなければ診療できない
医療扶助を給付できるのは、生活保護法による指定を受けた医療機関に限られる。
指定の申請
- 申請先は、都道府県知事(政令市・中核市はその市長)
- 申請書のほか、保険医療機関の指定を受けていることを示す書類などが要る
- 指定には有効期間があり、更新が必要である
🔴 保険医療機関の指定とは別の手続きである。開業時に保険医療機関の指定を受けていても、生活保護法の指定は自動では付かない。
🔴 更新の失念が起きやすい。有効期間を院内の年間スケジュールに入れておく。切れていると、その期間の請求ができない。
申請の様式と手引きは自治体ごとに出ている
福岡市・札幌市・横浜市・さいたま市など、多くの自治体が「生活保護法指定医療機関の手引き」を公開している。管轄自治体のものを確認するのが確実である。
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レセプトの請求先と実務
請求先は、医療機関の所在地の社会保険診療報酬支払基金である。通常の保険請求と同じ経路になる。
実務の注意は3つ。
- 医療券の情報をレセプトへ正確に転記する。受給者番号などがずれると返戻になる
- 医療券は保存する。保存期間は自治体の手引きに従う(1年とする例が多い)
- 公費負担者番号・受給者番号の入力を電子カルテ側で設定しておく。毎月手入力にすると転記ミスが出る
診療上の留意点
- 後発医薬品の使用が原則とされている。医療扶助では後発医薬品の使用が求められる扱いになっており、先発を使う場合は理由が必要になる
- 医療要否意見書の記載を求められることがある。継続の要否を福祉事務所が判断するための書類で、期限があるため放置しない
- 通院移送費(交通費)の相談を受けることがある。判断するのは福祉事務所であり、医療機関は意見書で関わる
受付で決めておくとよいこと
- 問診票に「生活保護受給の有無」を置くかを決める。無いと窓口で毎回口頭確認になる
- 福祉事務所の連絡先を受付に置く。医療券なしの来院時に、その場で電話できる状態にする
- 月初の医療券の受け取り漏れを点検する。月ごとの発行なので、月初にまとめて確認する運用が向く
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よくある質問
Q. 医療券が無い患者を診てよいか
A. 診療そのものは可能である。請求のために医療券が要るので、福祉事務所へ確認して後から手当てする。
Q. 指定を受けていない医療機関が診た場合は
A. 医療扶助としての請求ができない。紹介できる指定医療機関を把握しておくと、患者を止めずに済む。
Q. 患者から一部負担を求めてよいか
A. 原則として求めない。福祉事務所長が決定した額がある場合のみ、その額を負担してもらう。
まとめ
- 生活保護の医療は医療扶助として現物給付され、患者の窓口負担は原則ゼロ
- 受診には福祉事務所が発行する医療券が要り、原則として月ごとに発行される
- 診療できるのは生活保護法の指定医療機関のみ。保険医療機関の指定とは別で、更新もある
- レセプトの請求先は医療機関所在地の社会保険診療報酬支払基金
- 医療券なしの来院は、その場で福祉事務所へ確認するのが基本
参考
- 生活保護法
- 厚生労働省「生活保護法による医療扶助における医療券等様式について」
- 各自治体「生活保護法指定医療機関の手引き」
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
