「特掲診療料の施設基準等」で検索すると、厚生労働省のサイトに似た名前の文書が2つ並びます。片方は告示、もう片方は通知で、役割が違います。この違いを押さえておかないと、どちらを見て届出の準備をすればよいのか分からなくなります。
クリニックが日常的に届け出るのは、在宅療養支援診療所、生活習慣病管理料、ニコチン依存症管理料、外来腫瘍化学療法診療料といった特掲診療料です。初診料や再診料の加算とは届出のルールが違うところもあります。
この記事では、2つの文書の関係、基本診療料との違い、届出から算定を始められる日、届出後に続く手続きを整理します。
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「特掲診療料の施設基準等」は2つの文書を指す
令和8年度診療報酬改定の資料では、次の2本が公開されています。
| 文書 | 正式名称 | 役割 |
|---|---|---|
| 告示 | 特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号) | 施設基準そのものを法令として定める。令和8年度改定では「特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第71号)で改正された |
| 通知 | 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日保医発0305第8号) | 告示の具体的な読み方、届出の手続き、様式を示す |
実務で開くのは通知の方です。通知の第1では「特掲診療料の施設基準等は、『特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件』による改正後の特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)に定めるものの他、別添1のとおりとすること」とされており、別添1に各項目の詳しい基準が並びます。届出書の様式は別添2です。
令和8年度改定の通知は令和8年6月1日から適用され、従前の通知(令和6年3月5日保医発0305第6号)は令和8年5月31日限りで廃止されました。
基本診療料の施設基準等との違い
施設基準の告示と通知は、基本診療料と特掲診療料で別々に出ています。同じ日付・似た番号で並ぶので、取り違えやすいところです。
| 基本診療料 | 特掲診療料 | |
|---|---|---|
| 告示 | 基本診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第62号)。令和8年度は告示第70号で改正 | 特掲診療料の施設基準等(平成20年厚生労働省告示第63号)。令和8年度は告示第71号で改正 |
| 通知 | 令和8年3月5日 保医発0305第7号 | 令和8年3月5日 保医発0305第8号 |
| 対象 | 初診料・再診料・入院料と、それらの加算 | 医学管理等、在宅医療、検体検査、画像診断、処置、手術、リハビリテーションなどの点数と加算 |
| 届出書の様式 | 通知の別添7 | 通知の別添2 |
クリニックの届出は、どちらにも分かれます。機能強化加算や外来感染対策向上加算は基本診療料の側、在宅療養支援診療所やニコチン依存症管理料は特掲診療料の側です。届出書を探すときは、まずその点数が初診料・再診料・入院料に付くものかどうかで判断すると、開く通知を間違えません。
届出の手続き
通知の第2に手続きが書かれています。要点は次のとおりです。
- 届出は、特に規定のある場合を除き、保険医療機関単位で行う
- 医療機関の所在地の地方厚生(支)局長に対して、別添2の届出書(届出書添付書類を含む)を1通提出する
- 提出した届出書の写しは、医療機関側でも保管する
- 要件審査に要する期間は原則として2週間以内を標準とし、遅くとも概ね1か月以内(補正に要する期間を除く)
診療科ごと、医師ごとではなく医療機関単位という点は、複数の医師がいるクリニックで迷いやすいところです。ただし届け出る医師の氏名を書く様式もあり、その場合は医師に変更があったときに都度届出が必要になります(後述)。
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実績期間は原則として要らない
特掲診療料の届出でよく誤解されるのが、実績期間です。通知の第2の4にはこう書かれています。
届出に当たっては、当該届出に係る基準について、特に定めがある場合を除き、実績期間を要しない。
つまり、多くの特掲診療料は「3か月間の実績を積んでから」ではなく、体制が整った時点で届け出られます。
実績が要るものは通知に列挙されています。開放型病院(届出前30日間の実績)、ポジトロン断層撮影やコンピューター断層撮影などの施設共同利用率、輸血管理料の新鮮凍結血漿・赤血球濃厚液割合、保険医療機関間の連携による病理診断に係る病理標本割合、そして年間実施件数が要件になっている手術や放射線治療などです。これらは1月から12月までの1年間の実績で適合性を判断し、翌年4月1日から翌々年3月末日まで算定できるという年度単位の仕組みになっています。
自院が届け出ようとしている項目に実績要件があるかどうかは、通知の第2の4の列挙に名前が出てくるかどうかで判断できます。名前がなければ、原則どおり実績期間は要りません。
いつから算定できるか
届出を出した日ではなく、受理された日で決まります。通知の第2の8です。
4に定めるもののほか、各月の末日までに要件審査を終え、届出を受理した場合は、翌月の1日から当該届出に係る診療報酬を算定する。また、月の最初の開庁日に要件審査を終え、届出を受理した場合には当該月の1日から算定する。
| 受理された日 | 算定を始められる日 |
|---|---|
| その月の末日まで | 翌月1日から |
| 月の最初の開庁日 | その月の1日から |
要件審査に2週間から1か月かかることを踏まえると、「今月中に算定を始めたい」なら前月の早い時期に出しておく必要があります。月末に駆け込みで出しても、審査が翌月にずれれば算定開始は翌々月になります。
なお令和8年6月1日からの算定に係る届出については、令和8年5月7日以降に届出書の提出を行うことができるとされていました。改定年は提出開始日が別に示されるので、改定のたびに確認します。
届け出たあとに続く手続き
出して終わりではありません。通知の第3に、届出後の扱いが定められています。
基準を満たさなくなったとき
届出の内容と異なった事情が生じて施設基準を満たさなくなった場合、または届出区分が変更となった場合は、その事情が生じた日の属する月の翌月に変更の届出を行います。
一部の項目は、その都度の届出が必要です。神経学的検査、精密触覚機能検査、画像診断管理加算、麻酔管理料(Ⅰ)などについて届け出ている医師に変更があった場合と、届出にあたり使用する機器を届け出ている施設基準でその機器に変更があった場合です。CT撮影とMRI撮影の機器を変更したときも都度届出になります。
適時調査
地方厚生(支)局は、届出を受理した医療機関へ適時調査に入ります。通知では「原則として年1回、受理後6か月以内を目途」としています。調査では、届け出た体制を実際に維持しているか、書類を揃えているかを確認します。
毎年8月の報告
届出を行った保険医療機関又は保険薬局は、毎年8月1日現在で届出の基準の適合性を確認し、その結果について報告を行うものであること。
いわゆる定例報告です。8月1日時点で基準を満たしているかを自院で確認し、報告します。年に1度、届出中の項目を棚卸しする機会になります。
院内掲示
届出事項は、院内の見やすい場所に掲示するよう指導されています。根拠は保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)などです。届出を増やしたら、掲示も更新します。
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令和8年度改定での経過措置
改定のたびに全項目を出し直すわけではありません。通知の第4です。
- 令和8年5月31日現在で現に特掲診療料を算定している医療機関が、引き続きその特掲診療料を算定する場合(名称のみが改正されたものを含む)は、新たな届出を要しない
- ただし令和8年6月以降の実績により、届け出ている内容と異なる事情が生じた場合は変更の届出を行う
- 令和8年度改定で新設された、または施設基準が創設された特掲診療料(通知の表1)は、令和8年6月1日以降の算定に当たり届出が必要
- 施設基準が改正された特掲診療料のうち届出が必要なもの(通知の表2)も届出が必要。表2の経過措置期間は、令和8年3月31日時点で改正前の特掲診療料の届出を行っている医療機関にのみ適用される
表1には遠隔電子処方箋活用加算、救急外来医学管理料などが挙がっています。自院が算定している項目が表1か表2に載っていないかは、改定の年に必ず1件ずつ見ます。載っているのに出し忘れると、6月以降その点数が算定できなくなります。
届け出るか、見送るかの境界線
届出は多いほどよいものではありません。維持できる体制かどうかで決めます。
- 体制がすでに整っていて、実績要件も列挙に載っていない項目なら、届け出て構いません。特掲診療料は原則として実績期間を要さないので、待つ理由がありません
- 年間実施件数が要件になっている項目は、件数が読めるまで見送ります。年度単位で適合性を判断する仕組みのため、途中で外れると次の年度が丸ごと算定できなくなります
- 医師の氏名や機器を届け出る項目は、常勤医の入れ替わりが多い間は運用が回るかを先に確かめます。都度届出が要るので、忘れると届出内容と実態がずれます
- 届け出ても算定機会がほとんどない項目は、いったん見送ります。適時調査と毎年8月の報告の対象が増えるだけになります
- 改定の年に表1・表2へ自院の項目が載っている場合は、見送るという選択肢がありません。出さないと算定できなくなるので、最優先で処理します
よくある質問
特掲診療料の施設基準等はどこで見られますか
厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」のページに、告示と通知の両方がPDFで掲載されています。日常的に参照するのは通知(保医発0305第8号)の別添1と、様式が載っている別添2です。
届出はいつ出せば、翌月から算定できますか
その月の末日までに要件審査が終わり受理されれば、翌月1日から算定できます。審査に2週間から1か月かかるため、月の前半までに出しておくと安全です。
届出に3か月の実績は必要ですか
特に定めがある場合を除き、実績期間は要りません。実績が必要な項目は通知の第2の4に列挙されています。
改定のたびに全部出し直す必要がありますか
ありません。改定前から算定していて引き続き算定する項目は、新たな届出を要しません。新設された項目と、施設基準が改正されて届出が必要とされた項目だけを出します。
届出の内容が実態と合わなくなったらどうしますか
事情が生じた日の属する月の翌月に、変更の届出を行います。医師や機器を届け出ている項目については、変更があった都度の届出になります。
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まとめ
- 「特掲診療料の施設基準等」は、告示(平成20年厚生労働省告示第63号)と通知(令和8年3月5日保医発0305第8号)の2本を指す
- 基本診療料の側とは別の告示・通知・様式になっており、届出書は特掲の通知の別添2にある
- 届出は保険医療機関単位で、地方厚生(支)局長へ1通提出する。審査は原則2週間、遅くとも概ね1か月
- 特に定めがある場合を除き、実績期間は要らない
- 月末までに受理されれば翌月1日から、月の最初の開庁日に受理されればその月の1日から算定できる
- 届出後は、基準を満たさなくなったときの変更の届出、適時調査、毎年8月1日現在の報告、院内掲示が続く
- 改定年は、新設・改正で届出が必要になった項目の一覧と自院の届出を並べて見る
参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第8号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732104.pdf
- 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第71号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675855.pdf
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第7号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732097.pdf
- 関東信越厚生局「特掲診療料の届出一覧(令和8年度診療報酬改定)」 https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/tokukei_shinryo_r08.html
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
