長期収載品の選定療養は、2024年10月に始まった仕組みだ。
後発医薬品(ジェネリック)がある先発医薬品を患者が希望した場合に、保険給付とは別に「特別の料金」を患者から受け取る。
この仕組みは令和8年度の見直しで、2026年6月1日から患者負担の水準が変わった。
一方で、処方箋の書き方や「医療上の必要性」の考え方は、2024年10月からの枠組みがそのまま引き継がれている。
変わった点と変わっていない点を取り違えると、患者への説明がずれたり、院内処方の会計で特別の料金を取り損ねたりする。
この記事では、院長と医療事務が押さえるべき実務を、処方箋・説明・掲示・会計の順に整理する。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
長期収載品の選定療養の仕組み
まず制度の骨格を確認しておく。
対象になる医薬品
長期収載品とは、後発医薬品のある先発医薬品のことだ。価格差のある後発医薬品がある、いわゆる準先発品も含まれる。
選定療養の対象になるのは、次のいずれかに当てはまり、かつ薬価が同じ組成・剤形・規格の後発医薬品のうち最も高いものを上回っている品目である(バイオ医薬品は除く)。
- 後発医薬品が初めて薬価収載された月の翌月初日から5年を経過したもの
- 5年を経過していないが、後発品置換え率が50%以上のもの
ただし、後発品置換え率が1%未満の品目は、後発医薬品を提供すること自体が難しいため対象外とされている。
具体的な品目は厚生労働省がリストで公表しており、2026年6月1日からは令和8年3月31日更新版のリストが適用されている。
レセプトコンピュータや電子カルテの医薬品マスタが6月1日版に更新されているかは、一度確認しておきたい。
選定療養が適用される条件
選定療養になるのは、次の3つをすべて満たす場合に限られる。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 患者の選択 | 十分な情報提供があり、患者が自由に選択し同意している |
| 医療上の必要性がない | 長期収載品を使う医療上の必要があると認められる場合に当たらない |
| 後発医薬品を提供できる | 在庫状況などから、その医療機関・薬局で後発医薬品を出せる |
院外処方、院内処方のどちらも対象だ。
入院中の患者は対象外で、退院時処方も入院中の投薬として扱われるため対象にならない。
在宅自己注射の処方は対象になる。
また、国の公費負担医療や、こども医療費助成などの地方単独の助成を受けている患者も対象外にはなっていない。
2026年6月から何が変わったか
令和8年度の見直しは、令和8年厚生労働省告示第116号と、同年3月27日付の関連通知で示されている。
クリニック目線で整理すると、次のようになる。
| 項目 | 2024年10月〜 | 2026年6月〜 |
|---|---|---|
| 特別の料金の水準 | 先発品と後発品の価格差の4分の1相当 | 価格差の2分の1相当 |
| 消費税 | 特別の料金に上乗せ | 変わらず |
| 対象品目リスト | 旧リスト | 令和8年3月31日更新版 |
| 処方箋の様式とチェック欄 | 「変更不可(医療上必要)」と「患者希望」 | 変わらず |
| 医療上の必要性の考え方 | 疑義解釈で4類型を提示 | 通知の枠組みは同じ |
| 院内掲示・ウェブサイト掲載 | 必要 | 変わらず |
つまり、現場の運用手順はほぼそのままで、患者が支払う金額だけが増えた改定である。
患者からの問い合わせは「前より高くなった」という形で来ることが多いので、受付で説明できるようにしておく。
特別の料金の計算例
厚生労働省の事務連絡では、次のような計算例が示されている。
- 先発品の薬価 1錠100.0円、後発品の最高価格 1錠49.3円
- 1日2錠、30日分、自己負担3割の患者
価格差の2分の1は25.35円になる。
これを1日2錠で薬剤料の点数に換算すると5点、30日分で150点。
150点×10円に消費税10%を加え、特別の料金は1,650円となる。
保険対象の部分は、薬価から価格差の2分の1を引いた74.65円をもとに計算し、30日分で450点、4,500円。
その3割の1,350円が通常の自己負担で、患者負担の総額は1,650円と1,350円を合わせた3,000円である。
実際の計算はレセプトコンピュータが行うが、計算の流れを知っておくと、患者から内訳を聞かれたときに説明しやすい。
処方箋の2つのチェック欄の使い分け
処方箋から選定療養の対象かどうかを薬局が判断できるよう、処方箋には2つの欄がある。
どちらに印を付けるかで、患者の負担が変わる。
| 処方の書き方 | 「変更不可(医療上必要)」欄 | 「患者希望」欄 | 薬局での扱い |
|---|---|---|---|
| 医療上必要があり先発品を銘柄名処方 | 印を付け、保険医が署名または記名押印 | 付けない | 保険給付 |
| 患者の希望で先発品を銘柄名処方 | 付けない | 印を付ける | 選定療養 |
| 先発品を銘柄名処方し、どちらにも印なし | 付けない | 付けない | 後発品に変更可。患者が先発品を希望すれば選定療養 |
| 一般名処方 | 付けない | 付けない | 患者が先発品を希望すれば選定療養 |
注意したいのは次の3点だ。
- 「変更不可(医療上必要)」に印を付けた場合、「患者希望」欄には印を付けない
- 一般名処方では、どちらの欄にも印を付けない
- 医療上の必要性がなく、患者の希望もないなら、一般名処方が望ましいとされている
改正前の様式の処方箋も、当分の間は手書きなどで修正して使える。
その場合、医療上必要なら「変更不可」欄に印を付けて「医療上必要」と書き添え、患者希望なら処方薬の近くに「患者希望」と書くなど、医薬品ごとに判断が薬局へ伝わるようにする。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
医療上の必要性の判断基準
「医療上必要」と判断してよいのはどんな場合か。
厚生労働省の疑義解釈では、医師が次のように判断する場合が想定されている。
- 長期収載品と後発医薬品で、薬事上承認された効能・効果に差があり、その患者の治療に長期収載品が必要な場合
- その患者が後発医薬品を使った際に、副作用や飲み合わせによる相互作用、治療効果の差があったと判断し、安全性などの観点から長期収載品が必要な場合
- 学会のガイドラインで、長期収載品を使用中の患者を後発医薬品に切り替えないことが推奨されており、それを踏まえて必要と判断する場合
- 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性のため一包化できないなど、剤形の違いにより必要と判断する場合
一方、使用感など有効成分と直接関係のない理由は、基本的に医療上の必要性としては想定されていない。
「単に剤形の好み」で先発品を選ぶことも含まれない。
どの欄を使うかの境界線
判断に迷いやすい場面を、条件ごとに分けておく。
- 過去に後発品で副作用や効果の差があった患者:医師がそう判断したなら「変更不可(医療上必要)」の対象になりうる。カルテに経緯を残しておく
- 「なんとなく先発品が安心」という患者:医療上の必要性には当たらない。後発品の選択肢と特別の料金を説明したうえで、希望が変わらなければ「患者希望」
- 先発品にこだわりのない患者:どちらの欄も使わず一般名処方でよい。選定療養を意識する必要自体がない
なお、剤形の違いによる必要性(4の類型)は、薬局の薬剤師が処方医に疑義照会せずに判断することも考えられるとされている。
その場合、薬局から処方元の医療機関へ、調剤した銘柄などの情報提供がある。
患者への説明と受付での文例
通知では、処方医は選定療養にかかる処方にあたり、後発医薬品を選べること、長期収載品を希望すると特別の料金がかかりうることなどを、患者に十分説明することとされている。
診察室で医師が一言添え、受付で補足する形にしておくと、会計や薬局でのトラブルが減る。
受付・会計での説明文例
ジェネリック医薬品があるお薬で、先発医薬品をご希望される場合は、通常の自己負担とは別に「特別の料金」がかかります。2026年6月から、この料金は先発医薬品とジェネリック医薬品の価格差の2分の1に見直されました。医師が治療上必要と判断した場合は、特別の料金はかかりません。ジェネリック医薬品への変更をご希望の場合は、お気軽にお申し出ください。
患者から「前回より高い」と言われた場合は、6月からの見直しであること、薬の種類や日数によって金額が変わることを伝える。
特別の料金は消費税の対象である点も、聞かれたら説明できるようにしておく。
院内掲示とウェブサイト掲載
長期収載品の処方等を行う医療機関は、制度の趣旨と特別の料金について、院内の見やすい場所に患者に分かりやすく掲示しなければならない。
あわせて、掲示事項は原則としてウェブサイトにも掲載する必要がある。自ら管理するホームページを持たない医療機関は、この限りではない。
厚生労働省は、施設内の掲示ポスターと窓口用の案内チラシを2026年6月以降の内容で公開している。
2024年に貼ったポスターのままだと「4分の1」の記載が残っているので、差し替えが必要だ。
院内掲示の文例
後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)をご希望の方へ
当院では、後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬について、患者さんのご希望により先発医薬品を処方する場合、国の制度に基づき「特別の料金」をいただいております。
特別の料金は、先発医薬品と後発医薬品の価格差の2分の1相当額に消費税を加えた額です。
医師が医療上の必要があると判断した場合や、入院中の方は対象外です。
ご不明な点は受付までお尋ねください。
院内処方のクリニックは、自院で特別の料金を受け取ることになるので、この掲示は必須と考えておく。
院外処方のみのクリニックも「長期収載品の処方等を行う医療機関」に含まれるため、掲示とウェブサイト掲載を確認しておきたい。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
院内処方のクリニックの会計とレセプト
院外処方の場合、特別の料金を受け取るのは薬局だ。
院内処方の場合は、クリニック自身が特別の料金を計算し、受け取り、領収証に反映させることになる。
院内処方で押さえる点
- 院内処方でも、医療上必要な場合と後発品を出せない場合は保険給付、それ以外で患者が希望すれば選定療養
- 特別の料金を受け取った場合、保険の一部負担金と特別の料金を明確に分けた領収証を交付する
- 院内に後発医薬品を採用していない品目は、患者が選べないため従来どおり保険給付でよい
- 院内処方用の処方箋がない医療機関が医療上の必要性で保険給付とする場合は、診療報酬明細書の摘要欄に理由を選択して記載する
院内処方クリニックの確認チェックリスト
- 医薬品マスタが2026年6月1日からの対象品目リストに更新されている
- 特別の料金の計算が「価格差の2分の1」と消費税で行われている
- 領収証で一部負担金と特別の料金が分かれて表示される
- 医療上必要として保険給付にする場合の摘要欄記載の運用が決まっている
- 院内の掲示物とウェブサイトの記載が2026年6月以降の内容になっている
- 受付スタッフが特別の料金の説明文例を共有している
後発医薬品の採用品目が少ないクリニックでは、選定療養の場面自体があまり発生しない。
逆に、後発品を広く採用している院内処方のクリニックほど、この会計処理の頻度が高くなる。
自院がどちらに近いかで、スタッフ教育にかける手間を決めるとよい。
よくある質問
公費負担医療や医療費助成を受けている患者も特別の料金の対象になるか
医療保険に加入していて、国の公費負担医療の対象にもなっている患者が長期収載品を希望した場合も、他の患者と同様に選定療養の対象になるとされている。
こども医療費助成などの地方単独の助成を受けている患者も、対象外にはなっていない。
ただし、医療上必要があると認められる場合は従来どおり保険給付でよい。
薬局から「後発品の在庫がない」と連絡があった場合はどうなるか
薬局で後発医薬品を提供することが困難で、長期収載品を調剤せざるを得ない場合は、患者が希望して選んだことにはならないため保険給付となる。
出荷停止などの品目かどうかではなく、実際にその薬局で提供できるかで判断する。
「患者希望」に印を付けたが、薬局で患者が後発品に変えたいと言った場合は
薬局で選定療養について説明を受けた結果、患者が後発医薬品を希望した場合は、後発医薬品を調剤して保険給付とすることができる。
処方医への疑義照会は必須とされていない。
まとめ
長期収載品の選定療養は、2026年6月から特別の料金が価格差の4分の1相当から2分の1相当に見直された。
一方で、処方箋の「変更不可(医療上必要)」と「患者希望」の使い分け、医療上の必要性の4類型、院内掲示とウェブサイト掲載の義務は、2024年10月からの枠組みが続いている。
クリニックがいま確認すべきなのは、次の3点だ。
- 院内の掲示物とウェブサイトの記載が「2分の1」の内容になっているか
- 受付で特別の料金の見直しを説明できるか
- 院内処方の場合、医薬品マスタと領収証の表示が6月以降の計算になっているか
医療上の必要性の判断は医師に委ねられている。
判断の根拠をカルテに残し、患者の希望によるものか医療上の必要によるものかを処方箋で明確にすることが、薬局との連携でも患者説明でも基本になる。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
参考
- 厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html
- 厚生労働省保険局医療課「「長期収載品の処方等又は調剤について」の一部改正について」(令和8年3月27日保医発0327第9号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/15-4.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について(令和8年3月27日保医発0327第6号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/15-3.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養における費用の計算方法について」(令和8年3月27日事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001275337.pdf
- 厚生労働省保険局医療課「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」(令和6年7月12日事務連絡) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001275325.pdf
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、時点の情報を元に作成しています。
