国民健康保険や後期高齢者医療の保険料を長く滞納している患者は、市町村や広域連合から「特別療養費を支給する」旨の通知を受け、窓口で医療費の全額を払う扱いになることがあります。医療機関は、通常どおり保険診療として点数を算定したうえで、患者から10割を受け取ります。
それでも、この患者の分の明細書は、国保連合会に出す必要があります。審査支払機関から医療機関にお金が入らない分なのに、明細書を出さなければならない点が、毎月の請求でつまずきやすいところです。
この記事は、受付と会計、レセプトを担当する診療所の医療事務の方に向けて、特別療養費の対象患者が来たときの受付・会計・明細書(届書)の書き方を整理したものです。保険料の滞納の相談や、患者が市町村に申請する手続きの詳細は扱いません。協会けんぽ・健保組合の加入者は、この記事の対象外です。
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特別療養費とは何か|2024年12月からは事前通知で切り替わる
特別療養費は、国民健康保険法第54条の3と、高齢者の医療の確保に関する法律第82条に定められた給付です。保険料を滞納している世帯(後期高齢者医療では滞納している被保険者)について、市町村や広域連合が納付の勧奨や相談の機会を設けてもなお納付がない場合に、療養の給付の代わりに特別療養費を支給します。
患者から見ると、窓口でいったん10割を払い、あとで市町村や広域連合に申請して、保険から出る分の払い戻しを受ける仕組みです。
以前は、対象の世帯に「被保険者資格証明書」が交付されていました。2024年12月2日に健康保険証の新規発行が終わり、マイナ保険証を基本とする仕組みに移ったのにあわせて、資格証明書は廃止されました。いまは、市町村や広域連合が特別療養費に切り替える前に、その旨と開始の予定年月日を本人に通知する形です(国民健康保険法第54条の3第3項、高齢者の医療の確保に関する法律第82条第3項)。
対象になった患者には、自治体によって「資格確認書(特別療養)」のような名称の書類が交付されます。マイナ保険証で受診することもできます。書類の名称や表示のしかたは保険者ごとに違うので、地域の市町村・広域連合の案内で確かめてください。
なお、記載要領の法別番号表にある「特別療養費(法第145条関係)」は、健康保険の日雇特例被保険者についての別の制度です。この記事で扱う国保・後期高齢者医療の特別療養費とは、根拠も扱いも別物です。
特別療養費の対象になるかの判定表
受付で「この患者は特別療養費の扱いか」を判断する材料をまとめます。
| 患者の状況 | 扱い | 受付ですること |
|---|---|---|
| 「特別療養」などと書かれた資格確認書を提示した | 特別療養費の対象 | 10割を受け取る前提で会計に回す |
| マイナ保険証で資格確認をし、特別療養費の対象である旨が分かった | 特別療養費の対象 | 同上 |
| 患者が特別療養費の通知を受けたと話すが、手元の書類で確かめられない | 判断を保留 | 保険者(市町村国保・広域連合)に確かめる |
| 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども(国保) | 法律上、特別療養費の対象から除かれる | 通常の保険診療として受け付ける |
| 原爆一般疾病医療費の支給などを受けられる人 | 法律上、特別療養費の対象から除かれる | 通常の保険診療として受け付ける |
| 協会けんぽ・健保組合などの被用者保険の加入者 | この制度の対象外 | 通常の保険診療として受け付ける |
迷いやすいのは、同じ世帯の中で扱いが分かれる場合です。国保では、世帯の大人は特別療養費の対象でも、高校生年代までの子どもは通常の保険診療になります。家族で受診したときは、1人ずつ確かめます。
特別療養費の患者の会計|窓口で10割を受け取り領収書を渡す
特別療養費の対象患者の診療も、保険診療です。点数は診療報酬点数表にもとづき、ふだんどおり1点10円で算定します。違うのは窓口での受け取り方だけです。
- 患者からは、一部負担金と保険者負担分をあわせた10割を受け取る
- 受け取った全額が分かる領収書を交付する。患者が市町村や広域連合に特別療養費を申請するときに、この領収書を使う
自費診療として扱って、保険の算定ルールを外れた金額を請求するものではありません。マイナ保険証も資格確認書も出せず、資格を確かめられない場合の扱いは別の話になるので、資格確認書・資格情報のお知らせ・期限切れ保険証の受付対応を参照してください。
緊急その他やむを得ない理由で資格の確認を受けずに受診した場合について、国民健康保険法は療養費を支給する定めも置いています(第54条の3第8項)。こうした事情がある患者には、保険者に相談するよう案内します。
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特別療養費のレセプトは「届書」として明細書の様式で出す
特別療養費の対象患者を診療した医療機関は、その療養の内容を書いた届書を保険者に出す義務があります(国民健康保険法施行規則第27条の6、後期高齢者医療は高齢者の医療の確保に関する法律施行規則第55条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何を出すか | 療養を取り扱った旨の届書。様式は診療報酬明細書の様式の例による |
| 書く中身 | 医療機関の名称・所在地、患者の氏名等、傷病名・診療開始日・診療実日数・転帰・療養内容、算定した費用の額、保険者番号・被保険者番号など |
| いつまでに | 各月分を翌月10日まで |
| どこへ | 保険者から審査を委託されている国保連合会 |
| 区別のしかた | 明細書の上部余白に「特別療養費」と朱書きなどをして、通常の請求分と区別する |
届書としての明細書は、通常の療養の給付の請求と同じように記載するのが基本です。そのうえで、上部余白の朱書きで「お金を請求する明細書ではなく、届書である」ことが分かるようにします。この取扱いは、特別療養費の制度ができたときの厚生省の通知(昭和63年5月23日保険発第71号)で示されたものです。
保険者(審査を委託されている場合は国保連合会)は届書を審査し、算定した費用の額などの審査結果を医療機関に書面で通知します。その結果が、患者に支給される特別療養費の額のもとになります。
特別療養費の明細書を国保連合会へ出すときの実務の違い
提出のしかたの細部は、都道府県の国保連合会ごとに案内が違います。公開されている案内には、次のような例があります。
| 項目 | 国保連合会の案内の例 |
|---|---|
| 媒体 | 紙で出す。オンライン請求をしている医療機関でも紙で出すよう求める連合会がある |
| 朱書き | 明細書の上部余白に「特別療養費」と朱書きする |
| 請求書 | 診療報酬請求書の添付は不要とする連合会がある |
| 綴じ方 | 総括票の摘要欄に件数を書き、総括票の次に綴じるよう求める連合会がある(兵庫県)。指定は連合会ごとに違う |
| 期限 | 通常の請求と同じ締切日(10日)に出す |
オンライン請求に慣れた医療機関ほど、「紙で出す明細書」があること自体を忘れがちです。毎月の締め作業の中に、特別療養費の対象患者がいたかを確かめる手順を1つ入れておくと、出し忘れを防げます。具体的な媒体・綴じ方・総括票の書き方は、所在地の国保連合会の案内を必ず確かめてください。
特別療養費の対象が途中で外れたときの扱い
滞納していた保険料を完納した場合などは、市町村や広域連合が特別療養費の扱いをやめ、通常の療養の給付に戻します。その場合も、本人に通知が行きます。
受付では、前回は特別療養費の対象だった患者でも、受診のたびに資格確認の結果や提示された書類を見直します。前回の扱いをそのまま引き継ぐと、通常の負担割合(1〜3割)に戻った患者から10割を受け取ってしまうことがあります。
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よくある質問
特別療養費の患者の明細書をオンライン請求で送ってしまった場合は
届書と通常の請求の区別がつかなくなり、患者から10割を受け取っている分を保険にも請求した形になるおそれがあります。気づいた時点で国保連合会に連絡し、取り下げなどの手順を確かめてください。
患者が「特別療養費の申請をしたいので書類がほしい」と言ったら
申請に必要なのは、主に医療機関が交付した領収書です。申請先や添付書類は市町村・広域連合ごとに違うため、患者には申請先に確かめるよう案内します。
公費負担医療の受給者が特別療養費の対象になっている場合は
公費の種類によって扱いが変わります。原爆一般疾病医療費の支給などを受けられる人は、法律上の対象から外れています。それ以外の公費と重なる場合は、保険者と公費の実施機関に確かめてから会計してください。
まとめ
特別療養費の対象患者は、事前通知を受けた国保・後期高齢者医療の被保険者です。点数は通常どおり算定し、窓口で10割を受け取って領収書を渡します。そのうえで、各月分を翌月10日までに、明細書の様式に「特別療養費」と朱書きした届書として国保連合会に出します。紙で出すか、どう綴じるかは連合会の案内で確かめます。
参考
- e-Gov法令検索「国民健康保険法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行規則」 https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000100053
- e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/357AC0000000080
- e-Gov法令検索「高齢者の医療の確保に関する法律施行規則」 https://laws.e-gov.go.jp/law/419M60000100129
- 厚生省保険局国民健康保険課長通知「特別療養費に係る療養についての事務処理について」(昭和63年5月23日保険発第71号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb0707&dataType=1&pageNo=1
- 特別療養費の請求について | 国保わかやま https://www.kokuhoren-wakayama.or.jp/informations/informations-3258/
- 医療機関等の皆様へ(特別療養費明細書の提出方法) | 保険医療機関等の皆様へ | 兵庫県国民健康保険団体連合会 https://www.kokuhoren-hyogo.or.jp/medical/medical/submit.html
- 特別療養について:練馬区公式ホームページ https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/nenkinhoken/kokuminkenkohoken/hoken_hokenryo/nofusodan/tokubetsuryouyou.html
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2026年10月時点の情報を元に作成しています。
