レセプトの摘要欄は、紙の診療報酬明細書では下半分の右側、点数欄の隣にある広い欄です。左の点数欄に書いた項目の内訳や、算定の根拠になる情報をここに書きます。
ただ、いまの請求はほとんどが電子レセプトで、摘要欄は「欄」ではなく「コメントレコード」として記録されます。紙のどこに書くかよりも、何をどのコードで入れるかのほうが返戻に直結します。
この記事では、入職したばかりの医療事務の方や、レセプト点検を任された方に向けて、摘要欄の場所、電子レセプトでの記録先、書くもの・書かないものの分け方、コメントコードの選び方を順に整理します。内容は厚生労働省の「診療報酬請求書等の記載要領」(令和8年度改定後)と、審査支払機関の電子レセプト作成手引きで確かめたものです。
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レセプトの摘要欄はどこにあるか:紙の明細書での位置
クリニックの外来で使う明細書は、記載要領の「診療報酬請求書等一覧表」で「様式第2(2)」(医科・入院外)と決められています。入院は「様式第2(1)」です。
入院外の明細書は、おおまかに次の配置になっています。
| 位置 | 欄 | 書くこと |
|---|---|---|
| 上部 | 保険者番号・公費・氏名・特記事項など | 患者と保険の情報 |
| 中段の左 | 傷病名・診療開始日・転帰 | 病名と開始日 |
| 下半分の左 | 点数欄(初診・再診・医学管理…) | 区分ごとの回数と点数 |
| 下半分の右 | 摘要欄 | 点数欄の内訳、算定の根拠、補足 |
摘要欄の左端の番号は、点数欄の区分番号と対応している
摘要欄に内訳を書くときは、どの点数欄の内訳なのかが分かるように書きます。記載要領では、診療項目名の代わりに番号を使ってよく、その場合は摘要欄の左側の点線内に番号を書くとしています。
使う番号は、点数欄に印字されている区分の番号です。電子レセプトの「診療識別コード」と同じ番号なので、ここで覚えておくと後の作業が楽になります。
| 番号 | 区分 | 番号 | 区分 |
|---|---|---|---|
| 11 | 初診 | 31〜33 | 注射(皮下筋肉内・静脈内・その他) |
| 12 | 再診 | 40 | 処置 |
| 13 | 医学管理 | 50 | 手術(電子レセプトでは麻酔は54) |
| 14 | 在宅 | 60 | 検査・病理 |
| 21〜27 | 投薬(内服・屯服・外用・処方・麻毒・調基など) | 70 | 画像診断 |
| 80 | その他 |
傷病名が4つ以上あるときも摘要欄を使う
傷病名が4つ以上あるときは、まず傷病名欄の余白に番号を付けて書きます。それでも書ききれない病名は、摘要欄に番号を付けて順に書き、最終行の下に実線を引いて他の記載と分けます。電子レセプトでは、傷病名欄から溢れた病名は摘要欄に自動で表示されるので、手で書き足す必要はありません。
電子レセプトの摘要欄はどこに記録されるか:COレコードと診療識別
電子レセプトでは、摘要欄に出る文字の多くは「コメントレコード」(レコード識別情報「CO」)として記録されます。1件のコメントレコードには、次の4つを入れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 診療識別 | どの区分のコメントか(上の表の番号。全体に係るものは99) |
| 負担区分 | 対象の診療行為を負担する保険(医保単独なら1) |
| コメントコード | 9桁。先頭は必ず8 |
| 文字データ | コードのパターンに応じて入れる文字や数字 |
たとえば審査支払機関の手引きにある例では、検査の欄に「術前検査」と書く場合、CO,60,1,810000001,術前検査 と記録され、レセプトでは検査の内訳の行に「術前検査」と表示されます。紙で「60」の番号の横に書いていたものが、電子では診療識別「60」として記録される、という対応です。
症状詳記は摘要欄とは別のレコード
コメントで書ききれない経過や、医師が説明する症状は「症状詳記レコード」(「SJ」)に入れます。症状詳記区分は「01 主たる疾患の診断根拠となった臨床症状」「03 主な治療行為の必要性」「07 その他」などがあり、1区分あたり全角1,200文字を超える場合はレコードを分けて記録します。
コメントは事務が算定ごとに入れるもの、症状詳記は医師が書いた説明を載せるもの、と分けて考えると迷いません。
摘要欄に自動で出る内容もある
電子レセプトでは、次の内容は医療機関が個別に書かなくても摘要欄に表示されます。
- 傷病名欄から溢れた傷病名と診療開始日
- 第3公費以降の資格情報と合計点数
- 振替保険者番号
- 診療行為の情報から自動で設定される内容
摘要欄に書くもの・書かないもの
摘要欄に書くのは、大きく分けて4種類です。
- 点数欄に書ききれない診療行為の名称・回数・点数(内訳)
- 記載要領の別表Ⅰ〜Ⅳで「摘要欄に記載すること」とされている事項
- 傷病名欄から溢れた病名(紙レセプトの場合)
- 記載要領で個別に指定された事項(要介護者に介護保険相当のサービスを行ったときの「介」、月の途中で保険が変わったときの変更の旨など)
迷いやすいのは、書かなくてよいものです。
| 書きたくなるもの | 判断 |
|---|---|
| 別表Ⅰで「紙レセのみ記載」に○が付いている事項 | 電子レセプトではコメント不要。診療行為コードを入れれば自動で表示される |
| 別表Ⅰにコードがある事項を、自由文(810000001)で書く | 書かない。該当するコードを選ぶ |
| 審査側への連絡やお願い | 書かない。算定の根拠でなければ摘要欄の役目ではない |
| 医師の長い説明 | コメントではなく症状詳記へ |
| 病名から明らかな投与理由 | 別表Ⅰの記載事項に「病名で判断できる場合はこの限りでない」とあるものは不要 |
別表Ⅰの欄外には、「紙レセのみ記載」の○の事項は、電子請求ではコードを記録すれば必然的に記載される内容になるので、別途コメントとしての記載は不要と明記されています。同じ内容を二重に書くと、点検のたびに目で見比べる手間だけが増えます。
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摘要欄のコメントコードの選び方:別表Ⅰから引く手順
電子レセプトでは、別表Ⅰ〜Ⅳの「レセプト電算処理システム用コード」欄にコードがある項目は、そのコードを選ぶことになっています。自由文で書いてよいのは、該当するコードが無いときです。
手順1:算定した項目で別表Ⅰを引く
別表Ⅰ(医科)は、区分番号と診療行為の名称の順に並んでいます。令和8年度版のExcelでは612項目、記録できるコメント関係のコードは2,000件を超えます。算定した項目の区分番号(A000、B001など)で検索するのが早いです。
手順2:記載事項の条件に当てはまるかを読む
同じ項目の中に、条件ごとに複数の記載事項が並んでいます。たとえば初診料(A000)では、前月の初診に附随する検査結果の説明などで後日来院した場合に、来院の理由を「ア」「イ」「ウ」から選ぶ形になっています。自院の算定がどの条件に当たるかを先に決めます。
手順3:コードの頭3桁で、入れる情報の形を確かめる
コメントコードは「区分1桁+パターン2桁+番号6桁」の9桁で、頭の3桁を見ると何を入れるコードかが分かります。
| 頭3桁 | パターン | 入れるもの | 例(別表Ⅰ・医科) |
|---|---|---|---|
| 810 | 10 | 自由文(該当コードが無いとき) | 810000001 |
| 820 | 20 | 何も入れない。コードの文言がそのまま出る | 820100742 隔日投与 |
| 830 | 30 | 定型文の後ろに続く文字(薬剤名・検査名・理由など) | 830100060 検査名(悪性腫瘍特異物質治療管理料) |
| 831 | 31 | 診療行為コード | 入院の加算など |
| 840 | 40 | 定型文の中に埋め込む数字 | 退院年月日など |
| 842 | 42 | 定型文の後ろに続く数字(回数・検査値) | 通算実施回数など |
| 850 | 50 | 年月日 | 850100514 手術年月日(薬剤料・処方箋料) |
| 851・852・853 | 51〜53 | 時分・分・日時分 | 開始時刻、診療時間など |
| 880 | 80 | 年月日と検査値 | 前回の検査値など |
| 890 | 90 | 修飾語(部位)コード | 画像診断の部位 |
820は選ぶだけで済みますが、830以降は文字や数字を入れ忘れると、意味の通らないコメントになります。数字は全角で入れ、文字データは1件あたり全角38文字(76バイト)までなので、長い理由はコメントレコードを分けて記録します。
手順4:「令和8年6月1日適用」の印を確かめる
令和8年度改定で新しく設けられたコードには、別表Ⅰの右端の列に「令和8年6月1日適用」の印が付いています。記載要領では、この印のコードは令和8年10月診療分以降に選択するものとして差し支えないとしています。言い換えると、9月診療分までは従来の書き方でもよかったものが、10月診療分からはコードでの記録に切り替わります。
再診料の「健診等の実施とは別の受診において保険診療を実施した」(820101331)や、2つ目の診療科の初診料で1つ目の診療科を記録するコード(830100923)がその例です。11月の請求の前に、自院でよく算定する項目に印の付いたコードが無いかを一度見ておくと安心です。
摘要欄の入力はレセコン・電子カルテのどこから行うか
画面の名前は製品ごとに違いますが、入れる場所の考え方は共通です。
| 入れたいもの | 入力する場所の目安 |
|---|---|
| 特定の算定項目に付くコメント | 診療行為の入力画面で、その項目のすぐ前か後ろにコメントコードを入れる |
| レセプト全体に係るコメント | 全体用のコメント(診療識別99に当たるもの)の入力欄 |
| 症状詳記 | 症状詳記の専用画面 |
| 傷病名の補足 | 病名登録の画面(摘要欄ではない) |
電子レセプトの決まりでは、コメントは対象の点数・回数の算定単位の直前か直後に記録できます。離れた場所に入れると、どの項目のコメントか読み取れなくなるので、算定項目と並べて入れるのが基本です。
電子カルテとレセコンを連携している場合、カルテ側で入れたコメントがレセコンにそのまま送られるか、レセコン側で入れ直す必要があるかは、連携の仕方によって違います。どちらで入れるかを院内で1つに決めておかないと、二重入力や入れ忘れの原因になります。
摘要欄の入れ忘れを提出前に見つける点検
審査支払機関の受付・事務点検ASPでは、コメントについて次のような形式のエラーを返します(令和8年10月版のチェック一覧より)。
- コメントコードの先頭が「8」以外(L2307)
- マスターに無いコード(コメントコードを含む摘要のコード)が記録されている(L3303)
- コメントの文字データに外字が含まれている(L3390)
ただし、ASPが見るのは主に記録の形式です。別表Ⅰで書くべきコメントが足りているかどうかは、自院の点検で見ることになります。毎月の点検では、次の順で確かめると入れ忘れが減ります。
- 今月算定した項目のうち、別表Ⅰに記載事項がある項目を一覧にする(レセコンのコメント必須チェックがあれば使う)
- 830以降のコードで、文字や数字が空のものが無いかを見る
- 「令和8年6月1日適用」の印の付いたコードを、10月診療分から自由文のままにしていないかを見る
摘要欄の不備で返戻になったときの出し直しは「ORCAで返戻レセプトを再請求する手順」に、返戻・査定を減らす仕組みづくりは「レセプト返戻・査定を減らす電子カルテの請求機能の仕組み化」にまとめています。
個別の項目の書き方は、「特定保険医療材料のレセプトの書き方」(材料の摘要欄の記載順)や、「アレルギー性鼻炎免疫療法治療管理料の算定要件」(初回算定年月日の記載)で扱っています。
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よくある質問
摘要欄に書ききれないときはどうしますか
紙の明細書では、明細書と同じ大きさの用紙に、診療年月・医療機関コード・患者氏名・保険種別・保険者番号・記号番号を書いたうえで内容を書き、続紙として明細書の次に重ねて左上端を貼り付けます。電子レセプトでは欄の大きさの制限は無く、コメントレコードを必要な数だけ記録します。1件の文字データは全角38文字までです。
摘要欄の記載例はどこで見られますか
厚生労働省の令和8年度診療報酬改定のページに、記載要領の通知と別表Ⅰ〜Ⅴ(Excel)が載っています。別表Ⅰの「左記コードによるレセプト表示文言」の列が、実際に摘要欄に表示される文言です。
まとめ
- 摘要欄は、紙の明細書(様式第2)では下半分の右側。左端の番号は点数欄の区分番号と同じ
- 電子レセプトでは、摘要欄の多くはコメントレコード(CO)として記録し、医師の説明は症状詳記(SJ)に入れる
- 別表Ⅰにコードがある事項はコードを選ぶ。「紙レセのみ記載」の○の事項は電子では書かない
- コードの頭3桁で入れる情報の形が決まる。830以降は文字や数字の入れ忘れに注意
- 「令和8年6月1日適用」のコードは、10月診療分からコードで記録する
参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について 令和8年3月27日保医発0327第2号、別表Ⅰ〜Ⅴ) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について(令和8年3月27日保医発0327第2号・0730訂正後) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732127.pdf
- 厚生労働省 別表Ⅰ「診療報酬明細書の「摘要」欄への記載事項等一覧」(0730訂正後) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732129.xlsx
- 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構「レセプト電算処理システム」(記録条件仕様・電子レセプトの作成手引き) https://www.hpdx.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.html
- 社会保険診療報酬支払基金「レセプト電算処理システム 電子レセプトの作成手引き -医科- 令和6年9月版」 https://www.hpdx.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/iryokikan_02.files/jiki_i01.pdf
- 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構「受付・事務点検ASPに係るチェック一覧(医科)令和8年10月版」 https://www.hpdx.or.jp/seikyushiharai/iryokikan/download/index.files/checkichiran_ika.pdf
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この記事は、時点の情報を元に作成しています。
