明細書発行体制等加算は、診療所が患者に明細書を無料で発行する体制を評価する加算だ。
届出が要らず、点数も小さいため、開業時にレセプトコンピュータの設定で算定がオンになったまま、中身を意識していないクリニックも多い。
ただ、令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)の点数表では、医療のデジタル化に関する加算との関係がはっきり書かれている。
どちらを算定しているかによって、明細書発行体制等加算を算定してよいかが変わる。
この記事では、算定要件と施設基準、令和8年度改定での扱い、明細書の無料発行義務とその例外を整理する。
院内掲示と受付での説明に使える文例も載せた。
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明細書発行体制等加算の点数と算定要件
明細書発行体制等加算は、医科点数表の再診料(区分番号A001)の注に規定されている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 点数 | 1点 |
| 対象 | 診療所のみ(病院は算定できない) |
| 算定場面 | 再診時(初診料には同じ名前の加算はない) |
| 施設基準 | 下記の3つ |
| 届出 | 不要(基準を満たしていればよい) |
施設基準は、令和8年3月5日付の施設基準通知で次のように定められている。
- 診療所であること
- 電子情報処理組織を使用した診療報酬請求、または光ディスク等を用いた診療報酬請求を行っていること
- 算定した診療報酬の区分・項目の名称と、その点数または金額を記載した詳細な明細書を患者に無償で交付していること。また、その旨の院内掲示を行っていること
地方厚生局への届出は不要で、基準を満たしていれば算定できる。
逆に言えば、届出書類という形で確認される機会がないため、院内掲示が抜けていても気づかれにくい。
算定しているなら、掲示が実際に貼ってあるかを一度見ておきたい。
令和8年度改定での扱い
令和8年度改定後も、明細書発行体制等加算は再診料の加算として残っている。
点数は1点、施設基準の文言も上記のとおりで、届出不要の扱いも同じだ。
確認が必要なのは、電子的診療情報連携体制整備加算との関係である。
令和8年度の点数表では、次のように規定されている。
- 初診料の電子的診療情報連携体制整備加算を算定する場合、再診料の明細書発行体制等加算は別に算定できない
- 再診料の明細書発行体制等加算を算定する場合、初診料・再診料の電子的診療情報連携体制整備加算は別に算定できない
- 留意事項通知では、電子的診療情報連携体制整備加算の届出を行った保険医療機関は、明細書発行体制等加算を算定できないとされている
つまり、医療機関単位でどちらか一方を選ぶ構造になっている。
電子的診療情報連携体制整備加算を届け出ているのに、レセプトコンピュータの設定で明細書発行体制等加算も自動算定されていないか、確認しておく必要がある。
電子的診療情報連携体制整備加算とどちらを算定するか
2つの加算の性格は大きく違う。
| 項目 | 明細書発行体制等加算 | 電子的診療情報連携体制整備加算 |
|---|---|---|
| 点数 | 再診時1点 | 初診時15点・9点・4点(区分による)、再診時2点 |
| 算定頻度 | 再診のたび | 月1回に限る |
| 届出 | 不要 | 必要 |
| 評価する体制 | 明細書の無償交付 | オンライン資格確認で得た情報の活用、電子処方箋・電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスの導入、サイバーセキュリティ対策など |
どちらが自院に合うかは、点数の大小だけでなく体制を整えられるかで決まる。
- 電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準を満たせるクリニック:初診時の点数が大きい。再診時は月1回2点なので、同じ月に何度も再診する患者が多いクリニックでは再診分だけ見ると明細書発行体制等加算の方が多くなることもあるが、初診分を含めて比べるとよい。届け出た時点で明細書発行体制等加算は算定できなくなるので、レセプトコンピュータの設定変更を忘れない
- まだデジタル化の施設基準を満たせないクリニック:明細書の無償交付と院内掲示ができていれば、明細書発行体制等加算を届出なしで算定できる
- どちらも算定できないクリニック:電子請求をしていない、または後述の「正当な理由」で明細書を全員に無料発行していない診療所は、明細書発行体制等加算の施設基準を満たさない。この場合、まず無償発行の体制を整えるのが先になる
電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準は項目が多い。
区分ごとの要件は、令和8年度の施設基準通知で確認してから判断してほしい。
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明細書の無料発行義務と「正当な理由」
明細書発行体制等加算とは別に、明細書の発行そのものが義務になっている点も押さえておく。
令和8年3月5日付の保険局長通知(保発0305第18号)の内容を整理すると、次のとおりだ。
義務の範囲
- レセプト電子請求が義務付けられた保険医療機関は、領収証を交付する際に、明細書を無償で交付しなければならない
- 公費負担医療の対象で一部負担金の支払いがない患者にも、明細書を無償で発行しなければならない(療養費用の全額が公費で負担される場合を除く)
- 明細書を発行する旨を院内掲示などで明示し、会計窓口に所定の趣旨の掲示をして、患者の意向を確認できるようにする
- 院内掲示事項は、原則としてウェブサイトにも掲載する(自ら管理するホームページがない場合を除く)
「正当な理由」がある診療所の例外
診療所に限り、次のいずれかに当たる場合は「正当な理由」があるとされ、患者から求められたときに交付すれば足りる。
- 明細書発行機能が付いていないレセプトコンピュータを使っている場合
- 自動入金機を使っていて、自動入金機で明細書を発行するには改修が必要な場合
ただし、この例外には条件がある。
- 正当な理由に該当する旨と、希望者には発行する旨(手続き、費用徴収の有無と金額など)を院内掲示などで明示する
- 地方厚生(支)局長に届出を行い、毎年8月1日現在の状況を報告する
- 費用を取る場合も実費相当とし、1,000円を超えるような額は実費相当としてふさわしくない
- 「正当な理由」は、令和10年以降の標準型レセプトコンピュータの提供が実施される時期を目途に廃止する予定とされている
自院の状況と加算の関係
| 自院の状況 | 明細書の発行 | 明細書発行体制等加算 |
|---|---|---|
| 電子請求あり、全患者に無料発行、掲示あり | 義務を満たす | 算定可(電子的診療情報連携体制整備加算を届け出ていない場合) |
| 電子請求あり、正当な理由の届出をして希望者のみ発行 | 例外として認められる | 施設基準を満たさず算定不可 |
| 電子的診療情報連携体制整備加算を届出済み | 義務は変わらない | 算定不可 |
明細書を希望しない患者への対応
明細書には、使った薬剤や行った検査の名称が載る。
病名を本人に伝えていない場合や、家族が代理で会計をする場合など、明細書が患者のプライバシーに関わることがある。
そのため通知では、会計窓口に次の趣旨を掲示するなどして、患者の意向を確認できるようにすることとされている。
明細書には薬剤の名称や行った検査の名称が記載されます。ご家族の方が代理で会計を行う場合のその代理の方への交付も含めて、明細書の交付を希望しない場合は事前に申し出て下さい。
また、明細書の内容が毎回同じだからと発行を希望しない患者に対しても、診療内容が変わって明細書の記載内容が変わる場合は、その旨を伝えるよう努めることとされている。
処方の変更や新しい検査をした日は、会計時に一言添える運用にしておくとよい。
院内掲示と受付説明の文例
院内掲示の文例
通知の院内掲示例(別紙様式7)をもとに、診療所向けに整えると次のようになる。
「個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書」の発行について
当院では、医療の透明化や患者さんへの情報提供を推進する観点から、領収証の発行の際に、個別の診療報酬の算定項目が分かる明細書を無料で発行しています。
公費負担医療の受給者で医療費の自己負担のない方にも、明細書を無料で発行しています。
なお、明細書には使用した薬剤の名称や行われた検査の名称が記載されます。ご家族の方が代理で会計を行う場合のその方への発行も含めて、明細書の発行を希望されない方は、会計窓口にてお申し出ください。
この掲示は、施設基準の「その旨の院内掲示」と、明細書無料発行の義務に伴う掲示を兼ねられる。
同じ内容をウェブサイトにも載せておく。
受付での説明文例
患者から「この1点は何ですか」と聞かれたときの説明例だ。
明細書発行体制等加算といって、当院が診療内容の分かる明細書を無料でお渡しする体制をとっていることに対する、国が定めた診療報酬の加算です。再診のたびに1点、つまり10円が加算され、患者さんのご負担はそのうち保険の負担割合分です。明細書が不要な場合はお申し出ください。
加算の説明は、金額よりも「国の制度で決まっている」ことを先に伝えると納得されやすい。
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算定前のチェックリスト
- 電子請求(オンライン請求など)を行っている
- 全ての患者に、算定項目と点数または金額の分かる明細書を無料で発行している
- 公費負担医療で自己負担のない患者にも無料で発行している
- 明細書を無料発行する旨の院内掲示がある
- 会計窓口に、明細書を希望しない場合の申し出に関する掲示がある
- 院内掲示の内容をウェブサイトにも載せている
- 電子的診療情報連携体制整備加算を届け出ていない
- 届け出ている場合、レセプトコンピュータで明細書発行体制等加算が自動算定されない設定になっている
- 「正当な理由」の届出をしている場合、明細書発行体制等加算を算定していない
よくある質問
明細書発行体制等加算に届出は必要か
必要ない。
施設基準通知で、基準を満たしていればよく、地方厚生(支)局長への届出は不要とされている。
その分、院内掲示や無料発行の運用が崩れていないかは自院で管理する必要がある。
領収証に算定項目が載っていれば、別に明細書を出さなくてよいか
明細書の発行が義務付けられた医療機関が、無償で発行する領収証に個別の算定項目が分かる明細を載せている場合は、明細書が発行されたものとして扱われる。
その場合、患者から明細書を求められても、別に発行する必要はないとされている。
明細書の発行に手数料を取ってよいか
レセプト電子請求が義務付けられた医療機関は、原則として無償で交付しなければならない。
電子請求が義務付けられた医療機関で費用を取れるのは「正当な理由」に該当し届出をした診療所に限られ、その場合も実費相当とし、1,000円を超えるような額はふさわしくないとされている。
手数料を取っている診療所は、明細書発行体制等加算の施設基準を満たさない。
まとめ
明細書発行体制等加算は、令和8年度改定後も再診時1点、診療所のみ、届出不要の加算として続いている。
施設基準は、電子請求、全患者への明細書の無料発行、その旨の院内掲示の3つだ。
令和8年度の点数表で押さえておきたいのは、電子的診療情報連携体制整備加算との関係である。
届出を行った医療機関は明細書発行体制等加算を算定できないため、どちらを算定するかを医療機関単位で決め、レセプトコンピュータの設定と揃えておく。
明細書の無料発行は、加算を算定するかどうかに関係なく、電子請求を行う医療機関の義務だ。
「正当な理由」による例外も将来的に廃止される予定なので、明細書発行機能のない機器を使っている診療所は、更新時期に合わせて対応を検討しておきたい。
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参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日保医発0305第6号)医科点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732089.pdf
- 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日保医発0305第7号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001732097.pdf
- 厚生労働省保険局長「医療費の内容の分かる領収証及び個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について」(令和8年3月5日保発0305第18号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666801.pdf
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