処方日数が90日を超えたからといって、それだけでレセプトにコメントを書く決まりはありません。コメントが要るかどうかは、処方日数ではなく「その薬に日数の上限があるか」で決まります。
上限のない薬なら、90日を超えても記載は必須ではありません。ただ、審査で長すぎると見られないよう、理由を摘要欄に書いておく院は多くあります。一方で、14日・30日・90日の上限がある薬は、上限を超えた分がそもそも認められません。例外として理由を書けば上限を超えられるのは、14日が上限の薬だけです。
この記事は、長期処方のレセプトを点検する医療事務の方と、処方を決める院長に向けて、薬の種類ごとの扱いと、摘要欄に書く理由の例をまとめたものです。内容は令和8年度診療報酬改定後(2026年6月1日適用)の記載要領と点数表で確かめています。
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処方日数90日以上でレセプトのコメントが要るかは、薬の日数上限で決まる
保険診療での投薬量は、保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)の第20条第2号ヘで「予見することができる必要期間に従ったもの」と決まっています。そのうえで、厚生労働大臣が定める内服薬・外用薬だけに、1回14日分・30日分・90日分の上限が付いています。
つまり、ほとんどの薬には処方日数の上限そのものがありません。判断は次の表のとおりです。
| 処方する薬 | 90日を超える処方 | レセプトのコメント |
|---|---|---|
| 日数上限のない薬(降圧薬、脂質異常症の薬など多くの内服薬) | できる。必要期間として妥当かが審査で見られる | 必須ではない。理由が病名から読み取れないときは書いておくと安全 |
| 90日が上限の薬(ジアゼパム、フェノバルビタールなど) | できない。91日分以上は認められない | 書いても上限は超えられない |
| 30日が上限の薬(ゾルピデム、エチゾラムなど) | できない | 書いても上限は超えられない |
| 14日が上限の薬(麻薬・向精神薬のうち30日・90日の区分に入らないもの、薬価収載から1年以内の新医薬品) | 原則できない。特殊な事情があるときだけ例外がある | 14日を超えたら理由の記載が必須(コメントコード830100206) |
点検の順番は、まず処方された薬に上限があるかを確かめ、上限がなければ日数が病状と受診間隔に合っているかを見る、の2段階です。
処方日数の上限(14日・30日・90日)がある薬と、レセプトでの扱い
上限のある薬は「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」(平成18年厚生労働省告示第107号)の第十に並んでいます。クリニックでよく出る薬に絞ると、区分は次のとおりです。
| 上限 | 主な対象 |
|---|---|
| 14日分 | 麻薬・向精神薬(いずれも30日・90日の区分に入るものを除く。オキシコドン・モルヒネ・フェンタニルなどは30日分の区分)、薬価基準に載った月の翌月1日から1年たっていない新医薬品 |
| 30日分 | アルプラゾラム、エチゾラム、ゾルピデム酒石酸塩、トリアゾラム、ブロチゾラム、オキシコドン塩酸塩など |
| 90日分 | ジアゼパム、ニトラゼパム、フェノバルビタール、クロナゼパム、クロバザムを含む内服薬など |
90日が上限の薬は、90日分ちょうどなら問題ありません。「90日以上」で引っかかるのは91日分からです。上限は1回の処方あたりなので、定期処方の薬と同じ日数で一括して入力すると超えてしまうことがあります。上限のある薬だけ日数を分けて入力しているかを、レセプトの点検で確かめてください。
新医薬品の上限は、収載から1年が過ぎると外れます。前月まで14日分だった薬が、今月から長期で出せるようになっていることもあるので、解除日はマスタの更新とあわせて確かめます。
日数上限のない薬を90日以上処方するとき、レセプトのコメントは任意
上限のない薬であれば、120日分や180日分の処方も制度上はできます。記載要領の別表Ⅰ(摘要欄への記載事項等一覧)にも、日数が長いことだけを理由にした記載事項はありません。
ただし、療担規則の「予見することができる必要期間」という考え方は残ります。病名や受診の間隔から長期の必要性が読み取れないと、審査で過剰な投与と判断されることがあります。そこで、事情があって長く出すときは、摘要欄に理由を短く書いておくのが実務上の備えになります。
摘要欄に書く理由の例
別表Ⅰにない事項なので、選択式のコメントコードはありません。フリーコメント(コメントコード810000001)で、事情と期間が分かるように書きます。
- 海外赴任のため120日分処方(2026年11月出国、2027年3月帰国予定)
- 長期入院中の家族の付き添いで通院が困難なため、100日分処方
- 遠方の離島在住で定期船の運航が限られるため、120日分処方
書くのは「なぜ通常の受診間隔では来られないか」と「その期間」です。「患者希望のため」だけでは、なぜ必要期間なのかが伝わりません。
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14日限度の薬を長期投与したときのコメントコード830100206
14日が上限の薬だけは、例外の道があります。記載要領の別表Ⅰ(医科)の項番396では、長期の旅行など特殊な事情があって、必要最小限の範囲で14日を超えて投与したとき、その理由を摘要欄に書くことになっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| コメントコード | 830100206 |
| レセプトの表示 | 長期投与理由(薬剤料・処方箋料);(理由を入力) |
| 記載する場面 | 院内処方の薬剤料、院外処方の処方箋料のどちらでも |
院外処方の場合は、処方箋の備考欄にも長期投与の理由を書きます。保険薬局は、調剤報酬明細書に「海外への渡航」「年末・年始又は連休」「その他」のどれに当たるかをコメントで記録します(調剤の別表Ⅰ、コメントコード820100795・820100796・830100453)。処方箋の備考欄に理由がないと、薬局から疑義照会が来ます。理由はこの3区分のどれかに当てはまる書き方にしておくと、薬局でもそのまま選べます。
特殊な事情として扱われるのは、海外渡航、年末年始、大型連休などです。この場合でも上限は一般に1回30日分までとされ、30日を超えては出せないとする扱いが広く運用されています。国内旅行や帰省、お盆休みは対象外とする案内も多いため、迷う事情なら処方の前に審査支払機関の地域の取扱いを確かめてください。
30日・90日が上限の薬には、記載要領にこのような例外の記載事項がありません。理由を書いても上限は超えられないので、事情があるなら処方の回数を分けるしかありません。
処方日数90日以上で査定されやすいパターン
上限のない薬でも、次のような形は審査で目に留まりやすくなります。どれも、病名と処方日数、受診の間隔がかみ合っていない状態です。
| パターン | 点検で見るところ |
|---|---|
| 急性疾患の病名だけで、長期の処方が付いている | 慢性疾患の病名が付いているか。病名が付いていなければ医師に確認する |
| 屯服薬・頓用の外用薬が、日数に見合わない量で出ている | 1日の使用量×日数と、処方量が合っているか |
| 前回の処方から次の受診までの間隔より、処方日数がずっと長い | 残薬の調整か、受診間隔の変更か。理由をコメントにするか判断する |
| 日数上限のある薬が、定期処方と同じ日数で入っている | 上限のある薬だけ日数を分けているか |
| 新医薬品が、収載から1年たっていないのに14日を超えている | 解除日を確かめ、特殊な事情があれば830100206で理由を書く |
査定の基準は審査支払機関や地域によって差があります。長期処方が多い院では、返戻や査定の通知に出てきた事例を院内で記録しておくと、どこまでが通るかの線が見えてきます。
30日を超える長期処方で医師が確認すること(処方料・処方箋料の留意事項)
90日を超えるかどうかとは別に、30日を超える処方には医師の確認事項があります。点数表の留意事項(F100処方料・F400処方箋料の(1))で、30日を超える長期の投薬では、次の2つを行うことになっています。
- 長期の投薬ができる程度に病状が安定し、服薬管理ができることを医師が確認する
- 病状が変化したときの対応方法と、医療機関の連絡先を患者に伝える
これを満たさないときは、30日以内に再診する、または病状は安定しているが服薬管理が難しい患者には分割指示の処方箋を交付する、といった対応をとります(200床以上の病院では、200床未満の病院・診療所への紹介の申出も選択肢になります)。
いずれもレセプトへの記載は求められていませんが、確認した内容はカルテに残しておきます。個別指導では、長期処方の判断が診療録から読み取れるかが見られます。
長期処方と関係の深い点数として、特定疾患処方管理加算があります。診療所と200床未満の病院で、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に、処方期間28日以上の処方をしたときに、月1回56点を算定できます。院外処方では、リフィル処方箋の複数回の使用による合計の処方期間が28日以上の場合も含まれます。
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リフィル処方箋・分割指示で処方日数を分けるときのレセプト
90日を超える長期の処方をしたいが、一度に出すのは不安がある。そういうときは、リフィル処方箋か分割指示の処方箋で、薬局での受け取りを分ける方法があります。
| リフィル処方箋 | 分割指示の処方箋 | |
|---|---|---|
| 向いている条件 | 病状が安定していて、薬局での確認を挟みながら受診の回数を減らしたい | 病状は安定しているが、まとめて渡すと服薬管理が難しい |
| 使える回数 | 3回まで | 分割は3回まで |
| 処方箋の様式 | 様式第二号(リフィル欄にチェックし、回数を書く) | 様式第二号の二 |
| 日数上限のある薬 | 使えない(投薬期間に上限のある薬と、一部の湿布薬は対象外) | 上限の範囲内で使える |
| 処方箋料 | 交付1回につき1回算定 | 交付1回につき1回算定 |
リフィル処方箋では、療担規則上の投薬量の考え方が「1回の使用による投薬量」と「複数回の使用による合計の投薬量」に置き換わります。合計が長期になる場合も、必要期間として説明できる処方にしておきます。
令和8年度改定では、処方箋の様式にリフィル処方箋の説明が加わり、残薬を確認したときの対応欄に「調剤する薬剤を減量した上で保険医療機関に情報提供」の項目が新しく設けられました。ここにチェックがある処方箋では、薬局が残薬に合わせて投与日数を減らして調剤し、原則として翌営業日までに医療機関へ情報提供します。長期処方で残薬が出やすい患者には、この欄を使うと次回の処方日数を調整しやすくなります。
リフィル処方箋の対象薬や運用は「リフィル処方箋とは? 仕組み・対象・使い方とクリニック側の運用を解説」にまとめています。
よくある質問
90日分ちょうどの処方にもコメントは要りますか
日数上限のない薬なら、90日分でも記載は必須ではありません。90日が上限の薬でも、90日分ちょうどは上限の範囲内です。
30日が上限の睡眠薬を、海外渡航のため60日分出せますか
出せません。理由を書いて上限を超えられるのは、14日が上限の薬だけです。30日・90日が上限の薬は、渡航の事情があっても1回の処方で上限を超えることはできません。
長期投与の理由はレセプトと処方箋のどちらに書きますか
14日が上限の薬を院外処方で長期に出すときは、両方に書きます。医療機関のレセプトにはコメントコード830100206で、処方箋には備考欄に理由を書きます。院内処方なら、レセプトの摘要欄だけです。
上限のない薬で長期処方が返戻されました。どう直せばよいですか
返戻の理由が日数なら、長期処方が必要だった事情(病状の安定、通院が難しい事情と期間)をコメントで補って再請求します。病名が付いていないことが原因なら、病名を追加します。
まとめ
- 処方日数90日以上でコメントが要るかは、薬の日数上限で決まる。上限のない薬なら記載は必須ではない
- 上限のない薬でも、病名から長期の必要性が読み取れないときは、フリーコメントで事情と期間を書いておく
- 30日・90日が上限の薬は、理由を書いても上限を超えられない
- 14日が上限の薬だけは、特殊な事情があればコメントコード830100206で理由を書いて長期に出せる。院外処方では処方箋の備考欄にも書く
- 30日を超える処方では、病状の安定と服薬管理を医師が確かめ、病状が変わったときの連絡先を患者に伝える
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参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について」(令和8年3月27日保医発0327第2号)別表Ⅰ https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732129.xlsx
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添1(医科診療報酬点数表に関する事項) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 厚生労働省「医科診療報酬点数表」(令和8年度) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省「保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第5号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666979.pdf
- 厚生労働省「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について(令和8年3月27日保医発0327第6号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732116.pdf
- 厚生労働省「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」(平成18年厚生労働省告示第107号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa7837&dataType=0&pageNo=1
- e-Gov法令検索「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(昭和32年厚生省令第15号) https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50000100015
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
