主治医意見書の書き方|様式の項目別記入ポイントと作成料・期限、医療事務が手伝える範囲

高齢の患者が多いクリニックでは、市町村から主治医意見書の作成依頼が定期的に届く。
新規申請だけでなく、更新や区分変更のたびに依頼が来るため、件数が積み上がると院長の書類業務を圧迫しやすい。

主治医意見書は、要介護認定の審査判定に使われる資料だ。
書き方しだいで、患者の介護の必要度が審査会に正しく伝わるかが変わる。

この記事では、厚生労働省の「主治医意見書記入の手引き」に沿って、様式の欄ごとの記入ポイントを整理する。
あわせて、2026年4月の見直し、作成料の請求先、期限の考え方、医療事務が下書きで手伝える範囲をまとめた。
医学的な判断の中身には踏み込まず、様式と運用に絞っている。

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目次
  1. 主治医意見書とは何か、どう使われるか
  2. 2026年4月からの様式と手引きの見直し
    1. 電子作成に切り替えるかの判断
  3. 様式の欄ごとの記入ポイント
    1. 基本情報
    2. 1.傷病に関する意見
    3. 2.特別な医療
    4. 3.心身の状態に関する意見
    5. 4.生活機能とサービスに関する意見
    6. 5.特記すべき事項
  4. 要介護認定で状態が伝わる書き方のコツ
  5. 作成料と請求先
  6. 提出期限の考え方
  7. 医療事務が下書きで手伝える範囲
    1. 作成業務のチェックリスト
  8. よくある質問
    1. 他科の受診状況が分からない場合はどう書くか
    2. 前回の意見書と同じ内容でよいか
    3. 交通事故が原因で介護が必要になった患者の場合は
  9. まとめ
  10. 参考

主治医意見書とは何か、どう使われるか

介護保険法第27条第3項では、市町村は要介護認定の申請を受けたとき、申請者の主治の医師に対し、身体上または精神上の障害の原因である疾病や負傷の状況などについて意見を求めるとされている。
この意見を記入する書類が主治医意見書で、様式は全国一律である。

手引きによると、主治医意見書は介護認定審査会で主に次のように使われる。

使われ方 内容
特定疾病の確認 40歳以上65歳未満の第2号被保険者について、生活機能低下の原因が16の特定疾病に当たるかを確認する
介護の手間の審査判定 認定調査の結果と主治医意見書をもとにした一次判定を原案に、医学的な意見を加味して判定する
状態の維持・改善可能性の審査判定 要支援2と要介護1のどちらに当たるかを判定する
認定調査結果の確認・修正 長く医学的管理をしている主治医の意見の方が正確な場合、調査結果の修正に使われる

審査会には医療関係者以外の委員もいる。
手引きでも、なるべく難解な専門用語を避けて書くよう求めている。
また、主治医意見書は認定後のケアプラン作成や地域ケア会議などで参照されることもある。

2026年4月からの様式と手引きの見直し

厚生労働省は令和7年11月20日付の通知で、主治医意見書記入の手引きを見直し、令和8年4月1日から適用している。
介護情報基盤を経由した情報共有が順次始まることに伴う見直しだ。

主な変更点は次のとおりである。

  • 申請者情報の欄から、主治医意見書を介護サービス計画作成などに利用することへの同意の有無を問う欄が削除された
  • 特記すべき事項の説明から、情報提供書や障害者手帳の申請に用いる診断書などの写しを添付してよいという記載が削除された。代わりに、そうした書類がある場合は、その内容のうち介護保険のサービスを受ける上で重要な事項を簡潔に記入するよう求めている
  • 介護情報基盤を使って電子的に作成・送信する方法が示された

作成・送信方法については、次のように整理されている。

方法 医師氏名 その他
介護情報基盤で電子的に作成・送信 医師本人の自署は不要。電子署名は可能だが、当面は医療機関の判断で行わなくてもよい 対応した電子カルテや文書作成システム、または公的なウェブサービスを使う
紙で作成・提出 医師氏名のみ本人が自署。押印は不要 インクかボールペンで記入。医療機関の所在地や名称はゴム印でもよい

電子署名を行わずにセキュリティ上の問題が起きた場合、調査や患者への説明など医療機関側の責任が生じる点に留意するよう、手引きには書かれている。

電子作成に切り替えるかの判断

介護情報基盤での情報共有は、保険者ごとに順次始まる。
自院の判断は、次の条件で分けて考えるとよい。

  • 依頼件数が多く、使っている電子カルテが対応済みのクリニック:保険者が受け付けを始めていれば、自署と郵送の手間が減るので切り替える価値がある
  • 依頼が月に数件のクリニック:紙の運用で困っていなければ、保険者の案内が来てから検討すれば足りる
  • システムが未対応のクリニック:無理に急ぐ必要はない。紙での作成・提出は引き続き想定されている

様式の欄ごとの記入ポイント

ここからは、様式の欄ごとに手引きのポイントを整理する。
様式の欄番号は、基本情報に続いて「1.傷病に関する意見」から「5.特記すべき事項」までの5つだ。

基本情報

項目 記入のポイント
申請者の氏名・生年月日・住所 ふりがなを併記。入院・入所中なら施設名・住所・電話番号を書く
医療機関・医師氏名 所在地・名称・電話番号・ファクス番号・医師氏名
最終診察日 申請者を最後に診察した日
意見書作成回数 初めてなら「初回」、2回目以降なら「2回目以上」
他科受診の有無 分かる範囲で記入。該当する診療科がなければ「その他」に科名を書く

1.傷病に関する意見

診断名には、生活機能低下の直接の原因になっている傷病名と発症年月日を書く。
第2号被保険者の場合は、特定疾病名を記入する。
発症日がはっきりしなければおおよその年月でよく、脳血管障害の再発などは直近の発症日を書く。
傷病が4種類以上ある場合は主な傷病名にとどめ、必要なら特記すべき事項に回す。

症状としての安定性は「安定」「不安定」「不明」から選ぶ。
急性期や慢性疾患の急性増悪期などで積極的な医学的管理が必要と見込まれる場合は「不安定」を選び、具体的な内容を書く。
症状には日内変動や日による変動があるため、介護者からの情報にも留意するよう求められている。

経過と治療内容は、生活機能低下に関連の深い事項の要点を簡潔に書く。
投薬内容は羅列せず、必ず服用しなければならない薬や頓服が必要な薬などを整理して書く。
転倒や入院をきっかけに生活が不活発になった、配偶者との死別で社会参加が減ったなど、さらに生活機能を下げている要因があれば具体的に記載する。

特定疾病の場合は、診断の根拠となる主な所見をこの欄に書く。
手引きには「特定疾病にかかる診断基準」が別添で付いている。

2.特別な医療

申請者が過去14日間に受けた12項目の医療のうち、看護職員などが行った診療の補助行為にチェックを付ける。
医師が同じ行為を診療行為として行った場合も含む。
一方で、医師でなければ行えない行為や、家族や本人が行える類似の行為は含まれない。

認定調査でも同じ項目を確認するが、調査員は医療の専門家とは限らないため、主治医意見書でも記入を求めている。

3.心身の状態に関する意見

項目 記入のポイント
日常生活の自立度 障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)と認知症高齢者の日常生活自立度を、判定基準を参考に選ぶ
認知症の中核症状 短期記憶、日常の意思決定を行うための認知能力、自分の意思の伝達能力を評価する。認知症以外の疾患で同様の状態がある場合もチェックする
認知症の行動・心理症状 幻視・幻聴、妄想、昼夜逆転、暴言、暴行、介護への抵抗、徘徊、火の不始末、不潔行為、異食行動、性的問題行動などから該当するものを選ぶ
その他の精神・神経症状 認知症以外の症状があれば症状名を書き、専門医の受診があれば科名を書く
身体の状態 利き腕、身長・体重、過去6か月程度の体重変化、麻痺・褥瘡などの部位と程度

寝たきり度の欄は、介護保険以外でも使われる。
たとえばおむつ代の医療費控除では、主治医意見書の寝たきり度などの記載が確認書類として使われることがある。
判定基準に照らして、現状に即して選ぶことが大切だ。

麻痺などの程度は、介護にどの程度影響するかという観点で選ぶ。

4.生活機能とサービスに関する意見

項目 記入のポイント
移動 屋外歩行、車いすの使用、歩行補助具・装具の使用を状態例にあてはめて選ぶ
栄養・食生活 食事行為と現在の栄養状態を評価し、留意点があれば書く
発生の可能性の高い状態とその対処方針 現在あるか、おおむね6か月以内に発生しそうな状態と、緊急時を含む対処方針の要点
サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し おおむね3か月から6か月、サービスを使った場合の見通し。傷病の見通しではなく生活機能の観点で選ぶ
医学的管理の必要性 必要と考える医療系サービスにチェック。特に必要性が高いものには下線を引く
サービス提供時の医学的観点からの留意事項 血圧、嚥下、摂食、移動、運動などの留意点を具体的に。不安感を助長しないよう書く
感染症の有無 二次感染防止の観点から留意すべき感染症があれば傷病名や症状を書く

医学的管理の必要性の欄は、訪問看護などの指示書に代わるものではない点に注意したい。

5.特記すべき事項

審査判定やサービス利用の上で重要と考える事項の要点を書く。
他の欄で書ききれなかったことや、選択式では表現できないことを簡潔にまとめる欄だ。

手引きでは、申請者の状態やケアにかかる手間と頻度の具体的な内容を書くよう求めている。
認定調査では調査員が見たままを選ぶ仕組みになっており、介護の手間を総合的に判断する材料として、主治医意見書の重要性が増しているためだ。

そのほか、次の点もこの欄に書く。

  • 口腔清潔に関して特に留意すべき事項
  • 専門医に意見を求めた場合の結果や、情報提供書・診断書などのうちサービス利用上重要な内容
  • 第1号被保険者で、負傷の原因として交通事故など第三者の行為が疑われる場合は「第三者行為」といった旨

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要介護認定で状態が伝わる書き方のコツ

手引きの記載から、書き方の注意点を5つにまとめる。

  1. 専門用語を減らす:審査会には医療関係者以外の委員もいる
  2. 介護の手間を具体的に書く:「夜間に2〜3回トイレ誘導が必要」のように、頻度と内容で書く
  3. 選択肢で表しきれない変動を補う:日によって状態が違う場合は、介護者の話も含めて特記すべき事項に書く
  4. 第2号被保険者は診断根拠を必ず書く:特定疾病に当たるかは意見書の記載で確認される
  5. 投薬は整理して書く:介護上注意が必要な薬や相互作用の可能性がある薬を優先する

認定調査は1回の訪問で行われることが多く、調査日の様子だけでは普段の状態が伝わりにくい。
長く診ている主治医だから分かる情報を、特記すべき事項で補うのが意見書の役割だといえる。

作成料と請求先

主治医意見書の作成料は、患者ではなく保険者(市町村など)が負担する仕組みだ。
医療機関は、依頼元の保険者、または保険者から委託を受けた国民健康保険団体連合会に請求する。
請求先と請求方法は保険者によって異なるので、依頼文書や保険者の案内で確認する。

作成料の額は保険者の案内に従う。
多くの保険者では、在宅と施設、新規と継続の4区分で額が示されており、消費税は別に扱われている。

また、主治医がいない申請者について保険者が指定して診断を行う場合など、例外的に初診料相当額や一定の検査費用が対象になることがある。
対象となる範囲は限られているため、請求する前に保険者へ確認する。

算定を間違えないカルテの選び方

算定や記録の抜け漏れは、カルテ側で必要な情報が見えるかどうかで変わります。選ぶときに何を見ればよいかを整理した資料です。

一番やさしい電子カルテの選び方ブックを見る

提出期限の考え方

主治医意見書そのものに、法律で決まった提出期限はない。
ただし、介護保険法第27条第11項では、要介護認定の申請に対する処分は、原則として申請日から30日以内に行わなければならないとされている。

意見書の提出が遅れると、認定審査会にかけられず、認定結果が出るのが遅れる。
要介護認定は申請日にさかのぼって効力を生じるが、結果が出るまで介護サービスの利用計画が立てにくくなる。
市町村の依頼文書に書かれた期限を目安に、受付から提出までの流れを院内で決めておきたい。

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医療事務が下書きで手伝える範囲

意見書の内容に責任を持つのは医師である。
そのうえで、カルテや受付情報から転記できる部分は、医療事務が下準備をしておくと院長の負担が大きく減る。

医療事務が準備できること 医師が判断・記入すること
基本情報 氏名・ふりがな・生年月日・住所・連絡先、医療機関情報(紙ならゴム印可) 医師氏名(紙なら自署)
最終診察日・作成回数 受診歴と過去の作成記録から転記 内容の確認
他科受診の有無 問診票やお薬手帳などで把握している情報を整理 最終確認
1.傷病に関する意見 過去の意見書の記載や処方内容を一覧にしておく 診断名、安定性、経過・治療内容の記入
2.特別な医療 過去14日間に院内で実施した処置の記録を拾い出す 該当項目の判断
3〜5 身長・体重の記録、訪問看護などの利用状況の情報を集める 自立度、症状、見通し、医学的管理、特記すべき事項の判断と記入

医学的な判断が必要な欄を事務が埋めてしまうと、後で医師が見落とすおそれがある。
事務が準備した部分と医師が判断した部分を、下書きの段階で区別しておくとよい。

作成業務のチェックリスト

  • 依頼を受けた日と、市町村が示す期限を台帳に記録した
  • 新規・更新・区分変更のどれかと、在宅・施設の別を確認した
  • 基本情報と医療機関情報を下書きした
  • 最終診察日が意見書作成の時点で適切か、診察の予定を確認した
  • 過去の意見書の記載と、前回からの変化を医師に示せる状態にした
  • 特記すべき事項に介護の手間と頻度の具体例が入っている
  • 第2号被保険者の場合、特定疾病の診断根拠が書かれている
  • 紙の場合、医師氏名が本人の自署になっている
  • 提出後、作成料の請求先と請求月を記録した

よくある質問

他科の受診状況が分からない場合はどう書くか

手引きでは、他科受診の有無は分かる範囲で記入するとされている。
お薬手帳や問診票で把握できる範囲で記入し、分からないことを無理に埋める必要はない。

前回の意見書と同じ内容でよいか

作成回数が2回目以上でも、最終診察日時点の状態で記入する。
状態が変わっていない場合でも、介護の手間や頻度の変化がないかは改めて確認したい。
前回の記載をそのまま写すと、状態の変化が審査会に伝わらない。

交通事故が原因で介護が必要になった患者の場合は

第1号被保険者で、負傷の原因として交通事故など第三者の行為が疑われる場合は、特記すべき事項に「第三者行為」といった旨を書くよう手引きで求められている。
保険者が被保険者に届出を促すきっかけにするためだ。

まとめ

主治医意見書は、要介護認定の審査判定で、特定疾病の確認、介護の手間の判定、状態の維持・改善可能性の判定などに使われる。
様式は基本情報と5つの欄で構成され、とくに特記すべき事項に介護の手間と頻度を具体的に書くことが、状態を正しく伝える鍵になる。

2026年4月からは手引きが見直され、同意欄の削除や、介護情報基盤を使った電子的な作成・送信の方法が示された。
紙で作成する場合は、医師氏名だけ本人が自署し、押印は不要だ。

作成料は保険者が負担し、請求先は保険者または国民健康保険団体連合会になる。
期限は市町村の依頼文書を目安にし、医療事務が転記できる部分を下準備する運用にすると、院長の書類業務を減らしながら期限内に提出しやすくなる。

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参考

  • 厚生労働省老健局老人保健課「要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について」の一部改正について(令和7年11月20日老老発1120第1号、介護保険最新情報Vol.1440) https://www.mhlw.go.jp/content/001598392.pdf
  • 介護保険法(平成9年法律第123号)第27条(法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
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