「紙カルテでも今まで困っていない」
そう感じている院長は少なくない。しかし、厚生労働省の2025年の調査で、回答した診療所の71.0%が電子カルテを稼働中と答えている。その感覚は少しずつ現実と乖離しはじめている。
電子カルテを入れていないクリニックが直面しているのは、業務の不便さだけではない。診療報酬上の機会損失、電子処方箋・電子カルテ普及策への出遅れ、そして患者・スタッフの目に映る「古さ」という3つのリスクが、年々じわじわと経営を圧迫しはじめている。
本記事では、電子カルテ未導入クリニックが今すぐ動くべき3つの理由と、最初のステップを整理する。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
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現状:回答した診療所の71%が電子カルテを稼働中
厚生労働省の「医療DXの実施状況調査」(令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査・令和7年度調査)では、電子カルテシステムが「稼働中」と答えた施設は診療所で71.0%(回答756施設)、病院で77.7%(回答781施設)だった。2025年11月21日の中医協総会に報告された数字だ(中医協 総-1-3-2 22ページ 図表2-10・2-11)。
この調査は、医療DX推進体制整備加算の届出あり・なし別に無作為抽出した診療所2,000施設が対象で、全国の診療所をすべて数えた統計ではない。全数調査である医療施設調査では一般診療所55.0%(2023年・令和5年調査)、2026年6月の社会保険診療報酬支払基金のアンケートでは医科診療所72.6%(回答施設ベース)。調査ごとの数字の違いと推移は電子カルテの普及率【2026年最新】にまとめている。
この数字は何を意味するか。未導入の診療所は「少数派」になっているということだ。
10年前であれば、「電子カルテは大病院のもの」「紙のほうが慣れている」という理由で未導入を選択することに合理性があった。しかし2026年の今、マジョリティが導入済みの環境下では、未導入の理由が「制度対応できない理由」に変わりつつある。
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理由①:診療報酬の加算要件が「電子化前提」になってきた
電子的診療情報連携体制整備加算(旧・医療DX推進体制整備加算)
2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」は、2026年度(令和8年度)の改定で医療情報取得加算とともに廃止され、「電子的診療情報連携体制整備加算」に置き換わった(令和8年度診療報酬改定 個別改定項目 Ⅲ-3-①)。診療所の外来では、初診時に月1回、区分に応じて15点・9点・4点、再診時に月1回2点を加算する(医科点数表 A000 注16・A001 注19)。新しい加算の要件と届出は医療情報取得加算・医療DX推進体制整備加算は廃止!2026年改定で新設された「電子的診療情報連携体制整備加算」で解説している。
3つの区分に共通する要件は、オンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認の体制とマイナ保険証利用率30%以上、マイナポータルの情報にもとづく健康相談の体制、院内とウェブサイトへの掲示など。そのうえで最上位の加算1は、次の3つをすべて求める。
加算2はこの3つのうち1つ、加算3は共通要件だけで届け出られる(施設基準の通知 第1の8)。紙カルテでも共通要件を満たせば加算3(初診4点)は算定できるが、15点の加算1は電子カルテが無いと届け出られない。
1点は10円なので、加算1と加算3の差は初診1回あたり110円。1回の金額は小さいが、初診のたびに差が積み上がる。
今後の方向性
2025年12月に成立した改正医療法(令和7年法律第87号)は、2030年末までに電子カルテの普及率約100%を達成するよう医療機関業務の電子化を進めることを盛り込んだ(厚生労働省 説明資料)。次の2028年度改定の中身はまだ決まっていないが、令和8年度改定で加算の最上位区分に電子カルテの基準が入ったように、診療報酬の評価は電子カルテを前提にする方向へ進んでいる。
早めに導入しておくことで、加算の恩恵を長く受けられる。導入を先延ばしにするたびに「機会損失の累計」は増えていく。
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理由②:電子カルテの普及に国が2030年の期限を置いている
2030年に向けて何が求められるのか
電子処方箋の発行は、いまのところ医療機関の義務ではない。電子的診療情報連携体制整備加算では、加算1の要件、加算2の選択肢の一つになっている。
一方で国は期限つきの目標を置いている。医療DXの工程表(2023年6月)は「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」とし、改正医療法も2030年末までに電子カルテ普及率約100%を掲げた。そのために国は、電子カルテ未導入の医療機関には電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスに対応できる標準化された電子カルテの導入を進める方針だ(厚生労働省「電子カルテの普及について」)。
電子処方箋に対応するには、対応した電子カルテまたはレセコンとの連携が必要だ。紙カルテ運用のクリニックが電子処方箋に対応しようとすると、レセコンのみの対応では限界があり、実質的に電子カルテの導入が求められる状況になる。
患者側のメリットと競争優位性
電子処方箋に対応しているクリニックでは、患者はスマートフォンで処方内容を確認でき、薬局での待ち時間が短縮される。患者体験の向上が、クリニック選択の差別化要因になりつつある地域も出てきた。
「あのクリニックは電子処方箋に対応していない」 という口コミは、患者の転院を促す一因になりえる。特に30〜50代のデジタルリテラシーの高い患者層では、この傾向が顕著だ。
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理由③:スタッフ採用・定着のハードルが上がっている
「電子カルテがない」は採用の障壁になる
看護師・医療事務スタッフの採用において、電子カルテの有無は採用サイトの検索条件として機能する時代になっている。
実際に、「電子カルテあり」を採用条件の一つとして求職者が確認するケースは多い。紙カルテ運用のクリニックでは、採用候補者の選択肢から最初に外される可能性がある。
現場スタッフの「入力負担」と離職率
紙カルテ運用では、電子カルテと比較して以下の業務が手作業になる。
| 業務 | 紙カルテ | 電子カルテ |
| レセプト作成 | 手書き・手入力 | 自動集計 |
| 処方入力 | 手書き | テンプレート選択 |
| 予約管理 | 紙台帳 | システム連携 |
| 患者情報参照 | カルテを探す | 検索一発 |
この差は、スタッフの残業時間・疲弊感・ミスの頻度に直結する。「ここは電子カルテが入っていない」という理由で離職を考えるスタッフも珍しくない。採用・定着コストは、電子カルテの導入コストより高くつくケースが多い。
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「今さら感」を乗り越える:実際の導入コストと期間
費用の目安
「電子カルテは初期費用に数百万円かかる」というイメージを持つ院長は少なくないが、それは院内に専用サーバーを設置する「オンプレミス型」時代の話だ。
現在は、インターネット経由でシステムを利用する「クラウド型」が主流となっている。これにより、高額なサーバー機器の購入やメンテナンスが不要になり、診療報酬改定時のシステムアップデートもベンダー側で自動で行われる。その結果、導入コストや維持の手間は過去と比べて大幅に下がっているのだ。
| 項目 | 費用感 |
| 初期費用(設定・研修) | 20万〜80万円 |
| 月額利用料 | 2万〜8万円 |
| デジタル化・AI導入補助金(最大) | 補助率1/2以内(賃金要件を満たす事業者は2/3以内) |
補助金を活用すれば、実質負担は初期費用ベースで10万〜40万円程度まで圧縮できるケースもある。
導入にかかる期間
契約から本稼働まで、標準的には2〜4ヶ月が目安だ。
1ヶ月目:ベンダー選定・契約
2ヶ月目:設定・既存データ入力・スタッフ研修
3ヶ月目:並行稼働(紙と電子の併用でリスク分散)
4ヶ月目:完全移行
「忙しくて時間がない」という院長ほど、実際に移行してから「もっと早くやればよかった」という感想を持つことが多い。移行直後の1〜2ヶ月は確かに慌ただしいが、その後は業務効率が大きく改善する。
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選ぶ際に確認すべき3点
① 自院の診療科・規模に合った機能があるか
内科・皮膚科・眼科などの診療科によって、よく使う機能は異なる。同じ診療科の導入実績が多いベンダーを優先すること。デモ時に実際の診療フローを再現してもらうのが最善だ。
② レセコンとの連携方法
電子カルテとレセコンが別々のベンダーの場合、連携設定が必要になる。一体型か連携型かで費用・手間が変わる。既存レセコンとの相性を必ず確認する。
③ サポート体制
導入後の操作トラブルや障害対応のスピードは、ベンダーによって大きく差がある。「電話でいつでも繋がるか」「訪問サポートがあるか」を契約前に確認しておく。
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よくある質問(FAQ)
Q. 紙カルテのデータを引き継げますか?
既存の紙カルテのデータを電子カルテに全移行することは一般的に行われない。新規患者から電子カルテで入力を始め、既存患者は受診のたびに順次入力するのが標準的な運用だ。完全移行には1〜2年かかることが多いが、業務上の問題は発生しにくい。
Q. 年配のスタッフがPCを苦手にしています。研修はどうすればいいですか?
クラウド型電子カルテは、タブレット・タッチパネルで操作できる製品も多い。ベンダーの導入研修(オンライン・訪問)を活用し、最初の1〜2週間は導入支援担当者に常駐してもらう形を取るクリニックが多い。
Q. 今のレセコンはそのまま使えますか?
電子カルテとの連携可否はベンダーによる。現在のレセコンベンダーに対応確認を取るか、電子カルテとレセコンが一体型の製品への切り替えを検討する。
Q. インターネット回線が切れたり、停電したりした時はどうなりますか?
紙カルテ運用から移行する際に最も懸念される点だが、現在はスマートフォンのテザリング機能やモバイルルーターを予備回線として準備しておく運用が一般的である。停電時でも、ノートパソコンやタブレット端末であればバッテリーで一定時間は診療を継続できる。
また、クラウド型であればデータ自体は外部の堅牢なデータセンターに保存されているため、万が一院内のPCが故障・被災してもデータ消失のリスクはない。むしろ、火災や水害に弱い紙カルテよりもBCP(事業継続計画)対策として優れている。
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まとめ:「困っていない」は「損していない」ではない
電子カルテが入っていないことで、今すぐ診療が止まるわけではない。しかし、見えにくいところで損失が積み上がっている。
これら3つのリスクは、放置するほど解決コストが上がる性質を持っている。
今すぐすべきことは、まず1社デモを申し込んでみることだ。百聞は一見に如かず——実際に動かしてみると、「思ったより難しくない」と感じるクリニックが大半だ。デジタル化・AI導入補助金2026の交付申請は2026年3月30日に始まっており、通常枠は6次締切(2026年10月30日17時)まで日程が公表されている。締切日を確かめたうえで動いてほしい。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2026年3月時点の情報を元に作成しています。
