開業医を目指すドクターの中で、日々存在感を増しているオンラインサロン「ドクターズチャート」。「開業医による、開業医のための情報プラットフォーム」として2019年9月にオープン以降、徐々に評判が広まり、2022年4月現在、1,300名以上の医師が入会しています。
会員のみが参加できるチャットでは、これまでに5万回以上のやりとりがおこなわれているのだとか。そこではどのような情報が飛び交い、その情報をどのように医療、またはクリニックの経営に役立てているのでしょうか?サロンを主宰する現役開業医のお二方、MM先生(以下、MM)とよいこはこいよ先生(以下、よいこ)に詳しいお話を伺いました。
オンラインサロン開設の経緯
――お二人はTwitterで知り合って意気投合し、サロンを立ち上げるに至ったとのことですが、Twitterを始めたきっかけを含め、オンラインサロンをスタートするに至るまでの経緯を簡単に教えてください。
- MM
- 私がTwitterをはじめたのは2019年頃です。ある日、Twitterの情報発信がきっかけで色々な仕事につながった人がテレビで取り上げられていました。SNSで人脈や仕事が広がっていくことに興味が沸き、私もアカウントを開設してみることにしました。
当時はちょうど後輩たちが開業し始めるころで、自分も開業に関する質問を受けることが多くなっていた時期でした。さらに、彼らの質問内容は自分が開業当時悩んだことと同じ内容が多いのです。
開業を考えていることは基本的にみんな人に明かしませんし、ネットで調べても有益な情報に辿り着けないことが多いため、知り合いを頼るしかないんですよね。自分が開業して10年経っても、みんな同じように悩んでいるという現実を目の当たりにして、せっかくならと「開業情報のつぶやきをします」と明示してスタートしたんです。
1日1ツイートのノルマを自分に課して、日々つぶやき続けた結果、徐々に同業者のフォロワーが増えてきました。
それに伴い情報交換できる機会も増えましたが、Twitterでは共有できない情報も生まれてきました。それこそ「どこの電子カルテがおすすめか?」という話はオープンな場では率直な意見を言いにくいですし、人事・労務に悩んでも具体的な事情をTwitterには書けない。そういった話題を話すためのクローズドな場がほしいという声は、私の周りでもどんどん増えていました。
という時に、よいこはこいよ先生から声がかかりました。
当時、よいこはこいよ先生とリアルでお会いしたことはありませんでしたが、「オンラインサロンを立ち上げませんか?」とDMをくださったことをきっかけに、リアルでの交流もはじまりました。クリニック経営に関する考え方や、情報共有の方向性も近しいことからスムーズに話が進み、2019年10月にオンラインサロンを発足するに至りました。
- よいこ
- 私はMM先生の半年後くらいにTwitterをはじめて、お互い匿名で職業も明記していなかったのですが、つぶやいている内容から同業者だと察して、オンライン上で交流するようになりました。お互い、労務や診療に関わることも発信していましたが、センシティブな内容が含まれることもあってすべてをつぶやくことはできない。そこでオンラインサロンの必要性を強く感じるようになり連絡しました
――お二人ともITに精通されていたのですか?
- MM
- 詳しくなかったので、最初は何から手を付けていいか分かりませんでした。そこで、同じくTwitterでつながった、医師間で不動産投資の情報交換ができるオンラインサロンを立ち上げていたドクターにノウハウを教えてもらいました。その先生は、情報交換の場としてslackを使っていたので、開設方法を教えてもらいslackを用意しました。
あとはHPとしてのページを1枚作ったぐらいでしたので、時間と手間はそこまでかかりませんでした。
オンラインサロン立ち上げの告知は我々のTwitterですね。「作りました」とアナウンスしたところ、すぐに100人くらいが参加してくれたと記憶しています。
その後もじわじわとですが順調に参加者数が増えていきました。入会条件は“医師であること”のみでしたが、なりすましの人が入ってくる可能性もあると思い、医師免許のコピー提出だけはお願いしました。
――純粋に医師だけで情報共有できる環境を積み上げていった結果、参加者が増えていったのですね。
オンラインサロン内の話題や、具体的な相談内容
ーーオンラインサロンのみなさんは、具体的にはどのようなことに悩まれるのですか?
- よいこ
- 医療以外の部分が圧倒的に多いです。当たり前と言えば当たり前ですが、みんな医療従事者としてそれなりの経験を積んでから開業に踏み切っています。
逆に言えば、勤務医時代は医療行為しかおこなっていませんから、人を雇うことや経営に関しては初心者です。でも、開業医になれば開業初日から経営者としての素養が求められます。
自分の開業時を振り返ってみても、すべてに悩みましたね。医療機器は勤務医時代も使っていたのでそこまで悩まず、診療室の広さなどもこれまでの経験から分かりますが、待合室の理想的な広さとなると判断できない。迷いました。
- MM
- 私の場合、最初につまずいたのは開業場所の選定ですね。先輩開業医から紹介してもらったコンサルタントにアドバイスをいただきましたが、何を根拠に“この場所が良い”と言っているのかさえ分かりませんし、その場所を選んだところで本当に患者が来るのかを自分で計算し、想定することもできない。
- よいこ
- そもそも、開業準備にあたって誰に話を聞いたらいいかも分からなかったですよね。自分の場合は、卸なのか銀行なのか、一歩目さえも分からないというか。先輩に聞くのはオーソドックスですが、自分は悩んだ結果、街で見かけた大手卸会社の車に書いてある番号に電話して、「この辺のエリアで開業したいんですけど、開業支援部門ってありますか?」と問い合わせることからのスタートでした。ここまで行き当たりばったりのドクターはまずいないですよね(笑)。
でも、MM先生が言う通り、場所選びに関する知識も何もなかったし、今ほど経営コンサルタントや開業のサポートサービスが表に出ていた時代ではなかったから、誰に聞けば良いのか本当に分からなかったんですよ。
- MM
- 参考にするものといえば書籍くらいでしたよね。でも参考本を読んだからと言って、具体的にどの会社と契約を交わしたら良いかは書いてありませんし、当時はインターネットの情報も豊富ではなかった。
- よいこ
- 開業に向けての悩みは、どの時代でもだいたい同じですが、情報の質が変わっているところはあるかもしれないですね。僕らの時代は情報が少なくて困りましたが、今は逆に情報が溢れすぎていて正しい情報に辿り着けない。信用ある情報筋から情報を得たいなら、コミュニティに属するのが一番かもしれません。
――「ドクターズチャート」のslackではどんな議題が上がりますか?
- MM
- 開業準備に関することから、プリンターや、複合機はどこのメーカーが良いのか?といったことまで…本当にさまざまです。開業後に困っていることがテーマに上がることもありますし、継承ならではの「前院長とどのように付き合っているか?」といった話題のほか、「看護師さんの採用をどうすればいいか」「物件で悩んでいるので意見ください」などの相談はよく見ますね。
- よいこ
- ニッチな質問でも誰かしらが知見を持っているところが強みですよね。内装設計あたりのテーマもすごく盛り上がります。先輩方の失敗例も集まってくるので参考になりますし。
- MM
- そうですね。あとは、情報の早さも強みのひとつかと思います。たとえばコロナ対策に関しての議論は本当にスピーディで、各都道府県で実施されている対策に関しても、医師会の発信より早く情報が集まっていました。今(2022年4月末)だと、4月に保険算定が変わったばかりなので、少しややこしい条件などの情報、意見も活発に交換されています。
――それだけ活発にコミュニケーションを取られているなら、リアルのオフ会も開催されることはあるのでしょうか?
- よいこ
- 一度実現しかけたのですがコロナで流れてしまいました。ただ、サロンのコミュニティーにはいくつかの層があり、Clubhouse(クラブハウス)などの音声メディアにも積極的な人たちがいるので、月に一回、音声のみで情報交換するような感じですね。登壇するのは、その時のテーマについて詳しいサロンの会員のかたが出てきて、チャットと平行して音声のコミュニケーションをとる。
このように、ご時世的にも、そして先生方が全国にいらっしゃることからもリアルが実現しにくいぶんClubhouse(クラブハウス)で盛んにやりとりしています。
- コロナ収束まではまだ時間がかかりそうですね。今はこうしたツールでのやりとりが主になっていますが、積極的に参加して情報を発信している先生方は、ほとんどがイノベーターやアーリーアダプターに分類されるような人なので、こちら側も日々、気付かされることが多いです。
――サロンのみなさんとの結びつきが伝わってきました。ちなみに、お二人発案ではなく会員のみなさん主体で起きた企画などもあるのでしょうか?
- よいこ
- たとえば、『ドクターズチャート』では医師マッチングとして求人情報も掲載しているのですが、これもサロンのメンバーから出たアイディアでした。人材紹介会社が有料で提供しているサービスを無料で展開しています。声をいただいてから非常にスムーズに進んだ印象です。
- MM
- 当時、サロンのメンバーである先生から「求人サービスはありませんか?」といった声があり、そのかたと一緒に、求人情報としてどのような項目が必要か、問い合わせ後の流れはどうするかという案出しをし、形にしていきました。
本当にメンバー参加型のオンラインサロンなので、意見をより良くしていけるんですよね。おかげで、既に何組かマッチングが成立しています。
「ドクターズチャート」の医師マッチングサービス
▶︎ https://doctorschart.co.jp/matchings/
診療科目、勤務地(都道府県)、常勤or非常勤、曜日などの条件から求人を検索できる。求人の閲覧・応募はサロン会員以外も可能で、求人掲載は開業医・開業準備医師であるオンラインサロン会員のみとなっている。
――サロンは開業医や開業準備医にとってたくさんメリットがありますね。お二人としては、後輩医師の育成に貢献したいという想いが大きいのでしょうか?
- よいこ
- それもありますが、同時に自分たちのメリットも大きいと思っています。開業医は基本的に個人事業主なので、個人のリソースは限られています。でもオンラインサロンで密度の高い情報を共有することで、医療以外の「経営」にかかわるリソースを最小限にすることができる。
そうすると、自分も含め、先生方は医療の分野に注力しやすくなるので、ゆくゆくは医療の発展にもつながるのではないかと思っています。
――すてきなお話ありがとうございます。
「ドクターズチャート」の入会メリットと今後の展望
ーー改めてお二人から、「ドクターズチャート」への入会メリットを教えてください。
- MM
- 開業情報の質に関しては自信があります。「ドクターズチャート」以外にも同様のサイトはいくつかありますが、宣伝色が強いものや、あるいは個人感で攻撃しあう書き込みのようになっているものも散見されます。おそらくここまで真っ当に情報交換ができている医師限定のコミュニティはないのではないでしょうか。
我々のサイトでは本音の会話ができますし、ネガティブなことを言う人も、人を煽るような発言をする人もいません。どんな質問を投げかけても、どなたかが真摯に回答してくれるので、互いに高め合える雰囲気があるんです。見ていただけたら、情報を惜しみなく提供してくださっていることがよく分かると思います。
- よいこ
- 開業生活は“開業するまで”がクローズアップされがちですが、開業してからも長い医師人生は続きます。マラソンみたいなものなので、“みんなで集まって楽しく走りきろうよ”というスタンスのメンバーとつながれることは心強いことだと思います。
開業前の人は、なかなか正確な情報が得られない。でも「ドクターズチャート」があれば先輩の生の声が聞ける。開業後は孤独との戦いでもありますが、サロン内では同世代の方や、似た境遇のドクターがいる。
仕事が終わったらslackを開けて、サロンのみなさんの情報を読む。終業後にコーヒー片手に同僚と雑談するような感覚でいられる場所ではないかと思います。
- MM
- 開業医って悩みを相談する場所が少ないんですよね。それをサロンのslackに書き込めば、先輩医師から「同じような経験をしたことがあります」との声が入ってくる。書くだけで救われる場所でもあると思います。
ーー最後に、今後の「ドクターズチャート」の展望や、目指したい方向を教えてください。
- MM
- 開業に関する情報はすべて網羅できるようになりたいですね。すべての情報を一元的に学べて、開業後も新しい情報を得られる場所にしていきたいです。だから、「開業を考えたらまずは『ドクターズチャート』」と思ってもらえるようにしたいです。
- よいこ
- 僕もMM先生と同じですね。開業のWikipediaのようになり、「ドクターズチャート」を見ればすべての情報が載っているようにしたいです。今も、情報はアップデートされ続け、精度も日々高くなっているので、そういう場所を常に提供していきたい。
だから医療機器や自動釣銭機など、電子カルテの周辺機器はもちろん、ドクターのライフスタイルに関わるような情報まで話せるような場として、開業生活の一部になるようなコミュニティにしていきたいと考えています。
ーーありがとうございました。
MM先生・よいこはこいよ先生が主宰するオンラインサロン「ドクターズチャート」について詳しく知りたい方、入会を検討したい方は以下の公式サイトをご覧ください。
▶︎ https://doctorschart.co.jp/
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年5月時点の情報を元に作成しています。
取材協力 医療法人理事長・「ドクターズチャート」主宰者 MM
医療法人理事長であり、開業医・開業予定医のためのオンラインサロン「ドクターズチャート」の主宰者。開業医として10年以上活躍してきた経験をもとにTwitterや、音声プラットフォームであるVoicyなどで、クリニックの開業・運営に関する情報を発信。開院手続きの落とし穴など、経験者ならではのリアルさが評判となり、Twitterフォロワーは14,000人超と開業医としてトップレベルに。
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取材協力 開業医・「ドクターズチャート」主宰者 よいこはこいよ
開業医・開業予定医のためのオンラインサロン「ドクターズチャート」の主宰者。開業医として、Twitterでは「#開業医サブノート」にて開業お役立ち情報、スタッフ採用・教育のベストプラクティス、その他診療を快適にするアイテム紹介など幅広い情報を積極的に共有。自身の日々の悩みや気づきも含めた分かりやすい情報、そして親しみやすいつぶやきが同業者を中心に話題となっている。
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執筆 CLIUS(クリアス )
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機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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