医師事務作業補助体制加算は、クラークを置いたクリニックなら算定できる加算だと思われがちですが、実際には入院基本料等加算です。入院料を算定していない医療機関は、そもそも対象に入りません。
一方で、有床診療所には算定できる区分があります。ただし配置区分が3つに限られ、さらに緊急入院の実績要件がかかります。「施設基準に『病院であること』と書かれているので、診療所は対象外ではないか」という疑問も出やすく、通知の読み方が分かりにくいところです。
この記事では、自院が対象に入るかの判定から始めて、加算1と加算2の違い、令和8年度改定で加わったICT機器による配置人数の算入、届出の手続きまでを整理します。
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まず、自院が対象に入るかを判定する
医師事務作業補助体制加算は、医科点数表のA207-2に置かれた入院基本料等加算です。点数表の注では、算定できる患者を「第1節の入院基本料(特別入院基本料等を除く。)又は第3節の特定入院料のうち、医師事務作業補助体制加算を算定できるものを現に算定している患者」に限っています。
| 自院の種類 | 算定の可否 | 算定できる配置区分 |
|---|---|---|
| 無床診療所 | 算定できない | — |
| 有床診療所(A108 有床診療所入院基本料) | 算定できる | 50対1・75対1・100対1のみ |
| 有床診療所療養病床(A109) | 算定できる | 50対1・75対1・100対1のみ |
| 病院(一般病棟入院基本料など) | 算定できる | 15対1〜100対1 |
A108とA109の注では、算定できる入院基本料等加算を列挙したうえで、医師事務作業補助体制加算については「50対1補助体制加算、75対1補助体制加算又は100対1補助体制加算に限る。」と書かれています。有床診療所が15対1や20対1を届け出ることはできません。
無床クリニックで医師事務作業補助者(クラーク)を雇っても、この加算の対象にはなりません。外来の事務補助として役に立つかどうかと、加算が取れるかどうかは、切り離して考える必要があります。
加算1と加算2の違いは1つだけ
検索されやすい論点なので先に書きます。加算1と加算2を分けている条件は、経験年数の要件があるかないかの1点だけです。
施設基準通知の「第4の2 医師事務作業補助体制加算」では、加算1の要件をこう定めています。
当該保険医療機関において3年以上の医師事務作業補助者としての勤務経験を有する医師事務作業補助者が、それぞれの配置区分ごとに5割以上配置されていること。
加算2にはこの文がありません。加算2の施設基準は「3の(1)から(3)までのいずれかの基準を満たす保険医療機関において、医師事務作業補助者がそれぞれの配置区分ごとに、配置されていること」とだけ書かれています。
| 項目 | 加算1 | 加算2 |
|---|---|---|
| 経験3年以上の補助者の割合 | 配置区分ごとに5割以上 | 要件なし |
| 対象医療機関の要件(緊急入院実績など) | 必要 | 必要 |
| 通則の体制整備(責任者・委員会・計画など) | 必要 | 必要 |
| 研修32時間・配置人数の要件 | 必要 | 必要 |
| 届出 | 加算1と加算2を併せて届け出ることはできない | 同左 |
ここを読み違えやすいのは、対象医療機関の要件は加算2にもかかる点です。加算2は「経験者がいなくても届け出られる緩い区分」ではあっても、「緊急入院の実績がなくても届け出られる区分」ではありません。
点数は入院初日に1回だけ加算します。令和8年度の医科点数表では次のとおりです。
| 配置区分 | 加算1 | 加算2 |
|---|---|---|
| 15対1 | 1,070点 | 995点 |
| 20対1 | 855点 | 790点 |
| 25対1 | 725点 | 665点 |
| 30対1 | 630点 | 580点 |
| 40対1 | 530点 | 495点 |
| 50対1 | 450点 | 415点 |
| 75対1 | 370点 | 335点 |
| 100対1 | 320点 | 280点 |
有床診療所が届け出られる50対1・75対1・100対1では、加算1と加算2の差は35点から40点です。入院初日のみの加算なので、年間の入院件数を掛けた額で判断することになります。
有床診療所が満たすべき対象医療機関の要件
施設基準通知の「3 医師事務作業補助体制加算1の施設基準」は、配置区分ごとに対象医療機関の要件を並べています。有床診療所が届け出られる区分に関係するのは(3)です。
(3) 50対1、75対1及び100対1補助体制加算の施設基準
次のいずれかの要件を満たしていること。
ア 「(1) 15対1補助体制加算の施設基準」又は「(2) 20対1、25対1、30対1及び40対1補助体制加算の施設基準」を満たしていること。
イ 年間の緊急入院患者数が100名以上(75対1及び100対1補助体制加算については50名以上)の実績を有する保険医療機関であること。
冒頭で触れた疑問に対する答えはここにあります。(3)イの主語は「病院」ではなく「保険医療機関」です。15対1の(1)イは「病院であること」、20対1〜40対1の(2)エも「病院であること」と書かれているのに対し、(3)イだけは保険医療機関になっています。有床診療所が緊急入院の実績で届け出られるのは、この書き分けによります。
さらに(3)アを経由する道もあります。(2)ウが「『基本診療料の施設基準等』別表第六の二に掲げる地域に所在する保険医療機関であること」となっているので、いわゆる医療資源の少ない地域にある有床診療所は、緊急入院の実績によらず(3)アで要件を満たせます。
整理すると、有床診療所が要件を満たす道は2つです。
| 区分 | 必要な実績 |
|---|---|
| 50対1 | 年間の緊急入院患者数100名以上、または別表第六の二の地域に所在 |
| 75対1・100対1 | 年間の緊急入院患者数50名以上、または別表第六の二の地域に所在 |
緊急入院患者数の数え方
通知では、緊急入院患者数を「救急搬送により緊急入院した患者数」と、自院を受診した重症患者のうち医師が緊急に入院が必要と認めて緊急入院した患者数の合計としています。後者は、吐血・喀血・重篤な脱水で全身状態不良、意識障害または昏睡、呼吸不全または心不全で重篤な状態、急性薬物中毒、ショック、重篤な代謝異常、広範囲熱傷、外傷・破傷風等で重篤な状態、緊急手術や緊急カテーテル治療を必要とする状態、消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態、蘇生術を必要とする重篤な状態、これらに準ずる状態が挙げられています。
救急搬送だけで数えると届かないケースでも、外来から緊急に入院させた重症患者を拾うと届くことがあります。届出前に、過去1年分の入院を入院理由で棚卸ししておくと判断できます。
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配置人数の数え方と、補助者本人の要件
配置区分は、届け出た病床数に対する医師事務作業補助者の人数です。100対1なら届け出た病床数100床ごとに1名以上、75対1なら75床ごとに1名以上、50対1なら50床ごとに1名以上を配置します。
補助者本人の要件で、届出前に確認しておきたいのは次の点です。
- 雇用形態は問わない。派遣職員も含められるが、指揮命令権が自院にない請負方式は除く
- 常勤職員と同じ勤務時間数以上の勤務を行う職員であること。常勤換算でも差し支えなく、その場合は自院の常勤職員の所定労働時間(32時間未満のときは32時間)の勤務をもって常勤1名として換算する
- 看護職員を充てることはできない。自院で医療従事者として勤務している看護職員を医師事務作業補助者として配置することはできないと明記されている
- 専従であること。点数表の区分名のとおり、医師の事務作業を補助する専従者を指す
配置する場所は問われません。通知でも「医師事務作業補助者が実際に勤務する場所については、業務として医師の指示に基づく医師の事務作業補助を行う限り問わないことから、外来における事務補助や、診断書作成のための部屋等における勤務も可能であること」とされています。
責任者と研修
医師事務作業補助者以外の常勤職員から、業務を管理・改善するための責任者を置きます。その責任者は、新たに配置してから6か月間を研修期間として、6か月以内に32時間以上の研修を実施します。職場内研修を含めてよい扱いです。研修内容は、関連法規の概要、個人情報の保護、自院で提供される医療内容や用語、診療録等の記載・管理および代筆・代行入力、電子カルテシステムの5項目が挙げられています。
令和8年度改定で加わったICT機器による配置人数の算入
令和8年度改定では、施設基準通知に「2 ICT機器を活用する医師事務作業補助者の配置人数の算入方法」が新設されました。要件を満たすと、医師事務作業補助者1人を1.2人または1.3人として配置人数に算入できます。
算入の前提になるのは、次の4つに掲げるもののうち①を含むものを組織的に導入していることです。①が必須で、②〜④だけでは対象になりません。
- 生成AIを活用し、退院時要約、診断書及び紹介状等の原案作成を自動的に行い、当該業務を効率化する医療文書等の文書作成補助システム
- 診療録、退院時要約、診断書及び紹介状の作成に対応する医療文書等への入力を行う医療文書用の音声入力システム(汎用音声入力機能を除く)
- 救急医療情報システム等への医療データ等の定型的な入力作業等を自動化するRPA
- 入退院時の説明、検査・処置、麻酔・鎮静、手術、インフォームド・コンセント及び医療安全・感染対策等に関する10種類以上の患者向け説明動画
| 算入できる人数 | 条件 |
|---|---|
| 1人を1.2人として算入 | ①を含む導入があり、通知のアからエまでの要件をすべて満たす |
| 1人を1.3人として算入 | 上記に加え、②から④までのうち少なくとも1種類以上を広く活用している |
満たすべき条件はほかにもあります。
- 電子カルテ等と連動して医療情報を扱うものは、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」と、総務省・経済産業省のガイドラインに準拠していること
- 生成AIその他のAI技術を用いる製品・サービスは、経済産業省及び総務省が公表する「AI事業者ガイドライン」に基づくリスク対策を講じている事業者が提供しているものであること
- 全ての医師事務作業補助者に操作方法と生成AIの使い方に関する研修を実施し、全員が常時そのICT機器を用いて業務を遂行できる体制であること
- この算入方法で新たに届け出る場合は、直近3月以上の期間、算入方法を用いずに当該配置区分(またはこれを上回る配置区分)を引き続き算定していること
- 導入前後の業務内容・業務量・業務時間と医師の事務作業時間・負担感等について年1回程度評価し、衛生委員会等で確認すること
最後から2つめの条件が実務上の制約になります。ICT機器を入れた月から急に人数を水増しできるわけではなく、まずは実人数でその区分を3か月以上算定しておく必要があります。
任せてよい業務と、任せてはいけない業務
施設基準には、業務範囲を院内規程として文書で整備することが求められています。根拠は「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(平成19年12月28日医政発第1228001号)の「2 役割分担の具体例 (1)医師、看護師等の医療関係職と事務職員等との役割分担 1)書類作成等」です。
電子カルテについては、通知で歯止めがかけられています。
医師事務作業補助者が電子カルテシステムに入力する場合は代行入力機能を使用し、代行入力機能を有しないシステムの場合は、業務範囲を限定し、医師事務作業補助者が当該システムの入力業務に携わらないこと。
代行入力機能があるかどうかで、任せられる範囲が変わります。届出を検討する段階で、自院の電子カルテに代行入力と医師の承認の仕組みがあるか、成りすましが起きない設計かを確認しておきます。
規程として整備が求められている文書は4本です。
| 規程 | 準拠先 |
|---|---|
| 業務範囲の院内規程 | 医政発第1228001号 |
| 診療記録の記載に関する体制 | 「診療録等の記載について」(昭和63年5月6日総第17号) |
| 個人情報保護の体制 | 医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス |
| 電子カルテシステムの体制 | 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン |
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届出の手続き
届出に使う様式は3つです。
- 様式13の4(医師の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制)
- 様式18
- 様式18の2
変更の届出のとき、医師の負担の軽減及び処遇の改善に資する体制について直近1年以内に届け出た内容と変更がなければ、様式13の4を略せます。
届出は保険医療機関単位で、全病棟包括的に行います。一般病棟、療養病棟、結核病棟、精神病棟を持つ医療機関は病棟種別ごとに区分して届け出られますが、その場合でも加算1の届出と加算2の届出を併せて行うことはできません。
届け出るか、見送るかの境界線
どちらが得かではなく、どういう条件ならどちらか、という形で整理します。
- 緊急入院の実績が要件に届いていて、経験3年以上の補助者が配置区分ごとに5割以上いるなら、加算1で届け出ます。加算2との差は入院初日35〜40点なので、年間の入院件数を掛けて、届出と管理の手間に見合うかを見ます
- 実績は届いているが経験3年以上が5割に満たないなら、加算2で届け出ます。加算1へは要件を満たした時点で変更の届出をします。両方を同時に持つことはできません
- 緊急入院が要件に届いていない有床診療所は、まず緊急入院患者数の数え方を見直します。救急搬送だけで数えていて、外来から緊急に入院させた重症患者を拾えていないことがあります。それでも届かないなら、この加算は見送ります
- ICT機器を入れたばかりの医療機関は、まだ届け出られません。1.2人・1.3人の算入は、実人数でその配置区分を3か月以上算定した実績が前提です
- 無床クリニックはこの加算の対象外です。クラークを置くかどうかは、加算ではなく外来の回転数と医師の残業時間で判断します
よくある質問
無床診療所でも医師事務作業補助体制加算は算定できますか
算定できません。入院基本料等加算で、入院料を算定している患者に入院初日に加算する仕組みのため、入院がなければ対象になりません。
有床診療所が15対1補助体制加算を届け出ることはできますか
できません。有床診療所入院基本料と有床診療所療養病床入院基本料の注で、算定できるのは50対1・75対1・100対1補助体制加算に限られています。
医師事務作業補助体制加算1と2は、病棟ごとに使い分けられますか
できません。届出は全病棟包括的に行い、加算1の届出と加算2の届出を併せて行うことはできないと通知に明記されています。
看護師に事務補助を兼務させて配置人数に入れられますか
入れられません。自院で医療従事者として勤務している看護職員を医師事務作業補助者として配置することはできないとされています。
外来だけで働くクラークを配置人数に算入できますか
できます。勤務場所は問われず、外来における事務補助も可能とされています。ただし配置人数の基準は届け出た病床数を基準に数えます。
生成AIの文書作成システムを入れれば、すぐ1.2人として数えられますか
すぐには数えられません。この算入方法で新たに届け出る場合は、直近3月以上、算入方法を用いずにその配置区分を算定していることが条件になります。
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まとめ
- 医師事務作業補助体制加算は入院基本料等加算で、無床診療所は対象外
- 有床診療所は算定できるが、配置区分は50対1・75対1・100対1に限られる
- 加算1と加算2を分けている条件は、経験3年以上の補助者が配置区分ごとに5割以上いるかどうかの1点だけ
- 対象医療機関の要件(緊急入院の実績など)は加算2にもかかる
- 50対1以降の要件は「病院」ではなく「保険医療機関」と書かれており、有床診療所が緊急入院の実績で届け出られる根拠になっている
- 令和8年度改定で、生成AIによる文書作成補助システムを含むICT機器の活用を条件に、1人を1.2人・1.3人として算入できる方法が新設された。ただし直近3月以上の算定実績が前提
- 届出は様式13の4・18・18の2を使い、全病棟包括で行う。加算1と加算2の併願はできない
参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第7号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732097.pdf
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第70号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675854.pdf
- 厚生労働省「医師及び医療関係職と事務職員等との間等での役割分担の推進について」(平成19年12月28日医政発第1228001号) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025aq3-att/2r98520000025axw.pdf
特徴
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診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
