デュピクセントを処方した月のレセプトには、薬剤名と点数だけでなく、摘要欄に決められた記載事項を入れる必要があります。何を書くかは、診療報酬請求書等の記載要領の「別表Ⅱ(薬価基準)」に、効能ごとに定められています。
アトピー性皮膚炎で使う場合でも、書くのは「アトピー」の一言ではありません。治療の責任者の要件、投与前の外用薬による治療の状況、IGAスコアやEASIスコアなどを、それぞれ決まったコメントコードで記録します。
この記事は、デュピクセントを扱う皮膚科・呼吸器科・耳鼻咽喉科・小児科の診療所で、レセプトを作る医療事務の方と、記載内容を確認する院長に向けたものです。効能ごとの記載事項、コメントコードの選び方、継続投与の月の書き方、在宅自己注射指導管理料と重なる月の記載を扱います。どの患者に投与するか、用量や投与間隔といった治療の判断は扱いません。効能・効果や用法・用量は、PMDAの添付文書で確かめてください。
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デュピクセントのレセプトコメントの根拠は記載要領の別表Ⅱ
記載要領(令和8年3月27日保医発0327第2号)は、摘要欄に書く事項を4つの別表に分けています。デュピクセントのような個別の医薬品の記載事項は、このうち「別表Ⅱ 診療報酬明細書の『摘要』欄への記載事項等一覧(薬価基準)」に載っています。
電子レセプトで請求している場合は、別表Ⅱの「レセプト電算処理システム用コード」欄にあるコードを選んで記録します。数値や文章を入れるコードは、コードを選んだうえで値を入力します。
令和8年度改定では、別表Ⅱにも「令和8年6月1日適用」の印が付いたコードが加わりました。記載要領は、この印のコードを令和8年10月診療分以降に選択すればよいとしていました。デュピクセントでは、効能そのものを示すコード(アトピー性皮膚炎なら820600568)がこの印付きです。2026年10月診療分からは、効能のコードも忘れずに入れます。
デュピクセントの効能ごとの記載事項の早見表
2026年7月30日訂正後の別表Ⅱで、デュピクセントの記載事項が定められているのは次の6つの効能です。
| 効能 | 効能を示すコード | 投与開始時に書く主な事項 | 継続投与の月に書くこと |
|---|---|---|---|
| アトピー性皮膚炎 | 820600568 | 施設要件(ア〜ウ)、前治療要件(ア〜ウ)、IGAスコア、EASIスコア、病変の体表面積の割合 | 投与開始時の情報を記載する |
| 気管支喘息 | 820600569 | 施設要件(ア〜ウ)、患者要件(ア・イ)、該当する場合はLABAを併用できない理由やICSを増量しない理由 | 別表Ⅱに継続時の定めはない |
| 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎 | 820600570 | 施設要件ア、患者の要件ア〜ウ、手術の実施年月日または手術が適応とならない理由、投与前の鼻茸スコア等 | 医師要件、継続投与前の鼻茸スコア等、24週を超える場合はその理由 |
| 既存治療で効果不十分な結節性痒疹 | 820600571 | 既存治療の薬剤の品名と使用期間、投与開始時の痒疹結節数・病変部位・そう痒スコア | 別表Ⅱに継続時の定めはない |
| 慢性閉塞性肺疾患 | 820600572 | 施設要件(ア・イ)、%FEV1、血中好酸球数、3剤併用療法の治療期間、患者要件、非薬物療法の管理計画の作成日と実施確認日 | 投与期間の区分(ア〜ウ)、非薬物療法の実施確認日、継続が必要と判断した理由 |
| 中等症から重症の水疱性類天疱瘡 | 別表Ⅱに効能コードなし | 疾患重症度、先に使った全身性ステロイド薬の品名、併用する全身性ステロイド薬の品名 | 別表Ⅱに継続時の定めはない |
水疱性類天疱瘡の行は、効能を示すコードがない代わりに、記載事項ごとのコード(疾患重症度は842600064など)で記録します。別表Ⅱに載っていない効能で使うときは、別表Ⅱ上の記載事項はありません。ただし、傷病名欄と効能のつながりは、ほかの薬と同じく審査で見られます。
アトピー性皮膚炎でデュピクセントを使うときのコメントコード
診療所で扱うことが多いアトピー性皮膚炎について、記録するコードを並べます。
| 記載する事項 | 選ぶもの | コード |
|---|---|---|
| 効能 | アトピー性皮膚炎(デュピクセント皮下注) | 820600568 |
| 治療の責任者の要件 | 施設要件ア/イ/ウのうち該当する1つ | 820600167/820600189/820600193 |
| 投与前の抗炎症外用薬の治療状況 | 前治療要件ア/イ/ウのうち該当する1つ | 820600181/820600317/820600182 |
| 疾患活動性 | IGAスコア(数値を入力) | 842600078 |
| 疾患活動性 | 全身のEASIスコア、または頭頸部のEASIスコア(数値を入力) | 842600079/842600080 |
| 疾患活動性 | 体表面積に占める病変の割合(%を入力) | 830600109 |
施設要件と前治療要件は、記号で選ぶだけで済みます。ただ、記号がどの条件を指すかは成人と小児で分かれています。
- 施設要件のアは成人・小児の両方、イは成人、ウは小児に投与する場合の要件です。治療の責任者として配置されている医師が、どの要件に当たるかで選びます。
- 前治療要件のアは成人、イは小児で、それぞれ推奨される外用薬による治療を直近6か月以上行っている場合です。ウは成人・小児とも、外用薬の副作用などで外用薬だけの治療を続けにくい場合です。
どの記号に当たるかは、事務が推し量って選ぶものではありません。医師が診療録に書いた内容から転記します。院内で一度「施設要件はイ」のように決めておけば、毎回迷わずに済みます。
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継続投与の月のデュピクセントのレセプトコメント
アトピー性皮膚炎の記載事項には、「本製剤の継続投与に当たっては、投与開始時の情報を記載すること」とあります。2回目以降の月も、投与開始時に入れたIGAスコアやEASIスコアなどを、同じ値のまま毎月記録します。その月に測り直した値に差し替えるものではありません。
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と慢性閉塞性肺疾患は、継続投与の月に書く事項が別に定められています。
- 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、継続投与前の鼻茸スコアと鼻閉重症度スコアを入れます。24週間を超えて投与する場合は、継続が必要かつ適切と判断した理由(830600103)も入れます。
- 慢性閉塞性肺疾患は、初回投与から何週目か(12週間未満・12週間以上52週間未満・52週間以上の3区分)を選び、非薬物療法の実施を確認した直近の年月日と、継続が必要と判断した理由を入れます。
前月のコメントをそのまま複写すると、区分の切り替わりを取りこぼします。12週・24週・52週の節目が来る月は、請求前に投与開始日から数え直してください。
在宅自己注射指導管理料を算定する月のデュピクセントの記載
デュピクセントは、在宅自己注射指導管理料(C101)の対象となる注射薬に含まれています。自己注射に切り替えた患者では、別表Ⅰ(医科)の在宅自己注射指導管理料の記載事項と、別表Ⅱのデュピクセントの記載事項の両方が同じレセプトに載ります。
| 場面 | 別表Ⅰ(在宅自己注射指導管理料)で書くこと | 別表Ⅱ(デュピクセント)で書くこと |
|---|---|---|
| 院内で自己注射用の薬剤を支給した月 | 薬剤の総点数、所定単位当たりの薬剤名、支給日数(830100480) | 効能ごとの記載事項 |
| 院外処方で薬剤を出した月 | 薬剤の支給に関する記載は不要(別表Ⅰは院外処方の場合を除くとしている) | 効能ごとの記載事項(入れ方は下の注意を参照) |
| 緊急時に受診して注射した月 | 緊急時の受診である旨(820100656)と受診した年月日(850100133) | 効能ごとの記載事項 |
院外処方で出す場合、デュピクセントの薬剤料は薬局の調剤報酬明細書に載ります。それでも、施設要件や投与前の治療状況を知っているのは処方した医療機関です。自院のレセプトでどの行に別表Ⅱのコメントを付けるかは、使っているレセコンの仕様と、審査支払機関の案内で確かめてください。
外来で医師が注射する月(院内で皮下注射を算定する月)も、別表Ⅱの記載事項は同じです。
デュピクセントのコメントで返戻を招きやすい書き方
別表Ⅱの記載事項は項目が多いぶん、1つ抜けるだけで返戻のもとになります。ありがちなのは次のような形です。
- 効能のコード(820600568など)を入れず、施設要件やスコアだけを入れている。10月診療分からは効能のコードも選ぶ
- EASIスコアを全身と頭頸部の両方に入れる、またはどちらのコードかを取り違える
- 継続投与の月に、投与開始時の値ではなく最新の測定値を入れている(アトピー性皮膚炎)
- 慢性閉塞性肺疾患で、12週・52週を過ぎても投与期間の区分を前の月のまま複写している
- 傷病名欄に、使っている効能の傷病名が見当たらない
最後の点は、傷病名を付け足して解決するものではありません。診療録に書かれた傷病名がレセプトに転記されているか、まず確かめます。
電子カルテやレセコンで、デュピクセントを入力したときに別表Ⅱのコメント入力を促す設定(セット登録や必須コメントの紐づけ)にしておくと、入れ忘れを減らせます。投与開始時の値をカルテの決まった場所に残しておけば、毎月の転記も迷いません。
似た型のコメントとして、エンシュアを外来で処方するときのレセプトコメントやビタミン剤のレセプトコメントも整理しています。摘要欄そのものの位置はレセプトの摘要欄はどこ?にまとめています。
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よくある質問
紙レセプトで請求している場合はどう書きますか
紙レセプトでは、別表Ⅱの記載事項を摘要欄に文章で書きます。コードを使わない代わりに、「施設要件イ」「IGAスコア3」のように、記載事項が読み取れる形で書きます。
他院でデュピクセントを始めた患者を引き継いだ場合、投与開始時の情報はどうしますか
アトピー性皮膚炎では、継続投与の月も投与開始時の情報を記載します。紹介状などで前医の投与開始時のスコアや前治療の状況を確かめ、診療録に残してから転記します。施設要件は、引き継いだ自院の治療の責任者が当たる要件で選びます。
同じ患者にアトピー性皮膚炎と気管支喘息の両方で使っている場合は
別表Ⅱは効能ごとに記載事項を定めています。どちらの効能で使っているかを医師に確かめ、その効能の記載事項を入れます。両方の効能にまたがる場合の扱いは、審査支払機関に確かめてから運用を決めてください。
まとめ
デュピクセントのレセプトコメントは、記載要領の別表Ⅱで効能ごとに決まっています。2026年10月診療分からは、効能を示すコードも選びます。アトピー性皮膚炎は継続投与の月も投与開始時の値を入れ、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と慢性閉塞性肺疾患は継続時の事項を別に入れます。在宅自己注射に切り替えた月は、在宅自己注射指導管理料の記載事項と両方が載ることを押さえておきます。
参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「『診療報酬請求書等の記載要領等について』等の一部改正について」(令和8年3月27日保医発0327第2号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001757373.pdf
- 厚生労働省 同 別表Ⅱ(薬価基準、7月30日訂正後) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732131.xlsx
- 厚生労働省 同 別表Ⅰ(医科、7月30日訂正後) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732129.xlsx
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2026年10月時点の情報を元に作成しています。
