【セミナーレポ】クリニックEXPO『ICTを活用した次世代クリニックのかたち ~院内自動化・集患の実例~』

2020年10月15日、株式会社リード エグジビション ジャパンが開催する、第一回クリニックEXPO 東京にて、クリニックの院内自動化・集患の実例についてのセミナーが行われました。

当セミナーでお話された生田 陽二 医師が運営する東小金井小児神経・脳神経内科クリニックは、ホームページに付随する集患対策を、生田 医師の圧倒的な知識とロジカルな思考をもとに行っており、都内外から患者さんが訪れます。

また、ITを活用した積極的な院内自動化がスタッフの満足度向上につながっていることからも、今後のクリニック開業・運営の参考になるとの解釈のもと、当セミナーの登壇に至りました。

本記事は、当セミナーの要点としての、ホームページやネット広告を活用した効率的な集患の方法、院内で自動化できる業務の見つけ方やそのメリットなどをまとめた内容となっています。

<セミナー概要>
・日時:2020年10月15日(木)15:00〜16:30
・会場:千葉県:幕張メッセ(第一回 クリニックEXPO[東京]セミナーにて)
・費用:無料
・プログラム:『ICTを活用した次世代クリニックのかたち ~院内自動化・集患の実例~』
・登壇者:東小金井小児神経・脳神経内科クリニック 院長 生田 陽二 医師
     株式会社Donuts CLIUS医療事業部 部長/ジョブカン新規担当 林 志紋

目次
  1. 【集患】ホームページ制作・業者選びのポイント
  2. 広告費用は月9,000円。無駄のない広告の運用方法とは
  3. 業務効率化・院内自動化のきっかけは「めんどくさい」
  4. 生田医師が行っている自動化の内容(一部抜粋)
  5. 自動化・業務効率化で、スタッフも定時退社が可能に
  6. 「毎回同じことをしている」と気づけば、自動化できるチャンス

【集患】ホームページ制作・業者選びのポイント

林 氏
まずは集患について、先生がどんなことをされているのか教えてください。
生田 医師
患者さんがインターネットを使ってクリニックを探すときに、見つけてもらうツールとして有効な「ホームページ」についてご説明します。これから開業されるかたは、集患のためにもホームページ制作が必須かと思います。
ホームページ制作の一般的な流れとしてはだいたい4つのステップに分かれます。
画像作成:編集部
     
私は昔からパソコンに触れる機会が多く、いわゆるパソコンオタクの少年だったので、プログラムを書き、趣味でホームページを作っていました。そのため、(1)〜(4)までのすべての項目を自分で行っています。

生田医師の
>>ホームページ制作、SEO・MEO対策についてはこちらの記事へ

林 氏
業者に依頼する場合はどういう点に気をつけるといいのでしょう?
生田 医師
誰かに頼むとしても、どういう流れでホームページが作られていて、どういう作業のもとで更新やアクセス解析をするのか理解しておけば、業者さんを選ぶときの感覚が付いてくると思います。
例えば更新作業は意外と簡単だから自分でやる、一箇所直すだけでも割に合わないお金が発生する業者さんは避ける等、だんだん分かってくるはずです。

サイトのアクセス解析は、GoogleのSearch Console(検索順位、検索キーワード等が確認できるツール)やGoogle Analytics(サイトに訪れたユーザー等を詳しく分析できるサービス)を見ればできますが、そういったツール・サービスの使い方がわからなければ、業者さんにデータを出してもらって、その後の(クリニックの経営を含めた)データの解釈や、コンテンツの更新など、ご自身にしかできない部分はしっかりやっていただければと思います。
林 氏
コンテンツを更新するのは大変だと思いますが、定期的に記事をアップするコツはありますか?
生田 医師
雛形を作ることだと思います。私は(1)来てほしい患者さんの疾患についての解説(2)有病率の高い疾患(3)潜在的な患者数が多い疾患、に分けて、それに該当する疾患の解説記事を書いていますが、疾患の解説記事はだいたいフォーマット化させています。構成を考える手間が減るので効率的です。

広告費用は月9,000円。無駄のない広告の運用方法とは

林 氏
では、広告という観点ではどのような施策をされていますか?
生田 医師
私はリスティング広告のみの運用をしています。地域に根ざしたクリニックさんとは違い、当院はてんかんと小児神経という非常に有病率の低い疾患を対象にしておりますので、(地域に根ざした狭い診療圏内で有効な)「看板広告」や(広くリーチして有病率の高い患者にアプローチできる)紙媒体を利用していません。

とはいえ、ネット広告であれば何でも出していいわけではなく、既にSEOで一位を取っているキーワードについては除外したほうがいいと思っています。例えば当院の場合「東小金井 神経」では検索順位が一位なので、広告ではキーワードを除外しています。

逆に「てんかん 病院」といった、幅広い範囲に対する検索キーワードであれば1ページ目に表示されるよう広告を利用しています。これらも私は業者さんに頼まずに一人でやっています。

アクセス数は、ネットに載っている情報を見た所、クリニックさんは月間平均1000程度(2014年 メディアコンテンツファクトリー調べ)とのことですが、当院の9月のアクセス解析によりますと、PVベースで月間4万ちょっと。平均検索順位は10位以内で、人気の記事は検索順位が1位や2位、CTR(平均クリック率)は8.5%(2020年9月4日現在)となっており、非常にいい成績かと思います。

広告もキーワードや表示範囲を選択していますので、クリック率も3.5%(2020年9月4日現在)と良い状態です。(ディスプレイ広告の平均クリック率は0.3% UNIAD調べ
広告料だけでいうと、私は月1万円もかけたくないと思っているので、月9,000円くらいで運用できています。
林 氏
先生すごいですね。クリック率も高く、コスパが良い運営をされていることがよく分かりました。

【集患】ホームページと広告のポイント
・ホームページ制作
→ 外注する場合も、根本的な仕組みは理解する

・アクセス解析
→できなければ業者に頼み、データ解釈やコンテンツ更新に努める

・コンテンツ更新
→記事フォーマットを作って、構成を考える手間を減らす

・広告運用
→有病率が低く診療圏が広い診療科目なので、対象範囲の広い検索キーワードでも必ず上位に表示できるリスティング広告を運用。広告費は有益な媒体に絞る

その結果……
月間4万PV、平均検索順位10位以内、CTR 8.5% 広告費月額約9,000円を達成

業務効率化・院内自動化のきっかけは「めんどくさい」

林 氏
「業務の効率化」の観点ではどういったことをされているんでしょうか?
生田 医師
私は忘れっぽいところがありますので「ミスをなくす」という意味で自動化を意識しております。
だから、CSV(表計算ソフトなどで使われるデータ形式)で吐き出したデータを別のファイルに取り込むような作業を手動ですると、必ずヒューマンエラーが生まれると思い、ワンクリックでOKな、API連携(外部サービスの機能を共有するシステム。他のサービスと簡単に連携が)できるものを探しました。

あとは正直、めんどくさいんです。院長は診察だけでない事務作業も多く、それら全てをいちいち覚えていられません。記憶の無駄を省いて、自分にしかできない診察や経営の時間に集中するために、色々なシステムを使っています。

生田医師が行っている自動化の内容(一部抜粋)

生田 医師
自動化を考える際には、経営の柱となる「会計ソフト」を中心に連携をしていきました。
画像作成:東小金井小児神経・脳神経内科クリニック院長 生田 陽二 医師
     
とはいえ、自動化することで費用面で割に合わないところもありますので、手作業の部分もあります。

例えば電子カルテCLIUSとレセプトORCAは連携していますが、ORCAとPOSレジを連携しようと思ったときに、コスト面を考えて手動での運用を決定しました。
給与ソフトと振込連携のできる銀行もあるのですが、連携のための手数料がそれなりにかかるため、こちらもコストの関係から自動化はせずに手数料の安いネット銀行を利用しています。ただ、給与ソフトの情報をCSV(表計算ソフトなどで使われるデータ形式)で吐き出して、ネット銀行から振り込んでいるので、一件一件振り込むよりはミスが少ないと思っています。

自動化・業務効率化で、スタッフも定時退社が可能に

生田 医師
日常の業務、「掃除」も自動化させています。ます、ロボット掃除機・ルンバi7などは、掃除が終わると集めたゴミまで自動で捨ててくれます。その後、床拭きロボット・ブラーバが水拭きをするようそれぞれをリンクさせています。
これらは高額ですが、スタッフの残業もなくなりますし、正直人がやるよりきれいです。私がアプリから指示を出すだけで勝手にやってくれますので、診療時間外に誰かの手が加わることもなく掃除できています。掃除の負担がない点もスタッフには好評です。

電子カルテCLIUSは診察の効率化につながっています。例えば「セット登録機能」です。当院はてんかんなど、病名が限られた患者さんを診ておりますので、処方、検査とそれに対する病名までセット化させています。病名のつけ忘れもなくスピーディーな運用ができています。
また、「クリップボード機能」(未来カルテ・患者サマリ)も活用しています。診察当日は、患者さんごとの検査や処方をセットにした予習記事をクリップボードからカルテにコピーするだけで記入が完了。当日の作業としては、コピーするためのクリックと、診察に合わせて一部修正する程度で済むので効率的です。

「文書機能」では事務スタッフや患者さんが手書きする負担を削減できていると思います。紹介状や診療情報提供書などを作成する際は、患者さんの名前・生年月日・住所・氏名等すべてをカルテから参照し自動で入力してくれるので、手動の作業がほぼ不要になりました。便利なので、あらゆる文書に対して、患者情報が自動記入されるようにしています。

生田医師に実施した「使用している電子カルテについてのインタビュー」記事をみる
>>>こちらからチェックできます

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ちなみに、今回の講演会をやるにあたってクリニックの運営に関する意見をスタッフに聞いたところ、やはり「残業がない」との声が多かったです。当院は診療が17時30分に終わるようになっており、私も診療が終わってちょっとだらだらしても18時30分には当院を出ていますし、ほぼ毎日スタッフは17時50分に退勤しています。今年になって第二子が生まれたのですが、早く帰れることは妻にも好評です。

「毎回同じことをしている」と気づけば、自動化できるチャンス

林 氏
先生はどんなことを意識して自動化させていますか?
生田 医師
「毎回同じことしてるな」と思ったら、全て自動化の対象だと思っています。プライベートでは、週に一回のコーヒーメーカーの掃除もTo Do リストで1週間ごとにリマインドしているぐらいです(笑)。こういった単純作業を覚えておく必要がなくなると、もっと大事なことに意識を向けることができると思っています。

自動化することで
・患者さんに対する診療
・論文を読む、論文を書く
・ホームページのコンテンツ作成
など、私にしかできない業務に時間を注ぐことができます。

あとは、自分が「めんどくさいな」と思っていることは他の人もめんどくさいと思っているはずなので、従業員の「めんどくさい」を軽減させたいとも思っております。
「めんどくさい」を減らすことが従業員の満足につながると思いますし、従業員が残業しなくなるとコスト削減になりますので、そこはWin-Winです。

ただ、全部が自動化できるわけではありません。自動化はできないけど自分がやりたくないものは潔く外注するのも大事で、そこはお金をかけてもいいところだと思います。



当院ではそこまで物珍しいことはやっていないと思いますが、最後のまとめとして、「デジタルトランスフォーメーション」という発想をみなさんのクリニック経営に取り入れていただくと良いのではないかと思います。

<デジタルトランスフォーメーション>
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
※参照:平成30年12月 経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.1.0


自動化のポイント
・「めんどくさい」「毎回やっていること」は自動化できる
・自動化に必要なコストを見て、手動や別の手段も検討する


その結果……
ミスの軽減、健全な勤務体系によるスタッフの満足度上昇、さらにはコスト削減が実現。診察や論文執筆など「自分がやるべきことに集中できる」環境を作れる

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診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

生田 陽二  医師

取材協力 東小金井小児神経・脳神経内科クリニック院長 | 生田 陽二 医師

てんかん専門医、小児神経専門医。お子様が成人してからも通える場所を作るべく、てんかんと小児期発症の小児神経疾患に特化したクリニックを2020年4月に開院。


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林 シモン

取材協力 株式会社Donuts 医療事業部 | 林 シモン

クラウド型電子カルテ『CLIUS』を提供する医療事業部、社長室・室長を務める。そのほか、バックオフィス業務を効率化するクラウドサービス群「ジョブカン」の新規事業立ち上げなどを担当。


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執筆 CLIUS(クリアス )

クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。


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