さまざまな理由で病院に通院することが困難な患者に対し、定期的・計画的に医師が訪問し、診療や健康管理をする訪問診療。医師一人で訪問するケースもありますが、看護師・クラークを同行する診療所もあります。
今回は、訪問診療に看護師が同行するメリットについて、患者・医師・看護師の側面から解説していきます。
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1日の訪問件数の目安
まずは1日の訪問件数の目安についてです。訪問診療を行うクリニックの規模や診療科目によって、1日に訪問する患者数・重症度は異なります。
私が働いていたクリニックでは、午前中に3〜4件、午後は3件、日によって施設を1カ所、医師1人と看護師1人、ドライバー1人で訪問。帰院後、訪問診療に持参した備品の整理や記録などを行っていました。
施設の場合、1件20人ほどの利用者を訪問します。施設の場合は看護師が先に検温に回り、医師が診察、というように役割分担していました。施設の訪問診療も行う場合、医師1人では時間的にも業務的にも負担が大きいかもしれません。
在宅医療(訪問診療)クリニックのスタッフ構成については以下の記事も参考にしてみてください。
訪問診療に看護師が同行するメリット
施設訪問がある場合の訪問診療に看護師が同行するメリットについて、以下3つの側面から解説します。
患者側のメリット3つ
患者側のメリットには以下3つが挙げられます。
1. 経済的負担を軽減できる
2. 在宅医療で受けられるケア時間が減らずに済む
3. 安心感が得られる
それぞれ詳しく解説します。
1.経済的負担を軽減できる
患者側のメリット1つ目は、経済的負担を軽減できるからです。
在宅医療を受けている患者が、主治医により在宅医療が必要だと判断された場合、介護保険もしくは医療保険の在宅医療を受けることができます。在宅医療の利用料金は時間・回数・負担割合にもよります。
(参照:訪問看護料金表)
しかし、訪問診療で医療処置を行なった場合に比べると割高です。そのため、患者はケアすべてに在宅医療を利用せず、月に1〜2回は医療保険の適応になる訪問診療で処置をしてもらえば、経済的な負担が軽くなるでしょう。
たとえば褥瘡処置の場合、定期的な処置は訪問看護師、デブリや経過観察は月に1〜2回の訪問診療時に実施できます。
算定方法については以下の記事も参考にしてみてください。
2.在宅医療で受けられるケア時間が減らずに済む
患者側のメリット2つ目は、在宅医療で受けられるケアの時間が減らずに済むことです。
在宅医療は介護度に合わせてケア・訪問回数・時間が決まります。最大90分、訪問リハやヘルパーなど他のサービスと併用すると、さらに在宅医療に充てる時間が短くなってしまいます。
たとえば、医師が1人で訪問診療を行い、浣腸や膀胱留置カテーテル交換などを在宅医療に依頼したとします。患者はその分、在宅医療で受けられるはずの入浴介助やADL向上のための車椅子移乗などのケア時間を減らさなくてはならなくなるかもしれません。
訪問診療に看護師を同行しその場でできる医療処置を行うことで、患者は質の高い介護を提供してもらえるでしょう。
3.安心感が得られる
患者側のメリット3つ目は、安心感が得られることです。
在宅医療にかかわらず、患者家族は医師の診察や会話を心待ちにしているものです。よく見かけるのは、看護師のいうことはきいてくれない患者家族でも、医師の前では態度がころっと変わってしまうケース。「次の訪問先に間に合わない」と時間を気にするよりも、同行看護師に処置を任せて診療に専念することで、患者家族に安心感を持ってもらえます。
とはいえ、専門的すぎる医師の説明が理解できなかったり、医師の前では本音が出せない患者家族もいるかもしれません。また、小児患者は医師よりも看護師の方が安心感を持てるケースもあるでしょう。訪問診療に看護師が同行していれば、医師の説明を患者家族にわかりやすく伝えてくれたり、看護師になら打ち明けられることもあるかもしれません。
医師側のメリット3つ
医師側のメリットには以下3つが挙げられます。
1. 対象患者によっては看護師の介助が必須
2. 診療に専念できる
3. 移動時間を有効に活用できる
それぞれ詳しく解説します。
1.看護師の介助があれば対象患者を拡げられる
医師側のメリット1つ目は、看護師の介助があれば対象患者を拡げられることです。
訪問診療の対象患者の医療区分は3つに分けられます。
(参照:訪問診療の対象患者について)
医療区分2・3に該当する患者は訪問診療対象患者の45%を占めており、24時間持続点滴・中心静脈栄養・人工呼吸器使用・胸腹ドレーンなどの処置を必要とする重症患者です。
また、訪問診療時に医師が行なった診療内容について、視聴打診・触診・バイタル測定・問診・薬剤の処方以外に、患者家族への病状説明・中心静脈栄養・ポート管理・抗がん剤の点滴・モルヒネの持続皮下注射・胸水(腹水)穿刺などの医療処置がありました。
こういった重症患者への処置には清潔操作を必要とするケースも多く、外回り役の看護師介助は必須です。たとえば拘縮の強い患者の場合、手足を支えたりからだの向きを変えたりといった介助が必要となります。ポートや末梢からのPICC管理ではルート交換後の固定にも時間がかかるものです。ドレナージが必要な場合は、医師がエコーを行なっている間に看護師がドレナージの物品をセッティングすれば、時間短縮にもなるでしょう。
今後、在宅での看取りも増加すると想定されています。ターミナル患者の訪問診療は抗がん剤・モルヒネの点滴処置以外に、患者家族への病状説明や心理サポートが必要です。そんな時にも看護師が同行していれば、医師は患者家族の対応にじっくり関わることができます。
2.診療に専念できる
医師側のメリット2つ目は、ありきたりかもしれませんが、診療に専念できることです。
訪問診療では処置の必要な患者やターミナルケアを必要とする患者も多くいます。限られた1日の時間内で数件の患者を訪問するには、医師1人よりも看護師が同行していた方が診療に専念でき、結果的に質の高い医療を提供できるでしょう。
3.移動時間を有効に活用できる
医師側のメリット3つ目は、移動時間を有効に活用できることです。
訪問診療では移動に車を使うことが多いでしょう。運転を看護師に任せれば車内でカルテ記載・電子カルテの場合は入力も可能です。
また、訪問患者の問題点について車内でミーティングすることもできます。
看護師側のメリット2つ
看護師側のメリットには以下2つが挙げられます。
1. 他職種との連携がスムーズに行える
2. 病院や訪看とは違う場でやりがいが持てる
それぞれ詳しく解説します。
1.他職種との連携がスムーズに行える
看護師側のメリット1つ目は、他職種との連携がスムーズに行えることです。
訪問診療に同行していればその場で患者家族の問題点を把握できます。そのため、移動時間を利用してケアマネージャーや薬剤師、訪問リハビリなど他職種へすぐに連絡し、調整することも可能です。医師の手間も省けるでしょう。
2.病院や訪看とは違う場所でやりがいが持てる
看護師側のメリット2つ目は、病院や訪問看護ステーションとは違う場所でやりがいが持てることです。
在宅医療が療養上の世話がメインだとすると、訪問診療は治療がメインです。患者さんとじっくり対話をする内科系やターミナルケアが得意だったり、オペ出しや急性期看護が得意だったり、看護師にもタイプがあります。
病院や訪問看護ステーションとはまた違った場所で、医師の診療介助を行いつつ患者家族のケアも行える訪問診療に対し、やりがいを感じる看護師は少なくないでしょう。
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訪問診療を必要とする患者数は今後も増加の見込み
今回、訪問診療に看護師を同行するメリットについて、患者・医師・看護師の側面から解説してきました。
2025年に向け、訪問診療を必要とする患者はさらに増加すると見込まれています。
(参照:在宅医療の体制構築について)
今後も増えていくであろう在宅医療の需要に対応すべく、訪問診療体制について検討してみてはいかがでしょうか。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年10月時点の情報を元に作成しています。