業務改善助成金をクリニックで使うには?2026年10月の最低賃金改定前に申請する要件・上限額とスケジュール

2026年9月3日、令和8年度の地域別最低賃金の改定額が全都道府県で答申された。
全国加重平均は1,177円で、前年度から56円の引上げになる。
改定後の最低賃金は、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効する予定だ。

受付や医療事務、看護助手をパートで雇っているクリニックでは、時給の見直しが避けられない。
その賃上げと一緒に設備投資を行うと、費用の一部が助成されるのが業務改善助成金である。

ただし、この助成金には「最低賃金が発効する前日まで」という期限がある。
東京・大阪・愛知など10月1日発効の地域では、申請も賃金の引上げも9月30日までに済ませる必要がある。
この記事では、令和8年度の要件をクリニックに当てはめて整理する。

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目次
  1. 業務改善助成金とは
  2. クリニックは対象になるか
    1. 中小企業に当たるか
    2. 事業場内最低賃金の条件
  3. 助成上限額と助成率
    1. 特例事業者
    2. 計算の例
  4. 最低賃金改定とクリニックの賃上げ計画
    1. 「どうせ上げる分」を前倒しする
    2. 引上げの対象と数え方
    3. 職種別の引上げ計画表(東京都・70円コースの例)
  5. クリニックで対象になりうる設備投資
    1. 対象経費の区分
    2. 電子カルテ・パソコンの扱い
    3. 対象外になりやすい経費
  6. いつまでに何をするか
    1. 都道府県別の申請期限
    2. クリニックの準備スケジュール
  7. 申請前のチェックリスト
  8. 他の助成金との関係
  9. よくある質問
    1. Q1. 最低賃金が上がるのは10月1日だが、10月以降に賃上げしても使えるか
    2. Q2. 交付決定を待ってから賃上げすればよいか
    3. Q3. パートの受付しかいないクリニックでも使えるか
  10. まとめ
  11. 参考

業務改善助成金とは

業務改善助成金は、事業場内で最も低い時給(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った中小企業・小規模事業者に、その費用の一部を助成する制度だ。
令和8年度の受付は2026年9月1日に始まっている。

手続きは次の順番で進む。

  1. 管轄の都道府県労働局に交付申請を出す
  2. 申請後、最低賃金の発効日前日までに就業規則等を改正し、賃金を引き上げる
  3. 交付決定を受けてから、設備の契約・納品・支払を行う
  4. 事業完了後に事業実績報告と支給申請を出し、審査を経て助成金が振り込まれる

賃金の引上げは「申請後」、設備の契約は「交付決定後」でなければならない。
この2つの順番を取り違えると、要件を満たしていても助成されない。
なお令和8年度から、引き上げる対象労働者は雇用保険被保険者に限られた。

クリニックは対象になるか

中小企業に当たるか

医療・福祉は、この助成金ではサービス業の区分に入る。
資本金または出資の総額が5,000万円以下か、常時使用する労働者が100人以下であれば中小企業事業者に当たる。
厚生労働省のQ&Aでは、資本金や出資の総額がない医療法人は、常時使用する労働者数で判断するとされている。

大企業が出資の2分の1以上を持つなど、いわゆる「みなし大企業」に当たる場合は対象外だ。

事業場内最低賃金の条件

事業場内最低賃金は、雇入れ後6か月を経過した雇用保険被保険者のうち、最も低い時給を指す。
申請時点で、この額が「今の地域別最低賃金以上、改定後の地域別最低賃金未満」であることが条件になる。

クリニックの状況 判定
医療法人・個人開設で、常時使用する労働者が100人以下 中小企業に当たる
雇入れ後6か月を経過した雇用保険加入者の最低時給が、改定後の最低賃金を下回っている 申請できる
全職員の時給がすでに改定後の最低賃金以上 申請できない
申請時点で今の最低賃金を下回っている職員がいる 対象外
開業から6か月未満で、雇入れ後6か月を経過した職員がいない 原則として対象外
申請前6か月以内に解雇や、勤務時間の短縮による賃金の引下げを行った 不交付事由に当たる
労働保険に未加入、または保険料を滞納している 対象外

申請は事業場ごとに行う。
分院がある場合は、場所ごとに条件を確認する。
同一事業主の申請額は年間600万円まで、同じ事業場の申請は年度内1回までだ。

助成上限額と助成率

助成額は「設備投資等の費用×助成率」と「コースごとの上限額」の低い方になる。
助成対象経費の下限は10万円(税抜)だ。

コース(引上げ額) 引き上げる労働者数 30人未満の事業場 それ以外
50円コース 1人 40万円 30万円
50円コース 2〜3人 70万円 40万円
50円コース 4〜5人 / 6〜7人 / 8人以上 70万円 / 90万円 / 110万円 同左
70円コース 1人 50万円 40万円
70円コース 2〜3人 100万円 50万円
70円コース 4〜5人 / 6〜7人 / 8人以上 130万円 / 180万円 / 230万円 同左
90円コース 1人 100万円 90万円
90円コース 2〜3人 240万円 150万円
90円コース 4〜5人 / 6〜7人 / 8人以上 270万円 / 360万円 / 450万円 同左

助成率は、引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4だ。
改定前の最低賃金が1,050円以上の都道府県(東京・大阪・愛知など)では、事業場内最低賃金が1,050円を下回ることはないので、助成率は3/4になる。

特例事業者

次のいずれかに当たる事業者は特例事業者となり、10人以上の賃金を引き上げる場合に上限額が50円コース130万円、70円コース300万円、90円コース600万円になる。

  • 賃金要件:事業場内最低賃金が1,050円未満
  • 物価高騰等要件:原材料費の高騰など外的要因で、申請前6か月間平均の利益率が前年度より3%ポイント以上低下

物価高騰等要件に当たる場合は、通常は対象外のパソコンやタブレット等の新規導入も対象になりうる。

計算の例

東京都の無床クリニック(職員15人)で、雇入れ後6か月を経過した雇用保険加入者の最低時給が1,230円だとする。
受付2人と看護助手1人の計3人を70円引き上げ、1,300円にする。
この場合は70円コース・2〜3人・30人未満で、上限額は100万円だ。
設備投資等に120万円かけると、120万円×3/4=90万円で上限を下回るため、90万円が助成額の目安になる。

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最低賃金改定とクリニックの賃上げ計画

「どうせ上げる分」を前倒しする

東京都の最低賃金は1,226円から1,280円に上がる。
時給1,226円の職員は10月1日から1,280円以上にする必要があり、この54円の引上げは50円コースの条件を満たす。
つまり、最低賃金の改定で必ず上げる賃金を、発効日前日までに前倒しで上げれば助成の対象になりうる。

発効日の当日に引き上げた場合は対象外になる。
また、事業場内最低賃金の引上げは1回で行う必要があり、2回に分けた合算は認められない。

引上げの対象と数え方

  • 事業場内最低賃金の職員を引き上げると、時給を追い抜かれる職員も同額以上引き上げる必要がある
  • 追い抜かれる職員をコースの額以上引き上げれば、「引き上げる労働者数」に数えられる
  • 数えられるのは申請日時点で雇用保険被保険者の職員だけで、週20時間未満のパートは人数に入らない
  • 事業場内最低賃金の計算では、精皆勤手当・通勤手当・家族手当を除く
  • 手当を減らして基本給を上げる場合は、賃金総額で見てコースの額以上の引上げが必要

職種別の引上げ計画表(東京都・70円コースの例)

職種 雇用保険 現在の時給 引上げ後 人数に数えるか
受付(週30時間) 加入 1,230円 1,300円 数える(事業場内最低賃金)
医療事務(週24時間) 加入 1,250円 1,320円 数える(追い抜かれるため70円引上げ)
看護助手(週20時間) 加入 1,240円 1,310円 数える
受付(週12時間) 未加入 1,230円 1,300円 数えない(引上げは必要)

数字は説明のための例だ。

クリニックで対象になりうる設備投資

対象経費の区分

対象になるのは、謝金、旅費、借損料、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、経営コンサルティング経費、委託費だ。
いずれも「生産性向上・労働能率の増進に資する」と認められる必要があり、最終的には労働局の個別審査で決まる。

埼玉労働局などが公表している医療・福祉分野の活用事例には、次のようなものが載っている。

  • 検査機器の導入による患者の待ち時間の短縮(医療業)
  • デジタルレントゲン機器の導入による現像作業の短縮(歯科診療所)
  • ハンドピース専用滅菌機の導入による滅菌作業の自動化(歯科医院)
  • 診療予約管理システム、POSレジシステム、自動釣銭機(医療業・歯科診療所など)

これらは過去の年度の事例で、申請時点の要件を満たす必要があると労働局も注記している。

電子カルテ・パソコンの扱い

パソコン、タブレット、スマートフォンと周辺機器は、原則として機械装置等購入費から除かれる。
ただし交付要領では、POSシステムや会計給与システムなど特定業務専用のシステムを動かす目的で導入することが明らかな場合は、対象とする場合があるとされている。
物価高騰等要件の特例事業者は、パソコン等の新規購入が対象になりうる。

電子カルテそのものが対象になるかを明示した記載は、確認した交付要綱・要領・Q&A・事例集には見当たらなかった。
検討する場合は、どの業務が何分短くなるかを数字で示したうえで、申請前に労働局へ相談するのが確実だ。
既存の機器を同等性能のものに入れ替えるだけでは、生産性向上とは認められない。

対象外になりやすい経費

  • LED照明への交換など、単なる経費削減が目的のもの
  • レイアウト変更、エアコン設置、内装工事など、快適化が目的のもの
  • 消耗品、汎用事務機器、通信費など通常の事業活動に伴うもの
  • パンフレットやランディングページ作成などの広告宣伝費
  • 法令等で義務付けられたものの整備にかかる経費
  • 交付決定前に契約・納品した設備(事前着手は理由を問わず認められない)

リースや保守契約は、交付決定年度に支払う分が対象だ。
複数年分をまとめて払う場合は、3年分までが対象になる。

導入費用に補助金を使うという選択

IT導入補助金の対象要件と、申請の進め方をまとめました。制度は年度で変わるため、検討の段階で一度確認しておくと動きやすくなります。

IT導入補助金の資料を見る

いつまでに何をするか

都道府県別の申請期限

申請期間は、2026年9月1日から「地域別最低賃金の発効日の前日」と「11月30日」のいずれか早い日までだ。
期限日が行政機関の休日に当たる場合は、その前の開庁日までに労働局へ到達している必要がある。

発効日(予定) 都道府県 申請期間の末日
10月1日 北海道、宮城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、富山、岐阜、愛知、三重、大阪、兵庫、香川 9月30日
10月2日〜4日 長野、岡山(2日)/群馬、石川、滋賀、和歌山、鳥取(3日)/福井、奈良、福岡(4日) 発効日の前日
10月8日〜18日 山口(8日)、島根(10日)、広島(11日)、秋田(14日)、静岡(15日)、福島(16日)、茨城(18日) 発効日の前日
10月24日〜30日 宮崎(24日)、鹿児島(25日)、青森・高知(29日)、山形(30日) 発効日の前日
11月1日〜16日 山梨・徳島・愛媛・大分(1日)、長崎(2日)、佐賀(15日)、京都(16日) 発効日の前日
12月1日〜2日 岩手・熊本(1日)、沖縄(2日) 11月30日

発効日は、異議の申出の状況などで変わる可能性がある。
予算の範囲内で交付するため、期間内に募集が終わる場合もある。

クリニックの準備スケジュール

時期 やること
申請期限の3週間前まで 賃金台帳で事業場内最低賃金と雇用保険の加入状況を確認し、引き上げる職員とコースを決める
申請期限の2週間前まで 導入する設備を決め、二者以上から見積もりを取る。事業実施計画書に効果を数字で書く
申請期限まで 交付申請書と事業実施計画書を労働局へ提出する(持参・郵送・電子申請)
申請後〜発効日の前日 賃金規程など就業規則等を改正・適用し、時給を引き上げる
交付決定後 設備の契約・納品・支払を行う
2027年1月31日まで 事業を完了する(やむを得ない理由があれば3月31日まで)
事業完了後 事業実績報告書と支給申請書を提出する

就業規則の改正日を申請日より前にすると、実際の賃上げ日が後でも対象外になる。
10人未満のクリニックで就業規則がない場合は、引上げ後の事業場内最低賃金と引上げ日を定めた書面を作り、職員に周知する。雇用契約書や労働条件通知書は、これに当たらない。

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申請前のチェックリスト

  • 雇入れ後6か月を経過した雇用保険加入者のうち、最も低い時給を把握した
  • 申請時点で、今の最低賃金を下回っている職員がいない
  • 追い抜かれる職員の引上げ額と、雇用保険未加入のパートの時給も決めた
  • 賃金の引上げ日と就業規則等の適用日を、申請日より後・発効日前日までに設定した
  • 設備の契約・発注は交付決定後に行う段取りにした
  • 設備が「どの業務の時間をどれだけ減らすか」を数字で説明できる
  • 二者以上の見積もりを取った
  • 申請前6か月以内に解雇や勤務時間の短縮による賃金引下げをしていない
  • 同じ設備に国や自治体の他の補助金を使っていない

他の助成金との関係

同じ設備投資の費用に、国や自治体の他の補助金と重ねて助成を受けることはできない。
また、業務改善助成金で賃金を引き上げた職員は、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者として数えられない。

設備投資そのものを補助する制度は、クリニックで使える補助金・助成金まとめで整理している。

よくある質問

Q1. 最低賃金が上がるのは10月1日だが、10月以降に賃上げしても使えるか

使えない。
事業場内最低賃金の引上げは、交付申請の後から、その都道府県の地域別最低賃金の発効日の前日までに行う必要がある。
10月1日発効の地域で10月1日に引き上げた場合は対象外になる。

Q2. 交付決定を待ってから賃上げすればよいか

賃金の引上げは交付決定を待つ必要はなく、申請後から発効日前日までに行う。
一方、設備の契約・納品・支払は交付決定後でなければならない。
10月1日発効の地域では、交付決定を待っていると賃上げの期限を過ぎるおそれがある。

Q3. パートの受付しかいないクリニックでも使えるか

雇入れ後6か月を経過し、雇用保険に加入している職員がいれば申請できる可能性がある。
週20時間未満で雇用保険に入っていない職員だけの場合は、事業場内最低賃金の基準にも、引き上げる労働者数にも数えられない。

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まとめ

令和8年度の業務改善助成金は、最低賃金の改定で必ず発生する賃上げと、受付や会計などの業務を効率化する設備投資を一緒に進めたいクリニックに向く制度だ。

押さえるべきは3点だ。
申請期限は最低賃金の発効日前日で、10月1日発効の地域は9月30日まで。
賃上げは申請後、設備の契約は交付決定後。
電子カルテやパソコンは原則のまま通るとは限らないので、労働局への事前相談を前提に計画する。

参考

  • 厚生労働省「業務改善助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html
  • 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693416.pdf
  • 厚生労働省「業務改善助成金交付要綱」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693388.pdf
  • 厚生労働省「業務改善助成金交付要領」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001693391.pdf
  • 厚生労働省「業務改善助成金Q&A」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001746753.pdf
  • 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html
  • 厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」 https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001745621.pdf
  • 埼玉労働局「医療、福祉の生産性向上の事例」 https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kakushu_joseikin/gyoumu-kaizen014.html
  • 島根労働局「業務改善助成金業種別事例集(医療・福祉編)」 https://jsite.mhlw.go.jp/shimane-roudoukyoku/content/contents/001155376.pdf
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対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

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提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、