指定難病の患者が医療費助成を申請するには、都道府県知事が指定した医師(指定医)が書いた臨床調査個人票が要ります。指定医には「難病指定医」と「協力難病指定医」の2種類があり、違いは書ける臨床調査個人票の範囲です。難病指定医は新規と更新の両方を書けますが、協力難病指定医が書けるのは、すでに医療費助成を受けている患者の更新用だけです。
この記事では、自院の医師がどちらを目指すべきかを要件から判定し、申請・研修・5年ごとの更新の段取りを始められるように整理します。
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難病指定医と協力難病指定医の違いは「新規の臨床調査個人票を書けるか」
指定医の要件と職務は、難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)施行規則の第15条から第18条に定められています。2つの違いを並べると次のとおりです。
| 難病指定医 | 協力難病指定医 | |
|---|---|---|
| 書ける臨床調査個人票 | 新規・更新の両方 | 更新のみ(すでに支給認定を受けた患者の、その指定難病に限る) |
| 診療経験 | 診断または治療に5年以上 | 診断または治療に5年以上 |
| 資格・研修 | 厚生労働大臣が定める専門医の資格、または都道府県知事が行う研修の修了 | 都道府県知事が行う研修の修了 |
| 5年ごとの更新時の研修 | 専門医の資格で指定された人は不要。研修で指定された人は受講が必要 | 受講が必要 |
診療経験の5年には、医師法に基づく臨床研修(いわゆる初期研修)の期間も含まれます(施行規則第15条第1項)。医師になって5年たっていれば、経験年数の要件は満たしていると考えてよいでしょう。
専門医の資格は、厚生労働省告示第433号に列挙されたものに限られます。日本内科学会の総合内科専門医、日本専門医機構の内科専門医・総合診療専門医などのほか、消化器病、循環器、神経内科、リウマチ、腎臓といった学会の専門医も対象です。告示に載っていない資格は使えないので、申請前に自分の資格が表に入っているかを確認してください。
どちらを目指すか:自院の医師の条件で決める判定表
どちらが上というより、医師の資格と、その医師が書くことになる臨床調査個人票の種類で決まります。
| 選ぶ区分 | 向いている条件 | 申請に添える主な書類 |
|---|---|---|
| 難病指定医(専門医ルート) | 診療経験5年以上で、告示第433号に載っている専門医の資格を持っている。新規の患者を診断する可能性がある | 専門医の資格を証明する書面(認定証の写しなど) |
| 難病指定医(研修ルート) | 診療経験5年以上で、告示に載った専門医の資格は無いが、新規の臨床調査個人票も書きたい | 難病指定医向け研修の修了証 |
| 協力難病指定医 | 診療経験5年以上。新規の診断は病院の専門医に任せ、自院では受給中の患者の更新だけを担う | 協力難病指定医向け研修の修了証 |
| まだ指定医にならなくてよい | 診療経験が5年に満たない。または、指定難病の患者を継続して診る見込みが当面無い | 患者には近隣の指定医を紹介する |
開業医が迷いやすいのは、研修ルートの難病指定医と協力難病指定医のどちらにするかです。病院で診断がついた患者を引き継いで、毎年の更新だけ自院で書くなら協力難病指定医で足ります。ただ、新規の申請や、別の指定難病が加わったときの申請は書けません。自院で診断から申請まで完結させたいなら、最初から難病指定医の研修を受けておく方が後で手間がかかりません。
なお、協力難病指定医の指定を行っていない自治体もあります。例えば広島県は、現在は協力難病指定医を募集しておらず、難病指定医のみと案内しています。申請先の都道府県のページで、協力難病指定医の受付があるかを先に確かめてください。
指定医の研修は厚生労働省のオンライン研修で受ける
研修ルートの難病指定医と協力難病指定医は、申請前に研修を修了しておく必要があります。いまは多くの自治体が、厚生労働省の「難病指定医(協力難病指定医)向けオンライン研修」を使っています。2020年2月1日に運用が始まったもので、講義は「難病指定医向け」と「協力難病指定医向け」の2種類です。
受講の流れは次のとおりです。
- オンライン研修システム(https://nanbyo-shiteii.mhlw.go.jp/register)でユーザー登録する。このとき申請先の自治体を選ぶ
- 届いたメールのログインURLから入り、目指す区分のコースを受講する
- すべての講義を受講したら、修了証をダウンロードして印刷する
- 修了証の写しを指定医の申請書類に添える
講義を1つでも受けていないと修了証は発行されません。自治体によっては独自の研修や受講申込みの手順を設けているので、申請先の案内も確認してください。
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難病指定医の申請手順チェックリスト
申請先は、医師が主として指定難病の診断を行う医療機関の所在地を管轄する都道府県知事です(施行規則第16条)。勤務先が政令指定都市にある場合は、その市が窓口になることがあります。複数の医療機関で診療している医師も、申請するのは主たる勤務先1か所です。
申請書に書く事項と添付書類は、施行規則第16条で決まっています。次の順で準備すると、書類の不足で差し戻されにくくなります。
- [ ] 医師の診療経験が5年以上あるか(臨床研修の期間を含めて数える)
- [ ] 難病指定医か協力難病指定医か、上の判定表で区分を決める
- [ ] 申請先が都道府県か政令指定都市か、主たる勤務先の所在地で確認する
- [ ] 協力難病指定医を選ぶ場合、申請先が協力難病指定医を受け付けているか確認する
- [ ] 専門医ルートなら、資格が告示第433号に載っているか、認定証の有効期間内かを確認する
- [ ] 研修ルート・協力難病指定医なら、オンライン研修を修了して修了証を印刷する
- [ ] 指定医指定申請書(多くの自治体で経歴書と兼用の様式)を記入する
- [ ] 医師免許証の写しを用意する
- [ ] 専門医の資格を証明する書面、または研修の修了証を用意する
- [ ] 自治体が指定する方法(郵送・電子申請など)で提出する
- [ ] 指定の通知を受け取ったら、指定日と有効期間の満了日を院内の台帳に控える
提出方法は自治体によって違います。例えば東京都は、2026年1月5日から原則として電子申請(Logoフォーム)で受け付けています。指定医の氏名と勤務先は、指定されると都道府県が公表します(施行規則第21条)。
5年ごとの更新と変更届:期限を過ぎると臨床調査個人票が書けない
指定医の指定は、5年ごとに更新しないと効力を失います(施行規則第17条第2項)。期限が切れた後に書いた臨床調査個人票は、医療費助成の申請に使えません。患者の更新申請が集中する時期に気づくと、患者にも迷惑がかかります。
更新のときに確認することは、指定の根拠によって違います。
- 専門医の資格で指定された難病指定医は、更新のための研修は不要です。ただし、更新申請の時点で専門医の資格が有効である必要があり、有効期間の分かる認定証の写しを求める自治体があります
- 研修で指定された難病指定医と協力難病指定医は、指定から5年を超えない日までに、もう一度研修を受けます(施行規則第17条第1項)
更新申請を受け付ける時期は自治体が決めています。東京都の場合は、有効期間が終わる12か月前から更新申請ができます。
指定中に、氏名・連絡先・担当する診療科・主たる勤務先が変わったときは、指定した都道府県知事に速やかに届け出ます(施行規則第19条)。別の都道府県の医療機関へ移った場合は、移った先の都道府県で改めて指定を受ける必要があり、元の指定は取り消されることがあります(施行規則第20条第4項)。医師の異動や開業のときは、届出と申請をセットで考えてください。
臨床調査個人票の書き方で2023年以降に変わったこと
指定医になると、臨床調査個人票の様式や記入のルールの変更を追うことになります。ここ数年の主な変更は次の3つです。
2023年10月から「診断年月日」を書く
2023年10月1日から、医療費助成の開始時期が申請日から「重症度分類を満たしていることを診断した日」などへ前倒しできるようになりました。遡れるのは原則として申請日から1か月で、やむを得ない理由があれば最長3か月です。
これに合わせて、臨床調査個人票に「診断年月日」欄が加わりました。ここには、診察や検査結果などから診断基準と重症度分類を満たしていると総合的に診断した日を書きます。重症度分類を満たしていないと診断した場合は記載不要です。この日付で助成の開始日が決まるので、記載年月日と混同しないようにしてください。
2024年4月から難病データベースへのオンライン登録が始まった
2024年4月1日から、指定医が臨床調査個人票を厚生労働省の難病データベース(難病・小慢データベース)上で作成し、オンラインで登録できるようになりました。使うには指定医ごとのIDとパスワードが要り、医療機関単位で都道府県に申請します。申請から交付まではおおむね1か月かかります。
オンラインで登録した場合も、アクセスキーが印字された臨床調査個人票を紙で患者に渡し、患者がそれを申請書類と一緒に都道府県へ出す流れは変わりません。オンライン登録を使わず、従来どおり紙で作成して交付することもできます。端末やシステム改修の費用を補助している自治体もあります(例:川崎市は1医療機関あたり5万円を上限に所要額の2分の1)。
2024年4月から「登録者証」の交付が始まった
2024年4月からは、指定難病にかかっていることを都道府県などが確認して交付する「登録者証」(指定難病要支援者証明事業)も始まりました。福祉や就労の支援を受けやすくするためのもので、診断基準は満たすが重症度分類を満たさず医療費助成の対象にならなかった人や、軽症で医療費助成を申請していない人も対象です。
軽症の患者から「登録者証のために臨床調査個人票を書いてほしい」と頼まれることがある点は、指定医として知っておきたい変化です。同じ2024年4月には、診断基準や重症度分類の改正に伴って臨床調査個人票の様式も改められています。様式は難病情報センターのホームページから最新版を取ってください。
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指定医になった後に院内で決めておくこと
指定医の指定を受けたら、次の3点を院内で決めておくと、更新の失念や書類の差し戻しが減ります。
- 指定医ごとの指定日・有効期間の満了日・指定の根拠(専門医か研修か)を一覧にし、満了の1年前に確認する
- 臨床調査個人票を紙で書くか、難病データベースでオンライン登録するかを決め、オンラインならIDの申請を済ませる
- 医療費助成の更新時期(受給者証の有効期間は原則1年)に合わせ、患者から依頼を受けたときの受付と作成の手順を決める
指定難病の患者を外来で継続して診る場合の診療報酬は、難病外来指導管理料の算定要件で整理しています。
難病指定医についてよくある質問
専門医の資格が無くても難病指定医になれますか
なれます。診断または治療に5年以上の経験があれば、都道府県知事が行う研修(厚生労働省のオンライン研修)を修了することで難病指定医の指定を受けられます。この場合、5年ごとの更新の前に研修をもう一度受ける必要があります。
協力難病指定医が新規の臨床調査個人票を書くことはできますか
できません。協力難病指定医が書けるのは、すでに支給認定を受けた患者の、その指定難病に係る更新用の臨床調査個人票だけです。新規の申請は難病指定医に書いてもらう必要があります。
勤務先が2か所ある場合、両方の都道府県で指定を受けられますか
申請は、主として指定難病の診断を行う医療機関の所在地を管轄する都道府県に1か所だけ行います。難病データベースの指定医IDも主たる勤務先で申請し、2か所で登録することはできません。
指定医の有効期限が切れたらどうなりますか
指定の効力がなくなり、臨床調査個人票を書けなくなります。改めて新規の申請が必要になるため、有効期間内に更新申請を済ませてください。
まとめ
難病指定医は新規と更新の臨床調査個人票を書け、協力難病指定医は更新用だけを書けます。診療経験5年以上を前提に、告示に載った専門医の資格があれば難病指定医、無ければ研修を受けて難病指定医か協力難病指定医を選びます。指定は5年ごとの更新が必要なので、指定日と満了日を院内で管理し、オンライン登録を使うかどうかも合わせて決めておきましょう。
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参考
- 難病の患者に対する医療等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第121号)
- 難病の患者に対する医療等に関する法律施行規則第十五条第一項第一号イに規定する厚生労働大臣が定める認定機関が認定する専門医の資格(平成26年厚生労働省告示第433号)
- 難病指定医及び協力難病指定医の皆さまへ(臨床調査個人票の「診断年月日」欄の追加)(厚生労働省)
- 難病指定医制度の要件・申請手続について(東京都 難病ポータルサイト)
- 難病指定医(協力難病指定医)の指定に係る研修について(東京都 難病ポータルサイト)
- 指定難病要支援者証明事業(いわゆる「登録者証」)について(東京都 難病ポータルサイト)
- 難病指定医の指定申請について(広島県)
- 難病指定医向けオンライン研修及び協力難病指定医向けオンライン研修について(和歌山県)
- 次期「難病・小慢データベース」を介した臨床調査個人票・医療意見書のオンライン登録について(北海道)
- 指定難病に係る臨床調査個人票のオンライン化について(川崎市)
- 難病情報センター
特徴
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オプション機能
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診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
