「日帰り入院」という言葉は、患者からも保険会社からもよく出てくる。しかし診療報酬の点数表に「日帰り入院」という項目は無い。
正式な名称が無いまま使われているため、「うちは日帰り入院に当たりますか」と聞かれて答えに詰まるクリニックは多い。判断の軸は1つだけで、入院料を算定したかどうかである。
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日帰り入院とは何か
入院した日と退院した日が同じ日である入院を指す通称である。宿泊を伴わない。
診療報酬の世界では、この形は主に短期滞在手術等基本料1(A400)として評価されている。短期滞在手術等基本料は、日帰りおよび4泊5日以内の入院で行う手術・検査・放射線治療について、術前術後の管理や定型的な検査・画像診断までを包括して評価するもので、そのうち日帰りで行う場合が「1」に当たる。
| 泊数 | 該当する基本料 | |
|---|---|---|
| 日帰り | 宿泊なし | 短期滞在手術等基本料1 |
| 短期の入院 | 4泊5日以内 | 短期滞在手術等基本料3 |
| 通常の入院 | 5泊6日以上 | 入院基本料+各加算 |
「2」は現在の点数表に存在しない。過去の改定で廃止されているため、古い資料を参照すると混乱する。
外来手術とどこが分かれるか
同じ内容の手術でも、外来として行えば外来、入院料を算定すれば入院になる。分かれ目は滞在時間の長さではない。
入院料が算定されていれば入院、算定されていなければ外来である。この一点で決まる。
つまりクリニック側は、その手術や検査を外来で回すか、日帰り入院として扱うかを選べる場面がある。選択の基準になるのは次の3つになる。
| 判断軸 | 外来で行う | 日帰り入院として行う |
|---|---|---|
| 患者の状態 | 術後すぐ帰宅できる | 一定時間の観察が要る |
| 設備 | 処置室で足りる | 手術室と回復室がある |
| 点数の設計 | 手技料+薬剤・材料を個別に算定 | 包括評価。個別の算定は原則できない |
どちらも要らない場合がある。処置レベルで済み、観察も不要な内容なら、外来のままにするほうが手続きも記録も軽い。届出をしたから必ず日帰り入院にする、という運用にはしない。
クリニックが算定するために要る条件
短期滞在手術等基本料1を算定するには届出が必要で、施設基準として次の2つが求められる。
1. 手術室と回復室を備えていること
面積の要件は定められていない。回復室は術後の患者を観察できる場所であればよく、専用の個室でなくても差し支えないとされる。ただし外来の待合と兼ねる形は認められない。
2. 退院後のフォローアップを行うこと
退院の翌日に患者の状態を確認するなど、十分なフォローアップを行うことが求められる。電話での確認でも足りるが、確認した事実を記録に残す。
この記録が抜けているケースが個別指導で指摘されやすい。「誰が・いつ・どう確認したか」をカルテに残す運用を先に決めておく。
届出の前に確認すること
- 対象となる手術・検査が点数表で限定されている。自院で行っている内容が対象に入っているかを先に確認する
- 包括評価なので、含まれる項目は別に算定できない。術前検査や画像診断を個別に算定する前提で収支を見積もると狂う
- 点数と対象範囲は改定のたびに動く。直近の点数表と疑義解釈で確認する
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患者から「保険の給付は出ますか」と聞かれたとき
民間の医療保険には入院給付金があり、日帰り入院を給付の対象としている商品が多い。このとき保険会社が見るのは、やはり入院料が算定されているかどうかである。
クリニック側が答えられるのは事実だけである。
- 答えてよいこと —— 入院料を算定したかどうか、実施した手術・検査の内容、日付
- 答えないほうがよいこと —— 給付金が出るかどうかの見込み。判断するのは保険会社であり、契約内容はクリニックには分からない
「入院扱いになっていますので、あとは保険会社にご確認ください」が安全な答え方になる。診断書や証明書を求められた場合は、保険会社指定の様式に事実を記入する。
記録で押さえておくこと
日帰りでも入院である以上、入院に必要な記録は同じように要る。
- 入院診療計画書の作成と患者への説明
- 入院した時刻・退院した時刻
- 術後の観察内容と、帰宅可能と判断した根拠
- 退院後のフォローアップの記録
「日帰りだから簡略でよい」という扱いにしない。入院料を算定している以上、求められる記録は入院のそれである。ここを外来と同じ記録で回していると、指導で問題になる。
電子カルテ側では、入院と外来で入力する画面や必須項目が変わるかどうかを確認しておく。日帰り入院の件数が増えるなら、テンプレートを用意しておくと記録の抜けが減る。
よくある質問
無床診療所でも算定できますか。
手術室と回復室の要件を満たし、届出をすれば算定できる。病床の有無そのものは要件ではない。ただし回復室として使える場所が確保できるかが実際の壁になる。
患者が帰らずに一泊した場合はどうなりますか。
日帰りではなくなるため、短期滞在手術等基本料1は算定できない。当初の予定と実際が違ったときの扱いを、あらかじめ決めておく。
外来で行った手術を、後から日帰り入院に変えられますか。
変えられない。入院にするかどうかは、実施した時点の取り扱いで決まる。事後に入院料へ振り替えることはできない。
「日帰り手術」と「日帰り入院」は同じですか。
指しているものが違う。日帰り手術は手術の形態を指す言葉で、外来で行う場合も含む。日帰り入院は入院料を算定した場合の呼び方である。患者との会話では区別されずに使われるので、聞かれたら何を確認したいのかを先に尋ねる。
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まとめ
- 日帰り入院は診療報酬上の正式名称ではない。該当するのは主に短期滞在手術等基本料1
- 外来と入院の分かれ目は滞在時間ではなく、入院料を算定したかどうかの一点
- 算定には届出が要り、施設基準は手術室と回復室、退院後のフォローアップの2つ
- 民間保険の給付は保険会社が判断する。クリニックが答えるのは「入院料を算定したかどうか」までにする
- 日帰りでも記録は入院のもの。入院診療計画書とフォローアップの記録を省かない
参考
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
